Lost memory
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一話「アルバム」
昼の街ににぎやかな声が聞こえる。
雪が降り子供がはしゃぎながら親と話している様子が見てとれる。
辺りを見渡せば、さまざまな飾り付けがされていた。
街の中央には、大きなクリスマスツリーが立っていた。
今日は、12月24日。クリスマス・イヴの日だ。
私はそんな風景を眺めながら、部屋の片付けをしていた。
押入れの中に沢山の本が積んであった。
沢山の本を見て、私は溜息を付いた。
「わぁ!凄い数だね…」
私の後ろから驚いた声がした。
振り向くと、片付けを手伝いに来てくれた友人が居た。
彼女の名前は四ノ宮和葉。
私の通っている学校の同級生だ。
「これ、全部冷ちゃんの?」
和葉は驚いた表情のまま、私を見つめていた。
「あ~…全部って訳じゃないよ、大体は姉貴の物だから」
私はまた溜息を付きながら答えた。
私の住んでいる家は、前に姉が住んでいた。
今は大学生で私の住んでいる所よりも、遠い大学に通っている。
「流石は冷ちゃんのお姉さんだね」
和葉はクスッと笑いながら本の片付けを始めた。
姉は、読書家で暇さえ見つければ本を読んでいたぐらいだ。
「ったく…自分の本くらいは持ってけよ…」
私はぶつぶつと独り言をいいながら、本の整理をしていた。
あらかたの整理が終わり、売れそうな本を分別していた時に古くなって埃ががぶっているアルバムを見つけた。
埃を払い、アルバムを開いてみるとそこには私と姉の写真が入っていた。
「あっ、それって昔の冷ちゃんの写真?」
和葉が興味深そうに訊いてきたので、とりあえず私は頷いた。
幼い頃の私と姉の写真を眺めながら、ページをめくっていった。
とあるページに、私と姉ともう一人、少女の写真が写っていた。
何故かは知らないが、私はその少女の写真を見た瞬間、涙がこみ上げて泣いていた。
その様子に驚いた和葉はおどおどしながら「大丈夫?」と背中をさすりながら見つめていた。
微かながら、頭に言葉がよぎった。
「ごめんね……冷華……」
写真に写っている少女が、そう言っている気がした。
私は涙を拭いながら、和葉に「大丈夫だよ、有難う」と笑ってみせた。
何処か懐かしく、悲しい気持ちが胸の内で渦巻いていた。
その後は本を片付け終え、私と和葉は一緒に出かけた。
街で洋服を見に行ったり、お昼を食べたりした。
時間が過ぎ、夜になると街の飾りつけに光が灯された。
和葉は小さな子供みたいにはしゃいでいた。
私は和葉を見て笑いながら歩いていた。
一通り見終わり、私は和葉を家まで送り帰った。
私は家に着いたらすぐに、風呂に入った。
濡れた髪をタオルで拭きながら、窓から街を眺めた。
ふと、机に目をやると昼間に見つけたアルバムが置いてあった。
私はアルバムを取り、もう一度写真を眺めていた。
時計はすでに11時を指していた。
玄関から、ノック音がした。
こんな時間に誰だろうと思い、少し警戒しながらドアを開けた。
そこには白色で長い髪の少女が立っていた。
少女は少しおどおどしながらも、私の事を見つめていた。
「えっと…貴女は…?」
私は、警戒しつつ少女に問い掛けた。
少女は少しだけビクッと体を震わた。
「あっ…えっと…つ、月島綾乃です……」
俯きながら、そう答えた。
「神代…冷華さん…ですよね?」
綾乃と言う少女が、俯きながらも喋りだした。
私は「えっ、あぁ…そうだけど…」と答えた。
綾乃は安心した表情になり「良かった…」と呟いていた。
「唐突で申し訳ないのですが……今日から、私を此処に住まわしてくれませんか?」
綾乃は真剣な表情で、私に言ってきた。
「えっ!ど、如何して!?」
私は驚きのあまり声が裏返ってしまった。
「理由はあまり話せませんが……鏡花さんに、頼まれて…。」
綾乃は俯きながら、小さな声でそう言った。
「とりあえずさ、家に入ってから…でいいかな…?」
いつまでも開けっ放しでは部屋が寒くなってしまうし、外に居る綾乃が寒いだろうから家に招いた。 温かいココアをコップに注ぎ、綾乃に渡した。
綾乃はさっきと同じようにおどおどしながらも受け取ってくれた。
そんな様子を見て、私は自然と綾乃の頭を撫でた。
綾乃は少し驚いた表情になったが、安心したような表情になった。
その表情は何処か懐かしい感じがした。
気がつけばすでに時計が1時をさしていた。
「今日はもう遅いし…そろそろ寝るか…?」
私はコップを片付けながら、綾乃に聞いた。
綾乃は少し眠そうに頷いた。
「綾乃はそっちのベットで寝ていいからね」
私は床に布団を敷きながら綾乃に言った。
「あっ…あの……一緒に寝てもらってもいいでしょうか…」
綾乃はもじもじしながら、小さな声で呟いた。
私は少し笑いながらも「良いよ」と返事をした。
ベットの上で横になると、綾乃は私に抱きつきながらすぐに眠りについた。
私は綾乃の寝顔を見て、幼い子供みたいだと思っている内に眠気が来た。
少し欠伸をしながら、私は目を閉じ眠りについた。
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