戦国異伝
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第百八十七話 舞い乱れる鳥その一
第百八十七話 舞い乱れる鳥
長政と羽柴が率いる山陰を進む二万の軍勢は因幡に入った、ここで羽柴は己の隣に馬を進める長政に言った。
「さて、因幡に入りましたが」
「これからのことですか」
「既に山中殿が先陣として攻めております」
山陰の兵は二万であり山中がそのうち五千を率いている、その彼の話も出た。
「城攻めもすぐにはじまるでしょう、しかし」
「我等が目指すのは」
「鳥取城でございます」
羽柴は笑みを浮かべながらもその目の光を強くさせて答えた。
「あの城です」
「その通りですな」
「その鳥取城は名将吉川経家殿が守っておられます」
「そう簡単に陥ちませぬな」
「いえ、陥とすやり方はあります」
例え名将が守っている城でもだというのだ。
「どれだけの名将、強兵がいる堅城でも飯がなければ戦えませぬ」
「それでは」
「はい、既にです」
ここで秀長が出て来て長政に言って来た。
「鳥取城とその周りの城の兵糧を高値で買い占めはじめています」
「城の兵糧を」
「はい、ですから」
「飯が食えぬとあれば戦にならぬ」
長政は秀長の話を聞いてこう述べた。
「それでは」
「はい、因幡の城は次々と陥ちます」
兵糧がない故にというのだ。
「山中殿が攻められずとも」
「敵の方が降るか」
「はい、ただ」
「ただ、とは」
「敵兵は鳥取城に向かわせましょう」
「降った兵を組み入れるのではないのですか」
織田軍にだ、織田軍は敵兵を自軍に組み入れることによって大きくなってきた。それで長政も言ったのだ。
「この度は」
「はい、それは後にしまして」
「今は、でござるか」
「敵を鳥取城に集めさせ」
「それでは城兵が多くなり城攻めに厄介では」
「いえいえ、それでいいのです」
秀吉は笑って言うのだった。
「多ければ多いだけ」
「ということは」
「その時にわかります。ただ」
「ただとは」
「彼等も織田の兵になります、出来ることなら」
ここで考える目で言う秀長だった。
「一兵も損なわず入れたいものです」
「無傷で」
「この因幡にしても」
「戦であっても」
「傷を負わせることなく手に入れられればよしです」
「それはその通りですな」
長政もその通りだと答える、彼にしても戦は避けたいところだ。それで秀長に頷いてこう言うのだった。
「やはり」
「だからです、兵糧を買い占めております」
既に動いてそうしているというのだ。
「その方が休む済みますし」
「戦にかかる銭も」
「戦になるよりも人も死にませぬ」
だからいいというのだ。
「ではこのまま」
「わかりました、進めていきましょう」
「まあ殿が備前で勝たれ備前が手に入れば」
ここでこう言ったのは羽柴だった。
「この因幡も織田家のものになります」
「国人達が織田家になびいてですな」
「そうなりますので」
こう話してだ、そしてだった。
長政達は兵を進めていった。山中は城に迫るがその城はすぐにだった、自分達から開城してそうしてだった。
降ると言って来た、一戦を考えていた山中はこのことに驚いてそのうえで敵将に対して問うたのだった。
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