俺はやはり間違った選択をした
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彼もまた間違った選択をした
前書き
今回はちょっと長めです
「な、なんであんたがここにいんのよ!!」
バーニングは俺に指をさして驚いているようだがそれが気持ち悪い的な意味だったら俺、ちょっとどころじゃなく悲しい
だが、教室に入ってきてバーニングが放った一言が俺に対しての言葉だったのは意外だった
基本上位カーストの奴らにとって俺ら下位カーストはネタか場を盛り上げる要素にしかなりえないのでこちらのことを覚えているなどほぼ無いことだからだ
実際、俺は名前をハッキリ言われたことは無い
これは友達がいない事は関係していないが説明しておこう
体育などでボールが俺に飛んできたとしよう
勿論、ボールの持ち主は俺に取ってもらおうと名前を呼ぶだろうがそれが
「え、えーと。ハ、ハブタニ君?取ってもらえる?」
なのだ
このクラスにハブタニ君などいない、それに疑問系で人の名前を呼ぶんじゃありません
名前覚えてないって気付いちゃうだろうが
1番ひどかったのはボールを取って渡した後、遠くで
「キモガヤにボール触られちゃったよ」
「誰、それ?」
「あれだよ。あれ」
「あー、あれか」
と言われていたのだ
お前は一体俺のどこに納得してるんだよ
ボッチは基本自分の事についての話題は特に敏感だ
俺のように上位のボッチになると教室内の会話はほぼ聞き分けることができる
これが自分の事になると集音率が3倍に跳ね上がる
因みにトラ〇ザム!!と叫ぶ必要はない
「あなたは確かA組のアリサ・バニングスさんだったかしら?」
「う、うん。そうだけど」
「え、そうなの?」
俺は確かに早乙女がバニングスさんと言ったの聞いた
はて、彼女の苗字はバーニングじゃなかったっけ?
「あなたは同じクラスの人の名前すら覚えられないの?」
「そんなこと言ったらお前だって、なんで他のクラスの奴の名前知ってんだよ」
「一般常識の範疇よ」
もしかしなくてもこいつは全校生徒の名前全部知ってんじゃないだろうか……怖いな、女子って
「心配しないで、あなたのことは1ミリも知らなかったもの」
「ヘイヘイ、そうですか」
俺と早乙女が会話と言ったらいいのかというレベルの会話をしているとバーニング改めバニングスが何か言いたげにこちらを見ていた
「ごめんなさい、これのことは気にしてもらわなくても大丈夫よ。こちらに座って」
そう言って早乙女は自分の横にある椅子を指さしてこちらに来るよう促した
ていうか俺をこれ扱いって……
「あ、ありがとう」
バニングスもそれに従って早乙女の横に座った
彼女は椅子に座ると意を決したような顔つきになり早乙女に言葉を投げ掛けた
「ここって生徒の願いを叶えてくれるのよね?」
「それはちょっと違うわね。正確には叶えるのではなくその願いの達成に向けて手伝うというのが正しいわ」
「じゃあ、その手伝いをして欲しいんだけど」
「それでは、話を聞きましょう」
☆☆☆
「なるほど」
「それをやめさせて欲しいの」
そう言うとバニングスは俺の方をチラチラ見てきた
なんだよ、キモイ奴は死ねって視線で言ってんのかよ
そうだったらマジで泣いちゃうんで違うことを願います
「……それに好きな人にあんましああいうところ見られたくないし」
最後にボソっとバニングスが放った言葉は俺でも聞き取れなかった
俺が聞き取れなかったという事は俺に関することではないのだろう
それはともかく早乙女は顎に手を添えて何か考えている
バニングスが話した内容は聖 亜蘇羅を自分たちから遠ざけるように手伝って欲しいと言うものだった
なんでも日頃から「俺の嫁たち!!」と言ってきたり、嫌だと言っても「ツンデレだなーアリサは」と言ってくるらしい
ていうか自分でツンデレって行ってるあたり完全に違うよな
そして驚く事にこの状態が3年間も続いているらしい
だが、その行動にそぐわず周りからの評価は高いらしい
それがイケメンの銀髪という要素が加わってのものかと思いきやそうでもない
他のクラスの女子に聖のことを聞くと普段からは考えられないような行動をとっているらしい
バニングス達の時とは全く違いほかの女子と接する時は
普段のような言葉使いではないし、むしろ紳士的でとても優しいのだとか
いやはやわからない男である
「わかりました。バニングスさん、あなたの依頼を受けましょう」
「う、うん。ありがとう早乙女さん」
「今日の所はこの辺でいいわ。もう帰ってもらって大丈夫よ」
早乙女がそう言うとバニングスはわかったと言ってバッグを持ち、帰っていった
バニングスが帰ると教室は一気に静かになる、正確には昨日と同じ状態に戻っただな
「羽武谷君」
俺は今初めてまともに名前を呼んでもらった気がする
「なんだ?」
「あなたには今回の依頼でメインに動いてもらうわ」
確かにこれは妥当な判断だろう
クラスが違う早乙女にとって何かをすることは難しい
ならクラスが同じ俺が対処するのが自然の流れだ
「わかったよ」
俺が答えと早乙女は少しびっくりしているようだった
「意外だったわ、あなたがそんなすぐに承諾するなんて」
「無理やりだけど俺もこの部活に入っちまってるんだしやるしかないだろ。私情より効率化を取ったまでだ」
「本当はやりたくないのね」
「そうに決まってんだろ」
誰がこんなこと好きこのんでやるかよ
☆☆☆
次の日、俺はずっと聖のことを観察していた
だが今日は特にバニングスたちに絡むような事はなかったようだ
こんな日もあるのかと思って今日はそれだけで終わってしまった
その日の放課後俺が少し遅れて部活に行くと教室の前で入ろうかどうか迷っている生徒が見えた
そいつは見覚えがあるんてレベルじゃなく確実に知っている奴、今日俺が1日中観察していた男である聖だった
俺は後ろから近づいていき声をかけた
「お前何してんの?」
「うわぁ!!、ビックリした。変な人に声をかけられたかと思ったよ」
こいつ失礼なやつだな
せっかく俺が声をかけてやったのに、これだからリア充共は嫌いだ
「ところで羽武谷、ここって相談補助部であってる?」
今こいつはなんと言った?
「い、今俺のことなんて呼んだ?」
「羽武谷だけど」
やっぱり訂正
こいつはいい奴だ、俺の名前を間違わずそれに加え覚えているやつが悪いやつな訳が無い
「そ、そうか。それよりここは相談補助部で間違いないぞ」
「教えてくれてありがとう。もしかして羽武谷ってここの部員?」
「そうだけど」
すると聖の顔は安心したようなものになった
「そうなんだ。良かったよ、顔も知らない人たちに相談するのって少し抵抗があって」
「まぁ、一旦中に入れ」
俺はそう言ってドアを開けて中に入った
早乙女はいつも通りに中に入ってきた俺に視線を向けていたが俺の後ろにいる奴を見て、お前は何をやらかしたんだと言った顔をしている
「羽武谷君、説明を」
「依頼人だよ」
早乙女は怪訝そうな顔をして俺と聖に視線を向けた
それはそうだ、昨日バニングスにあんなことを聞かされたぐらいだ
すぐに信用しろというのが無理だろう
「……一応要件を聞きましょう」
「端的に言うと彼女たち、高町さんたちと距離を置きたいんだ」
その言葉を聞くやいなや俺と早乙女は言葉を失ってしまった
今、聖が言った言葉はいつものあいつの行動と辻褄のあわない事だからだ
そして俺は一つの結論に至ったが早乙女は先にそれを口に出した
「もしかしてと思うけど、気にかけさせるためとかなの?」
「ち、違うよ!」
「じゃあ、何が目的?」
「だから、さっき言った通りだよ」
そう言われると早乙女は脚を組み直して顎に手を添えて数秒間考え込みそのあとまた話を続けた
「では、あなたの言っている通りだとしてあなたにはメリットがあるの?」
「俺にメリットがあるかどうかはわからないけど彼女たちにはメリットがある」
「それでは説明になってないわ」
それを言われると聖は少し考え込むような仕草を見せた後こちらを真っ直ぐ見てこう言い放った
「実は俺……転生者なんだ!」
「「……はぁ?!」」
とんでもないことをいってきやがった
こいつは新手の中二病か?
俺でさえ一瞬思考がショートしそうになった
早乙女はというとこめかみに手をやり呆れたような顔をしている
「羽武谷君、後はよろしく」
早乙女はそれだけ言って教室を出ていってしまった
俺も実際、外に出ていきたくなるような心境だったが一応話だけは聞いてみることにした
☆☆☆
始まりは小学3年生の時だったらしい
ジュエルシードと言う魔法の石を集めるのに協力した時彼女たち、高町や香山に出会ったそうだ
聖がこちらに転生してきたのは5歳の時
それまでここは所詮アニメの世界だと思ってたようだ
だが、彼女たちと話していくことでこの世界の人達も一生懸命生きていることを実感したらしい
それと同時に自分はこの世界の主人公にはなれない、この世界のオリジナル主人公は香山だと悟った
そして、そのあと八神たちと知り合い一通り事件が終わったとことで聖はある決心をする
自分はどうせ主人公にはなれないのだからせめて彼ら彼女らの手伝いをしようと思ったのだ
そこで聖に影響を与えたのがネット小説の転生ベースの物語
その中には踏み台転生者というのが出てくるらしいのだが、いわゆる噛ませ犬役的な立ち回りでオリジナル主人公を引き立てるものらしい
それを小学5年から続けて来たようだ
その意思の固さには驚くが魔法伝々の事については多少お粗末な点が見受けられる
第一に一般人に無闇やたらに魔法の事は話してはいけない、その上俺も本局通いの時は多少PT事件の事や闇の書事件のことは聞いているがそれは外側の事であって内容を深く知るわけではない
なので悪用されないためにも事件の内容は厳重に秘密管理しなくてはならないのだ
今では嘱託魔導師まで落ちた俺にはほとんど関係のないことだが
まぁそこは1万歩譲って許すとして転生の事についてはさっぱりだ、気にしないでおこう
「で、結局どうしたいんだ」
「そろそろこの役も用済みかなって思ってね。だからもう彼女たちには関わらないようにしようと思うんだ」
「それはもう最初に聞いた。俺らはどうするのかって話しだ」
「羽武谷君には俺となるべく教室で一緒にいてほしんだ」
なるほど、確かに聖にとっての目的はバニングス達と関わらないことだ
だがそれを急に実行してみるとしよう
普段から聖に嫌がらせと言う名の引き立てをやられてきたのだ
何かを企んでいると思われるというのが自然だろう
そこで必要になるのが俺というわけだ
誰か男友達と話しているのなら怪しまれないし、急に話しかけなくなってもその男友達に興味が行ってるのだと思ってくれるという魂胆だ
「なるほど、そう言う事か」
「だから、頼めるかな?」
「ああ、わかったよ。早乙女には俺から説明しておく」
俺がそういうと聖は嬉しそうに微笑んだ
なんだか腑に落ちないがバニングスの件も聖の件もこれで一気に方が付く
聖はその後また明日と一言言ったあと教室を出ていった
俺はその後椅子に座り本を読んでいたがしばらくすると早乙女が帰ってきた
「聖君の件はどうだった?」
「一応なんとかなったよ。俺が今後一定期間あいつとつるむ事になったけどな」
早乙女はそれを聞くと無言で自分の席に座った
その後、俺をチラチラと見てきたもので俺も何故か居心地が悪い
まだ出会って2日だが早乙女雪乃については少しわかってきたことがある
彼女は往々にして正しく、嘘をつかない
そんな俺が少し見てきた程度の彼女だがそれが今は何故か違うもののように感じている
「え、えっと。その、聖君の件をあなたには丸投げしてしまってごめんなさい」
俺の感じている違和感はどうやら新しい彼女の姿をみていたからなのだろう
もはや早乙女から謝罪をされるとは思っていなかった
やはり彼女は嘘をつかない
こんな俺にもすまないことをしたと思って謝る彼女の姿に少しばかり俺は惹かれてしまった
「別に大したことじゃねぇよ。俺がやろうと思ったからやっただけだ」
「そう、それなら良かった。今気づいたのだけれどあなたに謝るのってこんなにも屈辱的なのね」
「うっ……」
早乙女はにこやかに笑いながらとんでもないことを言ってきた
訂正、惹かれたと言ったのは間違いだ
こいつの容姿に少し惑わされただけだったんだ
やはりこいつは悪魔に間違いない、人がせっかく評価を変えようとしている時にこんなセリフを吐くなんて
彼女の善意に俺の善意を持って返したのが間違いだったのだ
いつも通り、俺はやはり間違った選択をした
「でも、ありがとう。羽武谷君」
だが、またひとつわかったことがある
早乙女雪乃は本当に嘘をつかないことだ
後書き
長くなりましたが最後まで読んで頂きありがとうございました
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