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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十三章
  それぞれの出陣×一真隊合流

「鉄砲の音が止んだのぉ」

「御大将ー。一真隊、玉薬切れで一度下がるってことらしいっすー」

「そう」

「あんなに玉薬も持たせていたのに・・・・一真隊の攻撃部門を一真さんが使わなかったのも、分かる気がします」

「何しろ、今日は他人のおぜぜで戦が出来ますからなぁ。振る舞いも自然と景気よくなろうというもので」

「あぁぁもぉぉぉぉぉ・・・・・!」

「で、代わりに誰を出すんすか?」

「そうねぇ・・・・秋子」

「・・・・くすん。なんでしょう」

「そろそろ秋子の指揮が見たいなー?」

「私に本陣を離れろと?・・・・まさか、御大将!」

「私がいる所が本陣って言うなら、もうすぐここは本陣じゃなくなるしね」

「・・・・はぁ。また悪い癖が」

「まあ、どっちにしても、武田の前衛を上手く矢戦でいなせる指揮官なんて、そんなにいないでしょウチ」

柘榴に松葉、それに秋子もため息混じりに黙る。というより秋子が柘榴と松葉を見てため息だった。

「・・・・仕方ありませんね」

「まあ、隙を見せたら遠慮なく噛みついて良いからね」

「大事な越後の兵を、メンツ如きで失ってたまるものですか。抑えきってみせますよ」

「出来れば、ちょっとずつでいいから相手を本陣から引き離しておいて」

「相変わらず、無理難題を仰る」

秋子は柘榴と松葉に手本を見せるかのように行ってしまった。苦労人であるな、秋子は。一葉は一葉で楽な主と言ったが、逆に黙る幽。そんで、ついに美空も出るので柘榴も付いて行く。松葉は本陣(仮)にて俺らを待つようだけど。

「ほお。大将自ら出陣か。・・・・狙いは?」

「ふふっ、そんなの当然・・・・・。光璃の頸、ただ一つよ」

と言って行ったがそんなの俺は許さんがな。そんで一葉と幽も動くそうで。たぶんこちらと合流するためであろう、まあこちらは予測通りの動きでもあるし。戦術予報というより正史の情報通りか。

「ご主人様!」

おっと、小波も到着のようで。本体である俺は分身体で脳量子波で喋っているからか、本体と変わらないようにしといた。

「お疲れさん、小波。で、一真隊の位置特定は?」

「はっ。後方まで撤退し、小荷駄隊から分離した補給部隊から補充を受けている最中のようでした。・・・・もう一度先行して、先に接触いたしましょうか?」

「今はいい。こっちの先導を頼む」

「承知!」

「薫たちはどうするの?」

「このまま突っ込むと、補給部隊と護衛の者と鉢合わせだから。回り込むが、速度は落とす」

「分かった。周りだけ警戒させとくね」

「今の所は順調ですが・・・・問題はその後ですね」

「そのまま長尾の本陣突入して・・・・」

「突入してから、大将頸狙うなよ?それに長尾勢本陣にはもういないかもしれないから」

「それも予測の内に入っていると?」

「長尾本陣に突入と同時に双方に武力介入を開始する予定」

本陣突入と同時に、双方ともぶつかる直前にスタングレネードを落とす。そして煙と共に見えなくなったところ、夜叉たちでで一気に無力化する。というのが俺の本当の目的。この戦いを止めるのは、長尾でも武田でも一真隊でもない。俺達いや我たちの夜叉部隊による鎮圧。

「ここは戦場でも、俺らの目的を忘れるなよ。忘れたらハリセンの刑だからな」

「分かっていますよ。頸目的じゃなくて、長尾と武田の和平。でしたよね、綾那?」

「そうです!」

本当に分かっているのか?この二人は。まああの森親子と普通に話せる時点で和気藹々としているからか。美空の首取りに来た訳じゃないし。

『地上にいる我の友よ。準備はどうか?』

『主様。いつでもいけますぞ。夜叉は数百ですが、人より強いところを見せてやりますぞ』

『よし。我の合図と共に双方を無力化せよ』

『承知!』

と俺は八大夜叉大将と打ち合わせをしている間に、後方に下がったひよたちの補給も終わったようだった。

「今、やっている最中だよ!」

「まあ、玉薬も実際はほとんど使ってないから、補充するのは矢がほとんどだけど」

「でしたら必要な分だけ補給して、さっさと離脱してしまいましょう」

「お頭が来るのを待たないの?一真様のことだから、妻女山の奇襲部隊に混じっていると思うけど・・・・。戦場を大回りして来るにしても、多分もうすぐだよ?」

「このままでは、補給部隊やそちらの護衛と鉢合わせになってしまいますもの」

「ああ、そっか。兵のみんなには?」

「もちろん全て説明してありますわ。あとはハニーがお戻りになるのを待つだけです!」

「・・・・そういう如才ないところはさすがだねぇ」

「うふふ、南近江の神童と呼ばれていた私にとっては、これぐらい当然ですわー!おーほっほっ!」

「(その神童さんがどうしてこんなに牡丹さんに・・・・)」

「何か仰いまして?」

「何でもないです。・・・・それじゃ、私はひよを手伝ってくるね」

「では私は今の内にご飯を頂いておきますわ」

「食べ過ぎないようにねー!」

「もちろんですわ!」

と一真隊の話内容は全て聞かせてもらった。で、現在小波の報告では。一真隊は長尾勢の補給部隊から離脱した様子。周囲に長尾勢はいなくて孤立状態なんだと。

「一真隊は補給部隊から離れたそうだ」

「ならば、好機は今かと」

「一真様。我々は遅れて合流します。速さのある者だけで先行下さいませ」

「・・・・大丈夫です?」

「臨機応変の対応が必要ですから同行しておりましたが、元来、私が足手纏いなのは理解しております」

「薫ちゃんが少数ですが護衛を割いてくれましたから、心配しないでください。すぐに合流します」

「ありがとな、薫」

「えへへ、当たり前の事をしただけだよ」

「鞠ちゃん、ここからは一真様ではなく、私の馬を使ってください。私は詩乃の後ろに乗せてもらいます」

「ありがとなの、雫!」

俺の前から降りた鞠が、雫の乗っていた馬に乗り換えての出立完了。あとは合図と共に双方の戦いを止めるだけ、黒鮫隊全員はドウター戦のために割くわけにはいかない。そうして考えたら神界からの知恵を貸してくれるとのこと。

「いよいよ一真隊と合流ですね!腕が鳴るです!」

「何度言えば分かるんだ?綾那」

「うぅぅ・・・・。戦場だと何だかおかしくなるです」

「それならいいんだが。先行部隊出るぞ!薫!」

「了解だよ、お兄ちゃん!これより突撃を開始する!獅子の旗を掲げよ!我らが兄上の願いに応えんがため!進めぇっ!」

薫の口上に応えた兵たちが、獅子の旗を掲げ、孤立する一真隊に向けて疾走を開始する。孤立している一真隊はというと。

「梅ちゃーん!」

「どうしましたの?」

「補給が終わって補給部隊とも離れたけど、これからどうするの?」

「どうもしませんわ。しばらく孤立したまま、そのへんをぶらぶらしていきましょう」

「えええっ。長尾勢から怒られない?」

「ひよさんもころさんも、お弁当を使っていないでしょう?前衛の撃ち合いには秋子さんが出て下さっているようですし、お弁当を使う間くらい、休んでいてもバチは当たりませんわ」

「それはそうだろうけど・・・・」

「あ。このお弁当おいしー!やっぱり越後のご飯はサイコーだね!」

「・・・・・・・」

「ほら。八咫烏隊のお二人の方が、余程しっかりしていますわよ」

「あぅぅ・・・・」

「まったくもう。でしたら、適当に時間を稼ぎます?」

「どうやって!?」

「それは、そうですわね・・・・雀さんを裸にひんむいて、狼藉者が侵入したー!とか」

「えー!やだよ雀、裸になんてなりたくないー!」

それを喜ぶのは一部のロリコンたちだけだな。何かするのであれば、代案を考えろとか言ったら今度は梅が裸になるらしいが。それだったら全ての男に標的にされそうだ。梅は大きな胸に腰回りがいいし、ボンキュンボンだし。

「じゃあお姉ちゃんが裸踊りする?」

「・・・・・・」

「・・・・ものすごく嫌がってますわね」

男が裸踊りは宴の芸だが、女の子はやったら芸じゃなくて襲われるって。一部の変態共が。

「えー。別に減るもんじゃないしー」

「・・・・・・」

「あ、あはは、うそうそ。冗談だってばそんなに怒んないでよお姉ちゃん」

「・・・・・・」

と雀の冗談でも烏は銃を構えていたけど。で、代案が全て裸になるのか。それはそれでおかしなことだな。

「・・・・・・」

「ん、どうかしたの?烏ちゃん」

「・・・・・・」

「空?空を指さしてなんだというのです?」

「違うよ、お姉ちゃんは耳を澄ませって言っているの」

やっと気付いたようだな。遅いぜ。

「よ、よく分かりますわね・・・・・」

「耳を澄ます?んー・・・・・」

耳を澄ますと何かの音が聞こえるのが分かるようで、全員耳を澄ましていた。

「何か・・・・聞こえますわね」

「何だろ?地滑り?」

「ちょっとひよ、怖いこと言わないでよ?」

「でもドドドドドって言ってるよ?」

「・・・・ホントだ。ど、どうしよう!?」

「あ!あれ!」

「あれは・・・・敵部隊!?」

「違うよ!あの旗!」

「獅子の旗だ!」

「ということは・・・・・・・っ!」

「全員!無事か!」

「お頭!」

「一真さまぁ~!」

「ハニーっ!」

「久しぶりだな。元気そうで何よりだ」

「一真さまぁ!うぅっ、寂しかったですよぉ!」

「へへへ・・・・お頭もお元気そうでよかった」

馬から飛び降りた俺に駆け寄ってきたのは、懐かしい感じのひよところ。涙ぐんでいたけど、今はまだ男泣きではない。

「留守番苦労だ。色々と大変だったみたいだが」

「大変でしたよぉ・・・・。だって、一葉様と美空様と梅ちゃんですよ・・・・?」

「しかも一真様は武田方に着いたって噂だったし、小波ちゃんとは連絡取れなくなっちゃうし、鞠ちゃんもいなくなっちゃうし・・・・」

「「うわーん!」」

「おやおや。今は泣く場面ではないぞ?でもまあ二人とも頑張った方だ」

と言いながら二人を慰めると。

「・・・・ハニー」

安堵に満ちた表情で梅が近付いてくる。

「梅もご苦労さん。空砲のことを念話で伝えて正解だった」

「こんな時のための備えですもの。ハニーの言いつけ通りに動かしたり準備した甲斐がありましたというものですわ。・・・・お帰りなさいまし」

「ただいまだ、梅」

片手は泣いているひよところに塞がれているので、空いた方の手で梅をそっと抱き寄せる。

「・・・・ふふっ、ハニーのその一言で、今までの艱難辛苦が吹き飛びましたわ!」

「ひよ、ころ、ただいまーなの!」

「鞠ちゃん!」

「やっぱりお頭と合流してたんだ!」

「うん!あのね、一真を探しに出たら、小波ちゃんが手伝ってくれたの」

「小波ちゃんが・・・・・?」

「うん。それにね。光璃ちゃんが、駿河を取り戻すの手伝ってくれるんだって!」

「光璃ちゃん・・・・武田晴信様のことですか?もう鞠ちゃんもお会いに?」

「いんやそれは違うと言っておこう。信虎絡みで色々あったが、光璃は元々鞠に味方をして、駿河奪還に協力するつもりだったんだと」

「へええ・・・・・」

「はぁ、はぁ・・・・お待たせしました」

「お帰りなさいまし!詩乃さん、雫さん!」

「梅さんもお疲れ様でした!空砲の計、上手くいったようですね!」

「ええ。雫さんの意見とハニーの考えを導いただけですわ!」

「さて。感動の再会はここらにしておきましょう。ひよ、ころ。一葉様はいずこに?」

「今は長尾の本陣にいらっしゃるはずですわ」

「ではすぐに動きましょう。恐らくは長尾本陣もこちらの動きを把握しているはず。・・・・今の私たちにとって、時は甲州金よりも貴重です!」

「まあ今はそれ動くとしようか。梅、指揮権を返してもらってもいいか?」

「返すも何も、一真隊はもとよりハニーの隊ですわ。如何様にも」

「ありがとよ。・・・・薫!」

「呼んだ、お兄ちゃん!」

「ほあ?お頭、この子は?」

「武田逍遥軒薫って言います」

「光璃の妹だ」

「晴信様の妹君というと、よく分からない末妹の?」

「よく分からない?」

「美空でさえ、よく分からない末っ子になってたんだったな」

まあ今は俺達と合流してよかったが、夜叉たちもいつでもどうぞと言っているし。もうそろそろだな。

「一真様、晴信様とも・・・・」

「まあそうなる。が、武田は鞠も俺らの敵対する者達ではない」

「はぁぁ~~~~~~・・・・また恋敵が増えましたぁ・・・・」

「しかも私たちよち身分の高い人ばっかりだね・・・・」

「ですがハニーは今までと変わりないのでしょう?」

「すぐに人格が変わるほどではないよ。俺は」

「なら十分ですわ」

まあここからが本番なんだけどね。

「では一真様!ここからは予定通り、長尾本陣に行って、美空様の『パシィィィィィィィイン』・・・・・!」

「違うっつうの。俺らは戦いを止めに来ただけだ」

ひよは一瞬だが、何か懐かしい目で見られた。けど、俺らが和平できたのは知っているようで知っていないような。

「梅。一真隊はまだ梅に任せる。ここからは薫の逍遥軒衆とも一緒に動くだろうから、上手く連携してくれよ」

「お任せ下さいまし!よろしくお願い致しますわ、薫様」

「そんなに畏まらないでいいよ。よろしくね」

「では、薫さん。改めて、よろしくお願いします」

「うんっ!よろしくね、梅さんっ!」

「・・・・では一真隊、改めて出陣ですわ!」 
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