IS<インフィニット・ストラトス> 可能性を繋ぐ者
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ブリュンヒルデ
「お前は何者なんだ、さっさと言えば痛い目に合わなくて済むぞ」
「クラルテ・リンクス 12才」
「....それしかしゃべれんのか貴様は!」
ガン!
と、目の前の人がテーブルを叩く音がした
こんなやり取りをもう30分ほど繰り返している
あの後、着いて行ってまず入れられたのは軍の尋問室
IS3つは取り上げられたがバイオメトリクス認証が必要である以上心配はない
それに、多分
「失礼するよ」
「な、ここは今関係者以外立ち...入り禁..止」
「やあ、元気かい?クラルテ」
「見捨てられたのかと思ってひやひやしましたよ、アルフレドさん」
やっぱり来てくれたか
この人はアルフレド・ビスト、俺の遺産管理などをしてくれている親戚にしてアナハイムのIS開発部門長だ
「こちらも君がドイツ軍に囚われたと知るのに時間がかかってしまった。すまないね」
「元々は自分の責任ですし、来てくれただけありがたいです」
「な、なぜアナハイムの重鎮がこんな所に...?」
アルフレドさんを見て固まっていた軍人がそう言った
それに対して答えたのは
「彼がアナハイムの関係者だった。それだけのことさ」
「アドルフ司令!」
ビシッと俺の尋問をしていた軍人が新たに入ってきた人物に敬礼をする。それだけでああ偉い人なのだろうとわかる
「すまないねリンクスくん、こちらにも様々な事情があったのだ。大丈夫だったかな?」
「はい」
俺も一応一礼した
「ビストさん。上層部も先程の条件をのみました。リンクスくんには」
「こちらから説明するので大丈夫です。では、失礼します。いこうか」
「え?」
俺はよくわからないまま手錠を外され、そのまま外に連れ出されアルフレドさんの車に乗せられた
「ちょっと、どういうことですか!?」
「一週間後、君はドイツ軍の特殊IS部隊に織斑千冬と一緒に入る。すまない、これが限界だった」
「....は?」
いきなりそんなことを言われた。明日から軍人だって?
「君の存在を隠すのと、実験材料に使われないようにするにはこれが限界だ。せめてもう一人男性操縦者がいればな...」
「アナハイムは?」
「こっちからも色々と提供することになった。今年一年はギリギリ黒字になるかならないかという所だな」
俺の起こした行動のせいでアナハイムは大打撃を食らったらしい...
俺はそれを聞いて、俺の行動の責任は自分で取るしかないと考え、納得した
「君は本来我々が守るべき子供だ。なのにどうしてか期待してしまう。君ならば平気ではないか、と。すまない、本当にすまない」
「謝らないでください。これは俺の責任だ」
俺はそういい、首を横に振った
「...君ぐらいの年齢ならまだ親に甘えてもいいだろうに。こうしてしまったのは我々の責任か...(ぼそっ」
?最後の方の言葉が聞き取れなかったな
「なんです?」
「いいや...とりあえず、我々も君に対し最大限できることはしよう。まあ織斑千冬がいる以上、大丈夫とは思うが...」
「ありがとうございます。...あの」
「なんだい?」
「寝ててもいいですか?少しばかり疲れました」
「ああ。いいとも、ゆっくり休んでいたまえ」
疲れが限界まで溜まっていた俺は、アルフレドさんが浮かべた優しい笑み、まるで父のような笑みに安心し、そのまま寝た
それからの一週間はすぐに過ぎ去っていった
向こうに持っていかなければならない物の調達
フェネクスの簡易整備の方法、というのもどうやら向こうにはフェネクスのデータは渡せないが軍で行う戦闘行動でとれた稼働データは使っていいということになったらしく、有る程度の整備は自分で行う必要がある
フルメンテであればアナハイムに戻るしかないが、たかが微調整程度で戻ることは出来ないのでそれくらいは行えるようにしたのだ
そんなこんなで...
「おはよーござーまーす...」
「おはよう...顔色が悪いようだが大丈夫か?」
「だいじょうです...眠い」
今日がその入隊初日なのだが...眠い。起きるのがはやくないすか?
でももう軍事基地の前だ、こんな腑抜けた顔を見せるわけにもいかない
俺は首を横に振ってから
バシン!
「ん!?」
「よし...目が覚めた」
両手で頬を思いっきり叩いた。いきなりの行動で織斑さんが驚いていたが
「成る程、気合い入れか。今日からよろしく頼むぞ、リンクス」
「はい、よろしくお願いします。織斑さん」
お互いに握手を交わし、織斑さんがそれからと続け
「私のことは千冬で構わないぞ。弟がいるからあまり苗字読みは慣れていないものでな」
「わかりました。では俺のこともクラルテで構いませんよ。それから、弟さんは元気ですか?」
俺は弟がいると聞きあの時の、俺が助けたやつを思いだした
「ああ元気だ。今度機会があれば会ってやってくれないか?歳も同じ位だし話も合うと思うぞ?」
「楽しみにしてます」
そういえば俺って同年代の友達っていなくね...あれ、なんか悲しくなって来た
でも、周りの人はいい人ばかりだったからか、寂しい思いはせずに済んでる。感謝だな...
「もう仲良くなったの?早いわね。まあいいことじゃない?」
「あなたは!」
基地の中から出て来たのは誘拐事件の時のIS乗りの人だ
「案内しに来たわ。着いて来て」
「あ、ありがとうございます」
少し気まずいが向こうが気にしている様子は無いので、あの時の話はしない
そのまま素直について行った
「あなたたちが所属する部隊...ブリュンヒルデは所属というより教官だけどね。まあそれはともかくその部隊はまだ出来たばかりでね。大変だろうけれどがんばって」
「は、はあ」
「その、ブリュンヒルデというのはやめてくれないか?あまり好きではない」
千冬さんってブリュンヒルデと呼ばれるの好きじゃなかったんだ。へぇー
千冬さんがしわをよせながらそう言うとIS乗りの人が
「そう?失礼したわ。ここよ」
と、着いたのは二つの部屋だった
「織斑さんはこっちでリンクスくんはこっち。二人とも特別だから部屋は一人部屋ね。中にある軍服に着替えたら出て来て。外で待ってるから」
「「わかりました」」
俺は部屋の中に入る。予想より広いけどあるのはベッドと机、あとは簡単なクローゼットか
俺は背負ってたバッグを降ろし、机の上に畳んで置いてあった服を着る
ふむふむ、サイズはぴったし。どこでサイズを測ったし
まあいいか。手早く着替えて外に出よう
外に出た後、千冬さんを少し待ってから目的の場所であった司令室に向かった
「失礼します」
「ん、よく来てくれたね。それからもう案内は不要だ。下がってよし」
「は!」
それだけ残してIS乗りの人は去って行った
目の前にいる人、たしかアドルフ司令だったかな?
「改めて、私が一応この基地の司令をやっている。アドルフだ、よろしく」
「「よろしくお願いします」」
「早速で悪いがすぐに向かってもらう。地図データは君たちのISに送るので確認して欲しい。向かってもらう場所は...第三戦闘訓練場だ」
「「わかりました」」
と、ISから情報が頭の中に送られてきた。えっと...あった。あそこに行けばいいのか
「では失礼します。行くぞクラルテ」
「あ、はい。失礼します」
千冬さんの後に着いて行く。なんで?
「年上だからだ」
あ、はい
そうして歩いて行くと
「全員訓練やめ!」
どうやらついたようだ。今やってたのはIS同士の模擬戦かな?
「ようこそ、歓迎します織斑教官」
「これから世話になる。よろしく頼む」
向こうから一人歩いてきた。この部隊の隊長さんかな?
「私はクラリッサ・ハルフォーフ大尉。この部隊の副隊長をしています。でそちらの男の子が?」
クラリッサ副隊長がこちらを見て聞いてくる
「はい。アナハイムから来ましたクラルテ・リンクスです。これから一年間よろしくお願いします」
ドイツ軍からは俺のことはアナハイムで秘匿されていた男性テストパイロットという扱いにしてもらっている
だから立場上はアナハイムの社員ということになるんだな
満足気に頷くと
「全員整列!」
「「「「は!」」」」
その一声で訓練を行っていた隊員たちが全員集まり二列に整列した
「自己紹介をお願い出来ますか?織斑教官、リンクスくん」
千冬さんがん、と頷き
「諸君!私が織斑千冬だ!これから一年間君たちを指導する。よろしく頼むぞ!」
「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」
千冬さんが迫力ある声でそう言うと隊員たちも背筋をぴんと伸ばして応える。すごいな
「次はお前だ、しっかりな」
ハードル高くはありませんかね
俺は深呼吸ーー昔親父に教わった自己暗示の一つだ。深呼吸をすることで自分の動揺を抑える。だからこそ俺は今までなにかあったら深呼吸をしてきた
「アナハイムから来ましたクラルテ・リンクスです。これから一年間この部隊でお世話になります。皆さんについていけるよう全力を尽くすのでよろしくお願いします!!」
胸を張りそう言った
.....やべぇ、なんの反応もない。まあいきなり男性が来たらそりゃ拒絶するわな
ーーー文句があるやつは叩きのめせばいいんじゃねえか?
いやいやいや私の機付き長様。それは無理がありますよ
「どうやらリンクスに不満があるようだな。文句があるやつは手をあげろ!」
ここで千冬さんが、いや今からは織斑教官か。織斑教官がそういったすると隊員の一人が
「なぜ男がこの部隊にいるのですか!」
「ISが使えることが判明したがアナハイムとの取引によりその存在を公にしないことの対価で、データを取るにはここが一番と判断されたからだ」
一刀両断。即答ですな
「納得できません!なぜ男と」
「男と侮るなよ?少なくとも実戦経験はあるぞ...と言っても無理か。ならリンクス!」
「はい!?」
あ、声が裏返った。いきなり俺に振らないでください。というか女尊男卑はここでもか
「私と模擬戦するか。一度戦ってみたいとは思ってたしな」
「は、えええええ!」
ということで世界最強との模擬戦をすることになった。...なにこの超展開
『両者準備はよろしいですか?』
「はい」
「問題ありません」
俺は気持ちを落ち着かせるために深呼吸ーー昔親父にたたき込まれた自己暗示方ーーをする
『ルールの確認をします。勝敗は先にシールドエネルギーが0になった方の負け、絶対防御を突き抜ける攻撃はなし。審判は私、クラリッサがつとめさせていただきます。では.....はじめ!』
開始の合図と同時に強烈な闘気を感じ、スラスター前回で横に避けた
瞬時加速、ISのハイパーセンサーでも捉えられないレベルの速度で切り込んできた暮桜をぎりぎり躱せた
「これはさすがに避けるか...そうでなくてはな!」
「くっ!」
俺は織斑教官に向かってビームマグナムを撃つが、一瞬の溜めが発生してしまう以上あの人は正確に避けてこちらの懐に入ってくる
「はあああ!!」
ビームサーベルはだめだ。零落白夜はエネルギー無効攻撃、ビーム兵器はあの人の前にはすべて無意味
だ
なら手は一つしかない...
俺は後ろに装備されているアームド・アーマーDEを腕に装備しそれで雪片を受け止める
「おおおおお!!」
「うっ...」
ヤバイ。千冬さんの闘気に呑まれる....
そう感じたとき、フェネクスの装甲の隙間から青色の光が漏れだした
な、なんでだ!?俺はNT-Dを発動させようとなんてしてないのに
そのままでは危ないと感じ、相手を蹴って距離を離す。一か八かだったか何とかなった
そのままスラスターを吹かして上昇、両手にもつビームマグナムを牽制として撃つ
なんとかサイコフレームの光が収まってくれて安堵した。だが、その気を緩めた瞬間に千冬さんは斬り込んでくる。油断はできない
それを俺はもう一度アームド・アーマーDEで受け止める。するとまたサイコフレームの光が漏れ出した
疑いようがない。千冬さんにNT-Dが反応している
このままだと、持たない...
このまま発動したら、間違いなく千冬さんを殺そうとする
かといって自分から発動させて、また同じことが起きたら...
ーーそれは違う。思い出せ、その機体がどういうものなのかを
知らない人の声。だけれでも何故か安心する声だ
ふわりと髪が凪いでいるイメージが頭に浮かんだ。その後ろには...四枚羽のMS?
ーー心に正直になれ。お前はもう知っている
イメージが消えた。近くに感じていたものもない。一体なにが...
でも、わかったことはある
信じるんだ。自分の心を
こいつは、フェネクスは俺の思いを、信念を増幅させる。それが負に傾くか正に傾くかは俺自身が決める
俺は未熟だ、それでも
フェネクス、もしお前が俺を認めてくれているのなら
俺を信じてくれるなら
「力を貸してくれ」
ーーその言葉を待っていた。今こそ枷を解くとしよう
「っ!くるか!」
フェネクスの装甲がスライドし、サイコフレームが剥き出しになり、青く輝き始める
だが、変化はそれだけではなかった
青い光が、白い光に変わったのだ
「!?」
それを受け、千冬さんは後ろに下がる
フェネクスから発せられる白い輝きはより強くなって、辺り一面を包んだ
それが収まった頃に中心にいたのは、背中のアームド・アーマーDEがなく、緑色に輝き、両手にビームマグナムを持つフェネクスだった
「なんだ...?」
フェネクス...アナハイムが宇宙世紀の技術とIS技術の総力を結集させて作ったRX-0は一次移行を必要としない
勿論最適化はセンサーの感度などを調整するために必要だが、基本形隊は完成されているのだ。そこに個人が入り込む余地はない
だが高すぎる性能のため、幾つかの機能制限かかけられている。例えば、サイコミュにかけられたリミッター、NT-Dの能力制限
だが今、フェネクスは自分の意思でそれらを解除させた
本来ならあり得ない。機械が自分自身にかけられたリミッターを解除するなど
だが、ISコアを搭載している限りそれは起こりうる
すなわち、二次移行
相性だけでいえばクラルテとフェネクスは最高以上だ
それゆえ、普通のISならば乗ってすぐに二次移行が行われても不思議ではない
だが、覚悟が足りず、思いが足りず、信頼が無かった
今ここにそれは成り立ち、不死鳥は真に解き放たれた
俺は解き放たれたフェネクスの感触を確かめる。違和感はない、むしろ今までよりも馴染む
やれる。これなら
「いきます!」
「こい!」
俺はデストロイモードの本来の速度で空を駆け、トンファーによる神速の一撃を喰らわせようとした
それは、完成されたニュータイプですら反応できない速度。それを
「ふっ!」
織斑千冬 は反応し、受け止めた
「!これを受け流すってどんな反射速度を」
「こちらの台詞だ!その速度、明らかに可笑しいだろう!」
あんたのほうが可笑しいだろう。こっちは感応とインテンション・オートマチック・システムとサイコフレームの最大共鳴を使ってこれ。すなわちチートしてるのと変わらないっていうのに!
だが、千冬さんは防戦一方。それなら勝機はこっちにある!
ここで俺は一つ間違いを起こした。それは最初に俺が危惧していたこと
「そこだああああ!」
危険信号が身体を巡る。剣と打ち合わせようとしていたトンファーを引っ込めようとするがもう遅い。なら、せめて身体をひねる!
そして、雪片が輝く。単一仕様能力零落白夜、その効果はエネルギーの無効
それは容易くビーム刃を掻き消し、シールドすら突き抜けてフェネクスに届こうとする
俺はバレルロールで暮桜を抜けようとした為、上手くかするだけに留められた。でも
ーーシールドエネルギー残50 危険域突入 注意してください
まだ400近くあったエネルギーが減った。絶対防御が発動したからだろう。因みに初期値は500だった
次の一撃にかけるしかない。仕掛けは出来ている、あとは俺がそれを使いこなせるか....いや、やるんだ
俺は拳を構える。ビームサーベルとトンファーが使えない以上それしかない
恐らく向こうのシールドエネルギーもあまり無いはず。決める!
それを察知したのか千冬さんも雪片を構える
互いに動かないで相手の動きを見ている。緊張は最大限に高められーー
「うおおおおおおお!」
「はあああああああ!」
互いの咆哮がそれをかき消し、互いに突撃を始める
こっちはサイコフレームによるエネルギーも利用した瞬時加速
向こうは瞬時加速中にもう一回瞬時加速を行うという離れ業を行った
ゆえに交差は一瞬、その一瞬で勝負は決まる。そこに入り込む余地はなにもない
はずだった
緑色の光を纏いながら浮遊するアームド・アーマーDEも暮桜に正面から突撃をする。だが、そんなものに戸惑うほど世界最強はやわでなかった
速度そのまま、アームド・アーマーDEの突撃をうけても突き進み、剣を突き立てようとする。淡い緑色の光を纏って
そして、空で交差した
ーーシールドエネルギー残量ゼロ 具現化解除 以後絶対防御に全エネルギーを回します
フェネクスは待機状態へと戻った。....おれのまけだな
俺は地上に足をつけ、千冬さんのほうを向く
すると、千冬さんも同じように生身でこちらを向いた
『両者同時にエネルギーゼロ。引き分けです!』
え...!?
「どうやら引き分けたようだな。...クラルテ、いい勝負だった。また機会があれば戦おう」
「は、はい。ありがとうございます!」
千冬さんが歩み寄り、手を出しながらそういってくれた
俺は握手で返し、そういった
周りも沈黙していたが、握手と同時に湧き上がった
「きゃあああああああ!凄い!!!」
「なんだあの試合は!本当に模擬戦なのか!?」
「リンクス君凄いわね!まさかブリュンヒルデと引き分けなんて!」
「男と侮っていたのは間違えたわ!あとで色々教えてもらおう!」
「アナハイム恐るべし」
と様々なコメントがあった
千冬さんはパン!と手をうち
「これでもまだ文句があるやつはいるか!いるならリンクスと模擬戦してみろ!」
それだけで周りは黙り、こちらをむいてきた
「よし!ならば少し遅れたが訓練を始めるぞ!リンクスは少し休んでから参加しろ、といっても最初は基礎の確認だからお前はやる必要ないか」
千冬さんはこちらを向いてそう言ってくれたが
「いえ、やります。俺も織斑教官の訓練は受けたいですし」
俺は首を横に振ってそう答えた
「よし。ではやるぞ!」
「「「「「は!」」」」」
織斑教官のその言葉に全員が敬礼で返す。おれも見よう見まねでやった。...不恰好だから後で誰かに教えてもらおう
そして、今日の訓練が始まった。...其の後全身が痛くて自力で部屋まで帰れなくなったのは秘密
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