SWORD ART ONLINE ―穿つ浸食の双刀―
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09:水の妖精とユニークスキル
デュエルによってミハイルを黙らせたあの後、アスナから直ぐにアイテム分配、集合時刻、役割についての説明が入った。それに対しての反論はなかったので直ぐに解散、そして何をする訳でもなくボス攻略当日に。道中でも目立った問題は発生せず、あっという間にボス部屋の前へ。
「オウカ、ボス戦は初めてなんでしょ?······何が起こるか分からない、可能な限りは守るけど、無理はしないでくれ······!!」
「分かってますよ、ハリン君······命が懸かってるんですし、基本は盾の人達の後ろにいますから」
不安の感情を抱く僕を尻目に、オウカは腰の片手長剣を抜き放つ。甲高い音と共に抜刀されたその剣は、どこか神々しいイメージが漂っている。
僕も腰から愛刀を抜刀、装備品の確認及びアイテムポーチの確認を終え、攻略開始の合図を待つ。全員の確認が終わったところで、僕、キリト、アスナの三人が先頭に出る。今回はこの三人でボスの身を崩壊させ、その後一斉に中の核を叩く作戦だ。
「久々だからってしくじんなよ、ハリン」
「そっちこそ······僕の剣捌きに腰を抜かさないでよ?」
軽く会話を交わす。コミュニケーションはこの程度で問題ない。後は自分がどれだけ立ち回れるかだ。正直胃が痛くなってきているこの現状、プレッシャーもかなりのものだ。
「攻略······開始ッ!!」
アスナの声と共に、扉が開かれる。雪崩のようにボス部屋に入るプレイヤー達。全員が入ると同時に扉が自動的に閉ざされ、退路を断たれる。と言っても結晶類のアイテムは使えるので転移は出来るのだが。
「しゅるるるるるるっ!!!」
水の妖精。確かにその通りだと思う。全身が水で構成された人間のような身体、その丁度中心にはやや大きめで朱色の核が覗く。核から体全体に向けて赤色の血管とおぼしきものが伸びており、軽く吐き気を催す見た目だ。
「さぁ、一気に行くよ、二人共ッ!!」
金色の影が疾走。それに続くように、漆黒と純白も疾走する。第五十四層ボス攻略の火蓋が切って落とされた――――
* * * * *
「セアァッ!!」
刀による凪ぎ払いがボス――――ヴォジャノーイにヒット、威力もかなりのものだがそれだけでは水の障壁を崩せない。ただし、それが僕一人ならば話だが――――
「――――らぁっ!!」
「やぁっ!!」
漆黒の服に身を包んだ少年、キリトによる連撃と、純白の団服に身を包んだ少女、アスナの素早い突き攻撃。これに僕の斬撃、崩せないなんて言葉が出る訳がない。
「ふるるらっ!?」
水の障壁が崩れる。すかさず指示を出し、各々がソードスキルを発動。悲鳴を上げるヴォジャノーイなど気にする者は誰もおらず、真剣な眼差しで狙いを定めて強力なスキルを叩き込む作業を繰り返す。
「ふるるっ!!」
衝撃。然程ダメージは高くないが、僕達は大きく後方に飛ばされる。水の障壁は姿を取り戻したようだ。反射の際こちらの勢いも利用したのだろう、普通より飛ばされる距離が遠いようだ。
「まずは一本······まだまだ気を抜かず、攻めるよッ!!!」
「おう!!」
再びキリト、アスナ、僕の三人が先頭に立つ。他のプレイヤー達は己の出番まで待機。盾の後ろに隠れているだけなので、正直負担は何もないと思うのだが。僕も本当はそっちに行きたかったというのが本音だ。
「あぁぁっ!!」
僕はヴォジャノーイの隙を見てソードスキルを発動。刀スキル六連撃技《零刀》。交差するように斬撃を浴びせ、回転しつつ懐に潜り込む。そこから更に切り上げ、次いで切り下げ、最後にノールックでの突き。
「ふるるるるっ!!!!」
水の障壁に僅かな亀裂が生まれる。アイコンタクトでキリトにそこを攻めろと伝えると、コンマ一秒でキリトが片手長剣t四連撃技《ホリゾンタル・スクエア》を発動。
ミシミシという音とが響き、直後水の障壁が消滅。待ってましたと言わんばかりに盾に隠れていた部隊がこちらに接近、ソードスキルを発動する。色鮮やかなライトエフェクトが部屋を包み込む。先程の一回で慣れたのか、攻撃回数も増し、蓄積するダメージも増加している。
「ラスト一本っ······皆、何か変化が起こる可能性があるから注意を怠らないで!!」
僕は刀で応戦しつつ、攻略組全体に指示を出す。嫌々と言った様子で従う者もいれば普通に従う者もいる。まぁ、復帰戦で何をしゃしゃりでていると思われても仕方無いだろう。
「ふるるるらららあぁぁっ!!!」
(障壁の回復が速いっ······!?)
内心で舌を巻きつつ後方に下がる。よくよく見ると、ボスの色が変わっている。先程までは透き通った青色の体だったのだが、それをベースに所々紫色に変色している。危険域に突入する前に覚醒するボスのパターンは割りと厄介だ。
「それでも、ここで負ける訳にはいかない······キリト、アスナ、行くぞッ!!!」
「「分かったッ!!」」
三度特攻、障壁の破壊を狙う。おそらく、これを崩す事によって勝利が見えてくる。苦戦を強いられるようでは死者を出す可能性が高い。盾も無限に存在する訳ではない。
「《澄華》ッ!!」
刀スキル三連撃技《澄華》。縦斬り、横斬り、斬り下がりを素早い動作で行う。下がり様に相手の様子を伺うが――――
「――――なっ、回復が速いっ······!?」
摩擦力で止まりつつ驚愕の声を上げる。あれでは三人での破壊など不可能と言っても過言ではない。もう二人はいるだろうが、無計画に呼んでしまってもチームワークはバラバラ、却って邪魔になる。ならば他に打開策は――――
(――――否、ある。一つだけ、僕のとっておきが。······しかし、あれを使うのは······迷っていられないかっ······!!)
「キリト、アスナ、十五秒くらい宜しく頼むッ!!!」
一瞬何事だと思いつつも了承してくれるキリトとアスナに感謝しつつ、僕はウィンドウを開く。装備品の追加、スキル変更、完了。これで――――
「――――二人共スイッチ!!」
叫び、突っ込む。同時にキリトとアスナも下がり、事の成り行きを見守る。
「はぁぁぁっ!!!」
先ずは一撃。迫ってくるヴォジャノーイの腕を跳ね上げる。丁度腰に新たな重みが加わると同時に、それを掴み引き抜く。煉獄の業火を思わせる。銘は《フレイム・シン》。それを一気にヴォジャノーイに叩き付ける。
「ふるるるるるるっ!!!!」
エクストラスキル《双刀》。今まで僕が何者の前でも使わなかったスキル。今がそれを使う時だ。直感でそう感じとっただけだが、障壁を崩すにはもってこいのスキルだ。
「絶対に崩すっ、《ディメンション・ゼロ》ッ!!」
双刀スキル十四連撃技《ディメンション・ゼロ》。刀スキルらしからぬカタカナ表記のそれに最初は疑問を覚えたものだ。豪雨の中に落ちる雷鳴の様な光が二刀を包む。目で追えない程のスピードで障壁にダメージを蓄積、それでもまだ崩せない。なら――――
「――――もう、一撃っ······!!」
《スキルコネクト》。数日前に発見したものがボス戦で活用出来るとは思ってもいなかった。双刀スキル十連撃技《ブラッディ・ストレイト》。鮮血を思わせるライトエフェクトが刀身を包む。怒濤の十連撃がヒット、直後障壁が崩壊する。
「今だっ······一気に攻めろぉぉぉッ!!!!」
喉が潰れるかと思う程の声で叫ぶ。気圧されるプレイヤー達もいたが、直ぐにスキルを立ち上げる。
「ふるるるる······らら······ら······」
力を無くした様に地に倒れ伏すヴォジャノーイ。そのHPは、0。すなわち《死》。体が青白く輝きだし、数秒後爆散する。歓喜の声が、ボス部屋を包んだ――――
後書き
初の3000文字超え。
ハリン「当初とはだいぶ変わった双刀を使う場面······まぁ、いいか。感想、御指摘らお待ちしてます、宜しくお願いします」
宜しくお願いします!
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