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とある3人のデート・ア・ライブ

作者:火雪
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第五章 楽園
  第14話 支配者

 
前書き
どうも。ラーフィです。
手がかじかんで思うように話が進みません……誤植も多いし……

あ、もうすぐ凜袮編が完結しますので。

それでは本編をどうぞ! 

 
〜士道side〜

次の日、昨日の琴里の言葉が頭から全く離れなかった。

気づけば凜袮を目で追ってるし……気持ち悪がれたかな……?

そういや、どうしてこんなにも凜袮が気になるんだろう……

凜袮「しどー!支度出来たー!?」

と、玄関で考えていたら外から凜袮の声が響いた。

士道「あ、今出るって!」

俺は考えるのをやめてドアを開いて、凜袮の方へと向かった。




何でこの時気づかなかったんだろうな。


先日のデートに上条当麻も一緒にいたことを。



ーーーー
ーーー
ーー



上条「おせーぞ士道」

士道「悪い悪い……そういや、琴里や佐天さんは?」

凜袮「琴里ちゃんが日直だからって先に行っちゃったよ」

士道「そ、そうか……」

上条「んじゃ行くか」

凜袮「うん!」

いつもの日常だ。3人で登校するのも大分慣れてきたし。

凜袮「ねえ、士道。今日の放課後もいいかな?」

士道「え?……あ、あぁ……凜袮のお願いなら……」

その時の士道は、少し動揺していた。

凜袮「ありがとう。じゃあよろしくね」

上条「テスト前に何やってんだよ」

凜袮「もちろん当麻も同伴だよ?」

上条「なっ……不幸だ……」



士道が覚えた違和感は、消えることはなかった。



ーーーー
ーーー
ーー




放課後になった。

時間がやけに経つのが早く感じるのは気のせいだろうか。

それはともかく凜袮とのデートを楽しむか。



楽しめるかどうかは不安だけど。



ーーーー
ーーー
ーー



公園にて。

士道「なあ凜袮」

凜袮「ん?」

士道「なんか、ゴメンな……昨日は……」

凜袮「ううん……私が悪いの……ゴメンね?」

士道「いや、その……」

凜袮「……」

沈黙。

幼なじみと話していてここまで気まずくなったのはいつ以来だろうか。もしかすると初めてかもしれない。

士道「そういや上条は?」

凜袮「なんか用事が出来たからって……」

士道「そ、そうか……」

とても気まずい。

でも。

だから。

士道は考えていた。そして言った。

士道「昔よく琴里と3人で遊んだよな……」

凜袮「そうだね。ブランコ一緒に乗ったり、ベンチに落書きしたり……今となれば貴重な思い出だね」

士道「確かに、琴里に二人乗りをせがまれた時は困られたな。それでさ凜袮」

凜袮「ん?」





士道「その時、お前は何で遊んでたっけ?」






凜袮「え……」

その時、士道は目線を空へと動かしていた。

凜袮「ほ、ほら……やっぱりアレ……かな?」

彼女が指差したのはブランコだった。

士道「……やっぱり思い出せん」

頭をクシャクシャかきながら凜袮のほうを向いた。

凜袮「やっぱりもう駄目なのかも……」

凜袮は誰にも聞き取れないような小声で呟いた。

士道「え?」

凜袮「忘れてるんじゃない?士道ってば忘れっぽいところあるし」

士道「そ、そうか……だとしたらゴメン……幼なじみ失格だよな……」

凜袮「そんなことないよ。あ、お詫びに私の行きたいところ行っていい?」

士道「あぁ、もちろん!」

凜袮「ありがとう。じゃ行こっか」



その時の凜袮の顔は、もしかすると今までで一番輝いている笑顔で、でもどこか悲しいような、そんなことを思わせる笑顔だった。


ーーーー
ーーー
ーー



士道「行きたいところってここだったのか」

着いたのは以前、肝試しをした場所だった。

そして、そこには……




上条当麻がいた。





士道「か、上条?」

彼はこちらに気づいてないかの様に、池の方をずっと眺めている。

何でここに上条がいるのか、それを聞こうと彼の方へ行こうとした時、

凜袮「ねえ、士道。一つ聞いていい?」

まるで止められたかのようなタイミングで凜袮が話しかけてきた。

凜袮「士道さ、デートの時、たまにぼーっとしてる時あるけど……どうして?」

士道「それは………よぎったんだよ」

凜袮「よぎった?」

まだ笑顔を崩さない凜袮。

士道「デジャヴかと思ってたんだけど……前にも似たようなデートをしたなぁ……って思ってさ」

凜袮「似たような……?」

士道「変なこと言ってるのはわかってる……でもーー」

士道が何かを言おうとした瞬間、

上条「なあ、士道……」

完全に空気化してた上条が突然話しかけてきた。

上条「掛け違えたボタンを押してしまった時……お前はどうする?」

士道「何を言ってーー」

彼はその時見てしまった。



上条の今まで見たことのない顔を。




それは、複雑なことを考えていて、それがとても悲しい結果を生むと知ったような……そんな顔だった。

上条「その時さ、思わないか?……やり直せればいいな……ってさ」

士道「一体何の話を……」

上条「……いや、何でもない。今のは忘れてくれ」

上条はまた目線を池へと移した。その横顔はやっぱりどこか悲しそうだった。

士道「何だよ、あいつ……」

凜袮「士道、私ちょっと行きたいところあるから、少しだけ待っててくれる?」

凜袮が上条に視線が行っている士道に言った。

士道「あ、あぁ……」

凜袮「ゴメンね。少し気をつけた方がいいかも」

士道「え?何で謝って……」

その答えを聞く間もなく、凜袮はどこかへ行ってしまった。


ーーーー
ーーー
ーー



士道「凜袮のやつ、遅いな……」

かれこれ20分近く経っている。上条もその間ずっと自分の右手を見たり、空を見上げたりしていたが動く気配は全くなかった。

士道も上条と同じく空を見上げたーー


その瞬間、



辺りが紅く染まった。



士道「な、何だ!?」

電球を赤シートで覆った時にその辺りが紅く染まるのと同じように、湖も、木も、地面も、空も、不自然な赤色になっていた。

そして、

士道「うわっ!……な、何だ……!?」

空が突然切り裂かれたかと思うと、その裂け目から出てきた人物がいた。

士道「お前は……夢の中の……!」

修道女のような服を着て、顔を薄いマントで覆い、そして冠を着けている女がそこにいた。

?「そう……私はお前と……そして上条当麻と夢を共有していた」

士道「上条とだと!?」

思わず上条が先ほどまで″いた″場所へと向く。

士道「いない……?」

そこに上条当麻の姿はなかった。





まるで自分だけが別の世界にきたかのように……





士道「お前は精霊なのか……?なぜ俺を狙う……?」

?「貴方が知る必要はない。もうすぐ忘れるのだから……」

そう言った直後、

その女は手を前にかざし、赤色の球体を創り出した。

士道「ッ!!?」

?「さらばだ五河士道。次こそは幸せな夢を……」

激しい光の奔流があった。

その時、士道は死の危機を感じた。

そして、思い出した。



凜袮との日々ではなく、




みんなとの日々を。






十香と一緒にパンを食べた。

折紙と一緒に勉強した。

四糸乃にアイスを奢った。

遊び疲れた琴里をおんぶして家に帰った。

狂三の優しさを知った。

佐天さんと一緒に服を買った。

一方通行は兄のような頼もしさがあるのを思い出した。

上条は不幸だけど、その分とてもお人好しだということを改めて実感した。





みんな大切な人だ。

そんな人を残して……死ねる訳がない……ッ!!



ーーーー
ーーー
ーー



士道は激しい光の奔流を受けたーー



そのハズだった。







??「全く、間一髪だったわね」

士道が振り返ると、そこにはーー


十香

四糸乃

よしのん

狂三

琴里

折紙

佐天

一方通行




このメンバーがここに集結していた。


琴里「危なっかしくて見てられないわ」

精霊姿になっている琴里が呆れるように言った。

士道「……悪かったな。でもどうして……」

そして、この状況に一番驚いているのは、士道ではなかった。

?「何故……どうやってここに……〈凶禍楽園(エデン)〉に干渉できるはずが……」

夢の中の女はとても驚いていた。

十香「全ての元凶があいつなら、さっさと倒すぞ!」

琴里「そうね。精霊達の暴走も止まるしね」

勝手に話を進められたが、士道はそれよりもやることがあった。

士道「ま、待ってくれ!もう少しだけ時間をくれないか?俺は何も知らないままで終わりなくないんだ!」



自分を狙う目的を知ることを。



十香「む、シドーがそういうなら……」

琴里「こういう時だけ頑固なんだから」

士道「悪いな……」

士道は女の方へと向き直り、そして言った。

士道「お前は何者だ!?何故俺を狙う!?」

夢の中の女は、ゆっくりと呟くように答えた。

ルーラー「我が名は〈支配者(ルーラー)〉、この楽園を管理する、神たる存在……」

士道「神……」

ルーラー「そして、あなたはここで何をしてもいい。十香と契りを結んでも、琴里と並び歩くことを選んでも、折紙の傍にいることを誓っても、四糸乃との日々を過ごしても、狂三と一緒に生きることを誓っても涙子と一緒に学園都市で暮らすのも……いい」


っ!?



何故かは分からないが、全てのことが記憶にある。



俺は最近ずっと凜袮だけを見ていたような気がしていた。

だが、


″それと同じ日に別の誰かもずっと見ていた″



それは、

十香、四糸乃、狂三、琴里、折紙、佐天。

全員だ。



一度、6月24日から今日までの出来事を全て体験したんだ。


それは、全てルーラーの手によって″なかったことにされた″


それでも頭のどこかで残っていたんだ。


それが凜袮の時のデジャヴだろう。

そして、恐らくみんなも……


十香「な……シドーと分かち合った?……この記憶は……?」

琴里「士道が、私を選んでくれた……?」

折紙「不思議。士道の暖かさが残ってるような気がする」

四糸乃「士道さんと一緒、に……がんばり、ました……」

狂三「士道さんは、私に……たくさんのことを教えてくれましたわね」

佐天「何で私、士道さんと……」

士道「みんな、覚えて……!?」

一方「………何がどうなってやがる?」

全てなかったことにされた記憶が蘇った。

ルーラー「この楽園だからできること。どんな夢でも見せてあげる。真実を知らない限りは……」

士道「しん、じつ……?」

ルーラー「あなたは知りすぎた。そして″上条当麻も″……だから消さなくてはならない」

全員『!!?』

上条の名前が出た瞬間、みんなが驚愕した。

それこそ、いつも不敵な笑みを浮かべている狂三でさえも、それを無くしてしまうぐらいに。

士道「そ、そうだ……上条とお前はどういう関係なんだ!?」

ルーラー「彼は知ってはいけない真実を″知る他なかった″。だから彼は私に協力した。だがそれも終わり……」

士道「知る他なかった……?どういうことだ……?」

それにルーラーは答えない。

と、

一方「あの野郎の右手が絡ンでンのかァ?」

吐き捨てるように一方通行が言った。

だがルーラーはそれを無視して言った。

ルーラー「私は貴方を殺し、再び楽園を創る。そうすれば……また……」

プチン。と、士道は頭の血管が切れるような音がしたような気がした。

そして言った。

士道「ふざけんな!人を殺しておいて楽園だと!?それのどこが楽園だって言うんだ!確かにその楽園は幸福で満ち溢れているかもしれない……でも人間は絶対ミスを犯すものなんだ!それを乗り越えてこそ、強くなれるんだ!だから……」



士道「殺させない。ここにいる全員をだ!」



啖呵を切った、というのが正しい表現だろう。

でも。

だから。

十香「シドー……」

折紙「さすが士道。いいことを言う」

四糸乃「士道、さん……!」

狂三「あら、言ってくれるじゃありませんの」

琴里「随分、大口叩いたわね」

佐天「なんか、上条さんみたい……」

一方「ハッ……くっだらねェこと言いやがってよォ……」



士道の言葉に不快に思う人はこの場に一人もいなかった。



ルーラー「五河士道が、この楽園を否定した……?」

ルーラーは攻撃しようとした手を止めて、震える声で呟いた。

ルーラー「………否定されたなら、もうこの楽園は必要ない。役割を果たさない」

士道「役割……?」

その刹那、


大地が大きく揺れた。



士道「な、何だ……?空間震か!?」

ルーラー「〈凶禍楽園(エデン)〉が啼いている……もうすぐこの世界は死を迎える」

士道「なん、だと……?」

ルーラー「もうすぐこの世界は終わる……もう一度よく考えて……?それでも否定するなら……私を、殺しにいらっしゃい……」

ルーラー「〈凶禍楽園(エデン)〉が死を迎えるその前に……」

その瞬間、


ルーラーは消えて、元の世界へと戻ってきた。




ーーーー
ーーー
ーー



だが、

そこは、天宮市は、


まるで別世界のようだった。


川や、木や、建物や、地面が、世界が、赤く染まっていた。


その中で一番変化を遂げていたのは新天宮市タワー。

赤く染まるだけではなく、大木の根っこのようなものがタワーに絡みついている。

そして、その天辺には赤い球体が空に向かって光を放っている。

士道「あれは……新天宮市タワーなのか……?って、みんなは!?さっきから凜袮とも離れ離れだし……」

無事……だよな、凜袮……

そうだ、そうに決まってる。まさかあの凜袮がーー

琴里「士道!戻ってこれたの!」

振り向くと、そこには琴里がいた。

霊装を解いた状態で。

琴里「みんなは無事よ。でも天宮市がおかしいわ。特に新天宮市タワーは特に、ね」

士道「そうだな……」

狂三「あら?心配ごとはそれだけでして?」

士道「狂三……今は味方って考えていいのか?」

狂三「少なくても、今の当麻さんよりは信頼できると思いますわよ。もちろん、信頼してくれなくても構いませんけど」

言われてみればそうだ。未だに上条の目的も分かってないし……

士道「分かった。俺はお前を信じる」

狂三「……どういう心境の変化かは知りませんけど、それはそれで構いませんわ。それより、あなたはどうするんですの?いつまでも睨まれていては疲れてしまいますわよ」

狂三が見ている人物は、琴里だった。

琴里「士道がそう言うなら何も言わないわ。利害が一致している間は信用してあげる」

狂三「そうですの」

と、突然。

狂三と琴里の間を切り裂くように出てきた人物がいた。

十香「士道!大事はなかったか?」

霊装姿の十香だった。

士道「俺は大丈夫だ。十香も大丈夫か?」

十香「うむ!」

士道「そうか。なら良かった。四糸乃とよしのんも大丈夫か?」

四糸乃「はい……!士道さん、が……無事で、良かった……です……!」

士道「おう。よしのん、四糸乃のこと、頼んだぞ」

よしのん『全く……調子がいいんだからー。ま、よしのんがいるから大丈夫だけどね』

その言葉を聞いて、士道は笑みを浮かべた。

士道「折紙も……なんか巻き込んじまってゴメンな」

折紙「構わない。ルーラーが精霊ならやる事は同じ」

ASTの服に武装した折紙はとても頼もしく見えた。

士道「佐天さんと一方通行は大丈夫か?」

佐天「大丈夫ですよ」

一方「その言葉、誰に向かって言ってンのか分かってンのかァ?」

士道「お、おう……」

と、とりあえずみんな無事ってことが分かったから良しとしよう。

琴里「で、どういうことなの、士道」

士道「どうって……」

士道は今までの経路のことを全て話した。凜袮がいなくなってることも。

琴里「凜袮が?……それは心配ね。それで?他に気づいたことは?」

その時、



士道は園神凜袮とルーラーの二つの顔が浮かんだ。

まさか……な。



士道「いや………何も、ない……よ」

琴里「………ま、そういうことにしてあげるわ」

だが、

まだいくつかだけ分からないことがある。



ルーラーの目的。

上条当麻の真意。


……確か、ルーラーはこう言っていた。



″真実を知る他なかった″……と。



その言葉を聞いて一方通行は言っていた。



″あの右手が絡んでいるのか″……と。



確かに俺は上条の右手には驚かされた。

十香の斬撃も打ち消し、四糸乃の氷の結界も打ち消し、そして狂三戦では右手がドラゴンにもなった。

俺は十香達を助けるのに精一杯で、結局右手のことはずっと聞いてなかったんだ。



もしかしたら、あの右手はーー



と、何か解けそうな気がした瞬間。


ぐらっと、身体が揺れた。


士道「な、何だ……!?」

正確には士道だけではない。地面全体が揺れていた。

琴里「士道、時間がないわ。行くわよ。敵の城へ」

みんなが頷く。新天宮市タワーでルーラーが待っていることに。

琴里「本当なら、再生能力がないあなたに行かせたくはないのだけれど……ルーラーが精霊なら封印できる可能性があるしね」

士道「そうだな。目指すは新天宮市タワー。あそこにルーラーが待っている!」

顔を引き締め、そして気合を入れた。

狂三「その前に、あの結界をなんとかしないといけませんわよ」

士道「結界?」

琴里「さっき試したんだけど、新天宮市タワーの周りには外壁に結界が張ってあるの。それが外敵の進入を拒んでいるわ」

狂三「結界の要を破壊しないと前には進めませんわ」

士道「結界の要……って覚えてるのか狂三!?それに十香と折紙も……」

十香「結界とはあのタワー前のモニュメントのことだろう?」

折紙「池の取水塔で変な敵に襲われた。あれも要?」

狂三「ラストは神社ですわね。この三点が結界を支えている要、なのでしょう?」

琴里「そうね……」

そう言った時、


琴里は霊装姿になった。


琴里「役割分担が必要ね」

もちろんそれは結界の要を壊す分担。

タワー前のモニュメントは四糸乃とよしのん。

取水塔は折紙。

神社は狂三。

琴里、十香、佐天、一方通行は結界の要を壊すまで士道を守り抜くこと。


各自、自分のすべきことを確認し、移動した。






さあ、戦う時がきた。




世界を救うために。









 
 

 
後書き
とある3人のデート・ア・ライブもこの話でとうとうトータル50話になりました!読んでくださってるみなさん、本当にありがとうございます!!これからも作者、作品ともによろしくお願いします!!(この話で凜袮ユートピア完結したかったとは言えない……)

クリスマスまでにあと2話は投稿したいと思います。

ではでは〜 
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