戦国異伝
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第百八十六話 国崩しその十一
「戦う者があれば攻めてな」
「そうしてですな」
「進んでいきますな」
「備前は元々毛利の治める国ではありませんでした」
こう言って来たのは黒田だった。
「言うならば従っている者達です」
「その通りじゃな」
「国人達が多く」
「そしてその中でも」
「宇喜多氏の存在が大きいです」
「実質的に備前を治めておるな」
「はい、ですからあの国は」
備前はというと。
「宇喜多氏がどうかです」
「あの家をどうするかじゃな」
「そうです、宇喜多氏が戦うならば」
「他の国人もじゃな」
「毛利家に従い攻めてきます。実際に毛利の軍勢も備前におります」
「三兄弟が率いておる軍勢じゃな」
「毛利元就はまだ出陣していませんが」
それでもだというのだ。
「しかし」
「三兄弟が出て来ておるからな」
「油断出来ませぬ。その数は三万です」
それだけの軍勢が備前にいるというのだ。
「まずはその軍勢との戦になるかと」
「左様か」
「毛利の軍勢は六万です」
総兵力にしてだ。
「そのうちの半分がおります」
「大きいのう」
毛利にとってはだ。
「その三万を破ってじゃな」
「そのうえで」
「備前をどうするかじゃな」
「まずはその三万の軍勢と戦いましょう」
彼等をというのだ。
「そして彼等を破れば」
「備前の国人達もじゃな」
「宇喜多氏も」
その彼等もというのだ。
「織田家に戦わずして降るでしょう」
「そうなるな。ではな」
「よし、それではじゃ」
黒田と話してだ、そしてだった。
信長は軍勢を西にさらに進ませた、そうしてそのうえで備前に入ろうとしていた。その動きは毛利家にも伝わっていた。
毛利軍は木津川口で敗れてすぐに安芸に戻り今度は陸から東に進んでいた、そして備後備中からさらにだ。
備前に進んでいた、その中で隆元は織田軍の話を聞いて言った。
「左様か、もう来たのか」
「はい、本願寺は織田家に降り」
「幕府もじゃな」
「滅びました」
「最早憂いはないか」
織田家にとってだ、後ろのだ。
「では我が家ともか」
「安心して戦うかと」
「武田や上杉が動くには」
隆景が言う、元春もいる。
「まだ時があります」
「だからじゃな」
「はい、織田軍はこのまま」
「こちらに来てじゃな」
「我等との戦に入るでしょう」
間違いなくだ、そうなるというのだ。
「そして備前で」
「そこでじゃな」
「戦になります」
そうなるというのだ。
「間違いなく」
「我等は三万」
ここでだ、隆元は自分達が率いる軍勢の数を言った。
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