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美しき異形達

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第三十話 南海においてその十一

「いつも一緒になるってのも考えてみれば不思議だけれどな」
「何か引かれ合ってる?」
 首を傾げさせてだ、菊が薊の今の言葉に応えた。
「そうかな」
「縁なのかね」
「そうじゃないかしら」
「何かもっとすげえの感じるけれどな」
「凄いのって?」
「いや、あたしもそこまではわからないけれどさ」
 ただ今この場でそう思っただけだ、だから深いものがある筈がなかった。
「そんな風に思ったんだよ」
「そうなのね」
「まあ気のせいかな」
「そうでしょうね、とにかくね」
「今回の戦いは、か」
「私達がね」
「やるから」
 姉妹がまた薊達に答えた。
「だから貴女達はそこで見ていて」
「観客に徹していてくれるかしら」
「私達は勝つわ」
「それも何の問題もなくね」
「そこまで言うのなら」
 菖蒲が二人のその言葉に応えた。
「そうさせてもらうわ」
「ええ、それでお願いね」
「そこにいてね」
「二対二ですか」
 桜はその数について言及した。
「相手は常にこちらの数に合わせてきますね」
「そのことも気になるわね」
 菫が桜のその言葉に応える。
「どうにも」
「私達のいるところにいつも出て来て」
「それで数もこちらに合わせて来る」
「私達は常に誰かに見られているのでしょうか」
「おまけに出て来るのはいつも一人の時か私達だけの時」
「そうしたことも気になりますね」
「色々と秘密があるわね」
 二人も考えるのだった、考えてみればだ。
 怪人のことは非常に謎が多かった、あらゆることについて。
 だが今はだ、鈴蘭はその手に日本刀を出した。黒蘭は新体操のリボンだ。それを出してそのうえでこう言った。
「ではね」
「はじめるわ」
「私がウツボの怪人の相手をするわ」
 鈴蘭はこう妹に言った。
「そしてね」
「私はシオマネキね」
「それでいいかしら」
「そうあるべきね」
 今回の戦いの組み合わせはとだ、黒蘭も答えた。
「それではね」
「ええ、はじめましょう」
 姉妹でこう話してだ、そしてだった。
 二人はそれぞれの武器を手に怪人の間合いを詰める、そして。
 鈴蘭はすすす、と剣道の摺り足で前に出てだ、ウツボの怪人に対して言った。
「はじめるわよ」
「ああ、楽に死にたいかい?」
「楽に?」
「そうさ、それとも苦しんで死なないかい?」
「どちらも遠慮するわ」
 これが鈴蘭の返事だった。
「貴方こそ。楽な方がいいわね」
「おいおい、俺を倒すってのかよ」
「そうよ、そのつもりだけれど何か」
「言うものだな、そりゃ」
 怪人は鈴蘭の今の言葉に声を出して笑った。
「俺を倒すってのか」
「ええ、確実にね」
「それじゃあ楽な方がいいな」
 これが怪人の返答だった。
「俺だって苦しみたくないからな」
「そう、わかったわ」
「まあ俺は死なないけれどな」
 倒されるのは自分ではないというのだ。 
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