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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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過去に関する嘘


嘘には二種類ある。過去に関する事実上の嘘と、未来に関する権利上の嘘である。
—ルソー—

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過去に関する嘘






◆◇◆コン◆◇◆






久しぶりの国外任務


しかもAランク・・・下忍が受ける任務ではない

でもこれシナイちゃん宛ての任務だから、実質俺達の任務とは別物みたいなんだよね

人手不足なのもあるけれど、本来俺達が受けていいものじゃない



以前は辛かった旅路も、道連れや体力が増した今では楽しいもの

楽々と船に乗り込み、雷の国の港へたどり着いた




・・・船酔いは相変わらずでした




船の中ではずっと寝たきりです

たまに起きて吐血するぐらいだった


船酔いってどうやったらなおるのか、誰か教えて




港町特有の塩気のある風、市場から漂う磯の香り


一年以上前に来たが、ここは変わっていないようだ


あたりをきょろきょろ見回し、記憶と違う場所がなくて安心する




通行の邪魔にならないよう端によった先生が荷物を固めた




イカリはずっとある方向を見つめている

・・・放っておいていいんじゃないか



「よし、それでは雲隠れから案内役の方が来るまで待機・・・
 そこに隠れている奴、誰だ?」



隠れるといってもお粗末なもの

俺達下忍ですら気配を感知出来てしまうのに、わざわざ聞かなくても良いんじゃないのか



「!ば、ばれては仕方ない!くらえぃ憎き木の葉・・・あっ」



ズベッ



建物の陰から飛び出してきた子供、勢いよくこちらに走り寄ってきたかと思ったら転んだ



・・・まて、なんで転んでこっちに吹っ飛んでくる!?



「ぐえっ」「いてっ」



・・・オレの腹部にクリティカルヒット・・・



まさかL字型に吹っ飛んでくるとは思わなかった、というよりありえない

というか腹がめっちゃくちゃ痛ぇ



2人して地べたをゴロゴロと転がり、痛みに悶絶する



「こ、コン大丈夫か?」



手を差し伸べ、起き上がらせてくれるイカリ

子供には何もしない



「何なんだこいつ・・・あ、雲の額当て」



そこらに落ちていた木の枝で転がる子供を突くシュロ


首に下げられた額当てを確認する



本当だ、雲隠れだ



こいつが案内役か?そう思って先生を見上げる



「?
 おかしいな案内役は上忍と聞いているが・・・?」




違うのか?じゃぁ何なんだこいつ・・・

憎き木の葉とか言っていたが・・・

転がっていた子供が起き上がった



「くぅぅぅ〜・・・ま、まさか奇襲が防がれるとはっ
 てっ、撤退だ、父の・・・忍頭の仇は必ずや取ってみせるからな、覚悟せい!」



捨て台詞を吐いて逃げていく

今のは奇襲じゃなかったし、防いでもいないぞと突っ込みたい


追いかけようかと悩んだが、シュロが親指を立てた


・・・あぁ蟲つけたのか、なら尾行しなくていいな




・・・仇・・・って、何?




「もし、木の葉のまじらず上忍ではありませんか?」


「貴方は、案内役の?」


「はい、上忍の二位ユギトと申します
 これより、会場までご案内いたします」


「よろしくお願いします
 この子たちは受け持ちの班で・・・自己紹介しなさい」

 

・・・二位、ユギトだ・・・

懐かしい、そういえばファーストキス、この人だったっけ・・・

意識すると妙に唇に触れてしまう

・・・もやっとする

唇をなぞるうちにシュロもイカリも自己紹介が終わっていた



「ねたみコンです、お世話になります
 ・・・あの、覚えてますか?」



恐る恐る声をかけてみれば、満面の笑みを浮かべて頷かれた



「茶屋で死にかけてた子だね?
 元気そうでよかった」



はい、その死にかけてた子です


そういうとユギトは噴き出した

歩き出しながらその後のことを問いだされる

先生は珍しいとでも言いたげにジロジロ眺めている



「なんだ、知り合いか」


「木の葉に行く前に会ったんです
 ・・・その節はご迷惑をおかけしました」


「気にせずとも良いさ
 ま、茶屋の主人が血相変えて呼びに来たときはびっくりしたけどね!」


懐かしい

オレ以上に青褪めていた茶屋の主人・・・本当にあれは迷惑をかけてしまった

あのあと血塗れのトイレや、ユギトに破壊されたドアはどうなったのだろう



「下忍になったんだね、病気は大丈夫なのかい?」


「まだ吐血が治まらないんですが、体力が増えてきて、なんとかやってます」


「そうかい、本当あの時は死にそうだったからね
 ・・・良かった」



指で唇を抑えられた


ぬがぁッこの人オレが気にしてること気づいて、からかってやがる・・・!


やめろ、ふにふに触るなやめれ



「コンが真っ赤だ」「珍しいよね」



助けろよー!



「そういえば・・・あぁ、コンで遊びながら聞いてください
 実は港で雲隠れの下忍の襲撃を受けたのです
 何やら忍頭の仇と言っていたのですが・・・」



唇を突いていた動きが止まる

いやもう離せよ



「・・・まじらず上忍、我々はそのようなことは・・・」


「あ、遊んでいてくださって結構です
 勿論雲隠れがそのような指示を出したとは思っておりません
 ですが、その下忍が忍頭のことを父と言っておりまして・・・
 
 出来れば教えていただきたいのです」



なぁシナイちゃん、止めろよ

遊ばせるなよ、止めろよ



「・・・!
 そうかあの子が・・・」


「あの子って、さっきの襲ってきた下忍のことですよね?」


顔を伏せつつゆっくり語り始めるユギト


「・・・あの子の名はショウイ
 雲と木の葉の同盟条約の大使として赴いた忍頭の、息子です」


日向誘拐未遂事件の、殺された奴か

・・・シュロの顔が厳しい

そういえば転生してからヒザシに惚れたことがあるんだったな・・・

親世代の子供時代の同期だから知ってるんだっけ・・・


親世代の子供時代の同期、ややこしい



「・・・確かに、我が里は忍頭を殺害した
 だが、その件は日向家の者の命と引き換えにすでに決着がついたはず」


死体を引き渡した交渉の場に私も出席しましたよ


先生は強く言いきった

先生の仕事歴ってどうなってるんだろう

ユギトは強く目をつぶり、ようやく声を絞り出した


「雲も、一枚岩ではございません・・・
 この度の暴挙、お詫び申し上げます」


「やはり、過激派ですか」


木の葉を発つ前に言われた過激派の存在



「長い間過激派は、忍頭が殺害されたことを理由に木の葉と開戦するよう要求していました
 雷影さまはもう決着がついたことと要求を跳ね除けてきました

 しかし、この度の大名子息の見合い、その席を潰すことで大名に木の葉への開戦を宣言させようとしている
 そう、過激派に潜り込ませた者からの情報です
 
 ・・・ただ、どのように見合いを潰すかまでは分かりません・・・」 


襲撃が予想されるってのは本当だったんだな



「どうしてそのショウイってやつはそこまで木の葉を恨むんです?
 忍頭の子なら、任務で恨み辛みもないよう育てられると思うんですけど」


シュロがぶすっと無愛想に呟く

まぁ確かに周囲の人がそこらへんの教育すると思うけど・・・



「過激派のリーダーである上忍・タイイという者が彼の後見人なのですが・・・
 ショウイに嘘の情報を与え教育していると報告がありました」



リーダータイイか

上忍、気を引き締めていかないと・・・



「嘘の情報ですか・・・?」



「はい、忍頭は和平のために赴いたが、木の葉の名家に絡まれた挙句殺された
 ・・・そういう風に教え込まれているようです」
  


意味が・・・わからん・・・

え?それ信じこんでるのあの子?

でも小さいころからそう教育されていれば、信じるしかないのか

誰か訂正しなかったのかな



「忍頭は、和平のために犠牲になったのだ・・・」

「犠牲ェ・・・」


キーッ

やめろお前らネタに走るな



「?
 ・・・あとショウイは日向誘拐未遂事件の顛末を知りません
 タイイはショウイをアカデミーに入学させず弟子として引き取っていますので・・・
 真実を教えるべき大人が周囲にいないのです」



ほとんど洗脳に近い、のか



このお見合い任務、問題が多そうだ





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アニナルで忍頭さん関連の話ってなにも出てなかった・・・よね?


 
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