ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜
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第三十八話 共闘
男の一人が放った斧での一撃をメタルキングの剣で受け止め、男に足払いをかける。
もう一人の後ろからの一撃を風神の盾で防ぎ、そのまま打ち払った。男が唱えたメラミをバギマで相殺し、もう一人の男の斧を剣で斬りつけ破壊した。
「くそっ。なんて強さだ」
「しかも手加減されてやがる……!」
男達が言うとおり、アベルは出来るだけ傷つけまいと手加減して戦っている。男達は強いことは強いが、手加減しても充分倒せるくらいの強さなのである。
このままでは男達の負けは確定する。そんな時予想外のことが起こった。
「おぃ。おめぇら何優男相手にちんたらやってんだ。さっさとはぐれメタルを捕まえろよ」
「お、お頭!」
通路の奥から現れた人物は男達とよく似ていた。マスクにパンツ(後は裸)に大振りの斧を担いでいる。(といってもマスクやパンツの色は濃い緑色だし、装備している斧も違うのだが……)
「うちの可愛くも何とも無い部下が世話になったようだな。え?」
男はアベルにそう言った。
「俺の名前はカンダタ。こいつらのボスだ」
「僕はアベル。……旅人だ」
しかしカンダタはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「お前の名前なんざどうだっていいんだ。だがなこっちの商売を邪魔されるのはどうでも良くねぇんだ、若造。俺の邪魔したことを存分に後悔しろ」
カンダタはアベルに斧を振り下ろす。それを盾で受け止めるが一撃がはるかに重い。
「スカラ……!」
緑色の光がアベルを包み、打たれ強くする。
「メラミ!」
アベルが盾で防いでいるところに男のメラミが放たれた。バギマを放てるだけの余裕は無い。
そして直撃した。
「ぐぁぁ……!」
熱い。炎に耐性のあるドラゴンメイルを装備しているがそんなのお構いなしに熱い。
痛みで盾に込める力が緩んだところを狙い、カンダタの強烈な一撃が再び入った。
「あああああ!」
腕にすさまじい程の衝撃が走り、アベルは倒れこんだ。何とかすぐに起き上がるも続いて放たれた斧の二撃を回避するのが精一杯だった。
(くそっ……!骨がいかれた!)
ベホイミを唱えようとするも斧が迫ってくる。もうここまでか。
(皆……すまない!)
しかし最後の時はこなかった。何故ならそれは。
「はぐれメタル!?」
そう、はぐれメタルが力を振り絞ってアベルの盾になってくれた。
アベルの魔物使いとしての力は誰かのためなら我が身構わず戦う。そんな優しさがあってこその力。
初めて会った魔物を助けようとするその姿勢が臆病なはぐれメタルの心になによりも届いた。
「ありがとう、はぐれメタル。ホイミ」
はぐれメタルを回復するとうれしそうに体をゆらした。腕にも回復呪文をかける。
「余計なことしやがって!もうこの際だ。その優男もはぐれメタルも殺しちまえ!」
カンダタが激怒し、子分と共に襲い掛かる。
「きゅるきゅる!イオラ。きゅるきゅる」
イオラが炸裂し、アベルの剣での一撃が斧を壊す。放たれた拳や蹴りにははぐれメタルがその素早さと硬さで壁になってくれた。
そして戦いはすぐに終わった。
「覚えてやがれ!」
そう捨て台詞を吐き、こっぴどくやられた盗賊達は逃げ出した。
「ま、これで一件落着ってところかな」
アベルはふと床に目をやるとなにやら光っているものがあった。気になってとってみるとそれはグランバニアの国旗が描かれた勲章だった。
「王家の印までちゃっかりと……」
少し呆れるアベル。
「きゅるきゅる!きゅる」
「助けてくれてありがとう、はぐれメタル。もう行くのかい?」
「きゅる!」
はぐれメタルは体を揺らすと、少し名残惜しそうにしながらも去っていった。
「少し寂しいけど大丈夫だ。僕とあいつはもう友達なんだから」
アベルは王家の印を懐に入れるとグランバニアに向けて歩いた。
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