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美しき異形達

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第二十九話 旅のはじまりその二

「横須賀に」
「そうするのね」
「どっちにしても八条鉄道で行けるしな、それかバイクか」
「バイクで横須賀まで戻るの」
「何かこっちに来てからあまり乗ってないしな」
 そのバイクにというのだ。
「だからさ」
「寮にいるとね」
「ああ、どうしてもな」
「バイク持っててもね」
「あまり乗らないよな」
「どうしてもそうなるのよね」
 学校までの通学に使うにしても寮から学校まで歩いて行ける、それに街に出るにしてもなのだ。
「しかも街もね」
「すぐに出られるしな」
「それで商店街とかを歩くから」
「バイク使う必要ないしな」
「だからね」
「バイク乗ること減ったな」
 転校してこちらに来てからそうなのだ、薊の場合は。
「部活の時以外は」
「モトクロス部のね」
「本当にその時だけだよ」
「横須賀にいた時は違ったのね」
「孤児院の買いものに行ったりもしたしさ」
 バイクを使ってというのだ。
「そうしていたよ」
「バイクねえ」
「裕香ちゃんも乗ってみたらどうだい?」
「ううん、私はバイクよりもね」
 裕香は薊の提案に少し考える顔になって答えた。
「自動車の方に興味があるかしら」
「そちらね」
「そう、そっちの方にね」
 興味があるというのだ。
「実家にいた時車がないと買い出しにも行けなかったから」
「ああ、それでか」
「そう、だから私もね」
 例え実家に戻るつもりはなくとも、というのだ。
「車の方がいいかなってね」
「考えてるんだな」
「それも大きな車が欲しいわ」
「ものを沢山載せられるからだよな」
「買い出しの為にね」
 実用的な問題であった、裕香が考えていることは。
「その為にもね」
「スーパーも車があると便利だしな」
「そう、沢山買えて楽に持ち運び出来るからね」
「バイクなんて殆ど持ち運び出来ないからな」 
 薊もバイクのこのことはわかっている、横須賀でよく乗っていたが故に。
「その点車は便利だよな」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「軽トラはね」
 裕香はここで苦笑いになってそのうえで言った。
「あまりね」
「ああ、軽トラな」
「女の子が乗るにしてはね」
「そうだよな、ちょっとな」
「ださいっていうかね」
「違うよな」
 若い女の子が乗る車ではないとだ、薊も言うのだった。
「やっぱり」
「うん、だからね」
 それでだとだ、裕香も言うのだった。
「そういうのは乗らないわ」
「それでも大きな車か」
「乗用車よりもそうした車の方が欲しいわ」
 実用性を考えて、というのだ。
「私の場合はね」
「それもいいな」
「うん、車も実用的でないとね」
 それこそというのだ。
「駄目だと思うから」
「じゃああたしも将来車の免許取るか」
 自動車のそれをというのだ。 
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