問題児たちと1人の剣士が来るそうですよ?
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箱庭へようこそ!
「あ、ありえないのですよ。まさか話を聞いてもらうのに小1時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこういう状況を言うに違いないのですよ…」
「俺たちをあんな変な招待をしたせいだ」
「いいからさっさと話せ」
黒ウサギは涙を浮かべながら落ち着いたとこで話をしてきた。
「ようこそ!みなさん!“箱庭の世界"へ!」
「箱庭?」
「YES!我々は4人様方にギフトゲームへの参加資格をプレゼントさせていただこうかと思いまして、この世界へとご招待いたしました!すでにお気づきませんかもしれませんが4人方はみな、普通の人間ではありません」
(え?俺すげ〜普通の人間だと思ってたけど?)
「みなさんの持つ特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から星から与えられたギフト。つまり、恩恵なのでございますよ。ギフトゲームとはその恩恵を駆使してあるいは賭けて競い合うゲームのこと。この箱庭世界はそのためのステージとして作られたものなのですよ!」
そこで飛鳥が手を挙げ質問する。
「自分のギフトを賭けなければいけないの?」
「そうとは限りません。ゲームのチップは様々。ギフト、金品、土地、利権、名誉、人間。賭けるチップの価値が高ければ高いほど得られる賞品の価値も高くなるというものです。ですが、当然賞品を手に入れるためには『主催者』の提示する条件をクリアしゲームに勝利しなければいけません。負ければそのギフトを失うということもあしからず」
そこで俺は黒うさぎに質問しようとしたが、飛鳥以外の3人が手を挙げた。
「先にどうぞ」
「俺も後でいいぜ」
「じゃあ私から」
「はい、どうぞ」
まず耀から質問を始めた。
「えーと、主催者って?」
「ギフトゲームを主催し管理する人のことですね。賞品を用意さえできれば誰でもなれます。それこそ修羅神仏から商店街のご主人までゲームのレベルも凶悪かつ難解かつ命がけのものから福引き的なものまで、多種多様に揃っているのでございますよ」
「つまり食材など手に入れるためにはそういうゲームに勝って手に入れることができないというわけか」
「YES!食材などはゲームをしなくても手に入れることもありますがほとんどがゲームで決まりますね」
「なるほどな。要するにここはゲームこそが法律そのものみたいなものか」
「少し違いますがほとんどが正解ですね。強盗や窃盗などをしたら捕まりますし、ギフトを用いて犯罪を行うなんて持っての他です!」
「中々野蛮ね」
次に俺が質問をした。
「じゃあ俺からの質問は2つだ」
「まず1つ目はギフトのことだ。十六夜たちにはあるのかもしれねぇ〜が俺にはあるかわからねぇ〜んだけど?」
「ですが、ここに来た以上なんらかのギフトがあるとは思いますのですが…」
「まぁ心当たりがあるってのはあるが……」
はっきり言ってそこまでの確信があるわけではなかった。
考えられるのは剣術の力だけだが一緒にあったはずの剣自体が見当たらなかった。多分元の世界に置いて来たんだろうけど。
「まぁいい。その内わかるだろう。で、2つ目だが」
「俺たちを招待したのはなぜだ?それに俺らはこれからどうしたらいいんだ?」
「それはもちろん皆様方に面白おかしく楽しんでいただきたいと思いまして!ご招待させていただきました!それとこれからについてですが、あなたたちをこのまま野放しにしておくのも危険ですので、我々のコミュニティに属していただきます。コミュニティとはこの箱庭で生活する集団のこと。必ず何処かに属さないと生きていくこともできないとも言っても過言ではありません!」
「無理だと言ったら?」
「属していただきます!!」
「そんなに強く言わなくてもいいだろ」
俺はこの時少し違和感を感じた。でも、ここで聞くのはやめようと考えた。
「だいたいわかった。じゃあ後は十六夜だけだな」
「あぁ。じゃあ俺からの質問はただ1つだ」
「どんな質問ですか?ゲームですか?ルールですか?」
「そんなのはどうでもいいぜ黒うさぎ。いくらルールを聞いたところで何か変わるわけじゃねぇ〜からな。俺が聞きたいのはただ1つ」
4人は黙って十六夜を見ていた。十六夜は巨大な天幕によって覆われた都市を目を向け、こう言った。
「この世界は……面白いか?」
俺らも無言で答えを待った。確か手紙には『全てを捨てて箱庭に来たれ』と書いてあった。俺はそこまでして来たくはなかったが、面白いことが起こるのならそれでいいと思っていた。
そして、黒ウサギは少し間を開けて言った。
「YES!ギフトゲームは人を超えた者たちが参加できる神魔の遊戯、箱庭の世界は外界より格段に面白いと黒うさぎは保証いたします!♪」
こうして俺たちは黒ウサギのコミュニティに入り、この世界で生活していくことを決めた。
所変わって箱庭の外壁と内壁につながる階段のとこでジン・ラッセルという少年が黒うさぎたちの帰りを待っていた。新たな同志が仲間になってくれるか不安になってもいたが。その時、聞き覚えのある声がした。
「ジン坊ちゃ〜ん!新しい方たちを連れて来ましたよー!」
「おかえり黒うさぎ。そちらの3人様が?」
「YES!こちらの御3人様がって……あれ!?もう一人は?」
「十六夜君なら『ちょっと世界の果てまで見て来るぜ!』とか言ってかけ出して行ったわよ」
当然黒ウサギは怒って、
「なんで止めてくれなかったんですか!!」
「『止めてくれるなよ』と言われたもの」
「どうして黒うさぎに教えてくれなかったのですか!!」
「『黒ウサギには言うなよ』って言われたから」
「嘘です、絶対嘘です!!実は面倒くさかっただけでしょ御2人さん!!」
「「うん」」
あっさりと言われ黒うさぎは脱力した。
「黒うさぎ1ついいこと教えてやる」
そこで俺は黒ウサギに言った。
「なんでございますか……?」
「男の探究心は止められないものだ」
追い打ちをかけるように言った俺は黒うさぎは肩を落とすしかなかった。
「黒うさぎ、世界の果てには!」
「世界の果てには何があるんだ?」
「世界の果てにはギフトゲームのために野放しにされてる幻獣がいるんです!」
「強いのか?」
「はい……とても人間では太刀打ちできないかと……」
「あら?彼はゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?…斬新?」
「傑作だな!!」
「笑ってる場合ですか!」
「わかってます、ジン坊ちゃん。ジン坊ちゃん先に御3方たちのご案内をお願いします。黒うさぎは問題児様を捕まえて参りますので!!」
そういうと黒うさぎの髪が青からピンクに変わった。まるで怒りが爆発したかのように。
「この箱庭の貴族とうたわれるこの黒うさぎをバカにしたこと、骨の髄まで後悔させてやるのですよ!!」
そうして黒うさぎはものすごいスピードで十六夜が向かったとされる世界の果てに飛んでいった。
「すげ〜スピードだな」
「箱庭のうさぎは随分速く跳べるのね」
「うさぎたちは箱庭の創始者の眷族ですから。さぁ御3人さんこちらへどうぞ。箱庭の中へとご案内します」
箱庭の中に入るとどこにでもある街があった。でも元の世界と少し違う雰囲気があると感じた。
「ここが箱庭?」
「やっぱ異世界って感じだな」
「外から天幕の中に入ったはずなのに太陽が見えてる」
「箱庭を覆う天幕は内側に入ると不可視になるんですよ」
「天幕が見えないってことか?」
「えぇ。そもそもあの巨体な天幕は太陽の光を直接受けられない種族のために設置されていますから」
「てことはあの種族もいるってことか?」
「まさか、この都市には吸血鬼が住んでるとも言うの?」
「え?いますけど」
「そう……」
普通に答えられたので飛鳥は何も言えなかった。
「この箱庭には様々な種族が住んでいます。それこそ神仏、悪魔、精霊、獣人、人間。もっともこの東角の付近は農耕地帯が多いので住人たちの気性は穏やかですけど」
「まだ召喚されたばっかりで落ち着かないでしょう。詳しい説明は軽く食事をとりながらでいかがですか?」
「えぇ。お願いするわ」
「じゃああの店でいいんじゃねぇ〜か?」
すぐ近くにカフェラテラスがあったのでそこで食事をすることにした。誰かが3人を狙ってるとも知らずに……。
一方その頃、黒ウサギは十六夜を連れ戻すべく猛スピードで世界の果てに向かっていた。
(あぁん、もう。一体どこまで行っちゃったんですか!?確かに特別な力を持ってるとしても人間がゲームに参加させられていたら……)
その時大きな爆音が聞こえた。水柱が盛大に上がっていた。まさか!と思い黒うさぎはその方向へ跳んだ。
十六夜が振り向くと、そこに髪の色が変わった黒うさぎがいた。
「あれ?お前黒ウサギか?どうしたんだ、その髪の色?」
そんなことは今は関係ないという顔で
「もう!一体どこまで来てるんですか!?」
「俺の質問は無視かよ。まぁ世界の果てまで来てるんですよっと。ってまぁそんな怒るなよ」
「十六夜さんが神仏にギフトゲームを挑んだと思ってヒヤヒヤしてたんですよ!さぁ、ご無事でしたら早く帰え…」
「挑んだぞ」
へ?と黒うさぎは何を言ったのかわからなかった。いや信じられないと思った。
「神仏にギフトゲーム」
そういうとゴゴゴッという音を立てながら水の中から龍が出てきた。
「まだ、まだ試練は終わってないぞ!小僧ー!!」
「水神!!ってどうやったらこんなに怒らせられるんですか!?」
「何か偉そうに試練を選べとか言ってくれたからよー。俺を試せるのか試させてもらったのさ」
「つけあがるな!!人間。我がこの程度のことで倒されるか!!」
すると、水神は竜巻を起こし始めた。
「十六夜さん!!下がって!!」
「何を言ってやがる!下がるのはてめぇ〜だろうが黒うさぎ!」
ふとある女の言葉がよぎる。
「これは俺が売って奴が買った喧嘩だ!!」
十六夜は余裕の表情でいた。いや楽しんでいるようだった。
「心意気は買ってやる。それに免じこの一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる」
「寝言は寝て言え、決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ!!」
「その戯言が貴様の最後だ!!」
水神は巨体な竜巻を3つを作り出し、合わさって1つのものになった。それは普通に喰らうとタダてはすまないだろう。しかし十六夜には無意味だった。
「ハンッ!しゃらくせぇ〜!!」
ただ拳で竜巻を殴っただけなのに打ち消すような感じで竜巻は打ち砕けた。
「ウソ!!」
「バカな!!」
「ま、なかなかだったぜ。お前!」
十六夜は水神の頭まで軽くジャンプして頭に蹴りを一発ぶち込み、水神はあっけなくそのまま倒れた。
「人間が神格を倒した。そんなデタラメが」
「くそっ。今日はよく濡れる日だぜ」
(いえ!だからこそ!この力があれば!)
黒ウサギは驚いていたがある確信を得た。
「見てください!こんなに大きな水樹の苗をもらいましたよー!これがあればもう他所のコミュニティから水を買う必要もなくなります!みんな大助かりです!」
ゲームに勝った賞品を黒ウサギはキラキラと眺めていた。
「そうかい、そうかい。それは良かったな。それとやっぱりそうなんだな」
「へ?」
「黒ウサギ、お前俺たちに大事な事を伝えてないだろ」
「ウッ………」
「答えろよ。もうそろそろ教えてくれてもいいんじゃねぇ〜か?」
すると、黒うさぎの髪が青色に変わった。
「図星のようだな。さぁ教えてくれよ、どうして俺たちを呼び出す必要があったんだ?」
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