英雄は誰がために立つ
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第1章 旧校舎のディアボロス~停止教室のヴァンパイア
Life1 異世界にて
ここは駒王町。地球と言う星の日本と言う島国の関東と言う首都部の某県内にある町だ。
そして、その駒王町には私立の駒王学園がある。
そんな駒王学園にとある男子生徒がいた。
その学生は銀髪の褐色肌に眼鏡をかけた長身の男子生徒、藤村士郎(17歳)12月12日生まれの3年生だった。
彼の家は、とある会社の社長職を代々務める家で、所謂極道の世界の家柄だった。
その名も藤村組と言い、極道系統の関東圏内を支配しているのだ。
今の総組長は彼の実父である藤村切嗣で、その先代が祖父である藤村雷画だ。
奥さんはドイツの貴族の家柄にあるアインツベルン家の次女であったアイリスフィール・フォン・アインツベルンで、その子供に長女の藤村イリヤスフィール、通称イリヤ。長男である藤村士郎といった家族構成となっていて、この世界の“人間”の裏の世界の人間だった。
しかし、この世界は知的生命体は人間以外も存在するのだ。
それが、本来であれば例え“人間”の裏世界をよく知る者でも知り得ることが一生無い、悪魔だったり天使はたまた堕天使それ以外にもetc・・・と言った感じである。
だが藤村士郎は直接的な関わり合いが無いものの、唯人が本来は知り得ない“世界”を知っていた。
何故なら士郎は、魔術師だからだ。とは言っても、魔術気管とは主に3通りある。
一つが人間または、人間派生の魔術師だ。この両者は体内に擬似神経と言われる魔術回路がある。そこから魔力を生成して魔術を扱う訳だ。
しかし、これだけでは“人間、人間派生の魔術師”は魔術を行使できない。では何が必要かと言うと、車で言う機関の大本たるエンジンつまり魔術基盤だ。
この魔術基盤は古から“人間の世界”に刻まれている大魔術式のシステムだ。
上記の二つが初めて人間、人間派生は魔術の行使が可能となる。
此処で先の話に戻るが、藤村の家柄は魔術と何の拘わりは無かったものの、士郎とイリヤの母親の家であるアインツベルン家は魔術師の家柄でもあったが、この1世紀で完全に廃れてしまい過去の遺物と成り果てていた。
そもそも、今の“人間の世界”は魔術師なぞ隠れ住んでいる者も含めて5桁いや、4桁に達しているかも怪しい。
ではなぜそんな世界で廃れた一族の末裔の血を引く士郎が魔術師かと言うと、未だに自覚は無いようだが母親であるアイリスフィールは一族でただ一人の先祖返りだった。
故にその息子である士郎は魔術回路も持ち、更にはあまりにも膨大な魔力を保持している魔術師なのだった(正確にはイリヤにも魔術回路を保持しているが、母親同様知らない)。
そうであるならば何故、士郎だけが魔術師であるのかと言う理由は、士郎は前世で魔術師だったからだ。いや、一度も彼は死んでいないのだが前世とも言うべき世界で死にかけていた所に、知り合いの天才魔術師の手によりこの世界に送られたのだ。
しかしながら、その魔術師は肝心な処で迂闊さを発揮してしまう事が有り、士郎はもれなく転生と言う形でこの世界に来てしまったのだった。
故に士郎だけは魔術師であったのだ。
此処で2つ目が、人間では無い住人たちの扱う魔術である。
彼らは体内に魔術回路とは別の魔力器官を有しているとだけしか士郎も知らないのだ。
3つ目に、先の2つの中間だ。正式な人間独自で編み上げられた魔術基盤を用いた魔術回路が途絶えてしまった元魔術師たちが、過去の栄光にしがみ付こうとして悪魔たちの魔力器官を研究した上で獲得した魔術器官を有した魔術師と言う訳だ。
そんな士郎はこの駒王学園内ではほとんど日常会話をする者が居なかった。ある意味ボッチともいえる。理由としてはこの士郎、運動能力抜群で成績もトップクラス、歳不相応なくらいの人格者でイケメンと来ていた。これでは女子生徒の大半は黄色い悲鳴歓声を上げながらも滅多に近寄らず、男子生徒の9割以上ほどからは嫉妬の対象だった。
数少なくともしゃべるのは、悲しきことかな同い年で――――いや約17年間この世界で生きて来て唯一の男友達である柳道一成だ。彼は――――以下略だ。
それ以外は女子なのだが、それが――――。
「――――ハァイ、シロウ!今帰り?」
と、にこやかに挨拶してくる駒王学園一の美少女であり幼き頃、とある理由により何度か知り合う事に成り、この学園ではほぼ毎日のように合うようになったクラスメイトで、実は悪魔陣営のグレモリー家次期当主のリアス・グレモリーだった。
「ああ。リアスはオカルト研究部だったか?」
「ええ、そうよ。それじゃあ、また明日ね?シロウ」
そのまま軽い挨拶をして二人は別れた。
しかしながら、リアスは殺気立つと言うよりも緊張していた。
何故なら・・。
(フェニックス家の三男坊との政略結婚の否応を賭けた、悪魔同士のレーティングゲームのようだから仕方ないか)
何故士郎がそんな事を知り得ているかと言うと、昔に調査と言う理由から冥界に行った事が有り、そこでドジを踏んでしまいリアスの兄であるサーゼクス・ルシファーに助けられたのが始まりだった。
そこから、彼はごくごく個人的に士郎とつながりを持ち今日まで至っているのだ(個人的つながり故に彼の女王たるグレイフィア・ルキグフスすらも、士郎の事は知らない)。
(はぁー、それにしても憂鬱だなぁ。サーゼクスさんには、秘密裏にお世話に成ったりしてるから、もしかすれば今日のそのレーティングゲームに出なきゃいけないんだよな)
そんな事を思いながら、士郎はため息をついていた。
-Interlude-
旧校舎・オカルト研究部
此処では今日のレーティングゲームにむけて、リアスと下僕たちが集まって作戦などを立てていた。
しかし、そこでふと木場祐斗が・・。
「そういえば、部長。先ほど部長と親しそうにしていた人は、知り合いの悪魔ですか?」
「え?祐斗、見てたの?」
「たまたま、視界に入りまして。確かあの人は藤村士郎先輩でしたよ「藤村士郎だぁああ!!?」イッセー君?」
そこで、兵藤一誠がかぶりついてきた。怨嗟の声が聞こえてきそうな感じで。
「あら?イッセー。貴方、シロウのこと知っていたの?」
「知ってるも何も!あいつは俺達駒王学園の男子生徒の大半の天敵ですよ!!」
「天敵ですか?イッセーさん?」
「おうよ、アーシア!あいつは自分のスペックの高さやイケメンぶりを良い事に、此処の女子生徒をとっかえひっかえにしてるっていう噂が有るくらいの鬼畜野郎だぜ!!(←誹謗中傷)」
「そ、そうなんですか?こ、怖いで「そんな事シロウはしないわよ!!」え?」
そんな士郎の事実無根の噂を荒げるイッセーに、リアスはカッとなった。
「部長、やっぱり知り合いなんですか?」
「え?そ、それは知ってるわよ。だってシロウはクラスメイトなんだ「それだけじゃありませんわ」朱乃!?」
そこに、朱乃がさらりと口を挟んできた。
「あの殿方、藤村士郎さんは部長が人間界に度々やってきた時からの、ちょっとした幼馴染のはずでしたわよね?」
「う゛」
それを居心地が悪そうに身じろぎするリアス。
そこに、又もや怨嗟の以下略降臨。
「ぬぅあんづぁつぉおおおおおおお!!?あんなにスペック高くてイケメンだけでも許せねぇのに、部長と幼馴染だとぉおおおおおおおお!!?」
「イッセー君。悪いけど、一々五月蠅い」
そんなカオスの中、リアスがバシン!と机をたたく。
「と、兎に角!?た、確かにシロウとは幼馴染の関係だけど、彼は私が悪魔だと言う事なんて知らない一般人なのよ!!―――――だから、私なんかと関っちゃダメなんだから(ボソッ)」
最後にリアスは、誰にも聞こえないように寂しそうに呟くのだった。
しかしながら、朱乃の耳だけは確かに聞き取っていたのだった。
-Interlude-
深夜・レーティングゲーム用の異空間
そこで、リアスの将来を掛けた運命のレーティングゲームが、既に進行していた。
当初は、ライザー勢の圧倒的勝利で終わると思われていた戦いだったが、リアス勢が奮戦しつつ、打ち合わせた作戦によりかなりの善戦をしていた。
が、それでも数々のレーティングゲームを勝利してきたライザー勢が、ここぞという時に挽回を始めて遂にはリアスを含めて3人になり、兵藤一誠もずた襤褸状態になっていた。
そんな自分のために此処までしてくれた一誠の姿を見て、遂にリアスがリザインしようとした処でそれは起きた。
『―――――リアス様のチーム、ゲストが投入されました』
「え!?」
ゲスト
それは今回のレーティングゲームが、リアス勢にあまりにも不利であるという理由から魔王の一角でありリアスの実兄であるサーゼクス・ルシファーからの紹介で呼ばれた、赤い外套に赤いフードに身を包んだ謎の人物だった。
サーゼクスからの紹介と言う事で、それはさすがにと危険視したライザーではあったが、紹介した彼自身がその人物の実力の程を全く知らないと言う理由から、一応許可された(それでも一応、贔屓する為に嘘をついてるかの真偽の確認と言う事で、ある悪魔の技術の一端で調べた)。
そのゲストが漸く表れたのだった。ライザーの50メートル先で。
「お前さんがサーゼクス・ルシファー様の呼んだ、ゲストって奴か。こんな場面で投入されて、さぞ辛かろうよ。素直に同情するぜ。といっても、俺も鬼じゃない。リアス、さっさとリザインを再開しろよ。こんな何所のどいつかも判らない奴まで巻き込んだ上で、更に全滅なんて屈辱の極みだろ?」
「クッ!」
悔しいが事実だった故、リアスは再度リザインしようとしたがそこで・・。
『フェニックス家三男殿、提案がある』
「あ?」
「え?」
そこで、現れてから無言を通していた謎の人物が初めて口を開いた。といっても機械で音声を変えているのか、くぐもった声音であったが。
「なんだぁ?提案って?」
『・・・・・・降伏してくれないか?サーゼクス・ルシファー閣下から頼まれた事とはいえ、乗り気じゃない。何より――――弱い者虐めは趣味じゃない』
「はぁ?何をほざくかと思えば、このライザー・フェニックス様に随分な態度じゃねぇかぁあ!!」
ライザーはそのまま掌に、巨大な火炎球を創り出し謎の人物に向かって投げた――――いや、投げようとしたライザーが吹っ飛んだ。
「がっ!!?ぐぅぁあああああああ――――――!!!?」
何故ライザーが吹っ飛んだかと言うと、火炎球を投げようとした所で謎の人物がどこからともなく、両手の指の間に特殊な形状をした柄のある剣を8本瞬く間に出現させた瞬間に、弓なりの体勢のままライザーに投擲して見事すべて命中させたからに他ならない。
しかも、彼はフェニックス――――不死鳥の悪魔の一族故、普通の攻撃では受けてもすぐに回復するであるはずなのに回復せず、鮮血をまき散らす結果となった。
「くそがぁああ!!一体何ぃ!?ぐふぅ!!?」
何とか着地しつつライザーは体勢を整えようとした処で、眼前に突如としてかの人物が出現したかと思えば、鳩尾に抉りこむように謎の人物の右腕が深く刺さった。
八極拳が一、沖捶
腰に構え、体を横に向け乍ら放つ威力重視の突き技。
しかも、謎の人物は魔力で強化している為、ライザーは悶絶するだけに留まらず、突き技の衝撃により大きく吹き飛んだ。
ただ、今のは魔力で強化した沖捶だけのため、宙に吹き飛びはしたもの直に再生された。
「――――ぐっふ、いい気になりなっ!?」
『ふん!』
「ごぅはぁああ!!?」
またもやライザーの眼前に現れた謎の人物は、宙に浮いたまま再度鳩尾に突き技を繰り出した。但し掌を広げたままで。
八極拳が一、川掌
沖捶の掌版だ。
またもすぐに回復したものの、突き技の勢いで地面に叩き付けられるライザー。
「がふぐっ!?―――――おっのれぇ!このままでは済まさんぞぉおお!?」
叩き付けられはしたものの、連続でコケにされたライザーは怒気を孕んだまま上を見上げるとそこには、何所から出したのか謎の人物よりも大きい大鎌を持っていた。
そしてライザーはその大鎌を見た瞬間に直感から理解した。あの鎌は悪魔にとって不吉の象徴の様な物であり自分たちの様な不死の一族にとっては忌むべきものだと。
彼の頭の中では警鐘が喧しいほどに鳴り響いていた。
故にライザーの行動は逃げであった。その判断は正しい。この謎の人物の携えている大鎌は、夜の女神ニュクスの使徒の武器《タナトスの大鎌》である。
この大鎌は、悪魔にも効きはするがそれ以上に、不死の存在に対して絶大な効果を発揮する。
しかし、ライザーは無駄にプライドが高かったために、判断をほんの一瞬だけ遅れて動いたために、死神の斬撃に捕えられた。
『ふっ!』
「ぐぅああ!!?」
背を見せて逃げようとしたために、大鎌の切っ先がライザーの背中を捕えて切り裂いた。
その衝撃により倒れるライザーは直も逃げようとするが、あまりの背中の痛みにより立つこともままならずに腕で這って逃げようとする。だが。
「ひぃ、ふぅ、ぐっ!?」
『鬼ごっこは此処までだ。不死鳥一族の三男よ』
謎の人物に足を踏まれて、それ以上這い進むことが出来なかったライザー。
「くっそがぁあああ!!?」
せめてものの攻撃にと、上半身だけ後ろへ向きながらライザーは炎の一線を後ろに放つ。
しかし、それをいつの間にかに所持していたのか、大鎌とは逆の手に金色の錫杖の先に槍の様な刃が付いている杖があり、ライザーの放つ炎を掻き消し――――いや吸収した。
「なぁあああ!?」
意表を突く攻撃を防がれて、驚きとともに絶望するライザー。
『さて』
そのまま容赦なく、タナトスの大鎌でライザーの全身を切りつける謎の人物。
遂には動けなくなっなライザーの首元に大鎌の切っ先を突き付ける。
「ひぃ!」
『ふむ、そろそろ降参してくれるかな?ライザー・フェニックス』
「まて!待ってくれ!お、お前はサーゼクス様から呼ばれた者なのだろう!?そ、それでこの戦いが圧倒的すぎるとゲームにもなりはしないからと言う理由で!!?」
『・・・・・・』
必死の形相のライザーに、無言で答える謎の人物。
「ならば、もう役目は当に済んでいるはずだ!そ、それにこのまま俺を殺すと言う事は今後の悪魔界に多大なる悪影響が『それが末期の言葉・・・か、ではな』ひぃいいい!!!?」
首元に当てていた大鎌を一旦離し、振りかぶる様にライザーの首元を切りつける――――いや、寸止めした。
何故なら当のライザーは半目の状態で涙を流し、口から泡を吹きながら気絶していたからだ。
そしてそのままライザーは消える。
『ライザー様は、脱落。よって、このレーティングゲームはリアス様の勝利となります』
アナウンスが流れた後、今の戦闘を見ていたリアスも観客席から今の光景を見ていたグレモリー公爵やフェニックス侯爵も唖然としていた。只一人、サーゼクスだけは面白そうに見ていた。
(士郎がそれなりに強いんじゃないかと言う理由からリーアたんの応援にと依頼したが、まさかこれほどまで強いとは予想以上だ。そして・・・・如何しよう?)
外見は非常に楽しそうにしていたサーゼクスも、内心は困惑の渦に居た。
士郎の実力は予想以上だった――――いや、予想以上過ぎた。このままではいずれ士郎の知り合いと言う事と立場上の責任として、情報開示を迫られるだろうからだ。
一見微笑んでいるが、本当に如何しようかと只々頭を悩ませるサーゼクスだった。
-Interlude-
「んっ」
一誠は上半身だけを起こす。
「あっ!?起きたのね、イッセー!」
枕元から、リアスが一誠に声を掛けてきた。
「ぶ、部長!?ゲームは、勝負はどうなったんです!?」
「慌てないで、イッセー。一から説明するから」
そうしてリアスは一誠を落ち着かせて説明に入る。
「―――――――――――と言う事なのよ」
「・・・・・・」
この説明を聞いていて、一誠は茫然としていた。いや、一誠だけじゃない。未だ気絶しているアーシアとグレイフィア以外が呆然としていたのだ。全てを見ていた上で説明をしているリアス自身すらも自分は今この時、白昼夢を見ているんじゃないかと疑心暗鬼に少しだけ陥っている位なのだ。
直も信じられない者のために、記録映像も流していた。
「凄いですよ、この人の動き。全てが洗練されている」
「ええ、恐らく私達全員対この人物とゲームをしても、圧倒されるでしょうね・・。で、グレイフィア。この人物は一体どこの誰なの?お兄様の新しい下僕とか?」
後ろに控えるように立つグレイフィアに、質問を投げかけるリアス。
「いえ、違います。それ以前にお恥ずかしい話ではありますが。私もサーゼクス様の個人的な知り合いに、これほどの実力者が居たなどと知り得ていませんでしたので」
「グレイフィア。貴女が知らなかったですって!?」
グレイフィア・ルキグフスはサーゼクスの妻であると同時に、グレモリー公爵家の家令長だ。
そんな彼女が知らないと言う事は、余程の人物だと言う事を窺い知る事が出来た。
「『いずれ遠からぬうちに聞かせるつもりだが、今は話せない。』との事です。それと」
「それと?」
「これは、一番内密であるという事なので、決して信用に足る者以外に広めるなと厳命された事ですが、何でもかの人物は位に関係なく悪魔では無いそうです」
「「「「「な!?」」」」」 「すぅ~~、すぅ~~」
あまりの言葉に一同驚きを隠せずにいた。
しかし・・。
「グレイフィア様!それは大丈夫なんですの!?レーティングゲームには悪魔のみのはずですわ!それを、堕天使や天使を使うなどと。そんな事が知られれば「それについては大丈夫です」え?」
朱乃さんが興奮するのも判る。けれど、グレイフィアさんは今大丈夫だって?
「このレーティングゲームには、実は穴が有りまして。先代のある魔王が冗談である新設のルールが書き加えられまして、そのルールが人間の魔術師であるならばゲスト位置として加えてもいいと」
その言葉で皆が耳を疑った。無論、俺もだ。だって・・。
「それはつまり、最後に私に一瞥して去った人物は人間の魔術師だって事?」
「・・・・・・」
無言のグレイフィアさん。それはつまり、肯定と同じ意味だ。
その反応にやはり黙る皆。――――此処は俺がなんとかしなきゃ!
「で、でも、部長!俺達は取りあえず勝ったんですから、部長も結婚せずに済むんですよね!?」
「後者はその通りだけど、前者は違うわよイッセー」
「え?」
「私たちは負けたのよ、確かに。少なくともあの魔術師が介入していなければ、私たちは確実に負けていたの。つまり、私たちはこの魔術師の勝利のお零れを貰えたに過ぎないのよ」
部長が告げた言葉に、俺は――――いや俺達はぐうの音も出なかった。
「悔しいですか?」
「え?」
グレイフィアさんが俺に、皆にそんな言葉を投げかけてきた。
「それは・・・・それはそうですよ!だって――――」
『結果を出せなければどれだけ努力しても、していないと言われても何も言えないぞ』
昔、何時何所でだったか。そんな聞いた言葉を思い出した。
今の俺達は正しくその通りだった。
特に自分自身が情けねぇ!あんな風に部長に大見得切ったのに。結果、後から来たやつに助けられて、それを自分たちの勝利だと勘違いして喜んで――――本当に情けねぇ!!
「ふふふ」
ふと見上げると、グレイフィアさんがまるで聖母の様に笑っていた。最上級悪魔だけど。
「貴方は本当に面白い方ですね。長年、色々な悪魔を見てきましたが、貴方の様に思った事を顔に出してそのまま突っ走ろうとする方は初めてです。私の主、サーゼクス様もあなたの活躍を見て『おもしろい』とおっしゃっていたのですよ?そして、皆様にも『先が楽しみだ』と」
グレイフィアさんの言葉と魔王様の言葉に、僅かだが元気を取り戻せてきた、俺。
それは、部長も朱乃さんも小猫ちゃんも木場も一緒だったようだ。
「確かに今回は、事実上リアス様たちの事実上の敗北です。ですが今感じている悔しいと言う気持ちを糧にすれば、いずれ本来の勝者だったライザー様や、あの魔術師殿にも届くかもしれませんよ?」
そんな言葉の後に『私はこれにて』と魔法陣の上に乗り、グレイフィアさんは転移した。
そうだ、これで終わりじゃないんだ。
――――なってやる。絶対今日の様に二度とならない様に、強く成ってやるぅううううううう!!!
-Interlude-
赤い外套赤いフードを着た魔術師、藤村士郎はリアスたちの部屋の外のドアに背中を任せて話を聞いていた。
(ふむ。リアスの意思とは関係ない強制的な政略結婚も、これで破談だな。それにしても、昔の俺みたいだな。今の一誠の奴は――――――――――俺はあそこまでオープンスケベじゃないが)
そんな事を考えながら、士郎は気配を消したまま去って行った。
後書き
柳道一誠についてはほとんどプロフィールが原作と大差ないので以下略とさせていただきました。
めんどいので。
ではでは。
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