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美しき異形達

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第三十二話 伊勢神宮その一

                  美しき異形達
               第三十二話  伊勢神宮
 薊達は和歌山の白浜から伊勢に着いた、行くのは伊勢神宮だった。
 そして社の池の鯉達を見てだ、薊は思わず目を丸くして言った。
「どの鯉もでかいな」
「そうね、どの鯉もね」
 裕香もだった。その池、川と言ってもいい位のそこにいる鯉達を見て言うのだった。
「大きいわね」
「しかも奇麗だな」
「錦鯉ばかりだな」
「そうね、この鯉を買おうって思ったら」
「鯉って高いのは高いよな」
「数百万する鯉もいるらしいわ」
 錦鯉はそこまで値が張る、鯉も芸術品となるのが日本だ。
「その鯉達かしら」
「何でそんなのがいるんだよ」
 今自分達の目の前にとだ、薊は怪訝な顔で言った。
「伊勢に」
「寄付されたものじゃないの?」
「お金持ちの人からか」
「何しろ伊勢神宮だから」
 日本で第一の神社だ、だからだというのだ。
「これ位の寄付はね」
「普通か」
「寄付をするのもお金持ちの義務だから」
 それが間違いないからだというのだ。
「それで鯉もなのよ」
「こんなにいい鯉ばかりなんだな」
「大きくて奇麗でね」
「一匹一匹がな」 
 その大きさも色彩も見事な鯉達を見続けてだ、薊は言った。
「凄いけれどな」
「うん、お金持ちもね」
「こうした寄付しないと駄目なんだな」
「お金持ってたらやっぱりね」
「その分何かしないと駄目か」
「こうしたところに寄付したりとかね」
 他にも慈善事業もある、当然こうした行いは誰からも強制はされない。だがそれでもとだ、裕香は話すのだった。
「しないと色々言われるから」
「漫画とかでよくある強欲爺みたいにはいかないんだな」
「そういう人信用出来る?」
「いや、無理だよ」
 薊は裕香に即座に返した、その言葉を。
「金の亡者なんてな」
「そうでしょ、まあ自分から進んでするに越したことはないけれど」
「半分義務なんだな」
「そうなの、鯉を寄進したりすることも」
「こんなすげえ鯉もか」
「何か育ってもいるみたいだけれどね」
 寄進された鯉同士で子供が出来てだ、そうしてというのだ。
「そうしたことも必要なのよ」
「我が家も寄付をしています」
 桜が言って来た、今の彼女は着物ではなくラフな夏服だ。見れば七人共今はズボンか半ズボンである。
「八条神社等に」
「桜ちゃんのところもか」
「お金があれば何かをする」
「それは義務か」
「そう言ってもいいです」
「うちもなのよね」
 菊も言って来た、ここで。
「寄付してるわよ、お寺に」
「あそこにか」
「そうなの、ちゃんとね」
「何か皆色々してるんだな」
「寄付自体がいいことだからね」
 菊は笑って薊に言った。
「ちゃんとしてるわよ」
「しない訳にはいかないか」
「そういうことよ。災害とか起こってもね」
 その時もだというのだ。
「ちゃんとね」
「しないといけないんだな」
「そういうこと、いいことはしないとね」
「神社に寄進するのもいいことなんだな」
「勿論よ」 
 菊も鯉達を見つつ話す、そして。 
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