戦国異伝
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第百八十六話 国崩しその九
「そしてです」
「怪しい者を近寄せませぬ故」
「頼むぞ」
信長はその四人に確かな声で告げた。
「そして誰もがな」
「毛利の謀にはですな」
「気をつけるべきですな」
「うむ、何かあればそれで危うくなる」
それでだというのだ。
「だからよいな」
「では殿」
今度は松永が言って来た。
「この度の戦では陣中に忍の者を何重にも配し」
「そうしてというのじゃな」
「守りを固めるべきかと」
こう信長に言うのだった。
「そして怪しい者を見張り近寄せぬ様にしましょう」
「それがよいな」
「はい、ここは」
「それならばな」
信長も松永の言葉に応える、そしてだった。
彼の言葉をよしとした、そうしてだった。織田軍は飛騨衆も含めた忍達で陣を固めながらそうしてであった。
織田軍は二十万の大軍で播磨まで進んだ、石山の後始末は信広に任せて摂津から播磨に入った、そして姫路で。
羽柴に秀長達と兵を与え但馬に向かわせた、そうしてだった。
姫路からさらに西に進む、そこからいよいよ備前に進む時でだ、彼は今度は荒木に対して言った。
「十二郎、御主がじゃ」
「はい」
「美作を攻めよ」
この国をだというのだ。
「降る者はそのまま受け入れてな」
「そうしてですな」
「あの国を手に入れよ」
荒木に強い声で告げる。
「よいな」
「さすれば」
「二万の兵を与える」
兵はこれだけだというのだ。
「これで充分じゃな」
「はい、それだけあれば」
「ならよい。では他の者はな」
「備前ですな」
佐久間が言って来た。
「あの国ですな」
「備前には厄介な者がおる」
こう言って佐久間に応える。
「宇喜多がのう」
「宇喜多直家ですが」
福富がこの者について述べる。
「その謀、まさに悪鬼の如し」
「それで国を手に入れた者じゃな」
「確かに毛利元就もかなりの者ですが」
「まだな」
元就の方がと言う信長だった。
「わかるものがあるな」
「毛利家は戦も多く敵も強かったので」
尼子に大内だ、確かに相当なものだ。毛利はその両家や他の多くの家と戦い今の勢力を築いたのである。
それにはだ、戦だけでは出来なかった。それで福富も言うのだ。
「仕方なかったと言えます」
「そうじゃな、しかしあの者はな」
「はい、宇喜多直家は」
「戦をせずにな」
「ほぼ謀だけで家を大きくしてきました」
「しかもその謀がな」
「随分と性質の悪いものでした」
それで、というのだ。
「ですからあの者だけは」
「油断ならぬな」
「そう思いまする」
「倒すか、あの者は」
信長も最後の手段をあえて言った。
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