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ファーストデート

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第一章


第一章

                    ファーストデート
「こんなのいらねえって」
「馬鹿か御前」
「いらねえわけねえだろうがよ」
 皆速攻で彼に突っ込みを入れた。
 彼の名は増谷瞬、髪をボブのように伸ばして中央で分け茶色に染めている。顎が細く眉はあがっている。小さい目が妙に能天気な光を見せている。背は中々高い。
「デートはじめてなんだろうが」
「それでいらないっていうのかよ」
「出たとこ勝負だよ、こんなの」
 彼はあくまでこう言って本屋で皆が出すガイドブックやらデート攻略法といった本を受け取ろうとはしない。夏の学生服姿であれこれと騒いでいる。
「俺のいつもの通りにな」
「で、自爆かよ」
「おい、自爆って何なんだよ」
「御前な、何も勉強しないでできるわけないだろうが」
「どういう頭の構造してそんなこと言ってんだよ」
 周りはすぐ今にも牙を出すような声で彼に言い返したのだった。
「そんなことをよ」
「たかがデートじゃねえかよ」
 しかし瞬は平気な顔でこう皆に返した。
「たかがよ。そうじゃねえのかよ」
「やっぱり御前馬鹿だな」
「全くだ」
 周りは彼の今の言葉に呆れた声で返した。
「デートがどれだけ重要なことがわかってねえのかよ」
「しかもファーストデートだぞ、ファーストデート」
「戦争に行くんだぞ」
 デートを戦争とまで言うのだった。これまた随分と物騒な表現であるが彼等にしてみては完全に本気であった。その本気で彼に忠告していた。
「それで何でそんなに能天気なんだよ」
「というかどんな頭の構造してるんだよ」
「何か言ってる意味がわからねえけれどよ」
 瞬にとっては意味がわからないことだった。皆がここまで言う理由がだ。
「だからよ。どうとてもなるものじゃねえか」
「出陣するのに鎧兜もなしでかよ」
「しかも初陣でよ」
「いいか、塩谷」
 またしても真剣そのものの声での言葉であった。
「こうして勉強して最初にビシッと決めないとな」
「それで終わりなんだよ」
「終わりかよ」
 瞬は彼等の話を聞いてもまだわかっていない口調であった。
「それで」
「それだけファーストデートってのは大事なんだよ」
「わかったらさっさとこうした本買って勉強しろ」
「いいな」
 こうして彼等は無理強いに近い形で彼に本を押し付けてそのうえで買わせた。そしてこの騒動は彼等だけではないのであった。
「だからね。服は可愛くよ」
「アピールが大事だからね」 
 マクドナルドの席の一つでブレザーの制服の女の子達があれこれと話をしていた。そうしてそのうえで真ん中にいる女の子に話していた。
 その女の子は茶色の髪を長く伸ばしている。カマボコの形をした目は少し吊り目になっている。顔は細長く身体も細い感じだ。背はあまり高くない。胸もあまりないがそれでも制服からもわかるそのスタイルは全体的に見てよいと言えミニにしているスカートから見えている脚も奇麗なものであった。
「いつもみたいなジーンズとか愛想のないのじゃなくてね」
「もう女の子らしくね」
「じゃああれ?」
 その女の子は周りの声を聞いて少しだけ考えるような口調で述べた。
「デニムのミニとかは駄目なの?上はタンクトップで」
「別に悪くないわね」
「あんたああした格好似合ってるし」
 それは皆からよしとされたのであった。
「いいと思うわよ」
「それはね」
「そう。じゃあ服はそれでいいのね」
「アクセサリーはそうした格好だと」
 今度はそうしたことについて考えられるのだった。
「ブレスレットにペンダントかしら」
「ペンダントは注意してね」
 とりわけペンダントについて話されるのだった。
「首筋に視線をやるから」
「そこんところいいわね」
「ペンダントっていったら」
 女の子はそれを聞いて目をしばたかせてから述べた。
「あれよね。いつもしているみたいな銀色の小さいの?」
 右手で自分の首を触りながらの言葉だった。今そこにあるのは制服のブラウスとネクタイである。実に女子高生らしい服装である。
 
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