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IS レギオン

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第17話

 
前書き
今年最後なので今までの物をすべて投稿します。 

 
 そして、『常磐』の後部甲板にその身を横たえた一夏にゆっくりと近づいていく常磐は、
「何で、こんなにボロボロになるんだ。どんな事が起きればこんな事に」
と言葉を詰まらせた。そう、今の一夏の状態は、未だにレギオン化のままであったが、その身体の彼方此方に深い切り傷や剥がれ落ちて内部の一部が露出しており、誰が見ても重傷の他ならなかった。

 「この生物を助けたいけど、如何すればいいの?」
と常磐が困惑した。その時、突如として、その生物が光り輝いた。そして、その身体が段々と人(一夏)の身体になった。その光景を見た常磐は一層困惑した。
「え、え、え、あの生物が光り出したと思えば、人間になった!?如何いう事?」
と困惑しながらもその人の手を取った瞬間、常磐の目の前が光り輝き意識がとんだ。

 常磐は、突如目の前が光り輝いたと思い、目を細めた。そして、目の前の光がゆっくりと消えていき、常磐が目を開けていった。そして目の前に広がった空間に目を開いた。

 「此処って、概念伝達の相互通信システムの構築型庭園!なんでただの人間がこの中にいるの!」
と常磐が吃驚とした。そして、その庭園の真ん中の洋風のあずま屋に一人の少年が倒れていた。それを見た常磐は、速やかに近付いてその少年を見た。
 「何であの子がここにいるのよ」
と言いながらも、その少年の体調を見た。

『被検体スキャニング開始。生体反応あり、ただし、至急に治療の必要あり。内外に深刻なダメージあり。DNA内に未確認塩基組織発見。全細胞組織体に珪素成分に近い未知の元素含有』
という結果が常磐の目の前に表示された。
「え、と言う事は、この子は正確にはもう人間ではないってこと!」
と常磐は、表示された結果に心底驚いた。

 「どうやったら、助けられるの?」
と困惑しながらも何か手を打った方が良いのではと、常磐が一夏に近付いていった。その時、一夏が苦しげを堪えながら、小さく途切れ途切れにか細い言葉を発した。
「はあ、はあ、少しでも体組織の栄養を補給しないと...近くに珪素がある所に連れて行ってくれ...頼む。後は、自分で何とかするから」
と言った。

 「え、近くに珪素がある所って何処よ」
と言いながらも、必死になって自身の情報網をフル稼働させた結果。付近の海底の地下に大量に超高純度(99.999999999999999%)の珪素が埋って居る地殻があることを突き止め、概念伝達の相互通信システムを切断し、意識を艦に戻し、急速に急角度で海底を突き進んでいった。

 そして、わずか数秒後にハワイの海域内で一番の深度に常磐は、艦を着底させた。

 ハワイ沖海域のある深海3000メートルの海底に着底した『常磐』は、機関を停止した。その後部甲板にいるのは一夏と常磐の二人だけだった。
「少年。着いたぞ、海底辺だよ。次は何すれば良い?教えて欲しいのだか、目を覚ましてほしいのだけど」
と常磐は、優しく一夏に語りかけたが、一夏は目を覚まさなかった。

 暫く、一夏を見つめていた常磐は、ふと一夏の胸から腹にかけて淡く光り輝いていたのを見た常磐は、
「何かしら此れ」
と言いながら、常磐が少しの興味と好奇心が沸き、少し緊張しながらも、一夏が着ていた服を脱がし、仰天した。

 「何なのよ此れ」
と言いながら、表情を強張らせ一夏の上半身を脱がしたまま少し後ずさった。なぜなら、一夏の胸から腹部にかけて、淡く光り輝いていた理由が解かったからだ。その光り輝いていた所がその一つ一つが不気味に蠢いた生物達だったからだ。

 そして、その怪しく光り輝きを放ちながら、胸から腹部にかけて蠢いていたその生物群が突然一夏の身体から大量に溢れ出していった。その数は瞬く間に後部甲板は元より艦体全体に広がり出した。常磐は、
「何なのよ。この生物達は!」
と困惑しながらもゆっくりと後ずさった。

 その生物が艦全体を覆った瞬間。一斉に常磐の方に巨大な一つ目を一斉に向けた。その生物の特徴は、胴体中央に大きな1つの眼を持ち、その両端に小さい眼が2つずつ、計5つの眼を持っており、前部にアームとドリルの様な物が装備されており、胴体は横長であった。その生物群達に襲い掛かりそうになる事を恐れた常磐は、臨戦態勢を取ったが、突如その生物群が一斉にお辞儀の様な仕草をした後、その生物群は、方向を変え、クラインフィールドを突破し、水中の猛烈な水圧が平気な風に次々と海底辺に辿り着き、次々と掘削を開始した。

 そして、暫くした時、『常磐』の艦体の周辺に次々と掘り起こされた土が小山の様に聳えていった。その中から続々とその生物群が這い出していき、『常盤』の後部甲板で眠っている一夏の身体に吸い込まれていき、暫くした後にまた一夏の身体から這い出して海底の掘削口の中に消えていった。
 
 そして、一夏の身体はゆっくりと時間を掛けながらも確実に癒えていった。

  場所と時間を暫し巻き戻して、いきたいと思う。

 リムパック演習前日である夜間、島での束と簪の激突した後に、簪は、半イリス化のまま仲間の多種多様に進化したギャオス達と共にハワイ諸島に向かって行った。そして、ネッカー島の近くの小規模無人島に着地した。

 「ハア、ハア。少し疲れたなあ。あの小娘のせいで服が汚れちゃった。如何しようか?」
と少し困惑しながら、うろうろと頭を人差し指で押さえながら、考えていたが、ふと思い付いた様に頭をあげて呟いた。
「そうだ、誰かのDNAをもらって、その情報と資産を貰おう」
と言いながら、周りを見たがそこの無人島には人影が居なかったが、近くでクルージングしていたカップルが見えた。
「あの人達にしよう」
とペロリと舌を舐め、ゆっくりと海の方に向かって行った。その後を追うようにギャオス達がついて行こうとしたが簪がそれを遮り、
「大丈夫。良い子で待っていてね。そうだ、この周辺の海洋生物を食べてても良いから大人しく待っていてね。大丈夫。お土産持ってくるから」
と言いながら、歩き続けた。

 その見えた先の小型クルージング船では、アツアツのカップルが居た。
「ねえねえ、克ちゃん。何か釣れた?」
「いいや、亜里沙ちゃん。さっきメバル釣れたけど。今はまだ、釣れてないよ」
と、亜里沙がじゃれついてきたが、克也の声に少しムスッとし、
「じゃあ、私少し泳いでくるね。だいじょうぶなにかあったらすぐそこの浜辺にいるから」
ト言いながら、すらっとした肌を見せながら、クルーザーの淵から身を投げ出し、海の中に入って行った。

 海の中をのんびりと泳いでいたが、息継ぎの為海面に顔を出した亜里沙は、
「ふう、やっぱり気持ちいい。それにしても、克ちゃん釣りが好きだな。まあそのおかげでおいしい食事ができるんだけど」
と言った瞬間、何かに足を掴まれそのまま無味の中に消えた。
「がぼ、がぼ。だれか、だれか、かt」
と一瞬顔を水面に出し、水面を激しく叩き助けを呼ぼうとしたが、また消えた。
 その後、何時もの様な穏やかな水面に戻っていた。

 そして、30分程して克也は、亜里沙がいつまでも返ってこないのを不審に思い、もしかしてと思い、船を近くの浜辺に近付けた。

 そして、その足を浜辺に降ろした後、近くを捜索した。
 「おーい、亜里沙。何処だあ、返事してくれ」
と声を掛けたが、暫くして、近くの茂みから声が聞こえた。
「私は、此処よ克也さん。早く来て」
という声が聞こえた為、克也が茂みの中に行った後、絶叫が聞こえた。
「おいおまえは誰だ….なんだ、こいつ等、誰か、誰か、助けてくれー。止めろ来るな来るなー。ぎゃー」
と激しく茂みが揺れ動いたが、暫くして、亜里沙らしき人物が茂みの中から現れた。

 そして、亜里沙は、何事もない様な様子でクルーザー船のエンジンを回し、そのまま、ハワイの諸島のプライデート用の船着き場に船を戻し、波止場の管理人には、
 「克也さんは、『暫く近くの浜辺でのんびりして居るから帰りは、衛星電話で呼び掛けるから先に帰って、ショッピングでも楽しんできて』って言ったから先に帰って来ちゃいました。夕方頃また出ます」
といった後、タクシーを拾い、そのままホテルに着いた。ホテルに着くなり亜里沙は、
「克也さんは、『今仕事先から緊急の呼び出しがあって、すぐに帰国しないと』って言ったので、此処にある荷物とか後で降ろしてきますので、そのまま、飛行機便で送って下さい。よろしくお願いします」
と言い、フロントのスタッフが、
「かしこまりました。では、御荷物を降ろして頂いた後、此方から自宅の方に、お荷物を送らせて貰います」
と言い、航空便用の用紙を渡し亜里沙が素早く書き込んだ後にスタッフに渡した。

 宿泊部屋に着くなり、亜里沙に化けていた簪が、克也や亜里沙の私物を漁り、必要な物を手に取った後、備え付けてあった電話回線に簪の背中から生えた触手を侵入させ、其処からネット回線に侵入し、亜里沙や克也の個人データや預金などを漁り、それをハワイ・オーストラリア・シンガポール・ロシアの各銀行に振り分け全て送金した。また、ネット回線から、世界中のありとあらゆる情報を吸収し、自分の能力の一部に変換させた後、触手を引っ込め、バスルームに入り、シャワーを済ました。

 「ふう、久しぶりのシャワーって気持ちがいいな。さて、次は何処に行こうかな。そうだ、お姉ちゃんって確か今ロシアのイルクーツクっていう場所に居るんだよね。会って見ようかな?」
と怪しげな笑みを浮かべながら、シャワーを浴び終え、着替え始めた。

 その後、簪は亜里沙に再度化けた後、部屋の荷物の必要の無い物全てを航空便で送った後、予めネット回線に侵入した際にオーストラリア・シンガポール経由ロシア行のビジネスクラスの航空券を手配し、このホテルに送った為ホテルのスタッフから航空券を渡され亜里沙は、タクシーを拾い、近くの銀行に行き、ハワイにある預金を全て引き出した後に空港でオーストラリアに向かおうとしたが、その時、束によるISの公開映像を見た。

 簪は少し驚いた。
「おかしいな。確かに胴体と四肢と首をバラバラにしたはずなのに、なんで生きてるのこの人は?」
と呟いた後に、
「まあいいや、また今度出会ったら今度こそ塵も残さず焼き払ってやろう」
と楽しみが増えたという感じの笑みを浮かべた。ただ、その影響で、きょう発着するすべての便の運休が決まり、その手続きの為に簪は亜里沙のまま,混み合った空港の人混みの中にその姿を消して行った。


  簪が亜理紗のまま空港内にあるショッピングモールでのんびりと食事などをしている時、アメリカ合衆国国防総省内の情報統合室にある超特大の液晶画面が真っ暗だった画面が突然燈った。そしてある人物が映し出された。

 「やあやあ,皆さんお久しひねもす―。大天才束さんだよー。ごめんねー折角、私が開発したISを誰かさん達がボコボコにしちゃって束さん撃御子だよ。プンプン。だからね、お仕置きしちゃうよー。えい」
と一方的に喋った後に突然切れたが、暫くして、アメリカ全土にある政府及び軍施設に緊急非常事態通信が鳴った。

 「た、た、大変です!大統領閣下」
「どうした?そんなに慌てて、今参謀達とあのISとか言う物の回収作戦を取っているんだが、」
「そんなことはどうでもいいです。とにかく大変なのです」
「まあとにかく落ち着きたまえ。それで何があった」
「はい、先程、国防省からの連絡ですが、突然情報統合室にあのウサギ猿(アメリカ側のコードネーム=束)が映し出せれ、このような声明を発表後、我が本土にある地下サイロ式中距離弾道弾及び長距離弾道弾凡そ500発がジャックされ、発射されたと言う事です」
「なんだと!それで目標は何処だ」
「それが、ハワイ諸島のオアフ島らしいのですが、それ以上の情報は」
「大変です。大統領閣下!」
「今度はなんだ」
「只今ロシア政府が緊急回線を開き此方の地下ミサイルサイロのメインコンピュータがジャックされ,貴国の領土であるハワイに向けて飛翔したとの事です」
「な…」
「ロシア政府にはあとで話し合おうといってくれ、そして、ハワイ州に避難命令だ。急げ!」
と大統領が言いながら、ふらりとふら付き腰を椅子に落とした。それを見たS・S(シークレット・サービス)が近付き、大統領の身を補佐した。

 そして、ハワイ州全島に避難命令が大統領の名で発令された。ただ、それが核ミサイルであることは伏せられた。

  ハワイ諸島に向け発射されたアメリカ・ロシアの地下サイロ式中距離弾頭弾計1,000発が飛翔した事は、飛翔した瞬間に各国の各種監視衛星及び軍事衛星が捉えていた。

 その中には、日本が極秘裏の内に打ち上げた衛星も入っており、その情報を見た防衛省はすぐさま内閣総理大臣にその情報をあげた。その後、総理は、すぐさまハワイ諸島沖にある総理大臣直轄の極秘独立部隊に暗号を送った。

 ハワイ諸島沖50キロ深度500メートル海中

 「艦長。本土から最上級極秘電文を受信。特級機密暗号解読。内容は、『発:内閣総理大臣 宛;新紺碧 内容;緊急事態二付キ直チニ行動ヲ開始セリ。全装備ノ使用ヲ許可ス。布哇諸島ノ全住民ノ安全ヲ確保セリ。』との事です」
と通信長から受け取った電文を朗読した副長が艦長に伝えた。
「了解した。本土には、『行動開始セリ』と電文を送れ」

 そして、海中から海上に急速に浮上した透明な物が現れた。

「艦長、『白鯨』完全浮上完了しました」
「了解。『ハクさん』対空対水上対潜監視を頼みます」
と艦長が呟くと指令室の真ん中にいた真っ白な髪を左右に束ねた小柄な少女が、
「了解。索敵及び監視開始する」
とハクと呼ばれる少女の周りに立体映像が周囲を囲む様に展開した。
「現在、艦船などの姿は見えず。布哇に向けて飛翔中の第一波弾道弾.弾数10補足。迎撃開始」
「了解。トラック№100~110掃射」
と武器管制員が発射ボタンを押した。

 浮上した『白鯨』に内蔵されたVLSから発展型対ミサイル迎撃ミサイル通称『SM-5』が10発連続発射された。

 「迎撃弾9発命中。なお1発はそのまま飛翔中。Pipipi 付近に『霧の艦隊』所属 ヴァンパイア、レパルス、マヤ の所属コード受信。通信あり『すぐにお助けするよー。待っててね』との通信をマヤから受信しました。艦長」
「了解した。ヴァンパイア、レパルス、マヤに通信を送れ『感謝ス』」

 此処で日本国極秘独立艦隊所属『白鯨』と『霧の艦隊』との共同作戦が開始された。

  さて、時間と場所を少しだけ戻して、

 ハワイ諸島 オアフ島

 今ハワイ州全島に緊急避難警報が鳴り響いていた。その警報を聞いた現地住民やリムパック関係者、各国駐在人などが我先に避難を開始しパニックが起きたが、何とかほぼ全員が各地の避難シェルターや地下街などに収容された。しかしその中には、オルコット家の名は入っていなかったなぜなら、

 「旦那様すぐにでも避難されてください。ここは危険です!」
とレパルスがマクレーンに語りかけたが、マクレーンは、
「なあに心配ご無用だ。それにオルコット家の頭首が逃げ腰だと恰好が付かないし、何かあれば、君たちを信用しているよ」
と笑みを浮かべながら答えた。すると、レパルスは諦めた様に、ため息をつき、
「分かりました。ならセシリア様だけは避難されてください、マヤ頼みましたよ」
とセシリアの専属メイドであるマヤを呼んだが、セシリアが、
「嫌ですわ。私もオルコット家の一員です。お父様と一緒ですわ」
と頑なに拒否した。それを聞いたレパルスは、
「はあ、この親子は、本当に呆れるほど似た者同士なんですね。解りました。なら、セシリア様は、マヤと一緒に行動してください。では、行きましょう」
とマクレーンの手前を案内するかの様に歩いて行った。その後を、マクレーン、セシリア、マヤと続いた。

 しばらく歩くと、今は誰もいない海岸に着いた。そして、レパルス、マヤが前に並んで立った。

 「では行きますよ。マヤ」
「了~解。カーニバルだよ」
とレパルスは毅然とマヤは、楽しげに大声を上げた。

 すると、急に目の前の海面が盛り上がり、其処から突き出すように大中小の3隻の艦船が現れた。

 そう、それが『霧の艦隊』の一員である。V級駆逐艦『ヴァンパイア』、レナウン級巡洋戦艦『レパルス』、高雄型重巡洋艦『マヤ』の三隻であった。

 その中のヴァンパイアは、レパルスやマヤとは別行動をしていたが、レパルスが移動中に概念伝達による伝達が行われた為である。そして、近くの護岸にレパルスとマヤのそれぞれの艦体が接岸した、それを見た二人は、主人であるマクレーンとセシリアの手を取り、2隻の艦の中に招き入れた。それを護衛する様にヴァンパイアが忙しく周辺を動き回った。

  そして、二人の主人を乗せた。戦艦と重巡洋艦が先頭を行く駆逐艦に守られているように全速力で目標海域に突き進んでいた。

 「それで、私達は、何処に行くのでしょうか?」
と重巡洋艦『摩耶』の艦橋の内部の椅子に座っていたセシリアが呟くと隣りの椅子に座っていたマヤが、
「この近くで私達と同じタナトリウム反応があったみたいだよ。多分そこに向かっていると思うよ」
とマヤがのんびりとした声で答えた。そして、近くに備え付けられていたピアノを弾き始めた。

 暫くすると、目標海域の近くに多数の天に上る噴射炎が見え、その語、暫くして樹上で多数の爆発音が聞こえた。

 『此方、霧の艦隊所属『レパルス』貴軍の援護に来た』
とレパルスが交信を始めた。

 その交信をしたレパルスの艦橋内では、レパルスがマクレーンに聞いた。
「旦那様、それで私達はどう行動致しましょうか?」
すると、マクレーンが、
「今、何発撃ち落としに失敗したか、解かるかな?それと、今どの位の数がハワイに向かっているのかも情報として欲しいな」
と聞くと、レパルスが答えた。
「はい旦那様。現在10発中9発が先程の友軍のミサイル攻撃で撃破しました。また、現在、各国の衛星情報をハッキングした結果、ハワイに向かって、第二波状攻撃400発、第三波状攻撃500発がハワイに向かい飛翔中です」
「そうか、ありがとう。では、少しでも援護射撃をしよう。連絡やってくれるかい?」
「分かりました。では、先に『ヴァンパイア』と『マヤ』に連絡しましょう」

 「レパルスさんから連絡来たよ。あの艦を援護して欲しいみたいだよ。ただ、セシリア様は少しでも離れてくださいとの通信ですよ」
「では、マヤさん此方から連絡で『その答えには反対です。私たちも援護します』と通信を返してください。お願いね、マヤ」
といった後通信を送ったマヤは、
「さあ、カーニバルの開幕だよ!システムオールグリーン全兵装展開!」
と、はしゃぎ出した。

 そして、『レパルス』、『マヤ』、『ヴァンパイア』に搭載されている各種兵装が展開し始め、迎撃態勢を整えていった。

  そして、その援護を受けた『白鯨』の内部では,慌しく次弾を装填し,この艦内部のCIC(戦闘指揮所(英語: Combat Information Center, CIC))内で捕捉された第二派大陸弾頭弾約400発の迎撃の為にSM―5を上部甲板VLSに再装填を開始した。

 「ハクさん、今の状況は,如何なっているんでしょうか」
と艦長が『白鯨』のメンタルモデルである少女『ハクゲイ』に聞いた。『ハクさん』とは、『ハクゲイ』の艦内の愛称である。そして、艦長が最新の情報を訪ねた為にハクさんが、
「了解。現時点の最新情報を開示します。現在、我が艦周辺に『霧の艦隊』所属『レパルス』『ヴァンパイア』『マヤ』のコードを確認。また、『霧の艦隊』の後方に我が国の海自艦隊及びアジア各国、欧州、オセアニア、南米、南アフリカ、中東、ロシア、アメリカ各国軍のフリゲート、駆逐艦、巡洋艦(イージスシステム導入艦含む)を中心で構成された艦船部隊を確認、ただし、空母、補給艦、揚陸艦、輸送艦などの補助艦船は、少数の護衛を含みながら、ハワイ諸島から離れつつあります。また、揚陸された各国陸上部隊は、速やかに避難を完了された模様です。また、ハワイ諸島の囲む様に、『霧の艦隊』である『イ401』『タカオ』『キリシマ』『ヒエイ』などを確認しましたが、詳細は、不明です」
と艦長にハクゲイが伝えた。
すると艦長が、
「ありがとう,ハクさん。そうか、そんなにもたくさんの人達がハワイ諸島の防衛に参加してくれるのか。感慨深いなあ。では、絶対にハワイ諸島を死守するとするか!ハクさん例の『あれ』の使用許可を出す!用意してくれ」
「しかしながら。『あれ』は使用許可が総理大臣の命令が無ければ」
「なあに、心配するな。私が独断で使用した事にすれば良い、ハクさんには、迷惑を掛けないよ」
とハクゲイが心配するのをよそに艦長が言った。
「分かりました。では、準備を開始します」

 そして、第二派大陸弾頭弾の先頭が白鯨及びそのすぐ後方にある3隻が捉えた。

 『白鯨』の艦長と『レパルス』のマクレーンが叫んだ。

 「「迎撃戦闘開始!撃ち方始めええ(カメンス、ファイア)」」
と同時に命令を下した。

 すると、『白鯨』上部に設置されたVLSから連続してミサイルを射出し、『白鯨』を覆い隠すほどの噴煙を多数立ち昇らせた。また、すぐ後方の三隻からも次々と対空掃射レーザー搭載型ミサイル、多弾頭内蔵型対空ミサイルなどを連続発射し、大小各種搭載砲塔から対空拡散掃討砲弾及びレーザーが連続発射された。

 「目標到達まで後5,4,3,2,1、今」
と白鯨の火器管制員が緊迫した声を発した。

 そして、

 辺り一面の空が赤く染めあがった。

 そして、空が赤く照らされている瞬間、同時進行で、弾頭弾迎撃率を速やかに算出を出した『白鯨』内のCICでは、喧騒に包まれていった。

 「現在までに迎撃された数315発も最新状況を更新中。但し、残り弾道弾直もハワイに向けて進行中」
「第二次防衛線、各国フリゲート、駆逐艦、巡洋艦の国際連合迎撃部隊から多数の噴進炎確認、弾頭弾に向けて迎撃弾頭が向かいます。インターセプトまで、5,4,3,2,1、マーク」

 そして、空中に多数の炸裂光がハワイ諸島の青く澄んだ空と白い雲の合間から見えた。

 「第二次防衛ライン、撃破数45。なおも残存弾頭弾50発!ハワイ諸島まで残り5キロを切りました。最終防衛線射線内に弾頭弾入ります」
と緊迫した声が『白鯨』のCIC内に響いた。その時、艦長が
「後は、お願いします。『イ401』艦長 千早群像さん 」
と、誰も聞こえ無いようにか細い声で呟いた。

 そして、その本人は、
「全員、戦闘配置!イオナ状況はどうなっている」
「群像、目標弾頭なおも進行中。このままだと5分くらいでハワイに到達してしまう」
「どうする、群像?うちの艦じゃ、対空兵装ないぞ」
「他の『タカオ』や『キリシマ』、『ハルナ』とかは、対空兵装も充実していますが、我が艦は対艦兵装しかありませんから、打つ手はあまりありませんよ」
と群像の答えを返すようにイオナ、橿原杏平、織部僧が答えたが、群像は、あまり焦りもせずに作戦を説明した。

 「イオナ、超重力砲発射用意。杏平、侵蝕魚雷の信管を任意で自爆できる様にしてくれ。いおり、機関最大出力で浮上してくれ」
「艦長、まさか、この艦を飛ばす気ですか?」
と僧が疑問交じりに聞いた。すると、群像は、
「ああ、全員、対ショック態勢用意!海面に突き出るぞ」
と答えた。

 そして、『イ401』は急仰角いっぱいで急速浮上し、艦首を水面から突き出した。
 「いまだ、後部急速注水開始、仰角保て、イオナ、『超重力砲』スタンバイ!」
「了解」
とシートに身体を埋めながら、群像が声を出し、それを聞いたイオナも頷きながら、答えた。今のイオナは、群像の隣の専用席に身体を6点固定されていた。

 急角度のまま『イ401』の艦首から前部分が展開されていき、そこから巨大な砲身に変貌していき、強力なエネルギーを収束していった。

 そして、

「『超重力砲』発射!」
と群像が叫んだ!

 『イ401』の超重力砲から掃射された蒼い一線光の巨大な噴流は、瞬く間にハワイに向かっていた弾道弾の残弾群に真っ直ぐに向かい、その残弾群を飲み込み、その中の弾頭弾が次々と重力波の影響で自己崩壊し、その連鎖爆発が起きたが次の瞬間には、原子レベルの崩壊を誘発し蒸発していった。

 「残存弾道弾すべて消滅。なんですかあれ」
「多分、『重力砲』と云う奴だろう。本艦にもあれを応用した物が搭載されている」
と『白鯨』内のCICでは、『超重力砲』の威力に愕然とする者とそれを応用した物を搭載したこの『白鯨』に少しの動揺を示す艦長が言葉を交わした。

 だが、その言葉を交わしてる間にも第3波500発がハワイに向けて飛翔中であった。

 「艦長、レーダーに多数の後熱源飛翔体約500確認。真っ直ぐにハワイに向けて飛翔中」
「500!そんなにか」
「はい。こちらのレーダーにはそう出ています」
「『ハクさん』例の『あれ』を使用します。この際機密なんて物はありませんので」
「了解。『D・H砲』全プロテクトコード解禁。発射用意!」
とハクゲイが声をあげた。

[了解。全乗員に通告。本艦は、最終兵器を使用する。乗員は速やかに安全区域に避難。繰り返す、乗員は速やかに安全区域に避難せよ]

と艦内にアナウンスと警告灯が響き、乗員は速やかに安全区域に向けて駆け足で集まった。
 それと同時隔壁が次々と降ろされロックされていった。

 それは、『白鯨』上甲板にも変化を促していった。それは、広大な甲板の中央部が前後左右に重ね合わせる様に展開していった。そしてその展開された広大な空間からエレベータ方式に『巨大な箱の様な物』がせり上がってきた。
そして、その『巨大な箱の様な物』が左右に割けていき、その中から巨大な砲塔が現れ、その砲塔から短砲身がせり出てきて、砲塔と砲身の接続用の固定装置により完全に固定され、砲身が、目標である弾道弾500発の予定進行方向に砲身をあげた。

 大特級機密兵器 仮称『D・H砲』
 防衛省と科学技術省が合同開発された兵器。プラズマ・エネルギーの原理を応用して開発した、マイクロブラックホール生成機。物理学者・吉沢佳乃が設計した。超マイクロ加速器で人工ブラックホールを生成し、目標物の完全消滅をはかる。起動からブラックホール弾発射まで5分を要し、使用後1時間の冷却を要するため連続使用はできない。ただし、一撃の威力は半端でなく、地表では半径5キロ四方を完全に吸収、消滅する。また、『霧の艦隊』のおかげで最低20年開発が遅れる。とされるが、『霧の艦隊』の技術供与のおかげで、わずか1年半で開発と配備が進んだ。但し、コスト面と小型化には未だに問題を残す。

  「『D・H砲』準備完了。現在射撃用高性能レーダーと連動開始。残り後150秒後に射撃可能です」
「了解した」
とCIC内でレーダー管制員と火器管制員のやり取りが行われている一方で、『白鯨』の一番付近にいたレパルス以下3隻では、
「すごいな、何処の所属だろうか?」
と『レパルス』の艦橋内の艦長席に座っているマクレーンが隣に立っていたレパルスに聞くと、
「はい。日本国籍の軍艦の1隻ですが、最新版のジェーン海軍年鑑((Jane's Fighting Ships)は、英国の出版社Jane's Information Groupによって出版されている年鑑。世界各国の海軍に所属する戦闘艦、支援艦に関する規格、武装、シルエット、写真などが収録される。)に記録されていませんが、どうしますか。日本政府機関にハッキングをしますか?」
「いや、やめておこう。それと、この映像は、記録しない方針で頼むよ。日本とは、良い関係のままで居たいからね」
と笑顔でレパルスに話しかけていると、ふと思ったのかマクレーンがレパルスに再度聞いてみた。
「そうだ、先程の高エネルギー反応。あれって『超重力砲』の光線波だよね」
「はい。ご主人様あの『超重力砲』のエネルギー波長は、『ヒュウガ』の物ですが、風の噂だと、どうもそのメンタルコア人格がどうも『イ401』のメンタルコア人格に熱をあげているそうで、『イ401』の装備を一部取り外し、『ヒュウガ』の『超重力砲』を装備したようですが、詳しい事は今一つ情報不足です。申し訳ありません」
とレパルスが、座っているマクレーンの方を向いて、頭を下げた。すると、マクレーンが、笑みを浮かべながら、
「いや良いよ。そこまで詳しく知る必要はなかったから、そうか、あの中にいる艦長がうらやましいよ。咄嗟の判断力や突飛な作戦、まさかの武装強化案などを思いつく頭脳。只者じゃないな。よし、あの中の艦長を見習おう。こちらにも『超重力砲』は装備されているのかな?」
とレパルスに聞くと、
「はい、ご主人様。私の艦の中にも『超重力砲』は装備しています。ただ、私の『超重力砲』は、『イ401』とは形式が異なっており、『直射』ではなく『拡散』タイプです。それと、『マヤ』にも装備していますが、如何しますか?」
「いや、『レパルス』だけで構わないよ。そうか、拡散タイプか、其れなら有効な手があるぞ。それと『マヤ』と『ヴァンパイア』には、本艦より少し距離を開けてくれと頼んでみてくれ。いつもありがとう」
「いえ、そんな...」
とレパルスは、顔を埋めていたが、その顔は少し赤かった。それを何と無く感じ取った、『ヴァンパイア』のヴァンは、『全くの奥手ですね。はあ』とやれやれとため息をついていた。

 「では、準備を始めますね。少し体が傾きますが我慢してください」
「ああ,構わないよ。無理はしない」
と言った後、『レパルス』の艦尾からゆっくりと後部が沈み始めた。

「艦尾から後部第三主砲部まで強制注水開始。艦首拡散超重量砲スタンバイ。放射角及び範囲角算出」
と瞬く間に超重力砲の発射準備を整えた。

  そして、それぞれの準備が終了したその時、『白鯨』の対空レーダーが多数の飛翔体を捉えた。

 「レーダーに感。11時の方向に高熱原体多数補足。全艦内第一種戦闘配置。『DH砲』発射カウントダウン開始」
と瞬く間に艦内の武器管制員などが素早く準備を終わらせた。そして、CIC内に機械的な音声が流れた。
「発射まで残り後150秒」

 一方、後方に居た『霧の艦隊』の3隻の内2(ヴァンパイアとマヤ)から各種の長距離対空迎撃ミサイルを発射され、目標に向かい噴進炎を描きながら、向かって行った。
 そして、マヤの艦橋内では、セシリアとマヤが迎撃ミサイルを艦橋内のモニターを見ながら呟いた。
「一体幾つ位落とせるのでしょうか。出来ればお父様に少しでも手助けが出来ればいいのですが」
「大丈夫だよ。お嬢様、向こうにいるお姉さまは、随分と思慮深い人だから。(まあ、思慮深過ぎるのが玉に傷だけどねえ)」
と、のんびりとした口調でセシリアに返した。
 
 そして、何度目かの空が光り輝き、何度かの爆発音が聞こえ始めた。

「現在まで、およそ150発は迎撃したよ。でもまだ、結構残ったねえ。如何しようか、お嬢様?」
とマヤが少し心配そうに聞いたが、セシリアは、
「仕方ありませんわ。こうなった以上、私達に出来ることは、お父様とレパルスさん、そして、あの艦に託すしかありませんわ。祈りましょう、如何か神のご加護がありますようにと」
とセシリアは、艦橋内の艦長席に身を委ねながら、厳かに祈り始めた。

 そして、次に動き出した『レパルス』であった。

「総員、戦闘配置!行くぞ。と言っても二人だけだがな」
とマクレーンは、気合を入れる様に、髪を掻き揚げ、威勢よく言った。それを見たレパルスは、
「ご主人様。いえ、ここでは艦長と言った方が良いですね。これを被って見て下さい」
と言って手に持っていたイギリス海軍の正式軍帽をマクレーンに渡した。その軍帽を手に取りマクレーンは頭部に被せた。
「如何かな?に合うかな」
「ええ、とても似合ってますよ」
「そうか、ありがとう。では、始めようとするか。私たちの戦争を!」
と高らかに宣言した。すると、
「それにしても、随分と無茶をするな。我が娘は」
「あの性格は、昔のご主人様にとても似ていますね」
と、二人は娘の今後を心配しながらも、此方の方に集中するように頭を切り替え、モニターに映る多数の飛翔体に目を向けた。

 そして、『レパルス』の中空用対空レーダーに多数の飛翔体を捉えた。

 「最終迎撃用意。『拡散超重力砲』エネルギーチャージ開始。『超重力砲』拡散幅算出開始!」
「了解」
とわずか1分の間ですべての攻撃準備を整えた。
「艦長に発射トリガーを譲渡します」
「了解。譲渡されました」
とレパルスから渡された発射トリガーをマクレーンが受け取り、その渡された銃型のトリガーを見たマクレーンは、その小さな重量に含まれる圧倒的な武器に戦慄しながらも
「さあ、この武器が人類の負の遺産から人類を救う事が出来着るように願う」
と言いながら、その『トリガー』を引きながら
「拡散超重力砲発射!!!!!!」

 そして、『レパルス』から発射された拡散超重力砲は、暫く直進した高エネルギー重力波は、向かってきた多数の弾頭弾を見つけると最初に設定した拡散幅を忠実に再現するように多数の超重力場に分裂した。それが、『霧の艦隊』の中でも一部しか装備されていない『超重力砲』の発展型の一部である『拡散型』である。

 「それで、『あの超重力砲』はなんだ?」
と『白鯨』のCIC内で艦長が聞くと、ハクが
「あの超重力砲の波長及び重力波は、『霧の欧州艦隊』の一艦である『レパルス』の兵装である『拡散重力砲』と呼ばれる兵器です」
「拡散重力砲?」 
「はい、通常の霧の重巡洋艦以上のクラスには、重力砲が装備されていますが、その重力砲には、幾つかの艦にはその重力砲の機構を応用したサブタイプが搭載されています。多分あの兵器は、超重力波動を線ではなく面での制圧を目的の兵器です」
「そうか。その重力砲と言うものは他にもサブタイプが存在すると言う事か」
「はい、現在の所、誘導式、超長距離狙撃式などが確認されています」
「なるほど、では、今の攻撃で撃破した数は?」
「はい、およそ300発の完全消滅を確認。ただ未だに200発が健在です。なお、我々の『DH砲』はいつでも発射可能です」
「了解した。武器管制員!『DH砲』照準補正が直ちに発射せよ」
「了解!直ちに補正に掛かります。管制員現在までの最新情報を送ってくれ。頼むぞ」
「分かりました。速やかに再計算後補正します。 ...補正終わりました」
「早かったな。まあいい速やかに発射せよ」
「「「了解」」」

 そして、照準補正された情報は速やかに『白鯨』の上甲板にせり上がった『DH砲』に送られ、砲塔がスムーズに旋回後固定され、砲身が上方にせり上がり固定された。

「ターゲット視認。最終安全装置解除。発射タイミングを艦長に譲渡します。お願いします」
その時、艦長席の肘掛の中からトリガーがせり出した。
「了解した。トリガーを引き受けた。艦長用最終暗号入力完了」
と艦長席の専用モニターに暗号を入力後、専用モニターの横から2つの鍵穴とカード式の取り入れ口が出てきた。
 
 そのことを確認した艦長は、服装の裏ポケットからプラスチックに包まれた薄い板を取り出し、躊躇なくそれを二つに割り、中からカードを取り出しそれをカード用の取り入れ口にいれた後、首に掛けていたチェーンを引っ張り出し、其れに取付けていた複製不可能の特殊キーを手に持ち、
「それでは、ハクさんお願いします」
「分かりました。それでは」
と言った後、手の平を開き、其処から淡い光を放ち、キーを精製した。
 そして、艦長とハクさんが鍵穴の前に並び立ち
「「3.2.1.今」」
と同時に鍵穴にキーを差し込んだ。

 そして、艦長席の肘掛から出て来てトリガーの固定ロックが解除され、其れを艦長がもち、数回引き金を引いた後、トリガー上部の赤ランプが、緑ランプになり
 「これが、この世界が良い方向に変わることを信じて」
と呟くように力強く引き金を引いた。

 その瞬間、『DH砲』の砲口部が光り出しマイクロプラズマエネルギーが砲口部最後尾の一点に収束し始め、それが球体状に変化し放出された。それは瞬く間に極超音速に加速し、目標地点に向かって行った。丁度その頃、目標地点に幾つかの弾道弾が通過がしてしまったが、まだ多数が残っていたが、そのど真ん中を超高速で打ち出された球状のエネルギーが飛翔し、着弾点誤差なくそのエネルギーを解放した。

 そして、そのエネルギーを一気に解放した瞬間、空間湾曲が発生し、超絶した重力がその湾曲空間に発生し、ブラックホールを形成し、その超重力に吸い込まれる様に今まで直線に向かって行った弾道弾が軌道を強制的に変えられてブラックホールの中に消えていった。また、一部の弾道弾同士が重力波の影響で衝突し爆発したが、そのエネルギーは瞬く間にブラックホールに飲み込まれた。

 
 その現象は、約1分半の現象だったが、現時点でもう2分以上その現象が続いており、『白鯨』艦内では、艦長が次の指示を出した。
「やはりこういう事態に成ってしまったか。仕方がない『プランθ(シータ)』に移行する。甲板VLS展開!弾種対空間用特殊弾頭用意!準備出来次第発射!」
「了解」

『プランθ』とは
『DH砲』後の空間影響が残った場合に備えたプランであり、緊急性の高い場合のみプランの開示が許可される。

 そして、その特殊弾頭を取り付けたミサイルが4発同時に『白鯨』の上部甲板VLSから白煙を上げ飛翔した。そして其のまま『DH砲』の効果が残っているブラックホールの周囲に向かい、それぞれの方向に向かった弾頭がほぼ同時に信管を炸裂させ、その効果を最大限に現出させた。

 その効果とは、現時点では、我々の科学力一つでは到底到達できず、『霧の艦隊』出現によって、その弾頭とそれに関連する『DH砲』が共同開発によりセットで完成したが、その代わりに莫大な開発費が必要の為限定生産かつ極秘裏に日本国が非常時且つ緊急時のみの使用に限り装備していった。

 その名は、『特39式対空間弾 リージョン・リストリクター弾頭(通称『D・R弾』)』

 「『D・R弾』効果確認。現在、急速強制空間安定中。修復完了まで残り30秒。現在まで空間の突発的異常は検知されていません」
「了解した。なお、空間修復後、急速潜行に移行し、対ソナー・レーダー妨害爆雷後部発射管から散布と同時にアクティブデコイも同時射出後、ステルス航行を以て、この海域から離脱する」


 今迄の一連の光景を少し離れた海域で見ていた『霧の艦隊』の三艦(レパルス・ヴァンパイア・マヤ)の内の旗艦であるレパルスの艦橋内の大型モニターで見ていたマクレーンが口を開いた。
 「恐ろしいな。流石に肝が冷えたぞ。まさかあれほどの高威力の戦略兵器を作り出すとわ。いやはやメイドインジャパン侮りがたし、か。土台技術が少しでもあればそれを発展拡大応用が出来る人材技術が日本は豊富だな。やはり先の大戦で活躍した事はあるな」
と呟いていると、隣にいたレパルスが、
 「如何しますか?このまま追跡しますかご主人様」
と聞いてみると、マクレーンは、
 「いやこの辺りで良しで良いだろう。余り追撃していると意外と強烈で痛いしっぺ返しが起きると思うし、それに多分、あちらさんも馬鹿じゃないだろう」
と言った時レパルスが、
「アクティブデコイ反応感知。追尾用ソナーが妨害されました」
「了解した。なら、戻るか。後ろの二艦にも概念伝達で『速やかに回頭せよ。最大船速を以て、ハワイオアフ島に帰還する』と」

 その通信が終わった後、速やかに三艦がぐるりと回頭し、ハワイに向けて進行方向を変えた。


 海上の騒がしさの一方、その頃、その海域の海底辺では、一艦と一人が其処に居た。



 

  
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