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美しき異形達

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第三十話 南海においてその十三

「全部ね」
「そしてわかっていてかよ」
「そうよ、だからね」
「御前が勝つっていうんだな」
「そうよ、私はその貴方以上に強いから」
「やっぱりホラ吹きだな」
 それも姉妹揃って、というのだ。
「どう考えても」
「そう、言葉通りにならなかったらね」 
 その時はとだ、黒蘭も言う。
「そうなるわ、けれどね」
「その言葉通りにはかよ」
「ならないわ」
 それも決して、というのだ。
「何があろうともね」
「じゃあそれを見せてもらおうか」
「それではね」
 黒蘭も間合いを詰める、そうして。
 両者は戦いに入る、その双方を見てだ。
 薊はその目を鋭くさせてだ、仲間達に言った。
「鈴蘭ちゃんの言葉通りにな」
「なるっていうのね」
「なるぜ」
 笑みを浮かべてだ、裕香に答えたのだった。
「これからな」
「薊ちゃんはそう言うのね」
「戦いに絶対はないっていうんだな」
「ソフトボールでもそうだから」
 裕香がしているその競技でも、というのだ。
「戦力が幾ら上でもね」
「負けることもあるってんだな」
「うん、その時の状況や運とかが関係してね」
「そうだよな、こっちの調子が悪かったり怪我人がいたりな」 
 薊も裕香のその言葉に応えて言う。
「相手を侮ったりしているとな」
「戦力が上でも負けるわ」
「だよな、けれどな」
「鈴蘭ちゃん達はっていうのね」
「相手を侮っていないしな」
 まずはこのことを挙げる薊だった。
「コンディションも万全、それにここもわかってるしな」
「ここ?」
「ああ、ここだよ」
 笑っての言葉だった、今も。
「ここのこともな」
「ここもっていうと」
「まあ見てなって、鈴蘭ちゃん達は勝つよ」
 必ず、というのだ。
「それを観ような」
「今から」
「そうしような」
 今はこう言って動かない薊達だった、二人はその彼女達の目の前で戦いに入った。


第三十話   完


                        2014・9・1 
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