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美しき異形達

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第三十話 南海においてその六

「そこの奥さん達って皆自分から進んで動いててさ、お掃除だって真面目にそれこそ誰にも言われないうちにはじめているの見てて」
「薊ちゃんもなのね」
「動く様になったんだよ」
「そうだったのね」
「ああ、そういえば天理教だけれどさ」
 その宗教の話もだ、薊はするのだった。
「学校の中にも教会あって町にもでかい教会あるな」
「あっ、八条分教会ね」
 菊がすぐに応えてきた。
「あの教会よね」
「あの教会そうした名前なんだな」
「そうよ、あそこの娘さん一番上の人は大学生だけれど」
 薊はその教会のことをさらに話す。
「天理の方におられるの」
「天理教のかよ」
「本部がある場所ね」
「じゃあ本部で修行中かい?娘さん」
「天理教じゃお仕込みっていうそうよ」
 その修行のことをとだ、菊は薊にこのことも話した。
「それをしてもらっている最中らしいわ」
「そうか、じゃあ将来は」
「お婿さん迎えて教会を継がれるそうよ」
「いい旦那さんだといいな」
「そうね、その人小柄でね」
 菊はその人の容姿のことも話した。
「黒のショートヘアで垂れ目で八重歯で」
「可愛い感じの人なんだな」
「そうなの、童顔でアニメ声で」
「もてそうだな、そりゃ」
「そうね、何でもあっちでも高校生の子によく声をかけられてるそうよ」
「年下なのね」
 菫が菊の説明を聞いて言った。箸には焼きそばがある。
「趣味は」
「いや、何でもしっかりした人が好きらしいけれど」
「その高校生の人しっかりしてるの?」
「何かその人のお話だけれどね」
「娘さんのね」
「ええ、高校二年生でね」
 つまり薊達と同学年だ。
「奈良で生まれ育ってて背が高くて適当で能天気な子らしいわ」
「あまりしっかりしたタイプでなさそうね」
 菖蒲はここまで聞いて言った。
「それだと」
「そうお話してたわ、弟みたいって」
「弟さんなのね」
「その人妹さんが二人おられるけれど」
 つまり三人姉妹の長女である。
「弟さんいないから複雑なお気持ちみたいよ」
「三人姉妹ですか」
 桜も焼きそばを食べつつ話す。
「それでしたら私と同じですね」
「ああ、そうだよな。そういえば」
「はい、私も三人姉妹の長女です」
 養子だがそれでもはっきりとだ、家族からそう言われているのだ。
「そしてその方もですね」
「跡継ぎさんなのよ」
「そのことも同じですね」
「そうね、だから桜ちゃんも」
「やがては旦那様をお迎えして」
 そして、というのだ。
「お店を切り盛りしていくことになります」
「もう決まってるのよね」
 菊は桜本人に問うた。
「そのことは」
「はい、両親に告げられています」
 はっきりとだ、そう言われているのだ。
「私が跡を継ぐと」
「そうなのね」
「妹達も認めてくれています」
「それはいいことね」
「最初は養子なのに、と思いましたが」
 他ならぬ桜自身が最も自覚していることだ。何しろ自分自身のことなので自覚せずにはいられないことだからだ。 
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