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美しき異形達

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第二十八話 横須賀の思い出その十二

「バランスを崩すことになるから」
「そうなるか」
「薊君はジャンプは高い方が好きだね」
「ああ、戦う時でもな」
 その時でもだというのだ。
「高く跳ぶよ」
「そうだね、跳躍力があることはいいけれど」
「それでもか」
「時と場合によるよ」
 高いジャンプをすることもというのだ。
「不必要な時の高いジャンプはバランスも崩すから」
「よくないか」
「そこは気をつけてね」
「さもないと着地とかが難しくなるか」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「ジャンプもね」
「無闇に高く跳ぶんじゃなくて」
「時と場合を考えてね」
「跳ぶべきか」
「モトクロスだけじゃくてね」
 戦いの時もというのだ。
「僕はそう思ったよ」
「そうか、じゃあ気をつけるな」
 薊も智和のその指摘に頷く、そうしてだった。
 智和の話が一段落してからだ、彼にあらためて問うた。
「他にはまだあるかな、先輩の気付いたところ」
「いや、その他はね」
「ないか」
「僕が観たところはね」
「そうか、じゃあジャンプをな」
「ただ高く跳ぶのじゃなくて」
「その時と場所に合わせて跳ぶことか」
「高低を考えてね」
「それだけか」
 薊はあらためて頷いた、これで智和との今日の話が終わった。これは薊だけでなく智和も思ったことだった。
 それで別れの挨拶をして寮に帰ろうとしたところでだ、不意に。
 薊は智和にだ、目を鋭くさせて言った。
「また来たのかよ」
「怪人だね」
「何かこの時間よく来るな」
 夕暮れ時にというのだ。
「連中は」
「そういえばそうだね」
「何でだろうな」
「人気がなくなり暗くなるからね」
「他人に観られずに済むからか」
「怪人は僕達以外に姿を見られることを嫌う」
 この特性をだ、智和は指摘した。
「だからだね」
「それでか」
「うん、彼等はこの時間に出て来ることが多いのだと思うよ」
「確かに人気もいなくなるしな」
 薊は周りを見回した、もうその周りには二人以外誰もいない。
 しかも夕暮れで視界も悪くなっている、それで薊も言った。
「人知れず闘うには持って来いだな」
「そうした時間だね」
「そういうことか、じゃあな」
「今からだね」
「闘うよ」 
 にやりと笑ってだ、智和に言った言葉だ。
「そうさせてもらうぜ」
「では僕はその闘いも」
「観てくれるかい?」
「そうさせてもらうよ」
 智和も微笑んで薊に答えた、そうしてだった。
 右手に七節棍を出す、そのうえで。
 棒を両手に持ち替えて身構えてだ、こうも言うのだった。 
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