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美しき異形達

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第三十一話 相性その三

「貴方は確かに強いわ」
「わかってるじゃねえか」
「相手の強さ、特徴を知ること」
 黒蘭の言葉は今も冷静である、それも変わらない。
「それが勝利への絶対条件よ」
「本当に口が達者だな」
「達者ではないわ」
 このことも否定する、嘘やホラそして根拠のない自信と共に。
「決してね」
「つまり本当のことしか言わないんだな」
「確かな自信がない限りは言わないわ」
 やはりこう言うのだった。
「それを見せてあげるわ」
「俺を倒すっていうんだな」
「そうよ、今からね」
 こう言ってだ、黒蘭は。
 その両手のクラブで怪人を叩く、攻撃は弾き返されるが。
 しかしだ、怪人はその攻撃を受けて声をあげた。
「?」
「どうかしら、今の攻撃だ」
「何だよ、今のは」
「確かに貴方の甲羅は硬いわ」
 それも非常に、というのだ。
「けれどね」
「何故だ、何故今の攻撃は弾き返したというのに」
「刃を防げても」
 それでもだというのだ。
「衝撃は残るわ」
「まさかと思うが」
「これまで貴方には何度も打撃を加えているわ」
 クラブのそれをというのだ。
「それだけにね」
「馬鹿な、攻撃を弾き返したというのに」
「けれど衝撃は確かに伝わっていたわ」
 直接のダメージを防いでもだ、衝撃は残っていたというのだ。
「言うならば水槽の中のお豆腐よ」
「豆腐?食いもののか」
「そうよ、幾ら頑丈な鎧で身体を覆っていてもその身体はね」
「衝撃を受けているのか」
「その通りよ、それがダメージになっているわ」
 そうなるからだというのだ。
「貴方にはそのダメージが蓄積されているのよ」
「手前のそのクラブのそれがか」
「そうよ、受けているから」
「くっ、今それが出て来たのか」
「あえて強く打っていたわ」
 衝撃を加える為にというのだ。
「それが生きてきたわね」
「くそっ、考えてるな」
「戦いは頭よ」 
 この持論も言ってだ、そして。
 黒蘭はクラブでの攻撃を止めてだ、そのうえで。
 一旦後ろに跳んで間合いを離した、それからだった。
 クラブを収めてリボンを出した、そして。
 そのリボンを放って怪人の腹を絡み取った、そうしてからリボンを思い切り上にやって上に投げてからだった。
 リボンを下にやり怪人の全身を固い岩場に思いきり打ちつけた、この時も甲羅は割れなかったがだった。
 衝撃はそのまま伝わった、そのダメージで。
 岩場に叩きつけられた怪人の上に黒い符号が出た、勝敗が決した証だった。
 鈴蘭もだ、ウツボの怪人と戦いながら言った。
「ウツボの特徴はわかっているわ」
「それは何だよ」
「隠れてそして襲う」
 それがウツボの習性だというのだ。
「非常に攻撃的でね」
「それはさっきも言ったな」
「そうよ、相手を見据えているわ」
「そして獲物を倒すっていうんだな」
「その通りよ、けれどね」
 それでもだというのだ。
「それがわかっていることがね」
「御前が勝つことになるっていうんだな」
「その通りよ、相手を見据えて戦う」
 まさにそれが、というのだ。
「ウツボはね」
「それがわかっていてどう攻めるっていうんだ?」
「こうするのよ」
 こう言ってだ、その摺り足でだった。 
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