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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第二話 運命の邂逅

 
前書き
次元漂流した大輔達。
異世界で彼らは何を見る?

ブイモン[リリカルアドベンチャー、始まるぜ!!]

 

 
光に呑まれた大輔は意識を失う。
同時にデジヴァイスと宝石が共鳴するかのように蒼く輝き、デジヴァイスを介してチビモンに宝石のエネルギーが流れ込んで来る。

チビモン[な、何…力が漲る…!!]

身体に莫大なエネルギーが満ち溢れ、チビモンの身体が光り輝く。

チビモン[…チビモン進化!ブイモン!!]

チビモンがブイモンに進化すると、次はデジヴァイスのディスプレイから強い光が放たれ、ブイモンがディスプレイに吸い込まれる。






























そして大輔は意識を浮上させ閉じていた目を開くと、周りは見たことのない町並みが広がっていた。

大輔「ここ…どこだ?」

大輔は辺りを見回すとチビモンがいないことに気付いた。

大輔「チビモン?」

ブイモン『大輔、俺は此処だよ』

腕の辺りからチビモンより若干低いブイモンの声がし、ようやく腰に着けていたデジヴァイスの変化に気付いた。
デジヴァイスのディスプレイにブイモンが映っていたのだ。
大輔はデジヴァイスに触れると、様々な情報が頭に流れ込んで来た。

大輔「っ…」

突然すぎるあまりの情報量に膝をつくが、直ぐに立ち上がる。

大輔「と、とにかく…人を探そう…ここがどこなのか聞かないと…」

頭の不快感に耐えながら人を探そうと再び辺りを見回す。






























そして大輔から大分離れた場所では尻尾と耳の生えた女性と金髪の少女が大輔を見ていた。

?「ねえ、フェイト。あいつ何者だろうね」

女性がフェイトという少女に振り返る。

フェイト「分からない…でもアルフ。あの人ジュエルシードを持ってる…」

フェイトの視線が大輔から大輔の掌に納まっている宝石・ジュエルシードに向けられた。

フェイト「気絶させてジュエルシードを奪い取ろう。あの人には悪いけど…私が攻撃して、もし避けたらアルフがそこを攻撃して。デバイスを持たずに転移したから強敵かもしれない。気をつけて」

アルフ「あいよ」

フェイトとアルフの位置からでは大輔のデジヴァイスが見えないので、大輔が丸腰と判断したようだった。


































大輔が移動を開始しようとした瞬間に。

ブイモン『大輔!後ろ!!』

大輔「っ!!」


ブイモンの呼びかけに大輔は即座に金色の弾を回避する。

アルフ「はあああ!!」

ブイモン『大輔!!左から来る!!』

ブイモンの呼びかけによりアルフの奇襲も何とか回避出来た。

アルフ「ちっ!!こいつやるじゃないか!!だけどこれまでさ!!今だよフェイト!!」

奇襲を回避されたことに舌打ちするが、大輔の背後にフェイトが回り込んだ。

フェイト「バルディッシュ!!」

バルディッシュという武器が電子音と共に変化し、死神の鎌のような形状に変化した。

大輔「っ…!!」

大輔は自身に向けて繰り出される攻撃を防御しようと利き腕ではない左腕を出そうとするが、突如脳裏に1つの言葉が浮かんだ。
そして頭に浮かんだ言葉を叫ぶ。

大輔「…セットアップ!!」

フェイト「っ!!」

デジヴァイスから光が放たれ、光に包まれた大輔に咄嗟に距離を取るフェイトとアルフ。
光が消えた時、そこにはブイモンが勇気のデジメンタルでアーマー進化するフレイドラモンに酷似した甲冑を身に纏う大輔がいた。

アルフ「こいつ…デバイスを隠し持ってたのか!!」

アルフが警戒しながら大輔を睨みつつ、大輔の姿を見つめる。
フェイトもバルディッシュを握り締め、再び突っ込んでいく。一気に肉薄し、バルディッシュを振り下ろす。
大輔はガントレットで守られた左腕で受け止める。

フェイト「っ…」

大輔「…っ!!」

互いの力が拮抗し、両者は全く動かない。
このままではラチがあかないと判断した大輔は右腕に炎を纏わせる。
そして拳を勢いよく突き出す。

大輔「ナックルファイア!!」

フェイト「くっ!!」

拳大の炎をかわし、距離を取るフェイトに、フェイトを援護しようと大輔に突撃するアルフ。

ブイモン[そうはさせないぞ!!ブイショット!!]

デジヴァイスから飛び出すブイモン。
拳に力を込め、拳を勢いよく突き出すと衝撃波が放たれた。

大輔「ブイモン!!」

ブイモン[大輔!!このわけ分かんない奴は俺に任せろ!!]

大輔「…サンキュー!!」

アルフ「こいつ使い魔かい!?」

ブイモン[使い魔?さっぱり分かんないけど大輔には指1本触れさせない!!]

ブイモンがアルフに殴り掛かる。

アルフ「それはこっちだって同じさ!!どきなあ!!」

アルフも向かって来るブイモンを迎撃する。

フェイト「フォトンランサー、ファイア!!」

大輔に向けて金色の魔力弾を連続で放つ。
大輔はフレイドラモンの甲冑をブイモンが友情のデジメンタルでアーマー進化するライドラモンに酷似した甲冑を纏うと、魔力弾に雷撃を繰り出す。

大輔「サンダーボルト!!」

雷撃は魔力弾を相殺し、大輔はフレイドラモンの甲冑時よりも強化された脚力で肉薄すると、フレイドラモンの甲冑に換装すると殴り掛かる。

ブイモン[たあっ!!やあっ!!]

アルフ「くっ、こいつ。小さいせいでやりにくい!!」

ブイモンは体格差を利用しているのか、時折足元の方を狙って攻撃を仕掛けてくる。
ブイモンとアルフのように身長差のある場合、同じくらいの高さか自分よりも大きい敵には技を掛けやすいが、自分より小さい者に対してはパンチも下の方を狙わなければならなくなり、どうしてもやりにくさが否めないのだ。
ブイモンはデジモンの成長期の中でもかなり小柄な部類に入るため、ブイモンはそれを利用して攻撃している。

ブイモン[でやあ!!]

アルフ「うわっ!?」

ブイモンはアルフに足払いをかけると体勢の崩れたアルフにジャンプして両肩に乗り、両足で頭を挟みこむ。

ブイモン[おりゃあああああっ!!!!]

そのまま自分の頭を振り子の錘のように使って後方に倒れこみ、アルフの頭をアスファルトの地面に叩きつけた。
プロレス技に分類されるウラカン・ラナ・インベルティダがアルフに炸裂した。

アルフ「はう~~……」

アルフは目を回して気絶した。
普通の人間なら確実に死んでいるが気絶だけで済んでいるのはある意味流石である。
大輔とフェイトの戦いにも決着が着こうとしていた。

フェイト「アルフ!?」

気絶したアルフに驚き、大きな隙を見せてしまった。
大輔はバルディッシュを勢いよく蹴り飛ばす。

フェイト「しまった…!!」

大輔はフェイトが次の行動に移す前に腕を掴んで、ガントレットの爪を首筋に向ける。

大輔「チェックメイトってやつだな?」

フェイト「う……」

フェイトは、悔しそうな顔をする。

大輔「教えて貰おうか?何で俺を襲った?」

大輔は警戒を崩さず、理由を問う。

フェイト「あなたが持っている宝石…ジュエルシードです。」

大輔「ジュエルシード…これのことか?」

大輔は蒼い宝石を取り出し、フェイトに見せる。
フェイトは肯定の意味で頷いた。

大輔「どうして君がこれを?あ、もしかして…」

フェイト「…っ」

大輔「これの持ち主か?」

フェイト「え?」

フェイトの険しかった表情が崩れ、目を見開いた。

大輔「実はこれ、ごみ捨て場で見つけたんだ。だけどかなりの宝石みたいだったから捨てるとは考えにくいし…君が落とした物だったんだな…」

大輔は掴んでいた手を離し、フェイトの拘束を解いた。
そしてフェイトの手にジュエルシードを手渡した。

大輔「もう落とすんじゃないぞ?」

フェイト「あ、あの…」

フェイトは自分が勘違いしていたことに気付き、声をかける。

大輔「ん?」

フェイト「あなたは時空管理局の人じゃないんですか?」

ブイモン[時空管理局?なんだそれ?]

アルフを引きずって大輔の下まで歩いてきたブイモンが首を傾げる。

大輔「…あのさ、ここ何処なんだ?」

大輔今まで気になっていたことをフェイトに尋ねてみた。

フェイト「え?ここは海鳴市です」

フェイトは大輔の問いに首を傾げながらも答える。

大輔「海鳴市?お台場じゃないのか?」

聞いた大輔は聞いたこともない名前に首を傾げるばかり。

フェイト「お台場?」

そしてフェイトも聞いたことのない名前に首を傾げる。
そしてフェイトはここで1つの可能性に辿り着いた。

フェイト「あの…もしかしてあなたは次元漂流者ですか?」

大輔「次元漂流者?」

フェイト「えっと…次元漂流者というのはこの世界の他の世界。つまり違う次元の世界…特に管理外世界から迷い込んだ人のことです。」

大輔はフェイトから次元漂流者とは何なのかを教えてくれた。
大輔自身も何と無く心当たりがある。

大輔「そういえば俺、このジュエルシードって奴に触れた時の光に飲み込まれて…」

フェイト「多分あなたの魔力と共鳴したんだと思います。」

大輔「そうか…」

大輔が途方に暮れたように溜め息を吐いた。

フェイト「あ、あの…」

アルフ「う~ん…」

大輔、フェイト「「!?」」

ブイモン[あ、起きた。早いな]

アルフ「うぅ…頭がグラグラする…」

大輔「無理もねえ…」

ブイモンがアルフに炸裂させたウラカン・ラナ・インベルティダは本来なら頭をマットに叩き付けるプロレス技。
しかしここにはマットなどない舗装された道路。
アスファルトに勢いよく頭を叩き付けられ、よく気絶程度で済んだと逆にアルフのタフさに感心したいくらいだ。

大輔「というよりブイモン。いつ覚えたんだよあんな殺人技?」

ブイモン[前にテレビでプロレスの試合を見てね。1度でいいからやってみたかったんだ]

技を炸裂させたブイモン本人はかなり御満悦の様子。

アルフ「あれ?フェイト。こいつら誰だい?」

正気に戻ったアルフは大輔とブイモンを見ると首を傾げる。

大輔、フェイト「「え?」」

大輔とフェイトはアルフの発言に目を見張る。

アルフ「というかあたしは何でここに?少し前までリビングに…」

ブイモン[あれ?もしかして…]

御満悦の表情を浮かべていたブイモンの顔が引き攣る。
大輔とフェイトも同様に。

ブイモン[もしかして…]

大輔、フェイト「「(記憶が飛んでる!?)」」

アルフ「フェイト?」

顔を引き攣らせているフェイトに首を傾げるアルフ。

フェイト「え?あ、うん。この人は…えっと…」

大輔「大輔。本宮大輔…よろしくな」

ブイモン[俺、ブイモン。よろしく]

凄い罪悪感を感じつつも、取り敢えず自己紹介。

フェイト「この人達は私達にジュエルシードを渡してくれたの」

アルフ「そうかい。あたしはアルフって言うよ~」

フェイトの言葉に警戒を解いたのか、笑顔を浮かべながら自分の名前を言う。

大輔「さてと…これからどうするかな…」

大輔は辺りを見回しながら頭を掻いた。

フェイト「あの…」

大輔「?」

フェイト「住む所がないならうちに住みませんか?」

大輔「いいのか?」

大輔は目を見開きながら尋ねる。

フェイト「はい。沢山迷惑をかけちゃったし。それにジュエルシードを渡してくれたお礼です。」

フェイトは微笑みながら頷いた。

大輔「そっか…じゃあ、世話になるな。」

フェイト「はい。アルフもいいよね?」

アルフ「フェイトがそう言うならあたしは構わないよ。」

大輔「それじゃあ改めて、俺は本宮大輔。今日からよろしくな」

フェイト「はい。私はフェイト。フェイト・テスタロッサ」

少年と少女の運命の出会いは果たされた。



































?「ふう…」

大輔とフェイト達のいる所からかなり離れた所にある家のベランダにいる少女から深い溜め息が吐かれた。
彼女の名前は八神はやて。
彼女は、足が麻痺しているため車椅子生活を余儀なくされていた。
その上、両親も既に他界し、親類と呼べる人もおらず、天涯孤独の身であった。
朝昼は隣の家の人達等が来てくれたりするが、夜は基本的に独りだった。
人前では明るくしているものの、独りの時はいつも孤独に震えていた。

はやて「あ…流れ星…」

はやては流れ星を見つけると即座に願う。

はやて「家族が出来ますように…」

叶わない願いだと分かっているけれど願わずにはいられない。

はやて「あほやなあ…叶わないって分かってるはずやのに…」

どんどん自分がみじめに思えてきて、はやては泣きながら自嘲の笑みを浮かべた。
その時、庭から眩しい光が溢れた。

はやて「な、何や!?」

突如現れた光に驚きながらも車椅子を動かして庭に向かう。
光が収まった頃にはそこに自分より少し年上に見える少年がいた。
はやては少年に駆け寄ると声を上げる。

はやて「ちょ、どないしたんや!?大丈夫なんか!?」

賢「う…ん…ここは…?」

はやて「大丈夫なん?どうしてここで倒れてたんや?」

賢「えっと…君は?」

はやて「あ、ごめんごめん。私、八神はやて言うねん。」

賢「僕は一乗寺賢…あのここは何処かな?何か見たことがないんだけど」

はやて「ここ?海鳴市や」

賢「海鳴市?そんな所聞いたこともないよ。ここは田町じゃないのかな?」

はやて「へ?田町?何やそれ?」

海鳴市のことを知らないという賢の言葉に首を傾げる。

賢「え?」

はやて「どういうことやの?というよりどうして此処に倒れてたんや?」

賢「えっと、僕はここに来る前に田町にいたんだ。でも足元に魔法陣のようなものが現れて…その後のことは多分君が見た通りだと思う。」

はやて「ふ~ん。世の中不思議なこともあるもんやなあ。」

はやては不思議そうな顔をしながら頷いた。

賢「うん。僕もそう思うよ。まさかこうなるなんて思わなかったよ…」

苦笑しながらはやての言うことに同意する賢。

はやて「ところでこれからどないするんや?行くとこあるんか?」

賢「あ…そういえば無いね……」

賢は困ったように言う。
はやては笑顔を浮かべながら口を開いた。

はやて「行く所が無いならうちに住まへん?」

賢「え?」

はやて「私、物心着く前に両親が死んで独りぼっちなんよ…」

はやてが寂しそうに笑いながら呟いた。

賢「(独りぼっち…)」

賢は彼女の気持ちが良く分かる。
今は家族と和解しているがそれまでの自分はいつも家では孤独だった。

賢「それじゃあ…お世話になるよ…よろしくね」

はやて「ほんまに!?やったあ!!えっと…今何歳?」

賢「僕は11歳だよ。」

はやて「それじゃあ私より年上なんやな…えっと賢さん…」

はやては恥ずかしそうに俯きながら口を開いたり閉じたりを繰り返す。

賢「何かな?」

賢は優しくはやてに先を言うよう促す。

はやて「これから賢さんの事、賢兄って呼んでいいですか?」

賢は一瞬彼女の言葉に驚いたが、すぐに微笑んで頷いた。

賢「勿論だよ。僕も君のような妹が出来て嬉しい。よろしくはやて。」

賢は、はやての頭にポンと手を置くと優しく撫でた。
その手の暖かさにはやては泣きそうになるが、花のような笑顔を浮かべた。

はやて「ありがと!!私、お兄ちゃん欲しかったんや!!賢兄、お腹空いてへん?」

賢「ん?ああ、そういえば…」

はやてに聞かれたと同時に腹の虫が鳴る。

はやて「ほな、今夜は腕によりをかけて作るで!!賢兄、早う!!」

はやては車椅子を素早く動かし、凄まじいスピードでキッチンに向かった。
賢は苦笑すると、家の中に入る。
こうして賢とはやての出会いが果たされた。
彼らの物語が幕を開ける。

 
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