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鬼神

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第二章

「しかしその気質はどうだ」
「奴の性格か」
「それはどうかというのだ」
「若くして将軍になりしかも無敵だ」
 それが霍去病である、まさに。
「向こうの皇帝に兵法書を読むことを勧められても戦の場は常に変わるのでそうしたものを読んでも意味がないと言うまでのな」
「あの国の皇帝は絶対だがな」
「我等の単于以上にな」
「その皇帝にもそこまで言える」
「相当な軍略の持ち主だ」
「そして相当に不遜な性格だな」
 彼は霍去病のその性格も言うのだった。
「その絶対の相手にもそう言えるからな」
「戦えば必ず勝つだけに」
「自信に満ちていてか」
「その為性格はか」
「不遜か」
「しかも霍去病の兵達は常に餓えて凍えている」
 男は彼が率いる兵達のことも言った。
「軍には珍味が山積みだがな」
「あちらの皇帝が霍去病に与えたな」
「それがな」
「しかし霍去病は兵達にそれを与えない」
 そうした考えには全く至らないのだ。
「その山積みの珍味を自分だけが食い殆ど腐らせるだけだ」
「他の者への気配りがない」
「それも一切ですね」
「兵達が寒さに凍えていても自分は蹴鞠を楽しんでいる」
 陣中においてだ、わざわざ蹴鞠の場を設けさせて。
「そうした者だ」
「周りに対する配慮は一切しない」
「そして不遜か」
「それではな」
「敵は多いか」
「若しかするとだ」
 男は冷静な声でだ、匈奴の同胞達に話していく。
「我等に勝ち続ける前にだ」
「向こうの中でか」
「何かあるか」
「若くして功績を挙げ地位がありしかも皇帝に気に入られだ」
 その性格なら、というのだ。
「妬まれ嫌われる」
「それも多くの者に」
「それならばか」
「敵は多い筈だ」
 漢の中にというのだ。
「果たして霍去病はその敵達と戦い勝てるか」
「それでか」
「あの者がどうなるかわからないか」
「そう思う、ここはじっくりと見ることだ」
 霍去病に悪戯に怯えるのではなく、というのだ。
「何か動きがあるやも知れぬ」
「そしてあの男がどうにかなる」
「そういうことか」
「我等は戦場の霍去病にも陣中のあの者にも国に帰ったあの者にも何も出来ない」
 戦を仕掛けても負けるしましてや漢に攻め込むことも刺客を送ることも何も出来ないというのだ。匈奴の状況では。
「しかしだ」
「あの国の中ではどうか」
「そういうことだな」
「そうだ、どうなるかはだ」
 それはというと。
「あの国の中次第だ」
「漢のか」
「あの国のか」
「敵は外敵だけではない」
 彼はこうも言った。
「中にもいるのだからな」
「霍去病にしてもか」
「そういうことか」
 匈奴の者達は男のその言葉に頷いた、しかし霍去病は戦えば彼等に勝ち続け帝の寵愛はより高まりだ。遂に。 
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