ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~
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光輝への目覚め
前書き
戦士、目覚める。タイトルがネタバレ。それでは、お楽しみください!
タイムベントが解け、全員が行動を開始する。アルゴは全員にハイポーションを配る。
「あ、どうなってんだ?あの青い奴は・・・」
クラインが素直な疑問ぶつけ、キリトがユキがいることに気付く。
「ユキか!?」
ユキは変身を解除し、キリトへと近づく。
「ええ、青い奴は倒しときました。けれど・・・」
キリトさん、わかってますか?とユキが聞く。
「・・・!お前もわかってるのか?」
ユキたちはヒースクリフを見た。ヒットポイントは全員がレッドかイエロ―なのに、彼だけは緑色の安全域ギリギリで保っている。
「君がユキ君かい?」
ヒースクリフがゆっくりとユキへと歩み寄る。
「・・・ええ」
ユキは軽く会釈し、ヒースクリフに近づく。
その瞬間、キリトとユキが同時に動き、剣でヒースクリフを斬り付けた。
「キリト君!?何を・・・・!?」
そして、紫色のメッセージが表示される。
Immortai obuject。不死存在。
その表示を見た、プレイヤーたちは、動くことができなかった。
「団長・・・?どういう事ですか、システム的不死って・・・」
呆然とするアスナ。キリトが口を開く。
「・・・この世界にきて、ずっと疑問に思っていることがあった・・・。アイツはどこから俺たちを見ているか、ってな。でもな、俺は忘れてたんだ・・・。どんな子供も知ってる事さ」
ユキとキリトは同時に剣を向け言った。
「(他人のやっているRPGを傍から見ているほど詰まらないものはない)・・・・そうだろう、茅場晶彦」
場の全員が凍りついた。誰も動かなかったが、ただ一人、アスナだけが一歩動いた。
「・・・本当ですか?団長」
ああ、とヒースクリフが会釈し、こちらに問うた。
「なぜ、気付いたのか、参考程度に来てもいいかな・・・?」
特に君だ、とユキを指さす。
「君は・・・なぜ、九十層並みの力を持っている?君がこの世界に来たのは、約4、5日前・・・」
「どうやって、その力を手に入れた」
ユキは何も言わず、一つだけ答えた。
「あなたの質問に・・・。どうして気付いたのかだけ、答えておきましょう」
「あなたが・・・消した、ユイと言う女の子が、教えてくれたんです」
「あの子は、満足していました・・・。でも、僕は」
全身から怒気を放ちながら、ユキは言葉を紡ぐ。
「たとえ、作られたものでも命を弄ぶ、あなたが許せない」
その時だった。一人の兵隊が、斧を持ち、ヒースクリフに振り上げた。しかし、ヒースクリフがウインドウを開き操作すると、一人、また一人と麻痺の表示が出る。
キリトとユキ以外、全員がマヒしたのを確認すると、ヒースクリフは言った。
「さて・・・君たちには、正体を解いた報酬を与えなくてはな。チャンスを上げよう。今、私とどちらかが戦い、勝利した場合、全プレイヤーを解放しよう」
キリトとユキはもう殺意を隠さず、同時に立った。
「キリトさん、僕が行きます」
僕はキリトさんに向けて行ったが、キリトさんはいや、と言った。
「俺が行く」
ゆっくりとキリトさんが、ヒースクリフに歩みだす。
だが・・・。僕はどうしても戦わせたくなかった。
「あなたが死んだら!アスナさんはどうするんですか!?」
しかしキリトはこちらを振り向き、頼む、と言った。
行かせない・・・。彼に人を殺めさせたくない。
僕はアスナさんの方へと歩み、すいませんと言ってブレイラウザーを出現させ、突き刺した。
キリトさんがこちらへと走って戻ってくる。これでいい・・・。汚れている僕が、この男を殺す。
僕はそれを避け、ヒースクリフに歩み寄った。
「・・・・面白い子だ、君は」
「さっき・・・あなたに言えなかったことがあります」
なんだね?とヒースクリフが反応する。
「誰も・・・。誰も人の未来を奪うことはできない!」
「変ッ身ッ!!」
全身から怒気を漲らせながら、バーニングフォームへと変身する。体が熱く、怒気が太陽のプロミネンスの如く炎となって全身を赤く発光させる。そしてヒットポイントの横に謎の数字があった。
「それが君の力か」
僕は無視してシャイニングカリバーを振りかざす。
「オリャアアア!!」
掛け声とともに爆炎がヒースクリフを襲うが、盾の前にすべて弾かれる。
剣を前へと押し出され、危うく回避するが、盾が胸へと叩きつけられた。HPが少し減る。
「ダメージ判定があるのか・・・!!」
後ろに下がりそうになるが、踏ん張りきって爆炎をシャイニングカリバーへと纏わす。
「・・・・ッ!!」
バーニングボンバーを放つと、ヒースクリフの盾が音をたてはじめる。
そして、最後の一撃を叩きつけると、盾が砕け散り、ポリゴンとなって消えた。
「・・・なかなかやる・・・、だが」
勝てるかな?、ヒースクリフがゆっくりとその姿を変貌させる。
「嘘だろ・・・っ!」
その姿は、地のエルにそっくりだった。剣を二刀持ったヒースクリフは加速し、次々と剣戟をを繰り出す。
速くはない。しかし、力が圧倒的だった。一撃一撃が、まるでハンマーを叩きつけられるような衝撃。
一刀で対抗するが、手に思いきり剣が叩きつけられる。
「あ、ぐぁっ!!」
シャイニングカリバーが落ち、全身ががら空きになる。そこから放たれたのは、スターバーストストリーム。
みるみる自分のHPが削られていく。
たまらず膝をつく。そしてヒースクリフは別方向へと歩み始める。
その先には、こちらを見るアルゴさんがいた。
「待て・・・待て!!」
その人には手を出すな。そう、言えない。ジョーカも麻痺しているため、誰も守る人がいない。
そして、ヒースクリフが剣を振り上げて――――――――――――――。
脚が動いた。そして手を伸ばす。僕はアルゴさんに覆いかぶさるような体制になり、剣に貫かれた。
口に中が鉄の味でいっぱいになる。
アルゴさんが驚いた顔で見ている。ああ、よかった。死なずに済んだ。僕は最期に笑った。
純粋にうれしかった。気付けばカウントがゼロになっている。意識が遠のいていく。そして、僕の意識は、HPは完全に消失し、カブトの開けた穴から光が漏れ、僕の死体を照らした。
「それでいいのかい?」
暗闇の中、誰かが僕に言った。
「あなたは・・・」
「津上翔一」
アギトの変身者であり、人の運命を取り戻した男。
「君はそれでいいの?」
「・・・・」
何も言えない。翔一さんが言葉を紡ぐ。
「大事な人が・・・いるんじゃない?」
「大事な人?」
「その人に手を伸ばさなくていいの?」
え?だって僕は、みんなを守りたい。
「君個人が守りたい人が・・・」
「目を閉じて、考えてごらん。そこには誰が浮かぶ?」
目を閉じて浮かぶのは・・・。
「・・・浮かびました」
でも、僕死んじゃいました。
「まだ間に合うから」
翔一は満面の笑みで笑っていった。
「人は、後悔しない様に生きるべきだ。自分の思い通りに。 自分の人生を狭くするのは他人じゃない。 本当は、自分自身なんだよ。」
「そうですね」
翔一がユキの後ろを指で差す。光が溢れている。
「頑張って」
ユキは光に向かい、走り出す。
「アスナ・・・!アスナ!しっかりしろ!!」
キリトはアスナを抱き上げ、叫ぶ。ユキを殺したい気持ちがいっぱいになっていた。だが、アスナの目が覚める。
剣はユラリと消え、刺し傷などもなかった。
「大丈夫だよ、キリト君」
アスナは、そう答えた。
「よかった・・・。けど、何で生きてるんだ?」
「ユキ君が、あの剣に細工したの。キリト君に、人を殺めさせたくないって・・・。止めるために利用して御免なさいって言ってた」
キリトはユキの方を向いた。力なく横たわる死体。アルゴがその手を掴み、泣いている。
ヒースクリフは剣を振り上げ、アルゴへと振り落すが、キリトがギリギリのところで防いだ。
「ヒースクリフ・・・!!今度は俺だッ!!」
ガギィ、と大剣を二刀で払いあげ、自身の直感で攻撃を始める。
ヒースクリフは、スターバーストストリームを使っていた。何より創造者である彼が、二刀流のスキルを知らないはずがない。
剣戟の応酬。しかし、押されているのはキリトだった。相手の一撃が自身の一撃よりも重く、押されていく。
そして刀身をそらせて、キリトの腹部へと到達したヒースクリフは、二刀で袈裟切りにした。
HPが一気に削られ、危険域へと突入する。キリトが膝をつき、ヒースクリフはアルゴへと再び歩み寄った。
キッと睨み付け、アルゴはユキの死体に覆いかぶさるような体制となっていた。そして、ヒースクリフがブンと大剣を振ったその時――――――――――――――。
大剣が、掴まれた。アルゴをやさしく抱き、優しくアギトが寝かせる。
振り向き、ユキは言った。
「地獄の底から戻ってきましたよ・・・。茅場さん」
カウントが光りはじめ、ユキが拳を握り、茅場に宣言する。
「人の運命が、あなたの手の中にあるなら・・・・僕は・・・僕はそれを奪い返す!」
キュイン!、と言う音と共に、バーニングフォームの鎧たちがひび割れ、砕け始める。
神々しい光が漏れ、同時に鎧が砕け散った。アギトのその姿は、分身するようにいくつにも割れ、やがてユキに集まった。
カウントはゼロ。走り出せ、誰かを守るために。
光輝への目覚め、仮面ライダーアギト シャイニングフォーム。
「・・・!!」
ヒースクリフが戦闘態勢をとる。ユキがシャイニングカリバーを取出し、肉薄した。
「おおおりゃあああ!!」
ユキの放つ剣戟。ヒースクリフはその変化を感じ取った。パワーは下がったが、それを補うようにどんどんと加速していく。
「・・・グッ・・・!」
思わずうめいた。まさか、彼は。ヒースクリフは少し笑った。ユキは最後のエクストラスキルを持っている。
エクストラスキル、加速。茅場が、この世界に存在しないであろう者をモデルに創りだした能力。
扱える者がいないと踏んで創った能力。その発動条件は、全ての人を守りたいと願ったもの。
「オオオオオオオオッ!!」
剣戟が激しくなる。どんどん加速していく。それは脳がそれについていけないといけない。
だがユキは正義に選ばれた。その加速はとどまることを知らないのか、一振りするだけで10連撃以上が放たれる。
茅場の可能性は加速と二刀流だった。ギャリン!!とシャイニングカリバーの一本が折れた。
「キリトさん!!」
「オオオオオオおおおっ!!」
キリトが背後からジ・イクリプスを放つ。防ぎようがない連撃。そしてユキが気合を込めると、地面へと白いアギトの紋章が現れる。そして茅場の目の前にも、同様のものが現れた。
そしてユキはそれを放つ。光を纏った足が、茅場へと炸裂する。
「「オオオオオオオオオオオオッ!!!」」
二人の男の、誰かを守りたいと願う男達の叫びが響き、ヒースクリフ/茅場のHPを削りきった。
ゲームはクリアされました。その無機質な音声が全員へと響く。
ユキとキリト、アルゴとアスナ以外の全員消えた。
気が付けば四人の目の前は夕焼けだった。足元は結晶の板。そこに夕日が反射していた。
その向こうには、浮遊城アインクラッドが崩れ始めている。
「なかなかに絶景だな」
傍らからの声。4人が視線を向けると、白いシャツにネクタイを締めた、男が立っている。
茅場晶彦。
「あれは、どうなっているんだ?」
「比喩的表現と言う物さ」
「現在、SAOメインフレームの全記憶装置がデータの完全消去を行っている。あと・・・、10分ほどでこの世界は全て消えるだろう」
「あそこにいた人たちは・・・どうなったんダ?」
アルゴの呟きに、茅場が答える。
「心配には及ばない」
「先ほど、生き残った全プレイヤーのログアウトが完了した」
ほっとする4人。安心感が周囲を静寂へと導く。そこでキリトが口を開いた。
「何で・・・・こんなことをしたんだ・・・・?」
「何故だろうな・・・。」
「たぶん、あなたは欲していたんじゃありませんか?」
茅場の目がすうっと細くなる。
「未来に希望が持てる人達を」
「僕が見たあなたの記事にはこう書かれていた。日に日に増える子供の犯罪。世間に忍び寄る暗い影。
人は愛する、と言うことを忘れてしまっていると言っていた」
「そして、子供が憧れる空飛ぶ城、自身の夢とかけて、未来を変えることができる人を探していた」
違いませんか?とユキが聞いた。茅場は少し笑って、そうかもしれないな・・・と答えた。
「君は・・・・誰かを愛しているかい?」
茅場がユキに聞く。ユキは微笑んで答える。
「います。いつの間にか好きになってました」
ユキはアルゴの方を向いて言った。
「ねぇ、アルゴさん。好きですよ」
「ふぇっ」
とおかしな声が漏れ、キリトとアスナは顔を赤く。それを見た茅場が声を出して笑った。
その顔を見て、少し驚く。そして茅場は言った。
「言い忘れていたな・・・クリアおめでとう、ユキ君、キリト君」
「さて、私はそろそろ行くよ」
夕日が強くなると、茅場は消えていた。これからの未来を彼らに託して。
アインクラッドを見ると、もうほとんど崩れていた。それは、この世界にいるのがあと少しと言うことだ。
「さて・・・お別れだな」
「いや、お別れじゃないですよ。キリトさん」
名前を言えばいいじゃないですか。とユキが言った。
「桐ケ谷、桐ケ谷和人だ。今年で16歳だ。多分」
多分って・・・と次にアスナが答える。
「キリト君、年下だったんだ。私はね、結城明日奈。17歳です」
「僕はユキ・・・。まぁ知ってるか。青空雪。滅茶苦茶な名前だなぁ」
次、アルゴさんですよ。ユキが言ってアルゴが答える。
「アルゴだヨ・・・。本名ダ。ハーフ何でナ」
ユキが驚く。
「それじゃあ」
キリトが次の言葉を紡ぐ。
「現実世界で」
4人は拳をくっつけあうと笑った。
そうして、ゆっくり、ゆっくりと消えていく。みんなの意志が。この世界が・・・。
目が覚めると、そこは病院だった。5日ぶりに見る、現実世界。頭には、ナーブギア。カナリアがカモフラージュするために付けてくれたのだろう。
どうにか痛みを感じる体を動かすと、僕は一歩、病室を出た。
みんなに会うために。
好きな人と、笑いあうために――――――――――――――。
アインクラッド編・完
後書き
さぁ、また長くなった。フェアリィダンス編では、あの人たちが出る予定です。
誤字・脱字・コメント・評価ありましたら下さい。
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