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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第8話:ナンバー2

 
前書き
メリクリ
ちなみに内容はクリスマス色ゼロです。 

 
(グランバニア城・会議室)
ユニSIDE

「では治安維持の新組織……法務省所属・警察庁・警察係・警察は只今を持って正式に決定しました。あとは人員の問題を残すだけです。それも闘技大会を終えれば完了……人員決定次第即座に活動できる様に、庁舎などの施設は建設始めてしまいますので宜しくお願いします」

放っておくとダラダラ何も決まらなそうな空気になったので、私の上司殿がビシッと決定した事を明確にし話を進めて行く。
本心としては、また仕事が増えたと嘆いてるのだろうけど、国家の為に……リュカ陛下の為に政務を進める姿勢は評価できる。リュカ陛下を煩わしちゃダメなのですよね。

「ウルフ……ありがとう」
「いいえ、会議をダラダラ行うのは嫌いですし、カタクール候がダラダラ喋るのもイライラします。それに、どうなっても俺の仕事が増えるのは見えてますからね(笑)」

「そうだな……お前には苦労をかける」
リュカ陛下はウルフ殿を優しく見詰め労うと、少し目を閉じ何かを考える。
きっとウルフ殿の功績に報いる事を考えてるのだと思う。

「みんな聞いてくれ。今はまだ僕が王をしてるが、(いず)れは王位をティミーに譲る予定だ。まぁ言われるまでもなく解ってるとは思うけど……」
「と、父さん……何を突然?」

「うん。突然の話で申し訳ないけど、ティミーが国王になるのなら、それに合った人材が部下として必要だと思う。と言うのも、ティミーは優しすぎて政をするのに向かない時があるからだ。それをサポートする為にウルフを鍛えてきたが、僕が思ってたよりコイツは優秀で、今日話し合った事が一段落したらその功績を認め“宰相”にしようと思ってる」

「「「………!?」」」
さ、宰相……そ、それって……この国のナンバー2って事ですよね!?
ほぼ全ての権利と責任を持つ、国王陛下の次席的な立場ですよね!?

「本当はウルフを国王にするのが一番適してる様に思えるんだけど、コイツにはカリスマ性が足りてないんだ。リュリュが代理を務めてた時もそうだったけど、国王は馬鹿でも務まる……国民を束ねるカリスマがあればね。僕なんかパパスの息子と言うだけで、国民から支持されてたからね(笑)」

「へ、陛下のカリスマはそれだけではありません!」
私は思わず叫んでた。
国王主席秘書官のオブザーバーとして参加してる会議で、本来は勝手な発言は禁止なのだが、パパス様を知らない私にはリュカ陛下のカリスマは真実なのです。

「ありがとうユニ。そんな訳で、今のうちから未来の宰相閣下と相談して、未来の国王陛下の側近を選別しておいてくれよ。ティミーは僕より働くだろうから、胃が強い者じゃなくても務まるはず(笑) よろしくね~」

皆さんが困惑してる中、言いたい事だけ言い切ったリュカ陛下は、サッサと会議室から出て行ってしまった。
「あ……逃げられた……」

一早く冷静さを取り戻したウルフ殿が、リュカ陛下が出て行った扉を睨み呟く。
私は、どうすればリュカ陛下のお役に立てるのかを考える。
そして出した答えは、

「おめでとうございます宰相閣下」
と、リュカ陛下が決定した事柄を盛大に推奨する事だ。
私よりも年下な彼が、急に上司になるという事実を納得できない者も居るかもしれない。
そんな連中に解らせる為、私は明るく大きな声で祝辞を述べる。

「止めてよユニさん……俺がグランバニアのナンバー2なんて、何かの間違いだよ」
「いいえ宰相閣下。リュカ陛下が間違えるはずございません。リュカ陛下の人選眼は確かでございます。この人事はグランバニア王国にとって間違いなく正しい事なのです」

私は言葉の端々に『不平は許さない』と込めて、上司の出世を一際喜んでみせる。
「そうだね。ウルフ君がサポートしてくれるのなら僕も安心して王様になれるよ。これからもよろしくね、宰相閣下」

「ま、まだ宰相じゃねーし……今回の事が全部巧くいった暁だし……失敗するかもしれねーじゃん!」
「大丈夫だよ。ここに居る方々は皆さん優秀だ。父さんが信頼してるんだからね」
そうです。この場に居る者は皆リュカ陛下から信頼されてるんです。

「それに万が一失敗しても……ウルフ君の責任にはならないよ」
「はぁ? 何でですか? 俺は全ての事柄に関わるんですよ……大小あるでしょうけど、責任の一端は担わされるでしょう!」

「たかが秘書官にかい? 宰相になるのは未来の事であって、今はまだ秘書でしかないんだよ。失敗した責任は各省の大臣に帰するし、国王の責任も大きいんだ」
なるほど。つまり、ウルフ殿の出世を邪魔しようとワザと失敗しても、ウルフ殿は傷付かずその者だけが責任をとらされるだけなのですね。

「それにこの国は王政国家だよ。王様が絶対なんだ……もうウルフ君の出世は確定なのだから、邪魔をするより取り入りに行った方が良いよ。ね、みんな」
おぉ……偶に出るリュカ陛下の血筋パワー。
優しい笑顔で周囲を脅してます。

ユニSIDE END



(グランバニア城・国王主席秘書官室)
ウルフSIDE

基本的にこの家庭では夕食は一家揃って摂るのが通例だが、最近俺は一緒に出来ないでいる。
仕事が終わらず、帰宅が深夜になる事が多いからだ。
だから部下には早めに上がる様に伝えてるのだが、3人ともグランバニア城に住んでる為、俺に付き合い残業してくれている。

更にはマリーとリューノが気を遣って、俺と部下3人……そして自分達合わせて6人分の夕食を持ってオフィスに来てくれるので、今も有難くそれを戴いている。
それに時折、リュカさんが自腹(城下で身分を隠しアルバイトして得た金)でデザートを買い、差し入れしてくれる事もあるから嬉しい。

「でも凄いねウルフ。名実共にグランバニアのナンバー2になっちゃうんだね」
「まだ先の事だけどね」
リューノが自分の事の様に喜んでいるので、何だか恥ずかしい。

「確かに“名”が“実”に揃うのはまだ先だけど、既にウルフはグランバニアのナンバー2だから、もっと偉そうにして良いと思う」
「偉くねーよ。この国で階級が上がるって事はそれだけ偉くなくなるって事なんだよ。お前等のパパを見ろ……未だに日雇い労働をやってる時があるぞ(笑)」

もう家族の全員が知ってるリュカさんの城下潜伏任務(笑)を思いだし、マリーから受ける賞賛の照れ隠しに利用する。
リュカさん批判をすると厳しい目で睨んでくるユニさんも、流石に笑って認めてくれた。

「でも実際、今の状況は居心地が悪かった。俺は年齢も若く曖昧な役職なのに、年上の大臣達に指示を……時には命令をしてるのだからね。不満そうにすればリュカさんの名を出さざるを得ないし、何時か復讐されるんじゃないかと脅えてたよ」

勿論そんな事にならないのは解っているし、仮に武力行使されても勝てる自信はあったから問題ないんだけど、王家に対する不満に発展されると厄介だと思ってた。
実際、リュカさんに不満を持ってる者も極少数だが存在するし……

それに先日、違法宗教団体をリュカさんの名の下に一斉検挙して、テロリスト予備軍みたいなものを作ってしまった感がある。
リュカさんは自身が神を信じてなく、宗教団体に嫌悪感を持ってるから、彼に詳しくない人から見れば、今回の件は自己満足の為に行った様に見えるんだ。

勿論そんな事はなく、現在国内の治安を維持してる憲兵隊が入念な調査を行った結果、思想的に危険で、反国家的或いは国民の安全を脅かす恐れがあると判断しての措置だったのだ。
故に放置は出来なかった。

だが、その宗教に心酔してた者達にしてみれば、リュカさんの決断は許せなく……また自分等の行動を正当化する為に、逮捕を免れた底辺の信者等はリュカさんを暴君と批判しているのだ。
見方を変えれば彼もまた暴君なのだが、歴史に登場する暴君とは体質が違う。

それにリュカさんは宗教の自由を許してない。
宗教団体にも税の義務を課しており、動産・不動産に問わず全ての資産を税務署に調査させている。
お布施や寄付なども許可しておらず、全ての金品の流れを明確化させているのだ。

そんな中で起きた一斉検挙劇。
宗教家が不審・不安に思うのも道理かもしれない。
だから一応、俺からもリュカさんに注意を促した事がある。

だが『治世が不安定で、民衆が幸せとは遠い場所に居ると、目に見えない神や宗教に走る傾向がある。安全で安心できる世の中を作れば、誰もがそんな物に頼る事無く暮らせるのだと僕は思ってる』と呟いた。
だからリュカさんは真面目に頑張ってるのだろう……

まだ人口が少なかった頃は、国家を安定させるのも簡単で、リュカさんもオジロン閣下に任せきりで大丈夫だったのだろうけど、今や総人口が2億人も居るグランバニアだ。
流石のリュカさんも本腰を入れ始めたのだろう……と俺は解釈している。

「さてと……私達は食器を持って帰るけど、皆さんは引き続きお仕事頑張ってね」
食事を終えて空になった食器類を抱え、マリーが和やかに帰宅を告げる。
「あぁ、ありがとう」
「ありがとうございます」「美味しかったです」「何時もありがとう」
俺が礼を言うと3人の部下も口々に例を告げる。

そして執務室の扉から短いスカートの丈を翻し出て行く美少女2人。
そう言えば最近ヤってないなぁ……
彼女2人の残像を目に焼き付け、既に出た行った扉を見詰めている俺。

「ウルフ殿……時間はありますから良いですよ行っても。1.2時間で戻ってこれるでしょ?」
ユニさんが俺の思考を読み取り、冷ややかな目で許可してくれる。
拙いね……ダメ上司じゃん俺。

「1.2時間で戻ってこれる訳ないっしょ、ユニさん。貴女の敬愛するリュカ陛下の血筋2人が相手ですよ……丸一晩ハッスルしないと逃がしてくれません」
「ふぅ……そんな保たないクセに」
処女のクセに偉そうな……

「部屋までの移動時間が勿体ないので、ユニさんが俺の性的欲求を発散させてくれませんか? そうすれば俺の持久力が判りますよ(笑)」
どうだ“グゥ”の根も出まい。

「あらあら……やはりウルフ殿はロリコンだったのですね。私の様な貧乳女にしか性欲が湧かないなんて……あぁリュカ陛下がそうだったら良かったのに。私は何時でもOKだったんですからねぇ」

冷たい目のままそこまで言い切ると、手元の書類に目を落とし仕事を再開させるユニ女史。
お前、俺より年上なんだから、ロリコンはねぇーだろ!
ただ乳が小せぇだけで、外見はロリには見えねーんだから、何時までも若者(ロリ)気取ってんじゃねーよ!

本当は大声でそう言いたかったんだけど、この人を敵に回すと城内のメイド達全員を敵に回す事になるので、大人しく我慢します。
おかしいなぁ……俺ってばこの国のナンバー2なはずなのになぁ。

ウルフSIDE END



 
 

 
後書き
次話、リュリュ出るよ。 
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