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ひねくれヒーロー

作者:無花果
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恐怖はつねに警告者


恐怖はつねに人間の中に何か正しくないことが生じた徴候である。
恐怖は、苦痛が肉体に対して果たすのと同様に、精神に対しても貴重な警告者の役目を果たす。
—ヒルティ—

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恐怖はつねに警告者







木の葉病院から退院して二、三日

任務も鍛錬もなく、久しぶりの休暇を買い物で楽しもうと市場を歩く

忍び里の名に相応しい忍具店、武器屋、鍛冶屋、反物等を扱う専門店を冷やかし、気に入ったものの値段を覚える

もう少し金がたまれば買いに来ようと目標を立てた時—ふと、見覚えのある人物を見つけた


(・・・あの、特徴的な髷・・・)


まさか、抜け忍である男が木の葉の里に堂々と現れる筈がない

そう自嘲してみるものの、あの変装のへの字もない姿は奴以外思いつかない

声をかけてみるべきか、意を決した瞬間—


「コン久しぶりだな、うん!」


お兄ちゃんだぞ!と明るく声をかけてきた・・・背後から


「ダラー!なんでお前いるんだよ!?」


「あぁ、火薬を買いにな」


良い火薬を見つけたんだと語る男・・・泣く子も黙るS級犯罪者・暁の一員デイダラ

真昼間からこんな大通りにいていい男ではない、というか時間帯問わず木の葉にいるべきではない


「芸術のためには各国を渡り歩き、良い物を得る
 それが大事だ」


そういえばこいつ、芸術家としか自己紹介してなかったな


「雷の国から火の国まで・・・長旅お疲れ様」

「コンだって・・・よく無事だったな、うん
 体は良くなったのか?」

「・・・ハハハ」

良くなるはずがねぇ

少しばかり雑談して、お勧めの店を聞かれた

甘いものなら甘栗甘、食事ならラーメン一楽、もしくは焼き肉Qを勧めておく

案内すると駄賃として葛きりを奢ってもらった

最近葛きりばっか食べてる気がする、美味いからいいけど

デイダラは団子を大量に買って包んでもらっている

・・・1人で食べるのか?


「これか?こいつは仲間たちへの土産さ、うん」

「仲間って・・・芸術?」


暁のことを芸術家集団と評されたことがあったな

しかし土産なんて用意するのか、意外とマメな奴だな


「そう、オイラと同じアーティストのあつまりさ
 ・・・ただ最近、様子がおかしいんだけどよ」


酷く悩んでいるのがわかるほどの深刻な表情

様子がおかしいってなんなんだろう


「・・・何か、変わったことでも?」

「うん・・・ひ・・・仮にHって奴がいるんだけどな
 そいつが妙なことを口走るようになって・・・
 元から宗教系の奴だからオイラはそんなに気にしてなかったんだ、うん」


H、飛段のことだよな

ジャシン教を本格的に布教し始めたのか?


「周りの人が影響受けちゃったのか?」


湯呑を一気にあおると頭を抱えだした

それかなり熱いお茶だったんじゃ・・・


「そうなんだよ、古株のKと紅一点がもろに影響受けたんだ・・・
 Hとペア組んでる爺もおかしくなり始めたと思ったら、オイラの相棒まで変な事言いだして・・・
 月がどうとか、拷問だとか、存在理由とか良く分かんないことばっかで
 ついに紅一点とペア組んでたリーダーが耐えられなくなって会合に出なくなっちまったんだ」


月・・・あれか?マダラの月の眼計画の話か?

鬼鮫なら計画教えられてそうだけど・・・

でもそれなら飛段から話がこじれるっておかしいな


「リーダーさん、ストレス溜まってしんどいんだろう・・・
 なぁ一度ダラーとリーダーさんで飲み会でもしたらどうだ?
 お互い相棒がおかしくなったんだから愚痴の言い合いでもしたら楽になると思うよ?」


「うん・・・次に会ったら誘う
 はぁ・・・」


話が重すぎて雰囲気が悪い

何か話題を変えなくては・・・話題、話題・・・


「・・・あのさ、話変わるけどオレ、忍者になったんだ」

「え、うそ!?」


あんなに体が弱かったのにか!?と驚かれる

額当てを取り出して見せるとまじまじと見つめられた


「本当だよ」


「・・・そうか、忍者か・・・」


良かったなぁと笑いかけられ、こいつは本当に犯罪者なのかと疑った

・・・そういえば、原作でも後輩の面倒見良かったな


(もうじき、中忍試験の時期だったな、うん)


ん?デイダラが小声で何かを呟いたが上手く聞き取れなかった

何か言ったかと聞くとなんでもないと言われる

包まれた団子を持ち、そろそろ帰ると告げられた


「今度は一楽に行ってみるよ、うん
 忍者になったからって体が丈夫になるわけじゃないんだ、気をつけろよ」

「身に染みて分かってるよ
 ・・・ダラーも体には気をつけて
 あと、仲間関係がんばれ」

「お前人ごとだからって軽いぞ
 ま、リーダーと飲みにでも行くさ、うん」


そういって門の前まで送り、見えなくなるまで手を振り続けた

暁も、大変なんだなぁ・・・






















まさかあのコンが木の葉で忍者になっているとは思いもしなかった

それだけ体力がついたということか

以前より血色の良くなった顔色を思い浮かべ、自然と微笑んでいた

今にも死んでしまうのかと見紛えるほどの虚弱さ

固形物などほとんど摂れなかったのに、葛きりを二杯も食べれるようになっていた

何よりあの濁った眼に輝きが増していたこと

驚きが尽きない


「でも、中忍試験大丈夫かなコン・・・」


大蛇丸が中忍試験に向けて何か策略をめぐらせているとサソリから報告を受けていたため不安がよぎる

考え事をしているとアジトに到着した

とりあえず土産をと皆が集まる広間へ行くと小南とサソリの旦那、あとイタチがいた


「旦那、これ土産な
 リーダーは?」


旦那に渡したはずの土産はすぐさまイタチへ流れた

わかった、勝手に団子食ってろ

ただしコンお勧めの麩饅頭は俺のだから食うなよ


「ペインは人を探しに行ったわ
 ・・・ねぇデイダラ、少し提案があるのだけど・・・」


何の感情も移さない濁った眼

最近の小南はずっとこんな目だ、前はもっと輝いていたのに、そう思うと嫌になる





「・・・何だよ」




疑い深く睨みつけるオレにらちが明かないと感じたのか、サソリの旦那が進み出た






「オレと小南と三人で———木の葉へ行かねえか?」








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段々とずれていく原作、気づかない主人公




麩饅頭って知ってる?もちもちして美味しいですよ

こしあん粒あん論争で揉めますが
 
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