ルドガーinD×D (改)
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十三話:拉致されました
「絶拳ッ!うおおおおおおっ!!」
「……岩が、いとも簡単に砕けていっています」
「まさか、剣や銃、ハンマー以外にも素手での戦闘も出来るなんてね。
さすがだよ、ルドガー君」
どうも、修行もとい、ストレス発散の為に山に転がっていた岩を拳で破壊している最中の
ルドガー・ウィル・クルスニクです。
さて、まずはどうして俺がこんなことをしているのかを説明しないといけないよな?
最初は、今、俺がどこにいるかだな。
俺は現在山にいる、そう山にだ。何でもここはグレモリー家が所有している山らしくて
別荘もあるのでそこに来ているというわけだ。
そして次にどうしてそんなところに来ているのかという事だ。
何でも、今度部長が自分の婚約を解消するためにその婚約相手と悪魔のゲームである
『レーティングゲーム』を行うらしいのでそれに向けての修行という名目で
山籠もりをするためだ。それにしても……勝てたら破談って悪魔の価値観はすごいな。
普通はそんなことで決めることじゃないと思うんだけどな。
あ、ついでに言うと俺は悪魔じゃないけど
何故か参加する方向で話が進んでしまったらしい。
俺の同意を得ることもなしに、同意を得ることもなしに。
大事なことだから二回言ったぞ。
因みに俺は部長の婚約相手の顔も知らない。
俺がいない間にいつの間にやらそういったやり取りがあったらしい。
ただ、みんなの反応を見るに碌な奴じゃないみたいだ。
そして最後に俺がどうやってここに来たのかという事だ。
簡潔に言うと拉致された。 ………いや、そうとしか言いようがないんだよ。
朝、いつもの様に学校に行こうと家を出た瞬間に下腹部への鈍い痛みを感じると同時に
気を失い、山のふもとで姫島先輩――朱乃さんに頭から冷水をかけられて気づいたんだ。
その時の顔がとても素敵な笑顔だったとだけは言っておこう。
そこで事情説明をされてようやく事態を把握、
そして俺を気絶させた犯人は小猫だったことを知らされた…本人から得意げな顔で……。
因みに名前に関しては部長以外の部員には下の名前で呼んでいいと言われたので
下の名前で呼ぶ様にした、正直言って、俺は堅苦しいのは苦手だから助かった。
俺の生活に必要な荷物は俺が気絶している間に
イッセーと祐斗が家を漁って持ってきてくれていたらしい……
そんなことするなら気絶させずに俺にやらせてくれれば早かったのにな……
そう言うと『……ノリです』と小猫に返された……俺の扱いが酷過ぎないか?
それとイッセー、俺の部屋にエロ本がなかったことに文句言うなよな。
勝手に人の私物を持っていく気満々だったのか?
というか、俺はエロ本なんて持ってないからな!
まあ…とにかく、本当にぶれない奴だよな……イッセーは。
まあ、そういった理由でここに来た俺は事実なので
諦めてジャージに着替えて修行を開始しているというわけだ。
あ、ジャージは勿論ピンクのラインが入ってる奴だぞ。
流石に全面ピンクは周りからの目線がやばそうだから買わなかった。
『ルルパーカー』? ルルの可愛さが凝縮された一品に恥ずかしいという気持ちなんて
起きるわけがないだろ? 兄さんもいい仕事するよな。
今度、猫黒歌をモデルにした、そうだな……『クロパーカー』でも作ってみるか。
出来るのかって? ふっ、俺の裁縫スキルを舐めるなよ?
と、話が少し脱線してるな。
とにかく修行を始めた俺は気絶させられた恨みを拳に込めて
『絶拳』を放ち続けているというのが現状だな―――岩に。
いや、小猫は怖いから反抗なんてしないぞ。
それに俺だって女の子を殴るのは嫌だしな。
それにしても……骸殻になっていないとはいっても威力が本物に比べて低いな。
やっぱりあれかな?『うおおおおおおっ!』じゃなくて『ぬおりゃああああっ!』に
変えた方が威力が上がるか?
でも結局ビズリーが何言ってたかは良く分からないんだよな。
ちょっとでも気を抜いたらこっちが死ぬ状況だったし。
「まだ改良しないとな……」
「あれ以上の威力を出すつもりなのかい?」
少し引き気味に聞いて来る祐斗に無言で頷き返す。
因みにイッセーは今は部長の作った特別メニューを受けてるらしいので姿は見えない。
今ここにいるのは俺と祐斗と小猫だけだ。
まあ、後から来るだろうけどな。
「本物はこんな威力じゃないからな、腹パンの余波だけで相手が吹き飛んでいくからな」
「……誰ですか、それを編み出した化け物は?」
父親です。
と言うか、今思うと生身でしかも素手でクロノスと一人で
渡り合うって色々とおかしいだろ。本当に化け物だよな。
俺も良くあいつに勝てたよな。……骸殻ありだと俺の方が強いのか?
「……ルドガー先輩?」
「ん?ああ、ごめん、少し考え事してた」
「……そうですか」
何やら怪しげに見つめてくる小猫を全力でスルーして再び岩と向かい合う。
…………視線が痛い。後輩の冷たいジト目が凄く痛いです。
「そんなに見られると集中出来ないんだけど……」
「……何かやましいことでもあるんですか?……私はただ見てるだけですよ」
「そう言われてもな……はあ…別の事でもするよ」
「なら、僕と一戦しないかい?」
諦めて、別の事をしようとしたところで祐斗からそんな提案を受ける。
まあ、他にすることもないしやってもいいか。
「分かった。それじゃあ始めるか」
「ありがとう、君みたいに強い人がいると修行がはかどって助かるよ」
「手加減はしないぞ?」
「望むところだよ」
お互いの手に剣を携えて向かい合う。
そして、次の瞬間に同時に踏み出し刃を交える。
「はあ…はあ…やっぱり強いね、ルドガー君は」
「そう言う祐斗も前よりも腕を上げてると思うぞ?」
「その割にはあっさりと倒したよね?」
「経験の差じゃないか?速さじゃ俺には分が無いんだしさ」
正直言って単純な速さじゃ『騎士』の祐斗には及ばない。
なら、どうして俺が勝っているのかと言うと
祐斗の次の動きを予測できる経験があるからだ。
ただ速いだけなら大した事はない、余裕を持って対処できる。
そこにフェイントとかを混ぜられると結構きついけどな。
まあ、骸殻を使えば速さの面でも祐斗を圧倒できるけどな。
わざわざ、こんなことで時歪の因子化の危険性を負う気はないからな
オリジンは分子世界はもう二度と生まれないとは言っていたけど、
俺が時歪の因子化しないという保証はどこにもないからな。
あの性格がねじ曲がったクロノスの事だ。骸殻が使える以上は時歪の因子化
も残っているかもしれないからな。自分から消すなんて絶対考えないだろうからな。
「経験か……今まで結構、戦ってきたんだけどね」
「ならそれよりも俺が戦ってきたってことだろ」
「ルドガー君……君は今までどうして戦って来たんだい?」
不意に真剣な表情で聞いて来る祐斗の様子が気になったがただ単にそういう事も
あるんだろうと思って考えるのをやめてさっきやってきたイッセーと小猫が
組手をしているのを見る。
あ、小猫の一撃でイッセーが吹っ飛んで木に当たった。
「ルドガー君?」
おっと、祐斗の質問に答えないとな。
軽く頭を振って何でもないと心配した様子の祐斗に笑いかける。
「多分…ただ守りたかった、だけなんだと思う」
「守りたかった……」
「本当に大切な物を……約束を…ただ守りたかった、そのためならいくらでも戦えた」
他人の大切な物を壊してでも、世界を壊してでも、仲間を失ってでも
“自分”を殺してでも、兄を殺してでも、己の命を差し出してでも……
……俺は戦ってこれた。
それなのになあ―――
「それが無い今は……俺はなんのために戦うんだろうな?」
「ルドガー君…君は…っ!」
「ごめん、今のは忘れてくれ」
俺の表情で察してくれたのか黙ってうなずいてくれる祐斗。
ダメだな、俺……こんなことじゃあ、みんなに迷惑をかける。
それにこんなんじゃ兄さんにもエルにも顔向けできない……。
でも……二人の居ない世界で俺は何の為に生きていけばいいんだ?
Side木場祐斗
ルドガー君と戦ってまたあっさりと負けてしまった。
正直言って自分は悪魔なのに人間である彼にこうもあっさりと負けるのは悔しい。
だからかな……経験の差だと言う彼に少し言い返したくなったのは
そして、聞いてみた戦ってきた理由。
復讐の為に闘ってきた自分が他人より優しい道を歩いてきたはずがない。
心の中にそんな気持ちがあったのだと思う。
だから、自分を正当化する理由を探すために同じような理由を彼に求めた。
でも返ってきた答えは僕の物とは真逆だった。
――守る為――
誰かを傷つけるためではなく、誰かを守る為。
そんな綺麗な理由だった……いや、言葉通りに受け取ればの話かな?
どうしてかって?
………それを話す彼の目はとてもじゃないけど優しい物じゃなかった。
あの女の堕天使を脅す時に一瞬だけ見せたような闇を覗かせる目……
守ると言う額縁通りの言葉からは決して辿り着かないであろう
普段の彼からは想像できないような、残酷な目。
それにあっけにとられていた僕だったけど直ぐにその目は消え失せていて
代わりにどこか遠くを見ているような空虚な目だけがあった。
そして彼が言った言葉
『それが無い今は……俺はなんのために戦うんだろうな?』
それは彼が守りたかったものがこの世界にはもうないということ
自分の役目を果たしてその先を見出せなくなったということ
……彼が守りたかったものを守り通せたのかは分からない
ただ……復讐を果たした後の僕もあれと同じ目になるのではないかと思わせた。
君は……一体どんな人生を歩んできたんだい? ルドガー君。
Sideout木場祐斗
初日の修行も無事に終えた俺達はその日の疲れをいやすために夕食をとることにした。
作ったのは勿論俺だ、朱乃さんとアーシアに手伝おうかと言われたけど断っておいた。
七人作るのも八人作るのも大して変わらないからな。
前の旅の時にもう慣れたよ。
「さて…みんな、俺の料理はどうだ?」
「……美味しいわ、凄く美味しいわ。ただ―――どうして全部の調理が赤く染まってるのかしら!?」
「トマトを使ったからですけど何か?」
部長の叫びにドヤ顔でそう言い返す。
トマトを使えば料理が赤くなるなんて当然のことだろう?
みんなは何を引いているのか。
「これをするために私達の手伝いはいらないと言ったのですわね……」
「はうう、凄く美味しいです!ルドガーさん」
いつもの笑顔はどこにいったのか何やら悟ったように溜息をつく朱乃さんに
尊敬の眼差しで俺を見つめてくれるアーシア。
やっぱり、アーシアは天使だな。異論は認めません。
「ルドガー君……このラーメンって……」
「トマトをふんだんに使った『トマトマラーメン』だ、祐斗」
「ラーメンを作れることよりもトマトが使われていることに驚くのは僕がおかしいのかな?」
失礼な、トマトは全ての料理に合う奇跡の食べ物だというのに何を言ってるんだ。
トマトがあれば俺はいかなる料理でも作ってみせるぞ。
「というか、材料の中にトマトなんてあったか? 野菜とかは山菜を取ってきたんだし肉や魚は部長が狩に行って取ってきたんだし……」
「それは企業秘密だ、イッセー」
全ての世界には触れてはいけない闇が存在するんだ。
例えば、何故かどれだけ入れてもちっともかさばらない袋とか鞄とかな。
「……おかわりです」
「わかった、ちょっと待っててくれ…ん?頬が汚れてるぞ、小猫」
「……っ!?」
小猫の頬に付いていた汚れをふき取ってやる。
まったく……子供みたいで可愛いな。
エルもよく汚してたな……それで―――
「……子供扱いしないで下さい」
『子どもあつかいキンシー!』こんな風に怒ってたな。懐かしいな……。
そんなことを考えながらジト目で睨んでくる小猫の頭に
手を置きゆっくりと撫でてやる。
「ごめん、もう子ども扱いしないから許してくれ」
「……そういうのを子ども扱いって言うんですよ?」
「ははは!」
そう言って笑いながらも撫で続けると最初は嫌そうな顔をしていた小猫も
次第にその表情を和らげてくれた。そこまでやっているとみんなの目線が
何か微笑ましい物を見るような目になってきたので手を離して撫でるのをやめる。
「それじゃあ、おかわりを持ってくるな。勿論、大盛りでな」
「……はい。…………様」
ん?最後何か言ってたか?まあ、いいか。
さて、おかわりを持って行ったら、今のうちに明日の仕込みをしておこう。
俺のトマト料理フルコースを誰かに邪魔されるわけにはいかないからな!
後書き
『トマトマラーメン』は大学の学食でマジであったのでルドガーさんに作ってもらいました。
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