提督の娘
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第四章
第四章
「ダンスのことは」
「いえ、それは」
「おかげで楽しい時間を過ごすことができました」
言葉もまた清らかなものであった。
「有り難うございます」
「それならいいですが」
「はい。それでですが」
美女はさらに言ってきたのだった。彼の横に立ったまま。
「あの」
「はい」
「今日はお時間があるでしょうか」
こうダスティに問うてきたのだった。
「お時間はおありでしょうか」
「はい、それは」
あると答えるのだった。真実のままにである。
「あります」
「そうですか。それではですね」
彼女はそれを受けてだった。ダスティにさらに言ってきたのだった。
「お話しませんか」
「お話ですか」
「はい。基地を案内して欲しいんです」
こう言うのである。つまりは基地内でのデートというわけだ。さりげなくだがかなりダイレクトな申し出である。それをあえて言ってきたのである。
「いいですか?それで」
「はい」
一旦時間を置いてから答えるダスティだった。
「それでしたら」
「では少尉」
ウィルマーはこれまでの同期としての気さくな態度を消してそのうえで述べるのだった。軍人として礼儀正しくきびきびとしたものにしてである。
「私はこれで」
「はい」
そしてダスティもそれに合わせるのだった。
「それでは」
「また」
お互いに帽子を被っていないのでそのまま頭を下げて礼をするのだった。そうしてそのうえで別れる。これでダスティは美女と一対一になるのだった。
「では」
「では?」
「行きますか」
早速美女に声をかける彼であった。
「基地の中を観に」
これはあくまで一般市民への案内である。だから見せられる場所とそうでない場所がある。しかしそれでも彼女に対して述べるのだった。
「参りましょう」
「有り難うございます。それでは」
「何処に」
こう言い合ってだった。席を立とうとする。しかしであった。
「待って下さい」
「!?」
立ち上がろうとしたそこで動きを止めたダスティだった。そうしてそのうえでまた美女に顔を向けてそのうえで応えるのだった。動きはそのままである。
「どうかしたのですか?」
「いえ、まだお茶とお菓子が」
彼女がいってきたのはそれだった。そのことだった。
「残っていますので」
「残っているとは」
「ですから。お茶とお菓子がです」
言葉は繰り返しになっていた。それを話すのである。
「あります」
「!?それが何か」
「あのですね」
謹んでの態度だった。そうしてまた話すのだった。
「残したままですから」
「それが何か」
「勿体ないですよね」
おずおずとこう述べるのだった。
「ですから」
「あの、本当にそれが何か」
「最後まで召し上がられてからにして下さい」
それが美女の申し出であった。
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