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SAO ––TS少女のデスゲーム攻略

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プロローグ

人生というものは、ちょっとしたことがきっかけで、思いもよらぬ方向へと変わってしまう。例えば、気まぐれで買った宝くじが大当たり、一気に大金持ちになったりとか。……まあ、こんな良い話は滅多にないだろうが、もしあの時、あれをしなければ……。と思うことは誰にでもあるだろう–––––。

俺は今、そういった状況に直面している。とはいっても、例にあげたようないいことではない。むしろ最悪、人生が変わるどころか、終わってしまう手前まで来ているのだ。

何故、そういったことになっているのかというと、実に良くある話だ。向かい側の歩道へ移動しようとした俺は、急に車道へ飛び出し、あっさり軽トラックに引かれた。どう考えても自業自得だ……。

体からは物凄い量の血が流れ、周からで何やら騒がしい音が聞こえるが、耳が上手く機能していないのだろうか、何の音だかわからない。視界も、ぼんやりとしてきている。

––––––嗚呼、なんて下らないのだろう。

俺は、自嘲的な笑みを浮かべた。 人の命とはこうも儚く、こうもあっさりと散ってしまうものなのだろうか。
俺の頭に、たくさんの人の顔が思い浮ぶ。俺をここまで育てたくれた両親、学校の先生達、クラスメイト、多くはないが、俺の大切な友人達–––––。

「……ごめん」

俺は彼らに、届くはずのない言葉を呟いた。

意識が遠のいてゆく。

……そうか、俺は死ぬのか。

まだ、死にたくはない。こんな、未練たらたらのまま終わりたくない。できることなら、まだ生きていたい。




そんな叶わぬ願いを抱いたまま、俺はゆっくりと瞼を閉じた。






****







「はぁ……」

俺は、自分の物ではないベッドに転がり、真っ白な天井を眺めながら、今日何度目かわからない溜息をついた。現在、この部屋にいるのは俺一人だけだ。

自分の体を見下ろせば、控えめかつ上品な2つの膨らみがある。そして下半身には、当然ながら、男ならついているソレはない。 髪の毛は茶色味がかった黒のストレートで、背中あたりまで伸びている。

ふと窓ガラスを見ると、ぼんやりと自分の姿が写った。整った顔立ちにくりんとした大きな黒い目、ふっくらとした、鮮やかなピンクの唇。どこからどう見ても「女の子」である。(本人に自覚はないがかなりの、いや、超絶美少女と言っても過言ではない)
だが俺は、今のそんな自分を見て、再び溜息をつく。

『俺』はさっきまで『私』だったのだ。正確には、自転車を漕いでいると近くを走っていたバイクにぶつかりそうになり、慌てて自転車の軌道を変えようとしたものの失敗。盛大に転けて頭をぶつけ、この病院に運ばれてくる途中まで。

……何言ってるのかわからないだろう?そりゃそうだ。俺も今の状況をよく理解出来ていないのだから。

とりあえず、ありのまま起こったこと、感じたことをまとめてみよう。

まず俺……否、『私』は自転車で事故を起こした。と言っても、私が勝手に転けただけだが。この時はまだ、私はどこにでもいる女の子だったし、一人称も『私』だった。そこからは記憶がはっきりしていないのだが、恐らく事故現場から病院に運ばれてくる時に乗っていた救急車の中だろうか、私の頭の中に知らない、大学生ぐらいの男の記憶が流れ込んできたのだ。

……いや、これは「思い出した」と言うべきだろうか。他人の記憶にしては妙にはっきりしているし、この記憶の男が感じたのであろう痛みや思いが、まるで自分のことのように感じられる。

そして何より、今私の一人称が
『俺』だということ。
別に意識して変えたわけではない。今は『私』よりも『俺』の方がしっくりくると感じるのだ。恐らく、記憶だけでなく、人格まで変わってしまっているのだろう。

病院で最初に覚醒した時は、今までの記憶と「思い出した記憶」とがごっちゃになって、わけのわからんことを呟いていたせいで、そばにいた看護婦さんや、俺の事故を聞いて飛んできた母に大いに心配をかけたけど、今はかなり冷静を保っている。

俺が思い出した記憶は、道路へ飛び出して軽トラに引かれたところで途切れている。よくは覚えていないが、大量に出血していたのは間違いないので、まず死んだだろう。

だが、俺はこうして自分の存在を感じることができる。少女の姿でだが。

…… 色々考えた結果、俺は1つの結論へと至った。

––––––到底信じられることではないが、これは所謂、「前世」の記憶なのだと。

俺はふとカレンダーを見ると、2022年の5月のページになっていた。確か今日は、8日だっただろうか。俺が前世で交通事故にあったのは、2005年の8月あたりだ。今の女の子の俺は13歳で、生まれたのは2008年の9月14日。つまり、前世の男だった俺が死んで3年後、今の俺が生まれたということになる。

物心着いた時から何か引っかかっていた気がしていたのだが、恐らくこの記憶が原因だろうな……。

そこまで考えた時、不意に病室の外から声が聞こえた。

「美雪?入るわよ」

どうやら母が俺のお見舞いに来たようだ。思わず「ああ、いいぞ。」と男みたいな口調で返事をしそうになったが、どうにか踏みとどまった。ここは慎重に言葉を選ぶ。

「あ、どうぞ!」

今まで正真正銘の女の子だったのだ。もし俺が自分のことを「俺」とか言ったり、男口調で喋ったりしたら、確実に母に変な目で見られるだろう。ここは女の子をしているのが懸命なのだ。

幸いなことに俺は今の女の子の自分の記憶もある。母の前での振る舞い方に関しては問題ない。

だが逆に、女の子にとっては普通でも、男の、しかも大学生の人格を持った俺にとっては超恥ずかしい記憶もしっかりと残っているのだ。思い出すだけでも顔が熱くなる。

そういえば、男子に対して恋心を抱くことは一回もなかった。そもそも恋愛事はあまり興味がなかったからな。……まあ今となっちゃ、そんなアッーーな展開は絶対にごめんだが。

「……あら?美姫、どうしたの?顔が赤いわよ?」

いつの間にか部屋へ入ってきていた母が、俺に怪訝そうな顔を向けた。

「……何でもない」

「そう?それならいいんだけど……。それより、ドーナツ買ってきたの!一緒に食べましょう!」

「ホント?ありがとう!」

母が手に持っていた箱を近くの机に置いた。そういえばこのお母さん、すごい別嬪さんだなぁ。今まで身内だから気にしたことなかったけど。


–––––––はぁ……。これからやって行けるかなぁ……。


俺、「黒崎美雪」は、母に満面の笑顔を向けながらも、心の中でそう呟いた。
 
 

 
後書き
文章力が欲しいです。 
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