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ハイスクールV×D ライド3
「まったく、あいつ等もしつこいな」
アパートの一室で布団の中から出ながら伸びをしつつ近くに有る気配の正体を感じ取る。……恐らく、魔剣創造の力から気配の主は木場だろう。昨日の夜から感じていた気配なので、一晩中監視していたのか交代したかどうかは知らないがご苦労な事だと思う。
流石にこう長時間監視されていては良い気分はしない。……付け加えるならば、悪魔と言う勢力を良心的とも思って居ない為に、万が一にでも人質にされないように詩乃には泊まって貰った訳だが……。
「おーい、詩乃。朝だぞー」
何時の間にか四季の布団に潜り込んでいた愛しの恋人を起こす事を優先した四季である。
(上手く連中の目を盗んで動くか……って、向こうがはぐれの事に気付いてくれないと意味は無いな)
どうも、領地へのはぐれ悪魔や堕天使の進入が続いている上に、堕天使は何らかの儀式を行なおうとしていた様子も有った。
堕天使の時は街に……主に詩乃に何の影響も無かったので賞金が出る訳でもないので、向こうから手を出された訳でもないから“三大勢力の問題”として堕天使の事は放置していたが、流石にこの街にいる魔王の妹二人は堕天使側から完全に舐められていると確信していた。
(確か……生徒会長とグレモリー先輩がそうだったけど……)
前者は頭脳労働タイプ……前線に出る機会は後者が多いだろう、その為に。
(舐められてるのはグレモリー先輩か)
舐められているのはリアス・グレモリーとその眷属達だろうと思う。少なくとも、気付かないほどの無脳だとか、戦った所で敵では無いと考えられているとか。
心の中でそう思いつつ窓の外に居るであろう木場に対して同情の篭った視線を向け、朝食の準備に取り掛かった。ベーコンをフライパンで焼きながら卵を落としてベーコンエッグを焼いて味噌汁を温めなおす。
(サラダは……付け合せのキャベツだけで良いか)
手際よく朝食を用意しながら周囲の気配を探る。……夜は悪魔にとってのホームグラウンドとは言っても、流石に徹夜は辛いだろうとも思うが、四季が朝食の支度をしている間に木場の気配は消えている。
(……流石に帰ったか。このまま無関係って判断して欲しいけど、そうは行かないだろうな)
流石に最初から断る心算だが、一度くらいは話を聞いてやるべきだと思う。……情報を隠して置いてなん だが、下手をすればこっちが尻尾を出すまで毎日着け回されそうだし。
「と言う訳で今日オカルト研に行ってこようと思う」
「良いの?」
「流石にこっちのアリバイ工作に利用しようと思ったけど、なんか毎日付け回されそうだからな……」
流石に直ぐにターゲットとなるハグレ悪魔が見つかる訳でもなく、二度も敵の進入を見逃している連中が直ぐに気付いてくれると言う保障も無く、相手任せな点が多い以上直ぐに実行は不可能と判断して、計画を修正した訳だ。
何よりその間に相手が強硬手段に出る可能性も否定できないため、寧ろこっちから乗り込む必要が有るだろう。
(……不死鳥を倒した赤龍帝が居ると言う話しだけど……)
ふと、それなりに流れていたグレモリー眷族に対する噂を思い出す。
あの剣の所有者になった時に見た光景、煉獄の炎を纏う龍の大帝と戦う先代の所有者と思われる白い剣士。赤龍帝とは、その大帝に匹敵する相手なのか……
(龍の帝王か……警戒しておいた方が良いな)
どうも、主である魔王の妹は敵対勢力に舐められている様子ではあるが、警戒しておくべきだろう。ぶっちゃけ、この時点で一誠が不死鳥を倒した赤龍帝とは一切考えていない四季である。
確かにイメージの元のドラゴニック・オーバーロードが比較対象なだけに、一誠では実力や普段の様子から比較する事さえ出来ないだろう。
「私も行った方が良いかな?」
「いや、寧ろ今日は別行動で……オカルト研の部室が有るって言う旧校舎を何時でも狙えるようにしておいて欲しい」
そもそも、神器を使ったとしても詩乃の担当は飛び道具による後衛。室内と言う環境では前衛が四季だけでは多数を相手に守りきるのは難しい。
「そこは何時もなら“絶対に離れるなよ”って言う所じゃないの?」
「まあ、向こうに目を付けられているのはオレだけだと思うからな。最悪の場合、援護して貰った方が逃げ易い。それに……オレにとって最悪の可能性って言うのは……君を失う事だ」
シリアスな場面だが、朝食を食べながらする会話としてはどうかと思う。
内心で別に両親が人質にされても一切無視して戦うつもりだがと考えている。根本的に四季は両親、特に母親との仲は悪いのだ。流石に相手ごと斬る様なマネはしないが、詩乃の安全と天秤にかければあっさりと斬り捨てる程度には仲が悪い。
そんな会話を交わしつつ駒王学園に登校する二人だが、四季と詩乃の二人のクラスは別である。
クラスメイトの一誠を除いた変態三人組の二人が一誠を射殺さんばかりの目で睨んでいるとと思えば、今度は18禁な本やDVDを取り出して鑑賞会だの、一誠は誘わないだとか叫んでいたり、それを女子が絶対零度の視線で見ていたりと、普段の光景が広がっていた。
ふと、二人が睨んでいた一誠の方に視線を向けてみると、最近海外から転向してきたアーシアと話していた。
(……あの子もグレモリー先輩の所の眷属だよな。明らかに戦闘タイプじゃない。……そうなると誰なんだ……赤龍帝って)
重ねて言おう。四季にとっての赤龍帝か見極めるための比較対象はドラゴニック・オーバーロードである。
思いっきり警戒している赤龍帝……剣の記憶の中にある、光の超兵装の本来の主である光の剣士と戦った龍の帝国の大帝……数多の龍達から絶対的な信頼を置かれていた最強のドラゴン……ドラゴニック・オーバーロードを連想しているが……現実は目の前の変態三人組の一人である。普段の一誠の行動から考えると彼と赤龍帝を結び付けて連想する事はできないだろう。
「五峰くん、ちょっと着いて来てくれないかな? 部長、リアス・グレモリー先輩が君を呼んでるんだ」
光と影の剣士と弾痕の少女……二人の物語はこの瞬間に赤き龍帝の物語と交わったのだった。
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