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19話:玄野計のΨ難
全一を追いかけてトロピカルランド中を探し回った玄野だが、ついに見つけることは出来なかった。
諦めた玄野はトロピカルランドと外界を遮断している壁を破壊し、外のエリアに出た。地図を広げるとそこは4-Eエリア。
特に目立った施設はない。強いて言えばPK学園という変わった名前の学校が存在しているぐらいか。
玄野は充分警戒しながら歩を進める。
勿論堂々と広い道を進むような真似はせず、なるべく裏路地を選んでいる。
ガンツスーツこそあるものの、手元には玄野にとって頼り甲斐のある武器が無い。星人との戦いで普段使っているXガンやガンツソードが、もしくはそれに準ずる頑丈さを持つ武器が無い。
しかし先程出会った男が乗っていたのは間違いなくガンツバイクだった。
他の参加者にはXガンなどの強力な武器が支給されている。
Xガンで何度も遠くから狙い撃ちされたら、いくらガンツスーツを着ていようと命はない。
それだけではない。何しろ氷川がいたのだ。参加者の中にも、彼のようにガンツスーツの耐久など貫通してしまう攻撃力を持つ者がいてもおかしくない。
玄野を警戒させると同時に、不安にさせる要素は名簿やルールブックを見るだけでも沢山出てきた。
やがて玄野は思い至る。
自分はガンツスーツを素肌の上に着ているだけだ。
ガンツを知らない者が自分を見たら警戒されるのではないか。
急いでどこかから衣服を調達して着なければならないと玄野を焦らせる。
玄野はそこら辺にある適当な建物に入った。
思いもよらなかったのは、その建物『純喫茶魔美』に超能力者がいたことだろう。
「うわッ!!」
入った瞬間、玄野の身体は停止した。
当人は、まるで見えない糸に拘束されたような気分を味わっていた。
「そのまま話をさせてもらう」
突如聞こえた棒読み口調の音源を探すと、カウンター席の椅子の一つに、大きな赤いリボンを着けた、少女の生首があった。
◆
―――意外と使えるものだな。この曲弦糸とやらは。
斉木楠雄は念力で操って黒い全身タイツの男を拘束した。紫木一姫はこの糸を人体を輪切りにする殺人術として用いるが、本来曲弦糸というのは拘束術だ。
(まあ、僕としては念力で直接動きを止めても良かったのだが)
超能力が制限されてうまく使えない。
しかも具体的にどのように制限されたのかもわからない。
おまけにテレパシーが使えないことだけはわかった。
僕は当然不安になった。だから策を考えたのだ。
まず、ゆっくり霊夢。これがかなり使えるものだった。このゆっくり霊夢はどうやら本質的には何かを喋らせる為のものらしい。僕がゆっくり霊夢に喋らせたい言葉を"入力"する。そしてこの喫茶店にやって来た参加者と僕の代わりに対話させる。具体的には質問して相手が答えたら三十秒後に次の質問をするように入力した。ちなみに僕はその間カウンター席の後に隠れている。透視は使えるので何かあったらすぐわかるし、瞬間移動も距離は限られるが出来ることも検証済みだ。
黒い全身タイツの男を拘束するのに念力ではなく曲弦糸を使った理由は、規格外の相手だった場合に少しでも時間稼ぎになるようにするためだ。糸を引きちぎってる間に逃げるぐらいはできるだろう。
いずれにしろ、気は抜けない。
「なんなんだッ! くそッ!」
男は必死に抜けようとしているようだ。その顔をよく見てみると童顔で年は僕とさほど変わらないように思える。
だが、僕は曲弦糸の位置を常に動かし続けている。男はどこに力を入れていいかわからなくなっているはずだ。
「じっとしててね」
ゆっくり霊夢が男を諭す。なかなかいいアドリブをするじゃないか。
やがてゆっくり霊夢は入力された質問を吐き始めた。
「こいつは支給品だ。生首型の読み上げソフトとでも考えてくれればいい。お前のことは暫く拘束させてもらうが、信頼できる人間だと判れば危害は加えないし解放する」
まったく。テレパシーさえ使えればこんな事しなくてすむのだがな。
「‥‥わかッた」
男は抵抗をやめて力を抜く。何を考えたかはわからないが、ゆっくり霊夢に付き合う気にはなったと見える。
「今からいくつか質問をさせてもらう」
ゆっくり霊夢は微塵も変わらぬ棒読み口調で話し出す。
「名前は?」
「玄野計だ」
「お前は殺し合いに乗ったのか?」
玄野は即座に答える。
「乗ッてない」
僕は透視とズーム機能の超能力を使い、玄野計の顔を見る。
‥‥ふむ。嘘をついている顔ではない。服の内側やデイパックも確かめたが、すぐに攻撃できるような武装はしていない。
おっと、三十秒経ったな。次の質問だ。
「乗ってないと答えた場合の質問だ。ここに来るまで何者かに襲われたか否か? 襲われたのならその人物の特徴も答えてくれ」
ちなみにほぼ無いと思うが、乗っていると答えた場合は問答無用で葬るつもりだった。
「ああ。襲われた。アルビノで、ガンツバイクッていう乗り物に乗ッていた。名前はわからない」
‥‥ふむ。
「次の質問。参加者名簿に知り合いの名前はあるか? あるなら詳しく教えてくれ。僕が信用できないから教えたくないのならそうして構わない。もしまだ参加者名簿を見ていないなら一分時間をやろう」
玄野計は少し考えた後、一人の名前を上げた。
「お前に教えられるのは氷川という男だけだ」
そして玄野は語った。氷川と呼ばれる吸血鬼の事を。
長い話だったので、話の間ゆっくり霊夢が黙ってくれるかどうか不安だったが、空気の読める性格らしくゆっくり霊夢はずっと黙っていた。
‥‥しかし吸血鬼に、星人か。にわかには信じがたいな。
超能力者の僕が言うのもなんだが。
「次の質問。主催者について知っていることは何かあるか?」
「‥‥ああ」
おお、これは意外な展開だ。ゆっくり霊夢も心無しか驚いているようだ。
「あの会場にあった黒い球はガンツと呼ばれている」
それから玄野は有用な情報を幾つも話した。
ガンツには人を転送したり生き返らせたりする機能があること。
その球を転送前にいた会場で操作していた少年西丈一郎のこと。
星人との戦い。
聞けば聞くほど謎が増えていく。玄野の話と僕の記憶には、どうも大きな差異があるのだ。
僕は過去に地球、もしくは人類を救った経験がある。それも六回も。そんな僕が、地球が星人なんて存在に攻められていることに気付かないわけがないのだ。
しかも玄野は星人との戦いの際一般人含め大勢の死人が出ていると語るが、そんなニュースを見た覚えはない。
大体の事を話し終えた玄野は次の質問を待っている。
ゆっくり霊夢は今聞いた話に理解がついていかないのか呆然として言葉を失ってしまっている。だがもう一仕事してもらわないと困る。
「‥‥最後の質問だ。脱出の手段は何かあるか?」
「‥‥いや」
まあ、そうだろうな。この質問はあまりいい答えを期待していなかった。主催の情報が手に入っただけで充分だ。
僕は曲弦糸を解いて巻き取り、立ち上がって玄野の前に姿を現した。
直後、ゆっくり霊夢が叫んだ。
「危ない!!!」
棒読み口調なのは変わらなかったが、その声はテレパシーが使えなかった上に玄野計に集中していたため襲撃に気づかなかった僕を助けた。
突如窓から撃ち込まれた銃弾を僕はサイコキネシスの壁で防いだ。
玄野計にも銃弾は当たっているようだが、何故かまったく効いていない。
「馬鹿な!?」
銃撃と銃声がやむと同時に一人の男の声が聞こえた。
僕は店内の照明を点ける。光が割れた窓の外に漏れ、下手人の顔を照らした。
そいつは、茶色のスーツを着てサングラスをかけた七三分けの男だった。手にはイングラムという名の機関銃を持っている。
玄野はその姿を確認した瞬間激昂し、叫びながら男に襲い掛かった。慌ててイングラムの引き金を引くが、銃弾はガンツスーツに弾かれ、男はそのまま玄野に殴り倒されてしまった。
呻き声を上げながらサングラスが無くなり、割れたレンズで切って流血した顔を上げるがすぐに玄野に胸ぐらを捕まれてしまった。
「ぐっ‥‥」
そのまま殺すのかと思われたが、玄野はムスカを地面に押さえ込んでから
口を開いた。
「そのまま、知ってる限りの情報を話して貰おう」
玄野計がこのような行動に出た理由はガンツスーツにあった。先ほどの攻防を思い出せばわかるように、男の脅威となるような装備はイングラムだけだ。ガンツスーツの防御力を破るほどの武器は持っていないようだし、ましてや玄野に組伏せられている状態では満足に動くことすら出来ないだろう。また、男がさっきから抵抗を試みている事はわかるが玄野の腕はびくともしない。
したがって、殺すなり気絶させる前にある程度情報交換を行うぐらいの余裕はある、と考えたのだ。
しかし。
それでも、彼が路上にいたことには変わりはない。そして純喫茶魔美から漏れる光を僅かに浴びていて夜の路上では比較的目立つような状態だった事も忘れるべきではなかった。
情報交換という隙の最中に、二人目の襲撃者が襲ってくる可能性を考慮しておくべきだった。
ゴシャアッ、と。
重く激しい衝撃が玄野計の頭を叩いた。
もちろんガンツスーツを着ていたためダメージはなかったが、あまりに高い攻撃力により玄野の体は吹っ飛ばされた。
少しの間浮かび上がった体が地面に着いても玄野は何が起こったのか理解できない。立ち上がって周りを見ようとするとまた衝撃が玄野を襲う。
玄野は再度吹っ飛び、また顔を上げると一瞬黒く、太い棒のような物が迫ってくるのが見えた。思わず目を瞑りやはりまた体が宙に浮く。
ちなみにこの間に、イングラムで襲ってきた七三分けの男、ムスカは逃走していた。
「‥‥ま~だくたばらないっちゃか?」
と、襲撃者は一端攻撃をやめて口を開く。
玄野はようやく両足を地面に着けることができた。
初めて襲撃者の姿を見る。
肌の色は黒く、大きな麦わら帽を被って、スリーブレスの白シャツ、よれよれだぶだぶのズボン、両足にぼろぼろのサンダルを履き、丸いサングラスに首にかけた白いタオルの、まるで田舎の青年のような出で立ちだった。
ただ、その手には黒く、禍々しい釘バットが握られていた。
「愚神礼賛を三回もまともに喰らって傷ひとつつかないとは。お前何者―――」
と、そこまで言いかけた襲撃者は唐突に、文字どおりぶっ飛ばされた。
もう、隣のエリアにまで行ってしまったのではないかというぐらい。
気配を感じた玄野は後ろを振り返る。
そこには手を前につきだして、いかにも"何かをした" 感じを出している斉木楠雄の姿があった。
◆
‥‥まさか僕がゆっくり霊夢が壊れてないないか見ていた隙にあんなことが起こっていたとは。
本当に肝心な時に役に立たないな、超能力は。やはり録なモノじゃない。
「ありがとう、助かった」
玄野計が言う。
‥‥気にするな。さっきの詫びだ。
ちなみに彼は今ガンツスーツの上から純喫茶魔美の制服を着ている。元々何かしらの上から着る衣類を探しに来たらしい。
「じゃあ、俺はこれで」
そう言って玄野計は飛び上がり、上へ消えていった。
さて、僕も移動するか。もう純喫茶魔美は隠れていられる場所ではなくなってしまった。銃撃のせいで店内がボロボロになってしまったのは悔やまれるが、帰ったら元通りの純喫茶魔美でまたコーヒーゼリーが食えるだろう。
僕はデイパックとゆっくり霊夢を抱え、透明化しつつその場を離れた。
【玄野計@GANTZ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ガンツスーツ(耐久91%)@GANTZ、純喫茶魔美の店員の制服
[道具]:支給品一式、ランダム支給品三つ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いから脱出
1:加藤を探す
2:氷川を警戒
3:麦わら帽の男(零崎軋識)を警戒
4:七三分けの男(ムスカ)を警戒
5:和泉が生き返った理由が謎
【斉木楠雄@斉木楠雄のΨ難】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、曲絃糸@戯言シリーズ、ゆっくり霊夢@ニコニコ動画、閃光弾×2@現実
[思考・状況]
基本思考:殺し合いには乗らない。
1:もう超能力を隠している場合じゃないな
2:麦わら帽の男を警戒
3:七三分けの男を警戒
4:ゆっくり霊夢は意外と役に立つな
5:テレパシーさえあれば‥‥
◆
麦わら帽を被った殺人鬼、零崎軋識は受け身を取って着地した。
いきなり正体不明の攻撃を受けて驚いたが、自分のデイパックと唯一無二の獲物である愚神礼賛は放さなかった。
「‥‥殺し名とか、呪い名とかよりずっとヤバイやつがいるってことか」
思えば、あの哀川潤がこんなところにいるのだ。
死色の真紅と同じぐらいの強さを持つ者がいたところでおかしくはない。
ムスカを組み倒していた玄野計を殺し合いに乗っていると思い、危険人物と判断した軋識は慎重になる。
【零崎軋識@人間シリーズ】
[状態]:健康
[装備]:愚神礼賛@人間シリーズ
[道具]:支給品一式、愚神礼賛@人間シリーズ、ランダム支給品二つ
[思考・状況]
基本思考:家族のため、暴君のために尽くす
1:家族と合流する
2:暴君(玖渚友)を保護
3:主催は一族郎党皆殺し
◆
ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタは屈辱に燃えていた。
ラピュタの王である自分がああも簡単に倒されるとは…!!!
「くそっ!」
思わず毒づくが、落ち着けと自分に言い聞かせる。
さっきの失敗は屈辱的だが、学ぶことも多かったはずだ。
例えば、この殺し合いにおいて銃はさほど強い武器ではない、と。
「私としたことが焦りすぎたようだ‥‥」
次からは奇襲をかける相手とタイミングをよく考えなくては。
ラピュタ王はまず、度入りのサングラスが壊れたために新しい眼鏡を早急に見つけなければならない。
【ムスカ@ニコニコ動画】
[状態]:サングラス紛失、疲労(大)、顔に大怪我
[装備]:イングラムM10@バトルロワイアル
[道具]:支給品一式、イングラムM10@バトルロワイアル、ランダム支給品2つ
[思考・状況]
基本思考:優勝狙い
1:玄野計(名前は知らない)をいつか殺す
2:眼鏡を探す
3:襲うときは作戦を立てて慎重に
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