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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第九話 懐かしい夢

 
前書き
大輔が消された過去を夢見る。
なのは「リリカルアドベンチャー、始まります!!」
 

 
怪我をしたフェイトに手当てをして、マンションに戻り、就寝した時。
大輔は覚えの無い…けれどどこか懐かしい夢を見た。






























まだ大輔が幼い頃。
見た目からして4歳くらいだろう。
大輔は今は不仲の小学四年生の姉のジュンとはこの時は仲がよかった。
光が丘のマンションの自宅で、急に目が覚めてしまった自分。
大輔『お姉ちゃん、起きてよお』
隣で眠る姉の身体を揺すり、起こす大輔。
ジュン『何よお…大輔え?』
目を擦りながらも起きてくれた姉。
この頃の自分達は他の兄弟と遜色のないくらい仲が良かった。
なのにどうして仲が悪くなってしまったのだろう。
ジュン『だから、眠れなくなるから晩ご飯の前に昼寝するなって言ったのよ』
大輔『だって…』
ジュン『全くもう…仕方ないんだから』
苦笑しながら笑う姉、優しく頭を撫でてくれる優しい姉が大輔は世界で一番好きだった。
父は残業で母は、婦人会の旅行でいないため、泣き虫の自分を守ってくれる姉が好きだった。
それなのに…。
部屋についていた小さな明かりが突如消えた。
大輔は思わず姉にしがみつき、姉は辺りを見回した。
ジュン『ブレーカー上げてくるわ。大輔は危ないからここで待ってなさい』
大輔『うん、早く帰ってきてね!!』
ジュン『はいはい』
苦笑しながら、ブレーカーのある場所に行き、電気のスイッチを確かめてみるのだが、全て全滅である。
椅子を出して、ブレーカーのスイッチを上げるのだが、駄目である。
部屋に戻ろうとした時、凄まじい轟音が響いて、すさまじい揺れが本宮家を直撃した。
すっかり腰が抜けてしまったジュンは無くなってしまったリビングを見る。
ベランダの方が大きな大きな穴が開いている、月明かりが見える恐ろしい光景である。
大輔『お姉ちゃん…?』
怯えながら、ジュンの所に来た大輔は穴の方を見遣ると、目を見開いた。
大輔『お化けだ…』
ジュン『え…?』
ジュンが穴を見ても、何も見えない。
大輔『オウムのお化けと恐竜さんだ…』
何処か怯えたように、穴を見遣る大輔。
混乱していると思ったジュンが落ち着かせるように、抱きしめようとした時、確かに大輔の目にはオウムと恐竜の化け物が映っていた。
知らず知らずのうちにジュンは後退した。
大輔には自分が見えないものが見えている。
そう思うと、怖くなってしまうジュンである。
地響きが起こり、凄まじい雷が落ちた。
ジュン『きゃあああ!!』
思わず声を上げて、耳を塞いだジュン。
爆発がまた起きる。
何もないはずなのに、ただ道路がえぐれ、橋が倒され、マンションに穴が開いて行き、瞬きする度に瓦礫に変わっていく。
大輔『お…姉ちゃん…』
掠れた声に反応して、ジュンが大輔の方を向いた時、そこには、恐らく爆発によって飛んできた破片に当たったのだろう。
頭から血を流して、痛みに泣きじゃくりながらジュンに手を伸ばした大輔。
ジュンの身体から血の気が引いていく。
このままでは弟が死んでしまうのではないかと、ホイッスルの音が聞こえたが、ジュンは構わず、大輔を背負って外に出ると、必死に助けを求めた。






























やがて時は流れる。
光が丘テロ事件と名付けられたその事件により、お台場に引っ越すことになった本宮家である。
ジュンと大輔にとっては、あまりにも衝撃的な事件だった。
ニュースを聞いて飛んで帰ってきた父が見たのは、見るも無残な惨状と化した我が家。
怪我をした長男を背負って必死に助けを求めている長女である。
大輔の怪我は跡は残るものの、命に別状はなかったが、ジュンの心に深い傷が刻まれた。
しかし大輔は対象的に光が丘テロのことは一切覚えていなかった。
どうして怪我をしたのかも、どうして光が丘からお台場に引っ越した理由も。
その事実はジュンを苛立たせた。
自分はそのことを忘れられないというのに、大輔は簡単に忘れたことを。
この日から、本宮姉弟の不仲が始まった。






























大輔「っ!!」
フェイト「きゃ!?」
大輔を起こそうとしたフェイトだが、いきなり起き上がった大輔に驚く。
大輔「はあっ…はあっ…!!」
息を荒くし、汗をかきながら辺りを見回す。
大輔「夢…?」
フェイト「大輔、大丈夫?」
ブイモン[顔色悪いぞ大輔?]
大輔「…そ、そうだ……俺は…7年前に…光が丘でグレイモンを…」
頭を抱え、胸元に金色の光が灯り始めた。
アルフ「大輔!?どうしたんだい!!?」
明らかに普通ではない大輔に、アルフが大輔の肩を揺する。
フェイト「大輔…?」
大輔「痛っ…!!」
大輔が両手で髪をくしゃくしゃにすると古傷が露になる。
今まで忘れていた過去が凄まじい勢いで溢れてくる。
そして、最後に、意識が朦朧となる直前、グレイモンの近くにいた二人の子供…太一とヒカリの姿が脳裏に浮かんだ時、痛みから解放された。
フェイト「大輔…大丈夫?」
大輔「…ああ」
答えた大輔の顔は途方に暮れた子供のようだった。
今まで見たことのない大輔の表情にフェイトは胸が締め付けられるようだ。
大輔「…何で忘れていたんだろう。姉貴が…姉ちゃん、あんなに泣いていたのに。姉ちゃんを守ろうって病院で誓ったはずなのに…」
ブイモン[大輔…?]
フェイト「お姉さん…?」
ブイモンには目の前にいる大輔が、とても小さく見えた。
フェイト「大輔、お姉さんいるの?」
大輔「…ああ、いつも俺のことを悪く言う、最低な姉貴だと思ってた…今まで」
フェイト「え?」
大輔「最低なのは俺の方だった!!姉ちゃんはいつも一人で頑張ってたのに俺は簡単にあの時のことを忘れて…」
フェイト「…………」
大輔「俺、姉ちゃんに何て言えば…」
泣きじゃくる大輔にブイモンが静かに口を開いた。
ブイモン[光が丘テロのことを思い出したって、そして大輔がジュンに言いたいことを言えばいいんじゃないかな?]
大輔「…けど……」
ブイモン[大輔は“勇気”を受け継いだじゃないか。それって大輔は勇気をあいつらの中で誰よりも強く持ってるってことだと思う。]
絶対にそうだ。
勇気の紋章の所有者である太一も、太一の妹であるヒカリも勇気のデジメンタルを手に入れられなかったのだから。
フェイト「そうだよ、大輔。お姉さんと仲直りしたいんでしょ?もしかしたら出来るかもしれないでしょ」
大輔はハッとなる。
フェイトはプレシアと仲良くしたくても出来ないのだ。
しかもプレシアは不治の病。
それに比べれば自分にはまだ可能性がある。
生きているのだから、いつか分かり合えるはずだ。
フェイト「いつかお姉さんと仲直り出来るって、私も祈るから」
大輔の手を優しく握ってくれるフェイトに、年上、年下関係なくフェイトを抱きしめてしまった。
フェイト「だ、大輔…?」
赤面して大輔を見遣るフェイト。
大輔はフェイトから伝わる早い鼓動と、肌から漂う甘い匂いに幼い頃、姉に縋っていたような安心感を覚えた。
その気持ちを感じ取ったのか、フェイトの腕がゆっくりと大輔の頭をやんわりと抱き締めた。
ブイモン[アルフ]
アルフ「そうだね…」
気を利かせた二人がリビングを後にする。
 
 

 
後書き
急かもしれないけれど、早々に記憶戻しました。
大ヒカフラグが粉砕。
 
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