やはり俺の日常風景は間違っている。
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なぜか彼や彼女はLINEを始める
前書き
ゆきのんとLINEがしたい
今さらだが、この奉仕部という部活は要に生徒のお願いを聞いてそのお手伝いをする部活である。と、こうして確認しとかないとこの部活が何してんのか分からなくなる。俺も雪ノ下も本を読んでいて、由比ヶ浜はさっきから携帯いじってるし。
「ていうかあたりまえのようにいるけどお前部員じゃなくね?」
あまりに自然にこの部室へ馴染んでいるので、思わずいるのがあたりまえなのかと思っちまったぜ。これはもう隣にいるのがあたりまえ、つまり恋愛的に見ればもう夫婦みたいなとこもあるし、養ってくんないかな。
「いやー、あたしこういうの好きじゃん?」
「じゃんとか言われても知らねーよ」
「だから部活には入ってないけどいるだけって感じ」
「俺は部活に入ってるけどいるだけって感じ」
「あたしら似たもの同士だ」
「一緒にすんな」
ぼっちはいつだって孤高であり、誰かと一緒にされることをひどく苦痛に感じる生き物だ。クラスでグループ学習をするとき残り一人足りない班へぼっちが派遣される場合があるが、あれなんて敵の構える城へ全裸に盆踊りで突撃するようなものだろう。
「ひっきーひまー」
「俺はひまーじゃない」
ラノベを読むことは何よりも優先されるべき事案だ。
「いや暇でしょ。ていうかそうゆー意味じゃないし」
由比ヶ浜は俺にリアクションは求めていたわけではなかったのか、機嫌を損ねた様子もなく再び携帯をいじり出した。
「携帯ばっか見てよく飽きないな。何してんだ?」
「LINEとツイッターでみんなのつぶやきとかコメント見てるの」
基本他人と繋がりのない俺とは無縁な話だな。
「ていうかゆきのんラインとかやってる?」
「ええ、一応登録はしているけれど」
突然話を振られた雪ノ下は、読みかけの本に栞をはさんで由比ヶ浜の方へ向き直ってから返事をした。この前俺が話しかけたときは本読みながら適当に返事していたことに比べると、とても格差を感じる。
「じゃぁ友達になろうよ!」
「ごめんなさい、連絡もしない上辺だけの友達の募集はもう締め切ってしまったの」
募集してた時期があったのかよ。応募すればよかった。
一応メールアドレスだけ交換して最初に「○○です、よろしくー^^」って送信するだけで終わるアレな。はちまん超得意。
「連絡するよ!超する。今日の晩御飯から総武高校七不思議までなんでも!」
総武高校七不思議気か。誰にも気付かれずに三年間を過ごしていく妖怪ボッチの話なら知ってるんだが。
「用事もないのに連絡してくる人はブロックするようにしてるの。それでもよければどうぞ」
「ブロックするほど友達が居たのかよ。失望した」
「おかしな同族意識を持たないでくれるかしら。あなたと同じ部分ということはつまり改善点になってしまうの。無駄な苦労をかけさせないで」
「そんなことを言うとブロックされるぞ」
「今までにブロックをされたことは無いの。それに、私の友達は姉一人でその姉は既にブロックしているから、これからブロックされる可能性もないわ」
得意気に言っているが何一つ誇れるとこはないと思うぞ。怖いから言わないけど。
こいつなんでLINEインストールしてんだよ。
「てことは私が始めての友達なんだ!なんか嬉しい。ゆきのんってなんだかんだで最後には仲良くしてくれるよね」
え、さっきの暴言って友達認証を肯定する言葉だったのかよ。ラインどころかリアルの人間関係までブロックします宣言だと思ったんだけど。こいつアホのくせに雪ノ下の言葉をポジティブに解釈する検定2級は持ってるな。
手に持った携帯電話をブンブン小刻みに振り出した由比ヶ浜を見て、雪ノ下は視線で「あなたは一体何をしているの」と言っていた。
「ゆきのんもはやく」
「私にもそのバーテンダーごっこをやれという意味かしら」
「違う違う。こうやって振れば、なんか電波っぽいのが飛んで勝手に友達に登録されるんだよ」
「私は友達になると言ったかしら・・・・・・」
と言いつつも携帯の画面を操作し始める雪ノ下さんはまじでツンデレだと思いました。携帯をしばらくポチポチして由比ヶ浜と同様にバーテンダーごっこをする雪ノ下。
「これでいいのかしら」
「うん、おっけーだよ。ゆきのんありがとー!」
「お礼を言われる謂れは無いと思うけれど」
言われる謂れはないってちょっと面白いなと思って少しニヤッとしてしまうと、絶対零度の眼差しでこちらを睨む雪ノ下と目が合った。
「死ねば?」
「俺にはニヤつく権利もないのか」
「あなたの口角が上がるたびに周囲のエネルギーとか幸せが無くなっているの」
俺の口にはエネルギーの法則を無視する力があったのか。俺マジ人類最終兵器。
由比ヶ浜はデンパ・シェイキングに満足すると、反対側にいる雪ノ下から離れて俺の方へ来た。
「ついでだしヒッキーもLINE教えてよ。ついでだけど」
「小町が俺の携帯勝手にいじってダウンロードはしてるんだが、俺には使い方が分からん」
「うっそ、二人ともLINEないと生活苦しくない?」
LINEって生活必需品なの?近頃の若者は『もしも無人島に行くなら絶対に持って行くものを一つ選べ』に「LINE」って回答するのかな。しねえな。しぬし。
「困ったことはないけれど」
「じゃぁ、友達とか家族とどうやって連絡してるわけ?」
「俺はソーシャルアプリやらSNSが反吐が出るほど嫌いだ。なぜなら俺に友達はいないから」
僕は友達が少ないとか聞くと思うんだ。いや、友達いるじゃん。そういうファッションで独り気取って「俺友達少ねぇわ(笑)」みたいなネタにして自分のアイデンティティ確保するのやめてくんない?こっちはガチなの。青春の三年間という何ものにも代えがたい時間を犠牲にしてボッチやってんの。しかもあいつ何人もの女とイチャコラしやがって、最近のラノベらしく僕は友達が少ないけど部室に何人もの女をはべらせて青春していますとか長文タイトルに改名しろよ。
まぁ、何が言いたいってモテるやつは全員死ね。
「あ・・・・・・いやその、ごめん」
そういう反応が一番ハートを傷つけるんですけど。
「用事があれば電話をすればいいだろ。それに家族カーストも最下位の俺に発言権はないんだ。よく小町からLINEの比企谷家専用のグループチャットで家族会議した結果を聞かされるんだが、俺はそんな会議誘われたこともないし、そこでの発言権もおそらくない」
「あーなんか、ほんとごめん」
伏目がちで謝る由比ヶ浜に悪意はないのだろうが、自虐話を真剣に同情されたり、謝られると本当に心が痛い。
話題を変えようと表情まで変えて俺に手を差し出してくる由比ヶ浜。
「ちょっとスマホ貸してよ、あたしが登録したげるから」
「ん」
特に否定する理由もないので渡してやる。
受け取った携帯をポチポチしている由比ヶ浜を眺めていると、作業を中断してこちらを不審者を見るような目で見つめてくる。
「な、なに?あたしなんかへん?」
「いや」
こいつ携帯の操作すんの早すぎんだろ。
「はいできたー」
由比ヶ浜の連絡先が登録されたであろう俺の携帯が手渡される。
「てかヒッキー、登録されてるの小町ちゃんだけだし、登録名が『マイラブリーシスター』って・・・・・・キモッ」
「それは本当に気持ち悪いわね」
雪ノ下が本に目線を向けたまま俺を罵る。話聞いてたのかよ。
「俺が登録したわけじゃねえ」
リビングで千葉放送にチャンネルを変えようとしていたきに、小町が「これ小町的にポイントたかーい。妹の高感度プラス100」って良いながら俺の携帯触ってたのを思い出した。
「あやしー。ヒッキーってシスコンなとこあるし」
「ねぇよ。少し妹が可愛くて仕方が無いだけだ」
「それシスコンだし!」
ほう、正直アホだと思っていたが俺のシスコンを見破るとはな。
「つうかお前が登録した名前も相当ひどいけどな」
星とか符号みたいなやつだったりミミズの這った後のような言語やらが、名前の両脇にたくさん修飾されている。
「やー、かわいいじゃん」
「なんだよこのゴテゴテした意味のわからん記号は。普通に『結衣』でいいだろ。最早誰だか分かんねーよ」
「分かるっしょ、小町ちゃん以外にあたししかいないし」
「まぁ家族以外で登録したのなんてお前が始めてだしな。区別は簡単だ」
「ふ、ふーん。あたしが始めてなんだ」
「なんだそのエセビッチみたいなセリフは」
由比ヶ浜は何いってんだこいつって顔でしばらくポカーンと呆けていたが、俺の言葉の意味を理解したらしく、その顔は徐々に赤く染まっていき、西の窓から差し込む夕陽よりも真っ赤になった。
「は、はぁ?何想像してんの。ほんとキモ!ありえない!まじでキモいもうほんとキモい」
キモいの語源は『鬼も一』で、意味はいつも一人で過ごしていれば、鬼でさえ周囲からの視線や数の暴力で性格が捻じ曲がっていくのが関係しているらしい。嘘だが。
丁度由比ヶ浜がキモいの百段活用を創り上げたところで、チャイムの音が部活動をしている生徒達の帰宅を促した。
「あなた達の下半身事情はどうあれ、今日の部活動はこれでお終いにするわ。さようなら」
雪ノ下さん本を読んでるフリしてちゃっかりこっちの会話聞いてるよね。
雪ノ下は本を鞄へ直して、定時で帰るサラリーマンのような早さで帰宅をする。由比ヶ浜はベーと舌を出すという別れの挨拶をして、雪ノ下を追いかけていった。
西の窓から朱色の夕日と運動部の声が入り込むこの奉仕部の部室に、一人ぽつんと佇みながら俺は思った。
奉仕部って響き、よく考えるとエロスを感じるなと。
後書き
がはまさんとけいたいふってるけどなかなかでんぱがとどかなくてがんばってけいたいをふるがはまさんのおおきなおむねがすこしゆれるのをよこめでかくにんしてるのをがはまさんにもくげきされてきもいっていわれたいなぁ。
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