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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第七十四話

 
前書き

……ただ今回後半辺り文章おかしくなってるかもしれません;;
後、かなり展開も無理やりかもしれません;;

良ければ皆様、感想やご意見など宜しくお願いします+
 

 




「──……ぅ……ぐ……っ」

──頭に走る僅かな痛み。僕はそれによって目が覚める事が出来た。僅かにまだ頭に残る痛みに耐えつつ、自分の意識が途切れる前の事を思い出そうとする。
……そうだ、確か僕達はカオスの攻撃を受けて……。

「っ…! 皆は……!」

思い出されたあの強力な閃光と雷の渦。文字通り全てを破壊するであろう強力な攻撃を思い出し僕は周りを見回すと……そこにはあの攻撃を受け、身体中にそのダメージを表す程の傷を残して倒れている皆の姿があった。

「そんな……っ! カノンノ、メリアっ! ウンディーネ、ヴォルト、ニアタっ!」

周りで倒れ伏す皆の姿に僕は『まさか』と思いながら皆を呼びながら一人ずつ状態を見た。
一人ずつ見ると……皆身体に相当なダメージを負ってはいるが、まだ息はあり気を失っているだけということが分かった。
よく見ると、皆に比べて僕の怪我は少なく、ヴォルトが出ているという事は……多分あの『世界終焉のレクイエム』を発動された時、僕の身体から出て僕を守ってくれたのだろう。

「っ……ごめん……ありがとう、ヴォルト。……そうだ……カオスは……っ!」

皆がまだ生きている事に一安心した後、この惨状を作り出した原因であるカオスの事を思い出し僕は視線をカオスが居た場所へと向ける。
そこには僕が目を覚ました事に気付いていないのか、僕達に背を向けこのルミナシアの源である光の塊『生命の場』へと手を伸ばすカオスの姿があった。

『……コワス、コワス……ゼンブ……』

「っ! 待っ……ぐぅっ!」

『生命の場』に手をゆっくりと伸ばすカオス。その様子に僕はそれを止めようと近くに落ちている星晶剣を拾おうとするが、星晶剣に触れた瞬間、僅かであった頭痛が再び一瞬強くなった気がした。
意識が無くなる前に聞こえたヴォルトの声……僕のドクメントの破損率が九十五パーセントを迎えた。先程から走る頭痛はきっとそれが原因なんだろう。星晶剣に触れて痛みが強くなるのは無意識に、身体が闘う事を拒絶しているからだろう……死にたく、ないから。
だけど……だけど……っ!

「ぃっ……諦めてたまるかっ! ……やめろぉ、カオスっ!!」

『ァ……ウゥウゥゥゥッ!!』

頭痛に耐えながら、僕は星晶剣を握りしめる。頭痛が更に強く、重くなるのを感じたが……こんなもの、僕を守ってくれたヴォルトや皆の傷に比べれば大したものじゃない。
星晶剣を構えながら僕はカオスを止めるように声を出すと、カオスはうなり声を上げながら此方へとゆっくりと向き直った。

『コワス……コワスコワス……イラナイイラナイイラナイイラナイッ!!』

狂ったように、壊れたように同じ事を繰り返して叫ぶカオス。暴走による目的である『破壊』のみを叫ぶカオス……いや、『叫ばされている』ラザリスの表情は、どこか見ていて悲しそうに僕には見えた。

「カオス……いや、ラザリスっ! 君は……本当にそれでいいのかっ!? 自分の『守りたい』といった世界を、自分で『壊す』事になってしまってもっ!」

『グゥ……ッ!?』

カオスを、ラザリスを見ながら僕は真っ直ぐとそう言った。ラザリスが今までやっていた事やしようとしていた事が正しいとは思わない。だけど……それでも彼女が世界を『守ろう』としたのは確かなんだ。もし、少しでも彼女の意識が残っているのなら……きっとこの声が届くと思った。

「ラザリス……君の……君の世界への想いはそんなものだったのかっ!? 君が守りたいと想った世界は……そんな程度のものだったのっ!?」

『グ……ッ……ウゥウゥゥゥ……ボ、クハ……ボクの……願っタ世界は……ッ! ウゥウゥゥゥッ!!』

僕の言葉を受けて徐々に俯いていきながら呻き出すカオス。その声はノイズ混じりながらも確かに、ラザリスの声が聞こえた。

『ウゥウゥゥゥ……イ、レギュ、ラー……ボクの……世界を……助け、て……っ!』

「ラザリス……っ!!」

『グッ……ウゥ……アァアァアァアァァァァッ!!』

今度は確実に聞こえたラザリスの声。だが苦しそうに出されたその声は……再び混沌の力に飲み込まれて暴走を始めた。
だけどこれで分かった……まだ彼女は『完全』に飲まれている訳ではない、と。

「ラザリス……今……助ける……ぐっ!」

『アァアァアァアァァァァ……イラナイイラナイィィィッ!!』

「く……っ」

再び暴走を始めるカオスに向け星晶剣を構える、がそれは再び強くなりだした頭痛で体勢が崩れてしまう。
その間にカオスが雄叫びを上げて僕に向けて鋭い爪を奮ってきた。
しまった……このままじゃ……っ。

「──水破竜撃っ!」

『ッ!? ギアァァァァァァアッ!!』

振り下ろされくる爪に思わず来るであろう痛みに耐えるために目を閉じたその時、後方から声が聞こえた後、前方からカオスの悲鳴と何かが吹き飛ぶ音がした。
何事かと目を開けると……そこには前方で転倒しているカオスと、後方には傷だらけながらも大剣を構え、僕を見て小さく笑うウンディーネが立っていた。

「ウンディーネっ! 良かった……無事だったんだ……」

「うむ……少々危うかったが、なんとかな。そういう主様は……少し無茶が過ぎるぞ」

『グゥゥゥ……ガアァアアアアアアアッ!!』

ウンディーネの様子に一安心していると、立ち上がったカオスが今度は僕達に向けて熱線を放ってきた。
真っ直ぐと接近してくる赤の熱線。だが、それは僕達に届く事はなかった。

「……ライトニング・シェル、全力展開っ!」

「落ちて、バーンストライクっ!」

「……苦無閃《嵐》……プラス《爆》……!」

『グゥッ!? ギアァァァァァァアッ!!』

僕達の前に立つかのように、上から降りてきたヴォルトがシェルを展開させて熱線を防ぎ、僕達の後方から詠唱を終えたカノンノが落下してくる炎弾を、メリアが起爆札を付けた無数の苦無をカオスへと放ち、カオスはその攻撃を受け、ダメージを受けながら再び転倒した。

「ヴォルト……カノンノ……メリア……っ!」

「衛司……あまり大丈夫……そうではなさそうだな」

「ニアタも……良かった、皆無事だったんだ……」

皆、所々それなりのダメージが見られるが、それでも立ち上がり僕を守ってくれた事に改めて一安心した。
カノンノとメリアが僕へと駆け寄り、カノンノが回復魔法を、メリアがアイテム袋からグミを出しながら口を開いた。

「なんとかってところだけどね……。それより衛司の方が無茶し過ぎだよ……」

「……衛司……これも……」

「あはは……ごめん……それと、ありがとう」

カノンノの言葉に少し苦笑して答え、メリアが渡してきたグミを飲み込む。いまだに頭痛は残ってはいるけど、カノンノの回復魔法と今のグミで少なからず、痛みが下がった気がした。

『グゥウゥウゥゥゥ……グゥウゥウゥゥゥッ!』

「さて……問題はアレをどうしたものか」

「……それについては一応、考えがあるよ」

「考え……?」

「……今さっき、ほんの少しだったけど、ラザリスの意識があった。彼女は……完全に取り込まれている訳じゃなくて、あの混沌の力に操られてるみたいなものなんだ。だから……あの混沌の力を浄化するんだ」

「浄化……成る程、確かにディセンダーの力を上手く使えば可能そうだが……あんな大物が相手では、流石にこの人数でも成功するかどうか……」

僕達を睨みながらゆっくりと立ち上がっていくカオス。それを前にウンディーネが出した言葉に僕はそう言葉を出すと、ニアタが納得しつつもカオスを一度見た後そう言った。
ニアタの言うことは分かっている。カオスはジルディアの民達の意志と、ラザリスの意志の反発から生まれた暴走体……言ってしまえば一つの世界そのものと言えるだろう。
世界一つを相手に此処にいる数名……しかも皆それぞれにダメージを負っている状態で浄化を行うなんて不可能に等しいだろう。
だけど……手がない、という訳ではない。
僕はゆっくりと星晶剣を皆の前に見せるように出した。

「一応……手はあるよ。この星晶剣のマナを吸収して力に変える力。それを利用して、星晶剣に送るマナに浄化の力を混ぜてカオスに全部叩き込むんだ。それなら、星晶剣の力で浄化の力も普通より上昇するし……幾分かカオスにダメージを与えて、浄化の力を通じやすくする事も出来るはずだよ」

「……だが、それでは……衛司の身体は……」

僕の言葉にニアタは僕の方を見ながらそう言いにくそうに言葉を出していく。
星晶剣によるマナ吸収と力の使用……それは使用者である僕のドクメント……そう、残り約五パーセントの命をすり減らすという事だ。
僕は星晶剣を一度見つめた後、ゆっくりと強く握りしめて言葉を出す。

「分かってる。分かってるよ……僕の命が危ない事くらい。……だけど、此処で何もしなかったらどっちにしろ、僕の命どころかルミナシアも、ジルディアも終わってしまうんだ。だったら僕は……せめてこの命を無くす事になったとしても、最後までやりたいことをやり通して死んでやる。そう……このルミナシアも……ラザリスの世界のジルディアも……ラザリス自身も助けるって事をっ!」

「……主らしい、な。……時間稼ぎは余にまかせよ。どうせヤツは待ってはくれんからな」

「ウンディーネ……」

星晶剣を握りしめながら真っ直ぐと皆を見て僕の想いを告げる。皆がそれを聞いた中、ウンディーネはやれやれ、というかのように溜め息を漏らすと、大剣を担ぎながらカオスの方へと向き直った。

「……主……私は主を……衛司を信じています。だから……ここは必ず守り通します」

「少しばかりの防御壁くらいなら私も作れる。……衛司……任せたよ」

「ヴォルト……ニアタ……」

ウンディーネの行動に少しして、ヴォルトとニアタが僕を見ながらそう真っ直ぐと言うとヴォルトとニアタはウンディーネ同様にカオスの方へと向いていく。
残るメリアとカノンノはお互いに顔を見合わせた後、大きく頷いて僕の方へと真っ直ぐと顔を向けて口を開いた。

「衛司……私も衛司の星晶剣への浄化の力の吸収、手伝わせて」

「カノンノ……」

「私は……私はまだ衛司が居なくなる事が怖い。だから……少しでも……ほんの少しでも衛司の負担が減らせるのなら……私は私に出来る事をしたいの」

「……衛司……私はウンディーネ達の方を手伝う……。……多分この浄化の力の吸収は……衛司とカノンノの二人の方がいいと思うから……だから……絶対に衛司達を守ってみせる……っ!」

「メリア……皆……ありがとう……っ」

皆の言葉を聞き、僕は大きく頷いて皆に礼をする。その直後、カオスが完全に体勢を戻し雄叫びを上げた。カオスの雄叫びを合図にするかのように僕とカノンノ以外の皆がそれぞれ構えて走り出す。

「主様……任せたぞっ!」

「主……頼みますっ!」

「無理は……するんではないぞ……っ!」

「衛司、カノンノ……皆……絶対に守るっ!」

『グゥウゥウゥゥゥオォオオオオッ!!』

それぞれが声と共に武器を手にカオスへと斬り掛かる。
僕は皆の声を、想いを頭に思いながら星晶剣をゆっくりとカノンノと手を重ねるように持ち、頭上へと切っ先を向けるように振り上げた。

「っ……ぁ……ぐぅ……っ!」

「ん……く……ぅ……っ!」

星晶剣を振り上げ、意識を集中させ始めたと同時に僕とカノンノの身体から、マナが吸い取られていくのを感じ思わず声を漏らしてしまう。
マナを吸収されていくのを感じつつも、このままではいけないと、僕とカノンノは意識を集中させて吸い取られていくマナに、ディセンダーの浄化の力を混ぜていく。
星晶剣は僕とカノンノのマナとディセンダーの力を吸収し、徐々に徐々にと刀身が光を纏いながら大きくなっていく。
だが……まだカオスを戻すには足りない。

「ぐっ……まだ、まだ……っ!」

「くぅ……お願い……早く……っ!」

いまだにカオスを浄化するには足りないマナとディセンダーの力を星晶剣に纏わせながら、僕とカノンノは声を漏らす。
視界の先にはカオスの攻撃に耐えながらもカオスの進行を食い止めるメリア達の姿が見える、がそれも長くは保ちそうにない。

「っ……まだ……なの……っ」

「うっ……お願、いだ……何だって……いい……っ……力を……集めてくれぇ……っ!」

いまだにカオスを浄化出来るまでの力が吸収出来ない星晶剣。僕達の前で闘う皆の姿にカノンノと僕は願うように、星晶剣を強く握りしめて力を送り続ける。
やっぱり……僕とカノンノの二人だけじゃ……足りないのか……。
そう、頭の中で思った時だった。

「っ!? 衛司……それ……っ!」

「えっ……まさか……っ!!」

不意に、僕達の振り上げた星晶剣が先程までゆっくりだった変化が突如早くなり、まるで新たに力が加わったかのように勢いを上げ始めた。
一体何事かと思っていると、それは僕の方を見ながら驚いたようなカノンノの声で気付いた。
僕の懐……それは以前、刀身部分が砕け散り、持ち手部分だけとなった、この世界に来てからずっと一緒にいた……持ち手部分だけになっても離せずにいた相棒……『世界樹の木刀』が、ヴォルトやサレを浄化した時同様に光り輝く姿がそこにあった。

「相棒……そんな姿になりながらも……僕達を……助けてくれるの……?」

誰かに言うわけでもなく自然と漏れた言葉。その言葉に木刀は答えない。答えるわけがない。
だけど、確かに……木刀は輝きを一層増した気がした。
まるで……僕に答えてくれたかのように。

「っ! ありがとう……ありがとう、相棒っ!!」

「衛司……これなら……っ!」 

「うん……思いっきりいけるよっ!!」

輝きを増した木刀の姿に、思わず涙が零れそうになりながら僕は言葉を出す。
それに合わせ、星晶剣は纏う光を、変えていく姿の勢いを一気に上げていき、その勢いの強さはついに……この部屋の天井を貫き、崩壊させた。

『グッ……グゥッ!?』

「……凄い……」

天井を貫きながらも、高く、強く姿を変えていく星晶剣。その光景にカオスは驚愕し、メリア達は動きを止め、誰かがそう言葉を漏らした。
ここまで来れば……きっと……行けるっ!

「皆、離れてっ!!」

『グッ……ウゥ……ウゥゥゥゥゥゥッ! ウォオォオォォォッ!!』

僕の言葉を合図にするように、カオスを足止めしていたメリア達が一斉に後方へと下がる。
その直後、カオスは僕達の次の行動を理解し、それを止めようと僕達に向けて熱線を放ちながら此方へと接近してくる。
だけど、もう……遅いっ!

「行くよ……カノンノっ!」 

「うん……衛司と一緒なら、どこまでもっ!」

「「これが僕(私)達の……最後の伝説の……浄化の一撃っ!!」」

『グゥッ!! グゥウゥウゥゥゥオォオオオオッ!!』

此方へと熱線を放ちながら接近してくるカオス。僕とカノンノは星晶剣を、重ねた手を強く握りしめながらカオスに向けてそれを振り下ろす。
僕達のマナと浄化の力。それを限界まで引き上げた最初で最後の……浄化の一撃。
その、光の一撃の名は──


「「《レディアント・マイソロジー》ィイィィィっ!!」」

『グッ……ウゥ………ウゥゥゥ……ッ! ウアァアアァアァァァァァッ!!』

振り下ろされる、強力かつ膨大な浄化の光の一撃。それはカオスの熱線を受けながらも衰える事は無く真っ直ぐと、ただ一直線に……対象であるカオスを飲み込み……その場を強い光の輝きで包み込んだのだった……──。




 
 

 
後書き


次回


『決着』、『別れ』……そして、『選択』

 
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