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魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~

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StrikerS編
  83話:裸のつきあい…偶には悪くないか

 
前書き
 
 またも二週間以上かかってしまった。いやもう…どうしよう






 今回はなんと―――ポロリがあったりして。
  

 
 





 さて、男湯の暖簾を潜った訳だが……


「いつの間にか『2』になってたんだな」
「なったのは少し前だけどね。それでも四年も帰ってこなかった士君はびっくりするかな?」


 それぞれがロッカーを確保し、荷物を中へと放り込む。エリオもそれに倣うように荷物を入れる。
 そう言えばエリオは銭湯は初か。フェイトと風呂に入っていたみたいだが、それとはまた違うからな~、日本の銭湯のルールとかマナー、作法とかが。


「そう言えば、向こう(ミッド)に銭湯みたいなのないの?」
「ん? 言われてみるとそうだな。日本食っぽい定食屋とか、地球の料理の料理店とかはあるんだがな…」
「へぇ~」


 まぁ世界的にも滅多にない文化ではあるしな。日本でも各家に風呂があれば使う事はほとんどなくなる訳だしな。


「こういうところって多いんですか?」
「昔はそこそこあったらしいな。家を持つ全員が風呂を持っているとは限らないからな」
「今は風呂を持つ人達が増えたから、銭湯の数は年々減ってきているけどね」
「それマジか」
「まぁガソリンの高騰とかで営業側は四苦八苦してるんだ。仕方なかろう」


 あらら、そんな状況になっちゃいましたか。まぁ、確かにそれは仕方ないことだな。


「というか口を動かすより手を動かせ。俺は先に入ってるぞ」
「お~、了解」
「後で追いつくから~」


 そうこうしている間に、龍也は服を脱ぎ切り、さっさと中へ入っていってしまった。もう、せっかちなんだから。


「え、え~っと、脱ぎ終わったんですが…」
「俺もだ。じゃあタオル持って…ここの鍵を閉めて、鍵は手首に付けて―――」

「―――は~い、どうぞ」
「ありがとうございます」

「え…?」
「「ん…?」」


 その時聞こえてきたのは男湯では聞かない筈の女の人の声と、どこか聞きなれた幼い声。思わず入口の方へ視線を向けてみると―――


「エリオ君♪」
「「ぶぅぅぅーーー!!」」


 そこには、タオルを体に巻いただけのキャロの姿が。その光景に大人二人は思わず吹き出してしまう。


「きゃ、きゃ、キャロ!? あっ、ふ、ふ、服! 服っ!」
「うん、女性用更衣室の方で脱いできたよ。だからほら、タオルの―――」
「見せなくていいからぁぁ!!」


 エリオの全力の叫びを聞いてキャロは笑いながら「ゴメン」と言ってきた。


「ていうか、あの、こっち、男性用…!」
「女の子も十一歳以下なら男性用の方に入っていいんだって、係の人が教えてくれたから」


 キャロの言葉に、エリオは疑問の目線を俺にぶつけてきた。まぁ…確かにな……


「キャロの言っている事は間違いじゃないが…」
「そう、ですか…」


 俺がそう言うと、エリオはガックリと肩を落とした。その様子にキャロが悲しそうな目をした。
 すると後ろのにいたカオルから肩を叩かれ、口を俺の耳の近くに持ってきた。


「ねぇ、これってマズくない?(コソコソ)」
「あ、あぁ…ルールで許可されているとはいえ、あまりよろしくない状況だな。フェイト辺りがお前の事を狩りに来る可能性が…(コソコソ)」
「標的にされるの僕なの…!?(コソコソ)」
「流石にここを殺人現場にしたくはないから、策を講じようと思うのだが…(コソコソ)」
「僕の安全の為にもね。じゃあ一つだけ、いい案がある(コソコソ)」


 ほぅ、とカオルの言葉に感心する。どうやら奴には打開策があるようだ。
 思い立ったが吉日、すぐにカオルは二人の側に歩み寄る。


「エリオ君、ちょっといいかな?」
「え? あ、はい…」


 そしてエリオだけを連れて来て、さっきと同じようにコソコソ話し始めた。


「このお風呂にはね、子供用露天風呂ってものがあるんだ」
「? 子供用…?」
「そう。十二歳以上の子供、大人の使用ができない露天風呂のこと。最近は子供の利用が少なくなってるから、今行けばほとんど貸切状態で入れる筈だ。そうなれば、少しは気が楽でしょ?」
「え、えぇ…まぁ……」
「それにそこは女湯にも繋がってる。彼女の服は女性用更衣室にあるなら、そこからキャロを帰してやればいいよ」
「な、なるほど……」


 ここはいつの間にそんなモノを作っていたんだ? というかカオルがいつになく真剣だ、やっぱりやる時はやる男なんだな。


「最悪、君も一緒に女湯に入っちゃえば…」
「い、いや、それはちょっと…!」
「そんでこのカメラでちょちょっと中を撮影―――」
「カメラの持ち込みなんんてルール違反だ、変態バカ」
「あたっ!」


 ちくしょう、また見直して損したじゃねぇか。少しは真面目になったかと思えば、ふざけやがって。


「だ、だって…」
「だってじゃねぇだろ、バカが。エリオ、取りあえずここでの作法を説明するから、その後はこのバカの言う通り、その露天風呂に入ってこい。わかったな」
「は、はい…」


 まぁ、それもこれも入らなきゃ意味がないので、早速入ることに。
 浴槽への扉を開くと、すぐ近くに龍也の姿が。もう体洗い終わったのか?


「遅いぞお前ら、何をもたついて―――」


 そう言いかけた龍也の口が止まり、視線は俺の後ろに立つキャロに向かっていた。
 数瞬の沈黙が続いた後、龍也は視線をカオルに向け直し、口を開いた。


「カオル、早くも刑務所に行きたいのか?」
「なんで皆僕なの!?」
「お前が一番可能性があるからだ」
「辛辣ぅ!」












 そんなこんなでエリオとキャロにルールを教えて、さっさと露天風呂の方に向かわせた。エリオは少し戸惑っていたが、今はこれ以外に策がない。勘弁な。


「ほら見て見て! バタフライ~!」
「人がいないからって、風呂で泳ぐなバカ」
「しかもなんで一番激しい奴選んだし」


 バシャバシャと水しぶきを上げて泳ぎだすカオル。夜も少し遅い時間だからか、はたまた偶然か、今入っている人は俺達三人だけになっていた。まぁ誰にも迷惑かけないなら、ある程度は許容できるが、バタフライはダメだろ。


「はぁ…露天あるよな? そこ行ってくるわ」
「え……あ、うん…」


 少し気分を変えよう。今は夜だし、海鳴の星は綺麗に見えるからな。うってつけだろう。
 そう考えながらタオルを担いで露天風呂の方へ向かっていく。なんかカオルが言いかけてたような気がするが、気のせいか? まぁいいか。


「おい、いいのか? 今露天は…(コソコソ)」
「大丈夫でしょ、士君は前からこういうことに関しては運がいいし(コソコソ)」
「…お前、そっちを期待しているのか(コソコソ)」


 さて、行きますか。
























 早速露天に入って一服。肺に溜まった空気を一気に掃き出し、力を抜く。
 空には星々が散り散りに輝き、湯に浸かっていない首筋辺りに春の風が当たる。少し肌寒く感じる風だが、心地いいな。


「しっかし、見事に貸切状態だな。まぁ俺はそっちの方がいいがな」


 そう呟きながら、両足を目一杯伸ばして思いっきり羽を伸ばす。久しぶりの銭湯だし、何よりゆっくり風呂に入るのも久々だ。最近はシャワーで済ませることが多かったからな。何か月ぶり、になるだろうか。


「はやてももうちょい俺に回す書類少なくしてくれれば―――いや、俺が少なくなる分他の奴らが増えるか。ただでさえ教導はなのはに任せっきりだしな」


 フェイトやはやてだって他に回せない仕事をこなしながら、別の仕事だってやっている。シグナムだって交代部隊の隊長だ、文句言ってはいられないし、あいつらの負担を減らせるならいいか。

 さて、と。もう少し浸かったら上がるか―――


「え……つ、かさ…?」

「……は…?」


 そう思った矢先、何処からか女性の声が聞こえてきた。場所は丁度後ろの方、しかも聞きなれた声だった。
 首だけを捻り視線を向けると、そこには体を一枚のタオルで隠した金髪の女性―――フェイトが立っていた。金色の髪は濡れていて、水も体のラインに沿って滴り落ちていた。


「「………」」


 数瞬の沈黙。双方共に視線を合わせた状態で動きが止まっている。まるでかのスタンド能力のごとく、時が止まったかのようだ。
 しかし体を滴る水は止まる事はない。重力に逆らわず、それぞれの体を沿って落ちていく。フェイトの水は風呂の水だろうか。俺の顔を流れるのは、明らかに冷や汗だ。

 っていや、変な事考えている場合じゃねぇだろ!?


「俺すぐ上がるから、ゆっくり入ってろ!」
「あ、いや、でも…!」


 頭に乗せていたタオルを取り、縁にある岩に手をかけて力を入れる。フェイトはその様子を見て慌てて止めようとタオルを持ってない手を前に出してきた。


「えっと…あのね…?」
「え…?」
「一緒に入っても、いい…?」













「「………」」


 再び流れる沈黙、二人して海鳴の夜空の下で湯に浸かっている。
 しかしまぁ、流石に真正面に対する訳にもいかないし、リラックスして足を大っぴらに開く訳にもいかないので、お互いにタオルを湯に浸けて背中を合わせた状態で黙りこくっていた。

 俺はせめて距離を置かせて欲しいと抗議したが、フェイトがそれを許さずにずっと背中をくっつけてくる。
 いやしかし、これマズくないか? というか、なんで露天風呂で男女が一緒になるんだよ!? まさかとは思うが、ここ…!


「ねぇ、ここ混浴露天風呂みたいだね」
「なぬ!? そんな事何処に…!?」
「こっちの方に…」


 急いでフェイトの言う混浴風呂だという証明になる物を確認する為に、そっちに向こうとする。だがそれは丁度フェイトの正面らしい。当然フェイトの顔が眼前に―――


「「っ…!」」


 ち、近っ! あれは近過ぎだろ! 流石に戸惑う距離だ。
 しかし、なんでフェイトは俺を止めたんだ? こいつだってこんな事やるような奴じゃないのは、よく知ってるつもりだったが……


「あ、あのね…?」
「んぁ?」


 するとフェイトは背中越しに話し始めた。声色からは、若干の戸惑いを伴っていた。いや、戸惑いだけじゃなく躊躇いも伴っているようだ。


「…お礼を、言いたいんだけど……」
「……は? 礼?」


 フェイトの口から何が飛んでくるかと思えば、礼とはどういう事だろうか。


「いや、私執務官としての仕事ばっかであんまりエリオやキャロの訓練を見てあげられてないし……」
「それは別に問題ないだろ。その仕事はお前しかできないことなんだし…」
「二人のこと、士に任せっきりだったし……」
「別に任されてる訳じゃねぇしな。二人だってちゃんと自律してるし、スバルやティアナだっている」
「さっきはやてに聞いたんだけど、私達の書類仕事の何割かを士がしてるって…」
「ブゥゥーーッ!」


 なんだよあいつ、そういう事はしゃべんじゃねぇよな。なんか口が軽すぎて、あんまり信用できなくなってくるぞ。


「…はぁ、そうだな。はやてが話しちまったのなら、仕方ないか。まぁ、その通りだよ」
「だから、さ。せめて『ありがとう』ぐらいは…」
「……あぁ、受け取っておくよ」


 まったく、はやてには後でお仕置きだな。少しは男のプライドというモノを理解してほしいんだが……


「…言わせてほしいって事なんだけどなぁ(ボソッ)」
「ん? どうした?」
「う、ううん。なんでもない」


 フェイトが何か言ったような気がしたから聞いてみたが、どうやら気のせいだったようだ。しっかし……


「やっぱりここのは、いい風呂だな」
「う、うん…そうだね……」


 ん? なんだ、今の間は? 何か気になることでもあるのか…?


「あ、あのね、士」
「ん、ん?」
「今言うのは不謹慎だと思うし、できればもう少し…少なくとも今の事件が終わってからにした方がいいとは思うんだけど……」


 背中越しに伝わるフェイトの熱。心なしかさっきより熱く感じる。なんか思わず息を飲んでしまう。心臓もいつも以上に鼓動する。
 なんだろう、この空気。いや、なんか…もう……


「私…私ね、ずっと前から……士の事が―――」















「―――フェイトちゃ~ん、そっちにいる~?」



「「っ!?」」


 フェイトが何か言いかけた丁度その時、何処からか女性の声が聞こえてきた。しかもこれも聞き覚えのある物だった。


「そっちの方混浴なんだって。だから誰か来ない、内に……」


 俺とフェイトは二人してその声が聞こえてきた方向へ顔を向けた。その先にある扉から出てきたのは、栗毛の髪をいつものサイドテールから下ろしている、なのはだった。
 栗毛は月光で艶よく輝いていて、先程のフェイトと同じように肌に水滴が……

 三度訪れる沈黙。しかしこれは先程よりも重苦しく、嫌な予感しかしない。ここは……自然に、かつ滑らかにここから退散するべきだな。


「じゃ、じゃあ俺はこれで。フェイトとなのはは、ゆっくり入るといいぞ」


 少し明るめの口調で風呂から上がり、そそくさと出口の方へ向かう。勿論腰にはタオルを巻いているから大丈夫、二人も急な出来事で茫然としている筈……
 と、思っていたら、なのはが何かブツブツ呟いているのに気付いた。何を言っているのだろうか?と思って首だけ振り向いてみると、そこには側にあったであろう桶を手に取り振り上げているなのはの姿が……


「ってちょ、まっ―――」
「何でいるのよ士くーーーーん!!」
「ぶふぁっ!?」


 制止の声を出そうとした瞬間、なのはの手から放たれた桶が顔面に命中し、俺は後ろに倒れる。しかも盛大に後頭部を打ち付けることになった。滅茶苦茶痛い。


「いっつ~…ま、待てなのは! これには訳が…!」
「うるさいうるさい! とにかく出てってよぉぉ!」


 うわっ、ちょっ、危ない! 桶がまた飛んできた!
 再び飛んでくる桶を上手く避けながら混浴風呂を出る。後ろ手で扉を閉めて、痛みの引かない鼻を片手で抑える。ヌルッとした感覚がするから、多分軽く鼻血が出ているんだろう。痛ぇなぁ……


「フェイトちゃんもなんで…!」
「い、いや…これは……」


 扉越しにも聞こえるなのはとフェイトの声。少し途切れ途切れに聞こえるが、喧嘩気味の会話みたいだ。だが流石に戻って止めに行く、なんて自殺行為はしたくない。
 取りあえず男湯に戻りながら、この鼻血を止める方法を考え始めた。

 戻ったらカオルが鼻血を出している俺を見て大笑いしていたので、八つ当たり気味に殴っておいた。こいつ絶対混浴風呂の事知ってただろ……
























 しばらくして、銭湯を堪能してから上がった。男だからか、やはり女性陣よりも早く上がっており、取りあえず俺と龍也はマッサージチェアに座り、カオルは途中で戻ってきたエリオと一緒に牛乳一気飲みを行っていた。
 少しすると女性陣も上がってきて、合流することができた。因みにカオルとエリオの牛乳一気飲みにスバルが加わったりしていた。

 いやしかし、フェイトとはちょっと顔を合わせず辛くなってしまった。目が合うようならすぐに視線を外してしまう。俺はなんとなく、自然に見えるように視線を外すようにしていたんだが、フェイトはあからさまに視線を外してしまっていた。他の奴らに気づかれてないよな…?

 その後、色々やって堪能しきって全員がスパラクーアから出た。


「うぃ~、なんだかすっかり堪能してしまいました」
「日頃の訓練の疲れも、ちょっとは取れたでしょ?」
「はい…」


 ティアナがそう返事をした瞬間、キャロの持つケリュケイオンとシャマルの持つクラールヴィントが反応を示した。


「ケリュケイオンが…!」
「クラールヴィントにも反応、リインちゃん!」
「エリアスキャン―――ロストロギア、反応キャッチ!」


 来たな、ようやく仕事だ。そう思い、気持ちを切り替え気合を入れる。


「おぉ、お仕事だね」
「皆、頑張ってきて」
「フェイト、エリオ、キャロ。気をつけてな」
「「うん(はい)!」」
「先にコテージに戻ってるね」
「うん。皆、しっかりねっ」
「「「「はいっ!」」」」


 おぉ、なんか後ろからの支えがあって心強いな。


「ティアナ、シャマル先生とリイン、はやて隊長に〝オプティックハイド〟」
「はい!」
「空に上がって閉じ込めるわ、中で捕まえて」
「「「「はい!」」」」
「ほなら、スターズ&ライトニング―――」
「出動!」
「「「「了解!」」」」

「ってちょ、私のセリフ!?」
「取らせてもらった。反省も後悔もしていない」
「尚ひどいわ!」











『第一戦闘空間、河川敷グラウンドに固定』
『スターズF、ライトニングF、エンゲージ!』


 今回はロストロギアのみだから、俺はハードタービュラーに乗りながら結界外で警戒することとなった。まぁ偶には悪くないな。
 結界内にはフォワード陣四人が入り、ロストロギアの捕獲に当たっている。その対象と言えば……スライム状の物体で複数体に分離して、グラウンドを縦横無尽に跳ね回っていた。


「おぅおぅ、大分四苦八苦してるな~」


 縦横無尽に飛び跳ねするダミー体に、スバルとエリオが攻撃するが、残念ながら弾き返されてしまう。
ティアナとフリードも攻撃を加えるも、これまた効果がない様子だ。さて、四人はどうするかな?

 そう思っていると、ティアナが弾幕を張りダミー体に魔力弾を一個一個丁寧に当てはじめる。そこで反応の違う個体を見つけ、これを本体と断定。キャロが即座に捕獲しようとするが、かなり固い防壁を張られ防がれてしまう。
 それを見たスバルとエリオが行動を起こした。それぞれがカートリッジをロードし、リボルバーナックルの打撃とストラーダの電気付加の斬撃を同時に繰り出し、バリアを破壊した。

 その後キャロのブーストで封印効果を付加されたティアナの弾丸が、バリアのなくなったロストロギアに放たれ、封印成功となった。うん、そこそこいい感じだな。悪くはない。
 そしてシャマルさんが完全封印しようとすると、キャロが自ら完全封印の役を買って出た。後衛型(バックス)の魔法も多く身に付けている。スバルやエリオもコンビネーションができるようになったし、ティアナだって状況判断がより早く、より正確になってきている。

 そういう意味だと、四人はメキメキと力を付け始めているようだ。


[ロストロギアの封印っていうと、昔を思い出すね]
[ん? あ~、PT事件か。そう言われると、ほんとに思い出すな]
[にゃはは、ほんと~!]


 フェイトからの急な念話に少し驚いたが、フェイトの言葉を聞いて、確かにと思いながら思い返した。
 ライダーの力を得て、初めての戦い。なのはと一緒に歩み、フェイトがなのはと真正面からぶつかって、最終的にはなのはとフェイトが分かり合って……

 その中でも、失われてしまった命もあって……


[―――…士?]
[え…?]
[またあの事考えてるんでしょ]
[うぐっ…]


 しまった、これは安易な反応だったか。フェイトにさえ、気づかれてしまった。
 しかもこの念話、俺とフェイトだけの念話らしい。なのはからの声は聞こえない。


[前にも言ったけど―――]
[わかってる。皆まで言うな]
[…そう?]
[大丈夫、わかってるから]


 そう言うと、フェイトも渋々と言った感じで「…わかった」と返してきた。


[…士君?]
[っと、キャロの封印処理も終わったみたいだし、皆と合流するか]
[う、うん…]


 取りあえず封印処理も終わったので、今回の出張任務は終了となった。
























「そう…もう、帰っちゃうんだ」
「一晩ぐらい泊まっていけばいいのに…って訳にもいかないのか」
「うん、ごめんね…」
「今度は休暇の時に遊びにくるよ」
「うん、待ってるからね。士君も、今年ぐらいは帰ってきなよ?」


 話の流れから、美由希さんの視線が俺に向かってしまった。そう言われると……


「……善処します」
「またそれだ…。今度は家にも来てね。カレルとディエラも待ってるから」
「私もな」
「はい」


 後ろの少し離れた場所では、はやてが直属の上司である聖王協会騎士団のカリム・グラシアと連絡をしている。任務完了の報告だろう。


「休暇で来たら、今度はケーキでも奢ってね?」
「お前、好きだなぁ。会う度それじゃねぇか」
「いいじゃんよ~、美味しいんだから」
「その時は俺にコーヒーを頼むぞ」
「はいはい、わかったよ。コーヒーの淹れ方でもマスターしとくよ」


 この二人はいつでも変わらない。それが何年経っても続くから、居心地に変化がなくて嬉しいんだ。


「あ、本局捜査部からメールが来てる」
「ふぁ、ほんとです」
「…スカリエッティに関する調査報告と、新しい任務の依頼。私とはやてに同報で来てるね」
「もう新しい任務か…早いな~」


 ……あ、そう言えば、


「フェイト、お前あの時なんて言おうとしたんだ?」
「え!? あ、いや……ご、ごめん! それはちょっと…忘れて…」
「お、おぅ…わかった」


 な、なんだ? なんか急に焦ったような様子だったが……


「つ~かさ君」
「っん! な、なのは…」
「フェイトちゃんと何を話してたの?」
「い、いや…なんでもないってさ」
「そう? じゃあ私はスバル達の方を見てくるね。行こう、ヴィータちゃん」
「お、おぅ」


 そう言うとなのははヴィータを引きつれて、コテージの片付けと掃除をしているフォワードの四人の元へ向かった。

 まぁこれで今回の件は一件落着という訳で、明日からまた訓練と仕事の繰り返しに戻ることになる。あいつらも少しずつ力を付け始めて、おそらくフェイトやヴィータも訓練に参加し始めることになるだろう。
 そしてついでに俺も、参加させられるだろうな。もう四人いっぺんにやり合うのは勘弁だけどな。


「こっちは大丈夫だったよ~」
「ほな、全員揃ったな。戻るで~!」
「「「「はい!」」」」


 さてさて、次の任務はなんだろな? ってな。





  
 

 
後書き
 
 ていう訳で、ク~リスマスが今年もや~ってきてしまったわけです。
 彼女もいない作者は毎年の如く家族と一緒に過ごしたんですが……まぁ、高3にもなればプレゼントなんてもらえる訳もなく……

 取りあえず、ドライブの感想でも。







 遂にテクニック初登場からのボルト編が終了し、ドライブも三タイプの姿が揃いましたね。
 それに映画も公開されて、ドライブも鎧武も仕上がりはよさそうですね。まだ見てませんが……

 そしてその映画にも本編にも、遂にドライブのサブライダー・マッハが登場するみたいです。『このライダー……ライダー』の謳い文句で次回予告に出てきてました。
 ドライブに合わせたとはいえ、聞いた瞬間結構笑いました。同じこと二度繰り返されるのは、ちょっとなぁ……面白いです。


 ついでに言えば、スーパー戦隊の方も面白そうですね、今年は。
 特撮ファンとしては、その映画とギンガSの劇場版も興味深いです。大学行く前に見たいんですが…お金足りるかな…?

 次回は海鳴出張の裏話でも。今年中に書ければいいかな?
 それじゃあ、次回もお楽しみに~(^^)ノシ
  
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