【K】力とミニマムと立場と。【ハマトラ】
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カフェ・ノーウェア&BAR HOMRA
「鎌本!!」
とある鎮目町にあるBAR HOMRAで1人の青年の声が煩く鳴り響く。
声変わりをした低い声が店内に響き渡っているが、BARの中には鎌本と呼ばれた男と怒鳴っている青年の2人しか居ない為、誰も煩いなど言ったりはしない。
鎌本と呼ばれたモデルの様に細身で金髪の男は困ったような、何故怒鳴られないといけないようなそんな表情を浮かべている。
―――――
「ちーっす!!」
BARのドアを勢いよく開けるとカランッ、と鈴の音がする。
この店独特の鈴の音だろうと思いながら辺りを見渡しても誰も居ない。
――鍵閉めてけよ。
スケボーをドア付近に掛けて、誰かが帰ってくるまで留守番をしようと思い、ドアを閉めてソファに向かうと鎌本がソファで横になっていた。
「いんじゃねーか……」
ホッとしたように呟くが、寝るなら鍵閉めろと思っているが店の手伝いをしているので疲れているんだろうと納得する。
それにしても毎年毎年夏に激痩せするのはなんだろうか。
俺に対する嫌味なのか。
鎌本曰く食欲が無いと言っていたがあまりにも食欲が無さ過ぎると思う。
BARのマスター草薙さんが帰ってくるまで掃除でもしようかと鎌本から離れると「八田、さん?」と声がした。
「うおっ!! ビビらせてんじゃねぇ!!」
胸の辺りで拳を作っては怒鳴りながら頬が赤くなるのが分かる。
鎌本からは「驚いた八田さんが悪いっス」と言うのが聞こえてくるが、深呼吸をする。
「いつから起きたんだよ?」
腰に手を当てて尋ねる。
すると躊躇いも無く「八田さんの気配で起きたっス」と返された。
――恐ろしいこと言ってんじゃねぇよ。
☆☆
草薙さんが居ない事を尋ねると買出しに行っている様でその間留守番をしていたら、いつの間にか寝ていたと言って別に寝てた理由を聞いてないが答えられた。
尊さんやアンナも一緒に行っているらしい。
あまり想像はしたくないのは気のせいだろうか。
すると鎌本が暇つぶしにオセロをしようと言うので二人でオセロをすることになった。
俺の完敗。
そして冒頭の叫びに戻る。
「てめぇズルしてんだろ!!」
「してないっスよ、八田さん……」
何度やっても全戦全敗。
しかも全て真っ黒。
「うそつけ!!」
俺が鎌本に怒鳴っているとカランッとドアが開く音がして、草薙さんが帰って来たのかとドアの方に振り向くと―――。
カウンター席から離れてBARの奥にあるソファ付近で木製の床に座り込んでオセロをしていると、ドアが開いた。
そこまではドアを背にしていた俺と、俺の目の前の鎌本も理解が出来た。
だが、帰ってきたと思っていたマスターの草薙さんの姿はなく、このBARには見知らぬ2人組みが入ってきた。
ここのBARは見た目通りのBARで外見もオシャレで中身もオシャレだ。
オシャレと一言で言ってもよく分からないし、俺もどう説明すればいいか分からないがアンティークな感じ。
草薙さん本人が『女性客1人でも入れるようなBAR』を目指していると言っていた。
草薙さんがイギリスのロンドンから取り寄せて、煙草の染み込んだ匂いと磨けば磨くほど艶が出るカウンター席。
何かと多趣味な十束さんが置いている盆栽やら置物がオシャレなBARには少し似合わないが、犯罪組織が使うような物も一切置いていないそんなBARに見たこともない2人組みが、堂々と入ってきては辺りを見渡す。
「あれ?レシオちゃん、此処どこよ?」
金髪に前髪が短く全体的に髪がショートな黒いサングラスをかけた男が、「レシオ」と呼ばれた男の方に頭に手を組みながら見上げて尋ねる。
その声を聞けば俺は一瞬寒気がした。
理由は、【声が全く一緒】だからだ。
話し方は違うが、声は一緒。
レシオと呼ばれた男は右目に真っ黒な眼帯をして青い前髪を右寄りに分けていて、見た感じはお坊ちゃんがするような髪型だった。
俺達の方に向いては「どうやら俺達は違う場所に来たようだな」と冷静に言い、すぐに出て行こうとする。
すると金髪のサングラスをかけた黒いジャージを着た前を全開に開けて中に黄色のシャツを着ている男が、レシオと呼ばれたカッターシャツのボタンを上まで閉めて青いネクタイを胸ポケットに入れて白衣を着ている男に、視線を上に上げながらこう言った。
「でも俺達カフェノーウェアのドア開けたっしょ」
俺と鎌本は暫く沈黙しながら2人の会話を聞いていた。
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