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【銀桜】3.モンハン篇

作者:Karen-agsoul
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第5話「メールに絵文字がないと怒ってるみたいに見える」



“グガアアアアアアアア!!”

 二匹の神獣が少女に迫る。
 助けようにも距離がありすぎて、銀子たちは見ていることしかできない。
 少女の手には大鎌。だが間近過ぎて、回避も反撃も間に合わないだろう。
 結末は目に見えており、誰もがそうなると疑わなかった。
 だが――

【え?】

 神獣たちの拳が少女に直撃する瞬間――消えた。
 『シュ』
 擬音語で表現するならこの言葉が最適だ。
 閃光も爆発も何も起こらないまま、神獣アクロスガーズは粉々になって空中へ消えた。
 一体何が起きたのか、さっぱり分からない。肝心の少女は何事もなかったようにただ微笑んでいるだけ。銀子たちはしばし沈黙するしかなかった。
【今どうなった?】
 呆然とする銀子から疑問がもれる。
【消えた…(神獣アクロスガーズ×2は少女を襲う寸前、塵と化して空中へと消え去った。だが少女は何事もなかったかの様に微笑んでいるだけだった)】
【()で地の文リピートすんなァァァ!いらねーんだよ!!】
 ぱっつぁんのツッコミが炸裂する隣で、銀子は先ほどの光景を思い出す。
 どんな攻撃をしたのか不明だが、少女が只者でないことは確かだ。
【とんでもなく強ぇハンターっぽいな。おい誰か勧誘しろ】
【私が話しかけてくるヨ】
【馬鹿ァ!!おめーみてェなゴッツいおっさんが行ったらドン引きされんだろォが!!】
 慌ててカグーラを連れ戻し、銀子は地味メガネに目を向ける。
【よし。ぱっつぁん、おめー行け】
【え?僕!?】
【おめーが見た目一番平凡で勧誘し易い。あんな可愛いキャラだ。大丈夫だって。頼む、300円あげるから】
 百円三枚だけもらっても正直困るが、カグーラは見た目からNGでフルーツポンチ侍Gもとい桂は余計話をややこしくするだけだ。
 この場合、平凡な容姿の方が変な先入観もなく勧誘しやすいのかもしれない。
 ぱっつぁんは銀子の頼みに頷いて少女の元へ向かう。
 近寄ってみると、身長は銀子たちの半分にも満たない小柄な幼女だった。
 だが手に握られてるのは、持ち主を遥かに超える長さの大鎌。
 あまりのサイズ差に違和感を抱きながらも、ぱっつぁんは人の良さそうに声をかけた。
【あのー初めまして。僕ぱっつぁんです。あなたは?】
 大きな瞳と朱色に染まった頬。踊り子のような服装の腰に巻かれた大きなリボン。
 キュンとなるほど可愛い外見だが、それは集会場や今まで出会ったハンターと全く共通点がない。むしろこの世界観と明らかに場違いな容姿である。
別ジャンルのゲームを思わせるような姿の少女は、愛らしい表情で名乗った。
【螺鬼ちゃんで~す♪】
 まるで暴走族みたいな名前表記は、キュートな容姿とかなりミスマッチしている。その激しい《ギャップ(差)》に戸惑いながらも、ぱっつぁんは愛想良く返事した。
【凄い漢字ですね。なんて読むんですか?】
【はぁ?こんな漢字も読めないなんてアンタは幼稚園児の鼻垂れガキ以下だね~★】
 ささいな質問に愛らしい笑みのまま放たれる容赦ない毒舌。
 名前を尋ねただけでどうしてこんなに叩かれるのか。ぱっつぁんの心はズシリと重くなる。
【『ラキ』ちゃんだょ♪おぼえておいてね、駄メガネちゃん】
【僕、ぱっつぁんって名前なんだけど】
【だまれぇ★個性も欠片もない駄メガネが~♪】
【見た目で決めつけんなよ!】
【だってさ~あんたのアバター単純パーツの塊じゃん♪センスもかけらもないょ~】
【みんなにわかりやすく……】
【わかりやすいって印象残らないよね☆ほら、やっぱり個性ないじゃん◎ハイ決定~♪ていうかアンタのことなんて誰も見てないから、そんな気遣い無用だょ~】
 ニコ~と天真爛漫な笑顔の螺鬼。この無邪気さが、少女の口からでるキツい台詞の激しさを余計強調している。こういう時は何を言っても跳ね返され、余計傷つくだけだ。
 なんだかこの毒舌具合には身に覚えがあるが、とりあえずぱっつぁんは銀子に相談するため螺鬼を連れて戻った。
 


〈=サークル会話ON=〉
【銀さん。勧誘なんて無理ですよ。完全に見下されてますよ】
【ユル顔したとんでもねェ奴だな。だが奴の強さは未知数だ。見ただろ、モンキーが瞬殺されんの。仲間にすりゃ金儲けも楽勝だ】
【その前に僕のメンタルが楽勝に瞬殺されそうですよ】
【大丈夫だ。あとは任せろ、ぱっつぁん。悔いなく逝け】
【犠牲になれってか!?おい!!】
【なんにせよ、あのガキがどんだけ強ェか知っとかなきゃな】
〈=サークル会話OFF=〉

 銀子は螺鬼に歩み寄って尋ねた。
【おい、ガキ。強さどんくらいだ?】
【ステータス表でチェックチェックぅ~♪】
 螺鬼がにこやかに答えると、プレイヤーの能力を示すステータスが表示される。
 神獣二匹を瞬殺してしまうほどの腕を持つ少女のステータスはMと同等の数値。
 ……と、予想していた。





























【なんだこのステータスぅぅぅぅぅぅぅ!!】
【Mを遥かに超えているだとォ?!(愕)】
【最強ってレベルじゃねぇぞ!パラメーターわかっても未知数だよ!!】
 驚異の数値に誰もが驚きの悲鳴を上げる。その中で最も驚いていたのはMであった。
 だが混乱していても何もわからない。Mは冷静になって考える。
 このゲームは限界突破してもステータスは五桁までしか存在しない。
 なのに、螺鬼のステータスは八桁。つまり千万単位の数値を表示している。
 これほど驚異の数値を持つハンターなら、自分のように伝説になっているはずだ。
 だがそんな話も、『螺鬼』という名すら今初めて知った。
 だとしたら一体――

【【【【【一体コイツは何者なんだ!?】】】】】

=つづく=
 
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