ファイナルファンタジーⅠ
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27話 ≪1つは全て、全ては1つ≫
≪トギレタ エネルギー……テラヘノ ダイジナ………≫
「なっ……、何よこの気持ち悪い声?! ビビ、何とかしなさいよ!」
「えぇ……!? そんなこと言われても…っ」
「皆気を付けるのじゃ、何かが出て来よるぞ!」
感性の鋭いフライヤが警戒を促し、4つの鏡を失った壁画前の空間の狭間から突如、耳をつんざくような金切り音と共に出現したのは、さながら巨大な褐色の昆虫のようで鋭く尖った鎌のような前足をしており、羽らしき物は無いが浮遊状態を保っている。
≪フウイン トコウトスルモノ────オマエタチ、カ……?≫
「何だ、こいつ……!?」
≪ワレハ ダハーカ……ヨッツノカガミヲ シュゴスルモノ────カガミ モトニモドセ……!≫
「ハイそうですかって、戻す訳にはいかないな!」
「そーよそーよ! エーコ達の邪魔、させないんだからっ!」
ジタンに続いて、威勢よく言い放つエーコ。
≪ナラバ……チカラズクデ ウバイトルマデ……!≫
つんざくような金切り音を上げ、ダハーカは大きく裂けた口から幾つもの黒く丸い物体を吐き出し5人を襲う。
「出番よカーくん、<ルビーの光>!!」
エーコが横笛を奏でると、可愛らしいメロディーと共に異空間から小動物のような召喚獣[カーバンクル]が現れ、額から紅く輝く光で5人を照らし出し、<リフレク>の効果で黒い物体を跳ね返す。
「さんきゅー、エーコ! オレ達も反撃と行くか!」
ジタンが駆け出し、盗賊刀を振り回して斬り付けるがダハーカは硬い鱗に覆われている為か、続いて攻撃を仕掛けたフライヤの槍でもってしても貫けない。
≪ソンナモノデ ワレノカラダキズツケルコト カナワン……!≫
鋭く尖った尻尾の先端で二人まとめて凪ぎ払うダハーカ。
「なんてこと……!? ジタンとフライヤの攻撃が効かないなんてっ。ビビ、こーなったら黒魔法よ! エーコは二人を回復するからっ!」
「う、うん、分かった……!」
ビビは威力の高い氷系黒魔法<ブリザガ>を放つが、余りダメージを受けた様子はない。
「あ、あれ? 半減されちゃったのかな。じゃあ、次は炎で……!」
≪フウイン トカセナイ……マトメテ ホウムル……!≫
ビビが続けて黒魔法を放とうとした所へ、ダハーカは大きな鎌のように鋭く尖った前足を振りかざし突進して来る。
「わぁ!? 間に合わ……っっ」
そこへ即座に割って入った赤魔道士マゥスンは片手から強力な炎を放ち、その猛火に巻かれたダハーカは耳をつんざく金切り音を高めて仰け反った。
「うお、なんて音だ……! 鼓膜が破れそうだぜ!」
「しかしこれは……効いておるのではないか?」
思わず耳を塞ぐジタンと、感付くフライヤ。
「そーよ、火よ! そいつは火に弱いんだわ! ビビ、もっと火攻めにしてやるのよっ!」
「う、うん……! <ファイガ>!」
エーコの言葉に押されてビビが放った黒魔法に、一層悶え苦しむダハーカ。
「駄目押しと行くか、裏技決めるぜ……ソリューション9!」
ジタンが何やら片手を翳すと、何処からともなく現れた光の束がダハーカを打ち付けた。
「私もこのままで終われぬな……<桜華狂咲>!」
フライヤは桃色の花弁と共に巻き上がる竜巻を引き起こし、ダハーカに畳み掛ける。
「ジタンもフライヤもやるぅ!……ふふん、どーよっ。エーコ達にかかればあんたなんて、虫ケラどーぜんなんだから!!」
≪オマエ……タチニ フウイン トケナイ……ヒトツハ スベテ……スベテハ ヒトツ────≫
何かを言い残し、ダハーカは空間の狭間へ消失した。
「はぁ……、何とか倒せたね」
「先程の言葉……何やら気になるな」
ビビは安堵の息を漏らし、フライヤは疑問を抱く。
「マゥスンが炎放ってくれたお陰で助かったよ、ありがとな!」
「ほんと、あなたってばダンマリしてるけどやる時はやるのねっ?」
「 ………… 」
ジタンは礼を言い、エーコは少し見直してくれるが当のマゥスンは態度を崩す事はない。
「あ~ぁ、サラマンダーには負けちゃったけどカギは手に入れたし、入口でみんな待ちくたびれてるだろーから早く戻ってあげましょっ!」
急かすエーコを始め、5人は壁画の間を出てリフトを下り、来た道を戻る途中ビビが突然声を上げる。
「うわわあっ……?!」
「おいビビ、大丈夫か!?」
ガタンッという音がしたと思うと、ビビは目の前の足元でいきなり開いた床の穴に落ちかかったらしい。
「び、ビックリしたよ……っ」
「……何これ? 来た時にはこんな仕掛けなかったはずだけどっ」
エーコがしゃがんで穴の底を覗き込むと、落ちたら人溜まりもない高さのようだった。
「行きは反応せず、帰りに作動する仕掛けやも知れぬ。……足元に気を付けて進むに越した事はない、私が先を行こう。お主らはその後に付いて来ると良いぞ」
「そういうのはオレがやるよ、仕掛けくらい見破ってやるさ!」
「んもぅ、ジタンもフライヤも気にしすぎ! こんなの走り抜けちゃえばいいのよ、みんな待ってるんだから────ひゃあっ?!」
言った傍から仕掛けに嵌まり、足を踏み外して床の穴に小さな身体が落っこちる所を、マゥスンが咄嗟に片腕で胴回りを抱え込み留めた。
「あっ、た……助かった、わっ」
「 ………気を付けた方がいい」
「ちょ、ちょっと油断しただけなんだからっ」
そっと床に降ろされたエーコは、少し顔を赤らめている。
「さっきみたいにならないように、気を付けて進まないとな。みんな、オレの後に付いて来いよ!」
ジタンは仲間に声を掛け、5人はイプセンの古城を後にした。
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