扉の向こうの物語
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炎の精霊王
前書き
(親父、やっぱり俺には無理だよ。親父がいなきゃ俺は何も...)
何をするにしても全力で振り向かない人だった。
何かに熱中している時の輝いていた眼を忘れることはできない。
何があっても、忙しい中俺に構ってくれた。
(「行かなきゃなんねーところができた、お前は一人で大丈夫だ!」)
ある朝目覚めるとこんな置手紙といつも作業中につけていたグローブを置いて俺の前に現れることはなかった。
「クソ、どこだよここ。変な生き物追ってきたらこんな洞窟に出て来ちまうなんて」
普段通りに晩飯を買いに近所のスーパーに買い物をしに来ていたのだが。
気が付いたらあたりは暗くなってるし熱いしどうなってるんだこりゃ。
「ま、まぁ元来た道を戻っていけば帰れるだろ」
それにしてもあの生き物、なんだったんだろ
宇宙人とかだったらどうしよ、もしかしてここって地球じゃないとか?!
変な帽子かぶってたし鳴き声も変だったし...
「たしか、なんちゃらだボン、だっけ...っと広いなここは」
さっき起こったことを考えながら歩いていると一際熱のこもった場所に出た。
それもそのはずで目の前には大きなマグマの池ができていた。
そこは個室のようになっており、高さは約7メートルぐらい、一般的な教室ほどの広さの部屋の真ん中にぽっかりとマグマの池ができている、そんな構造だった。
先ほどまで薄暗かった視界は今では眩しいぐらいで池を覗くことは簡単にはいかないだろう。
「うぇ、これどう考えても道違うな。まじで地球からトリップしちゃったか?こんなことになるなら冷やしトマトもっと食べとくんだった」
少し散策をして色々わかったことがある
こんな小部屋のように洞窟ができるわけがない、壁や床は明らかに人の手によって加工されていた
また、こちら側から池の中心に行けるような橋のようなものが掛かっていた
「神殿的な何かなのかな?...ん?」
と、その時床が揺れるのを感じた。
マグマの池が沸々と湧きだし塊となって飛び出してくるように見えた。
「ググググ...」
「え?え?なんだよこれ」
マグマの塊かと思ったものは5メートル級の深紅のドラゴンでその背中は刃のように鋭くとがった棘が何本も生えていた。
「うん、やばいなこれは、失礼しま..」
ズン
振り返って逃げようとした刹那、目の前を炎竜の吐いた炎の刃が空を切っていった。
「ですよねー..っと危ねぇ、ほいっと」
その後もアカネめがけて炎竜は炎を吐く。
なんとか避け続けているアカネだがそう長くはもたないだろう。
(早く何とかしないと...父さん、俺一体どうすれば)
その時、崩壊した天井の一部が自分に向かって落ちてくるのにかれは気が付けなかった。
「げ、やばッ」
(こんな意味わかんねーまま死ぬのか..)
「おい、お前!」
「ん?誰かが怒鳴ってる」
「お前だよ、おい、目開けろって!話聞けよ!」
痛くない、衝撃さえ感じない、あたたかい
「なんなんだ、一体?」
恐る恐る目を開けた。
長い茶髪、黒いターバンに似た帽子、炎を模したかのように真っ赤でダボダボな服
(ストリート系ってこんな感じの人を言うのかな?胸あるから女の人だよね)
俺がボーっとしていたが、炎竜は未知なる女の登場にも構わず炎の刃を飛ばしてきた。
「危ない!」
怖くはなかった、勝手に足が動いて気が付くと炎に飛び込んで行っていた。
どんどん目の前に近づく、後悔はしていない。
「ほぉ、いいねぇ気に入ったよ、この力貸そうじゃないか」
そう言うとアカネに向かっていた炎は全て女の方に軌道を修正、そのまま吸い込まれてしまった。
この現象にさすがの炎竜も驚きたじろいでいた。
「おい、お前名前は?」
「え?えーっと..あぁ、アカネだ!」
「アカネか..フフフますます気に入った、よしアカネ!」
聖なる入口〈ディバインゲート〉
炎の精霊王と炎を灯す者
運命が廻り始めた瞬間だった。
「やるぞ!」
「おう!!」
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