戦国異伝
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第百八十七話 舞い乱れる鳥その八
「既に」
「その様です、兄上」
「我等が間合いに入るとすぐにでした」
矢や鉄砲を放って来た、それでだというのだ。
「こうして攻めて来ました」
「ですからどう考えても」
「何ということじゃ」
隆元は唖然とするばかりだった、だが彼も愚かではない。
すぐに気を取り直してだ、こう軍勢に言った。
「なら攻めるまで、このまま敵陣に斬り込むぞ」
「はい、そうしてですな」
「攻めきりますな」
「そうする、よいな」
こう弟達に言うのだった。
「これより」
「はい、では」
「このまま」
元春と隆景も答えてだ、そのうえで。
弓矢と鉄砲を受けながらも敵陣に斬り込む、しかし今度は。
長槍だった、織田家の自慢のそれがだった。
前に出て来てだ、叩いてきて。
やはり彼等を寄せ付けない、そしてだった。
その彼等の横から法螺貝が鳴ってだ、そうして。
右手から歓声が上がった、その声に驚いて右を見ると。
騎馬隊が突き進んできていた。蒲生がその騎馬隊を率いながら言う。
「敵の横腹を衝け!」
「そしてですな」
「このまま」
「そうじゃ、そのまま攻め崩すのじゃ」
そうしろというのだ。
「よいな」
「わかりました、では」
「このまま」
「うむ、攻めるぞ」
蒲生は自ら馬に乗り騎馬武者達を率いてだった、毛利の軍勢を攻めた。弓矢を放った後で槍で突いてだった。彼等を攻めた。
毛利の軍勢は騎馬隊の攻撃を受けて揺らいだ、隆景はその自軍を見て二人の兄に言った。
「ここはもう」
「攻められぬか」
「最早」
「はい、ですから」
それでだというのだ。
「一旦退き」
「そうしてか」
「守れと」
「織田は我等の場所をわかっております」
「だからか」
「ここは」
「はい、守りましょう」
そうしようというのだ。
「そしてです」
「また攻めるのじゃな」
元春が隆景に言う。
「そうせよと」
「その時を待ちましょう」
「そうするしかないか」
「このまま攻めても長槍に阻まれ」
そして、というのだ。
「騎馬隊に攻められます」
「悪戯にやられるだけだからじゃな」
「左様です、致し方ありませぬ」
夜襲は最初の一撃が肝心だ、奇襲だからだ。それにしくじれば後がない。そして彼等はその一撃を浴びせられなかったからだった。
「ここはそうしましょう」
「それしかないな」
隆元は末弟の案に苦い顔で答えた。
「この状況では」
「それでは」
「一旦軍勢を退ける」
敵陣の前からだというのだ。
「そうしてな」
「守り、ですな」
「機を見て攻めるぞ」
「そうしましょうぞ」
こう話してだった、そのうえで。
毛利の軍勢は闇夜の中であるが隆元達が上手に率い一旦軍勢を退けた。そうして守りに入りだった。
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