バンドマンは一途
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第四章
「俺は待ってるんだよ」
「その人が戻って来るのを」
「そうしてるの」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「あんた達の申し出もな」
「断って」
「その人を待つの」
「例えどんな美女が前に来てもな」
そして誘いをかけてもというのだ。
「俺はな」
「あらあら、それはまた凄いわね」
「よっぽどその相手を気に入ってるのね」
「それでなのね」
「私達の誘いも」
「ああ、悪いけれどな」
それでもだというのだ。
「断らせてもらうな」
「ええ、わかったわ」
「じゃあその相手の人と幸せにね」
「楽しくね」
こう言って彼女達も彼の前を去る、そうしてこうしたことを続けて。
彼は全くだ、女の子の誘いに応えなかった。それこそどれだけの美女美少女が来ても全くだった。そうして。
その中でだ、仲間達はライブ前の楽屋でこんなことを言った。
「オークランドって可愛い娘多いんだな」
「ああ、周りの町や村にもな」
「チャーリーに声をかける娘なんか皆そうだしな」
「綺麗な娘可愛い娘ばかりだぜ」
「滅茶苦茶多いぜ」
その美女、美少女がというのだ。
そしてだ、そのことを確かめてからあらためてチャーリーを見て言うのだった。
「しかしな」
「チャーリーは相変わらずだな」
「どうしてもなんだな」
「相手はあの娘だけ」
「それでか」
「ああ、心が揺れることがあるのは確かさ」
チャーリーもそうしたことはあると答える、ギターの用意をしながら。
「それでもな」
「あの娘だけか」
「エミーだけか」
「まだエミーを待つんだな」
「今だって」
「決めたからな」
それ故にというのだ。
「確かに凄い美女が出て来た時は揺らぐんだけれどな」
「それでもなんだな」
「由来でも戻って」
「それでか」
「エミーを待つんだな」
「何があっても待つぜ」
由来でも戻って、というのだ。
「俺はな」
「そうか、それじゃあな」
「頑張るんだな」
「あの娘が戻って来るまで」
「その時まで」
「そうするさ、じゃあな」
それでと言ってだ、チャーリーは自分の楽器であるギターを持って仲間達にあらためてこう言った。
「行こうぜ」
「よし、今日もな」
「楽しもうか」
仲間達も笑顔で応える、そしてだった。
彼等はこの日もバンドを楽しんだ、チャーリーは漁師としてもバンドマンとしても充実していた、一つのことだけは。
彼はずっとエミーを待ち続けた、そして。
遂にその日が来てだ、仲間達に酒場で言うのだった。
「昨日エミーからメールで連絡があってな」
「ああ、何て言ってきたんだあの娘」
「朗報なのは顔でわかるけれどな」
「単位も取って卒論もクリアー出来たからな」
それで、というのだ。
「卒業出来るってな」
「ああ、それはよかったな」
「卒業出来るんだな、あの娘」
「そうなんだな」
「そうだよ、それにな」
それに加えてとだ、チャーリーはビールを飲みつつ笑顔で話す。今日一緒に食べているのは牛肉の串焼きだ。
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