ルドガーinD×D (改)
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八話:絶対強者と遭遇しました
前書き
行く先々で不幸に巻き込まれるのがルドガーさんクオリティ。
それではどうぞ。
呼吸が荒い、胸の動悸が止まらない、背中に気持ちの悪い汗が流れる。
まるで金縛りにあったかのように俺の体は動かない。
しかし、本能は必死に逃げろと大声で警告をしている。
でも、動くことは出来ない。こういうのを蛇に睨まれた蛙って言うのか?
そんな現実逃避をしながら、勇気を振り絞りつつ、俺の前に立つ『存在』を見やる。
視界を覆い尽くすほどの巨体。
どれだけ鍛え上げればこんな風になれるんだよと言いたくなるほど、
一切の無駄を無くし全てを肉体に捧げたと一目でわかる程の筋肉の塊。
こいつと比べればビズリーですら、ひ弱と言い切れる程に鍛え抜かれた覇王の体格。
見る者全てを屈服させる圧倒的な存在感を放ちつつ、威風堂々と佇む『存在』
そんな……そんな存在がどうして―――
「いらっしゃいにょ」
ゴスロリ衣装をフル装備してるんだよおおおおお!!!
常人ではまずあり得ない次元に膨れ上がった胸筋のせいで
直ぐにでも破れるレベルでゴスロリ衣装が悲鳴をあげてるだろ!?
でもな、もっとも特筆すべきはそこではなく頭だ。
どうしてかって?見てみろよ!あの頭!!
――猫耳を着けているんだよ!!――
もうダメだ。俺の不幸な人生の中でもここまで酷い物を見たのは初めてだぞ。
クロノスが猫耳標準装備していた時にすら感じなかった吐き気を
俺は今まさに感じている所だ。正直言って胃の中の物を残らず吐き出してしまいたい。
ああ……俺達なんでこんな事になっているんだろうな?
そう言った言葉を込めて同じく、衝撃を受けて指の一本も動かせないイッセーを見る。
そもそも、どうして俺達がこんな事になっているのかと言うとだ。
オカルト研究部に顔を出して見たら、
『今後の為になるから見学だけでもしてみたらいいわ』
とリアス・グレモリー先輩、もとい部長に言われたので半ば強制的に
ちょうど依頼の入ったイッセーに着いて行ったんだよ―――徒歩で。
いや、これは俺が悪かったわけじゃないんだ。
何でもイッセーは魔力の量が子供以下しかなくて魔法陣が使えないので
自転車で依頼主の所まで行ってるらしい。
当然、イッセーは今回も自転車で出勤、自転車を持っていない俺は
足で並走したというわけだ。
そして、到着してドアを開けてみたらこの状況というわけだ。
『悪魔のお仕事見学』なんてしなかったら良かったな……。
ただ、ここで愚痴を言っていても何も変わらないよな。
よし!俺は覚悟を決めたぞ!!
「ごめん、イッセー。用事を思い出したから俺は帰るよ」
「おい、俺を置いて逃げようとするな、ルドガー」
「離してくれ、イッセー!家に八歳の病気になった娘が待っているんだ!!」
「お前、まだ高校生だろ!?」
回れ右をして帰ろうとしたが、がっしりと肩を掴まれて阻止されてしまう。
イッセーの奴……俺を道連れにするつもりか!?恥を知れよな!
俺も置き去りにしようとした?………子供に言ってもわかんないですー。
「すいません、こいつシャイな奴なんですよ」
「そうだったのかにょ。でもミルたんは何もしないから安心するにょ」
すいません、あなたの口癖とお名前で既に俺の頭は狂ってしまったようです。
どうなってるんだよ……何でその風貌で『にょ』が口癖で、名前が『ミルたん』なんだ?
どう考えても合わないよな?と言うか既に混ぜるな危険の領域に入ってるだろ!?
「えっと…それで今回はどんな願いを叶えて欲しいんですか?」
「そうだにょ!悪魔さんに叶えて欲しい願いがあるだにょ!!」
瞬間、ミルたんを中心に凄まじいエネルギーが放たれた。
思わず、身の危険を感じ身構えてしまうがミルたんの目をみて構えを解く。
どうしてかって?だって目がまるで子供のように純粋無垢なんだよ……
俺の身に危害を加えることはないだろうが……
この風貌にその目は間違いなく俺の精神に深刻なダメージを与えているよな?
はあ……帰ったら猫黒歌の猫耳で癒されよう。
それにしてもミルたんの願いってなんなんだ?
正直言って世界征服位ならその肉体だけで達成出来てしまいそうで怖いんだけどな。
さあ、ミルたん、お前の願いは何なんだ!?
「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ」
「「勘弁してください」」
思わずイッセーとハモってそう言ってしまうほどに
俺達の予想の斜め上のさらにその上をいく物だった………。
というか、魔法って普通は筋力が低いやつが使うもんじゃないのか?
あんたには無用の長物だよな?普通に魔法使うよりその剛腕で殴った方が強いよな?
あんたなら『絶拳』のさらに上位バージョンの技が放てるだろ。
俺が言うんだから間違いないさ。
「異世界にも行ってみたけど無理だったにょ」
異世界に行けたのかよ!?
というか、もしかして俺の世界にも来てたのか!?
正直もし来てたとしたらオリジンとクロノスでさえ、土下座して帰ってくださいって
言いそうだよな。
「悪魔さん!ミルたんにファンタジーな力をくださいにょおおおお!!」
『無理です!!』
そう言えるならどれだけ楽なんだろうな……はあ。
イッセーも同じような気持ちだろうが目の前の絶対的強者―――ミルたんの
機嫌を損ねるわけにはいかないので我慢する。
いや、『無理です』って言ったらあの剛腕で俺達の体が小枝のように折られそうなんだよ。
だから、ここはイッセーにしっかりと仕事を果たしてもらうしかない。
勿論、魔法少女にすることなんて無理だろうけどな。
取りあえず、妥協案でもいいからなんか言えよな。
「と、取りあえず、相談になら乗ります」
ああ、それぐらいしか生き残る為の手段がないよな……はあ。
俺が心の中で深いため息を吐いているとミルたんは何やら部屋の奥に入って行き
何かのDVDの山を抱えて戻ってきた。
あれは……何なんだ?
「じゃあ、この『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』を一緒に見るにょ。そこから始まる魔法もきっとあるにょ」
笑顔のはずなのに何故か異常なまでの威圧感を感じさせる顔で
『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』を差し出して来るミルたん。
一体全体それが何なのかは混乱した俺の頭では分からないが一つだけ分かることがある。
――どう考えても全部を見終わるのに一晩じゃ足りない――
少なくとも今夜は家に帰れそうにないな……俺、見学に来ただけなんだけどな…はあ。
結局、あの後、一晩中『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』を見た俺達は
一睡もすることが出来ずに学校に行くことになってしまった。
因みに願いを叶えられなかったので契約は結んでもらえなかったが
アンケートに書いてあったように
『こんな楽しい時間を送れたのは、はじめてにょ。また、一緒に見たいにょ。』
とのことだったので評価は高かったらしい。
何でもイッセーは契約が結べる結べないに関わらず、いつも評価は高いらしい。
部長がそのことを嬉しそうに話していたのが印象的だったな。
まあ、俺については『見学なのに大変な目に合わせてごめんなさい』
と、やけに真剣に謝ってくれたんだけどな。
………そんなに俺の目の下にくまが出来ていたのが気になったのか?
こんなのジュードが研究のし過ぎで寝れなかった時に比べたらマシだと思うんだけどな。
そう言えば、エルが居た時は早めに寝てたな……
やっぱり子供は夜更かししたらダメだよな、うん。
『たくさん寝ないと大きくなれないぞ』って兄さんも言ってたしな。
折角、成長期に戻ったんだから身長を以前より伸ばそう、目標は177㎝だ!
いや、77ってなんか縁起がよさそうだろ?
そう言えば、イッセーが道に迷っていたシスターを教会に案内したら
悪魔が教会に行ったら光の槍が冗談抜きで降ってくるから気をつけろって理由で
部長からめちゃくちゃ叱られたって言ってたな。
その後でお前も気をつけろよって言ってたけど………俺、まだ人間なんだけどな。
俺は人間だから別に教会に行っても大丈夫!……だと思う。
オカルト研究部に入ってるっていう理由で狙われたりとかしないよな?
まあ、その場合は飛んできた槍を撃ち落とすだけだけどさ。
さて、昨日は寝れなかったから今日は帰って寝るか。
……別にたった今ミルたんから依頼が入ったからとかそう言うのじゃないからな?
『この裏切り者!』何やらイッセーが叫んでいるが俺には何も聞こえない。
Side黒歌
「ルドガー、また遊びに来た…にゃ?」
いつものように猫型になり、するりと窓の隙間から家の中に侵入する。
泥棒みたいな入り方だけど気にしない。
別に何かを盗んだりするわけじゃないから構わないにゃ。
……冷蔵庫はたまーにあさったりするんだけどね?
ともかく、家に入るといつもより暗かったので目を凝らして見てみると
ソファーの上でルドガーが制服も脱がずに眠っていた。
「疲れてたのかにゃ?」
起こすのもかわいそうなので小声でそう呟き、ルドガーの寝顔を見つめる。
…………どうして片方だけ眉毛を染めてるのにゃ?
以前から思っていた疑問が再び湧き上がる。
「何とか言ったらどうにゃ?えい、えい」
ふざけてルドガーのほっぺを指でつつく。
前から思ってたけどルドガーのほっぺってプニプニしていて気持ちいいにゃ。
そのまま、起こさない程度の強さでつつき続ける。
「…………黒歌」
「っ!?」
起こしてしまったのかと思い、慌てて手を引っ込めるがルドガーは
相変わらず穏やかな寝息をたて続けている。
……ふう…寝言かにゃ。
「それにしても……今、私の名前を呼んだよね?」
どんな夢を見ているのか気になるにゃ。
いつものように私にいじられている夢でも見ているのか……それとも―――
「いやらしい夢でも見てるのかにゃ♪」
再びルドガーのほっぺをつつき始める。今回はさっきよりも強めにゃ。
起きたら、寝言の事をネタにまたからかってあげるにゃ♪
やっぱり、ルドガーをいじるのは楽しいにゃ。
「………ぅぅ」
「ほらほら、お姉さんならここにいるのよ?」
「……っぁ」
これ、何だか癖になりそうにゃ。
ルドガーの反応が一々面白いから飽きないにゃ。
さらにつつこうとしたその時―――
「黒歌………………を……………愛してる……」
「んにゃっ!?」
な、ななななななにを言ったのにゃ!?
今!!ルドガーは!?
不味いにゃ、ふ、不意打ちだったから顔が赤くなってるにゃ…!
は、早く冷静にならないと!
「………あれ?黒歌、来てたのか?」
「にゃおん!!?」
「うおっ!?どうしたんだ、突然そんな変な声を出してさ?」
「な、何でもないにゃ!何でも!!」
何でこのタイミングで起きるのにゃ!?ルドガーのバカ!
そ、それにしてもさっきの言葉……ね、寝言だから本気でそう思ってるとかじゃないよね?
それに愛してるって言っても前にもあったみたいに家族としてとかそんな感じにゃ!
きっとそうにゃ!!
「黒歌、顔が赤いぞ?熱でもあるんじゃないのか?」
「――――っ!?」
「ほら、熱い」
にゃにゃにゃにゃにゃっ!?
な、なんでこんなにルドガーの顔がち、近くにあるのにゃ!?
も、もしかしてデコとデコをくっつけて熱を計ってる!?
にゃあ!!いつもは意識しないのに今は凄く恥ずかしいにゃ!!
というか何でルドガーは急にこんな大胆な事してくるのにゃ!?
も、もしかして本当に私の事を……にゃあああああ!!
「ほら、少し休んでてくれ。今から食べやすい物を作るからさ」
混乱している所を優しく抱きかかえられてソファーに寝かされてしまう。
さらにまるで子供をあやすように優しく頭を撫でられてしまう。
にゃうう……恥ずかしいにゃ……でも……なんだか安心するにゃ。
それにしても何で私はこんな気持ちになってるのにゃ?
ルドガーはただの仲の良い友達のはずなのに……も、もしかして
私はルドガーのことが気になってるのかにゃ?
確かに顔も悪くないし、優しいし、料理も上手で一緒にいて飽きないし……あれ?
私の中でのルドガーの評価ってかなり高い?
そ、それじゃあ、本当にルドガーの事が……にゃあああああ!!
Sideout黒歌
黒歌の熱、大丈夫かな?
何だかさっきから、うんうん唸っててかなり辛そうに見えるんだけど……
少し寝ぼけてて、以前エルが風邪を引いたときにやったみたいに
デコで熱を計るなんてことを黒歌にしてしまったけど
あんなに辛そうにしているなら恥ずかしいとかは抜きにして正解だったな。
つい、母性本能が働いて抱きかかえたり撫でたりしたけど大したことじゃないよな?
それよりも今は早く、食べやすいもの……スープでも作ってやらないとな。
それにしても……変な夢を見たよな俺。
あんまりにも可笑しかったから黒歌にも話したかったんだけど今は後回しだな。
ん?どんな夢かって?
俺が『トマト帝国』とかいう国の魔王になってそれを勇者黒歌が討伐しに来るんだけど
戦いはどっちの出す料理が美味しいかを競うもので俺は夢の中でも
全品トマト料理を出してドヤ顔をしたんだけど、
それを現実と同じように黒歌があきれた様子で見て来たからこう言ってやったのさ――
『“黒歌”、俺はトマト“を”世界で一番“愛してる”男だ』ってね。
本当にどうにかしてたよな、夢の中の俺。
トマトを世界で一番愛しているのはどう考えても兄さんだろ。
後書き
偶には攻守逆転もいいよね?
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