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ファイナルファンタジーⅠ

作者:風亜
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29話 ≪見極める為に≫

 
前書き
《27話からの続き》 

 
「ガーネット、スタイナー、クイナ、お待たせっ!」


 エーコ達5人は、イプセンの古城入り口に待たせていた3人と合流する。

「みんな、無事で良かったわ。サラマンダーとの勝負は……、ジタン達の勝ちみたいね?」

「え、違うよ? ボク達、負けたんだけど………」

「その通りじゃ。サラマンダー……、あやつが先に出て来たのではないのか?」

 黒髪の少女、ガーネットの言葉に疑問を抱いた黒魔道士の男の子ビビと、竜騎士の女性フライヤに、中年男の騎士スタイナーが首を振る。

「先に出て来たのは、今のお前達だぞ?」

「……ちょっと待ってくれよ、先に"異世界への鍵"を見つけたのはサラマンダーだぜ? あいつが先に戻って来たんじゃないのか?」

「フヌゥ……、気づかなかったアルな?」

 ずんぐりした奇妙なク族のクイナも首を傾げたように答え、ジタンは一抹の不安を覚える。

「まともな出口はここしかないはずだし、古城内では妙な仕掛けもあったから何かあったとしてもおかしくない……。オレ、ちょっと捜しに行って来る!」

「 ────私にも手伝わせて欲しい」

 長めのサルのような尻尾が特徴の少年ジタンが古城内へ通じる直線階段を駆け戻ろうとした時、何を思ってか羽付き帽子はしていない赤魔道士のマゥスンが自ら申し出た。

「あぁ、じゃ頼むよ。……サラマンダーが本当にまだ中にいて何かてこずってるとしたら、あいつのプライドにも関わるからオレとマゥスンだけで行って来るぜ!」

( ……サラマンダーの事も気掛かりじゃが、やはりあの者──── )

 フライヤは、赤マントの後ろ姿をどこか訝しげに見送る。





「あいつ……サラマンダーってさ、オレの事"見極める"とかで仲間になったようなもんで、一応ここまで付いて来てくれたんだ」

 周囲を警戒しつつ、行方の知れぬサラマンダーを捜索しながらジタンはマゥスンにふと話し掛ける。

「だから……、あんな風に否定されてもあいつに何かあったんなら助けてやりたい。他のみんなもそう思ってるし、マゥスンだってオレ達とまだ出会って間もないといっても、こうしてサラマンダーを捜すの手伝ってくれてるしな?」

「 ………… 」

「マゥスンにも、"仲間"ってのが居るんじゃないのか? けど、記憶失くしてるんだったな……」


 ────不意に、逆さの通路脇から呻くような声が聞こえてくる。

「モンスターじゃなさそうだけど、もしかしてサラマンダーか……!?」

 急な段差のある場所で、焔色の頭髪の男が仰向けに横たわっているのを発見するジタンとマゥスン。

「どうしたんだサラマンダー、 こんなとこで!」

「 ────ジタン、か? それに、あんたまで……。次に会う時は、敵同士かも知れねぇと言ったはずだぜ。……それとも、仕掛けに嵌まって動けなくなった俺を二人で嘲笑いに来たか?」

「あのなぁ……、そっちは勝ち誇ってたくせにオレ達が外に出たらお前がまだ出て来てないって聞いたから、マゥスンとオレだけで捜しに来たんだよ」

 サラマンダーに呆れたように答えるジタン。

「……俺はもう、お前達とは関係ないだろ。他人の為に行動する事に、何の意味がある? ……あんたも、物好きなもんだな。会って間もない相手に気を遣うなんざ」

「 ………… 」

「そんな言い方しなくてもいいだろ? お前を捜しに来るのに、マゥスンは自分から言い出してくれたんだぞ」

「それがどうした。……とにかく、俺には理解出来ねぇなジタン、お前の"考え方"が──── 」

「別に深く考えてるつもりないんだけどな。……お前が不本意だったとしてもオレ達は、ここまで何度も助け合ってきただろ? それが"仲間"ってもんじゃないか? サラマンダーがどう考えてるかは知らないけど、これでもオレはお前を仲間だと思ってるんだぜ。マゥスンだって、出会って間もなくてもこうして行動を共にしてる以上仲間だしな!」


「ナカマ……それが、仲間だというのか?」

 上体を起こし、再度問うサラマンダー。

「そんなもんだろうぜ。……とにかくこんな所で喋ってる場合じゃないって、早くここから出よう! って言ってもサラマンダー、お前立てるのか?」

「……仕掛けに嵌まって上から落ちた際、着地に失敗して足を挫いてこのザマだ」

「 ───── 」

 そこへふと歩み寄り、片膝を付いてサラマンダーの片足に手を翳し、白魔法を掛けて回復させるマゥスン。


「面倒、掛けたな」

「 ………いや 」


 サラマンダーを伴い古城から出ると、待ちくたびれたと言わんばかりのエーコが小さい身体で詰め寄って来た。

「んもうっ、なかなか戻って来ないからエーコ達も探しに行くとこだったわよ! みんな心配して待ってたんだからねっ!」

「……フン、別に心配してくれと頼んだ覚えはねぇ」

「なぁんですってえ~~!?」

「まぁまぁ、サラマンダーは連れ戻せた訳だし──── 」

「!? サラマンダー、後ろを!」

 皆一安心している所にフライヤが突如声を上げ、サラマンダーは咄嗟に背後の気配に気付いて振り向き様、倒れ掛かって来た者を両腕に抱き支える。

「 ────おい、どうした?」

 間近で声を掛けるも、腕の中の存在はぐったりとサラマンダーの胸板に頭を預け、白銀の長髪に紛れて表情は窺えない。

……そのため仰向けに支え直して顔色を見えるようにすると、苦しげではないものの瞳を閉ざしており意識がない。

「マゥスン、しっかりするのじゃ……!」

 フライヤの呼び掛けも虚しく、届かない。

「きゅ、急にどーしちゃったのよぉっ」

「もしかして、ほんとは具合悪かったのに無理してたのかな……」

 うろたえるエーコと、気にかけるビビ。

「待って、白魔法を掛けてみましょう。……<ケアルガ>!」

 ガーネットがそのようにしてみるもののマゥスンの意識は戻らず、ジタンは皆に声を掛ける。

「イプセンの古城での話をまとめるのは後だ、すぐ飛空艇に戻って船室で休ませよう。……サラマンダー、それまで頼めるか?」

「あぁ、借りもある。……任せろ」
 
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