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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十三章
  海津城での軍議

一方こちらは内緒話を終えたあとは、峠道を抜けて北上する。上田を通ってさらに北に向かうと辿り着いたのは川中島。ゲートは開く様子はないが、トレミーも近くにいるみたいだし、今はイエローにしているけど。で、今俺らがいるのは、南側にある城、海津城に辿り着いた。一徳斎たちが集めた情報と俺らで集めた情報を元にさっそく軍議をしている。

「そういえば一徳斎はどうした?」

「吾妻衆を率いて物見にでていらっしゃるそうです。もう引退して、かなりのお歳と聞いたのですが・・・・」

「うわぁ。さすがだなー」

挨拶くらいはしたかったが、この前寄った時も挨拶できなかったが。引退したのに現役とはさすがとも言いたいくらいだ。

「では、これより軍議を始める!兎々。報告せい」

「分かったのら。長尾方の数はお屋形様の読みろおり、八千。海津城の西にある妻女山に陣取って、動く気配が見当たらないのら。主な旗は、本陣にいつもの毘沙門天と、足利の二つ引き両が立っているのら」

「やはり一葉も本陣か・・・・」

「それはまあ、予想通りでやがりますが・・・・。越後の龍が野戦では仕掛けてきやがらず、いきなり籠城という事でやがりますか?」

「そういう事になるのら」

「確かに八千で一万五千に正面対決を挑むのは愚策だが・・・・それは並の将ならという話。しかも自分から挑んだ戦でこれ見よがしに籠城など、なおさら解せぬ」

「だな・・・・」

籠城とはどこからか応援が来るか、攻め手の体力切れまでの時間稼ぎの策だし。陸路で別働隊でも来ない限りは美空がしても意味がないこと。一徳斎が俺らが来るまで籠城というのだったらまだ分かる。それに妻女山のところには一真隊も来ているようだし。

「越後の援軍は?」

「一徳斎殿もそれを警戒しておいででしたが、善光寺平の北側にもそれらしい気配はないと」

「・・・・あたいらを挑発してるんだぜ?」

「挑発に乗る気はないが、かといって我々に無駄に費やせる時間もない。放っておけば兵の士気も落ちる」

それに何より駿河の動きも気になるところではある。駿河の異変は狼煙台で数時間もあれば川中島に届くが、それだと遅すぎるので俺らの眼が見張っている。もし動きがあれば即座に俺達が動くことになるだろう。甲府に後詰めの部隊はいるが、武田の主力はここにある。

「大方針を実行する事を優先するなら・・・・一真様に少人数で陣地に忍び込んでいただいて、一真隊と合流していただきますか?」

「それはしない」

「一真隊の働きは、春日山城奪還作戦の根幹を成したものです。恐らく美空様も、一真様のそれは十分以上に警戒していらっしゃるかと」

「なるほど。ですから、今回は軒猿の警戒がやたらと厳しいと報告があったのですね・・・・」

川中島に着いても、小波のは通じない。回収しているかのような感じではある。小波としては悔しいみたいだが、奥の手として俺が話しかけてみると言ったし。今も甲斐の草と協力して調査を行っている。

「湖衣からは?」

「湖衣と一二三からは、幾つか策を受け取っております。・・・・その中で言えば・・・・そうですな。妻女山の背後を突いて長尾をいぶり出した後、待ち構えた本隊で挟撃を掛ける・・・・この辺りの策が有効かと」

「キツツキの餌取りみたいなんだぜ」

「一真様が警戒していらした、軒猿の警戒網はどうするのですか?」

「少人数であれば危なかろうが、一軍を率いて即座に仕掛けるなら、軒猿にどうこうされる事もあるまい」

「迅きこと風の如くでやがりますな」

「それに最悪、失敗しても敵陣を掻き回す事は出来る」

「おやおや。今回の作戦の目的を忘れたか?」

戦わずして兵を収めることに、最小限の犠牲で戦を終わらせること。

「・・・・分かっておる。だが、ここから何かしらの状況を変えねば、いつまで経っても事態は動かん。口達者なあれの事だ。舌戦で終わらせる事は無理であろう。・・・・良人殿は舌戦であの虎猫に勝つ自信がおありかな?」

「・・・・あるにはあるぞ」

「ほう。ならば、それについて教えてもらえれば」

「舌戦と言っても、俺らが介入すれば、犠牲なく終わらせることも可能。だが、それだと兵が何かと文句を言うだろう。だから今は何もしない」

美空と光璃の舌戦の前に双方ともに武力介入をすればすぐに終わらせることも可能。だが、これは当人同士の問題だ。口を突っ込む訳にもいかない。

「一真の言う通り。一真の部隊を介入させればすぐに終わる。でも兵は納得しない。なので、揺さぶりは必要。初手はそれで行う。奇襲部隊の指揮は・・・・兎々」

「任せるのら!」

「それと、粉雪」

「おうだぜ!」

「でしたら、我々も兎々さん達と同じく、後方から行動してもよろしいですか?」

「一真隊は先ほど、少人数の潜入は問題があると言ったばかりではありませんか?」

「それはお兄ちゃん達だけで動いた時の話だよ。兎々ちゃん達と動くなら、逍遥軒衆も動けるから・・・・軒猿の迎え撃たれる事はないと思う」

「いずれにしても、正面対決の中で向こうの一真隊と繋ぎを付けるのは困難ですが。一真様に秘策あり、兎々さんの揺さぶりを受けた混乱の中で、こちらも任務を果たします」

「理には叶うか。お屋形様、いかがいたしましょう」

「任せる」

「では兎々と粉雪は後方からの撹乱を。良人殿と薫様は二人の起こした混乱に乗じて、向こうの一真隊を指揮下に戻し、景虎との対決に持ち込んでくだされ」

「分かったのら!」

「うん!」

春日の言葉に兎々と薫は力強く頷くが、俺は僅かな不安がある。相手は美空だ。それも俺の妻でもある護法五神を召喚できる強者だ。まあ黒鮫隊は出さないでおくが、何かあったら出番というけど、出番は上空だな。MSパイロットは機体に乗っての待機任務だし、IS部隊もパイロットスーツだけどIS用に改良してるからな。

「明日の暁と共に、攻撃を開始する」

光璃の一言でその日の軍議は終了した。

「・・・・なるほどね」

「どうかしたか?美空」

「ああ、一葉様。あれ見てよ、あれ」

「海津城じゃな。それがどうかしたか?」

「海津城でね、炊事の煙がやたら多く上がってるんですって」

「ここからそのようなか細い煙が見えるのですか?半里は離れておりますぞ」

「見えるわけないっすよ。軒猿からの報告っす」

「・・・・相変わらずお人が悪い」

「気に入らないわね」

「何がじゃ。本当の事であろうが」

「別にその事じゃないわよ」

「きっと明日出撃してくるんすよ。柘榴たちが動かなかったから、後ろから一真さんが春日山みたいに奇襲でも掛けてくるんすかね?」

「バカの一つ覚え」

「向こうが教えてくれておるのじゃ、ありがたく利用させてもらえば良いだけではないか。何が気に入らん」

「罠の可能性を警戒しておいでか」

「そんなの別にどうだっていいわよ。罠なのは明らかだから、うまく逆手に取ってやれば良いだけだもの」

「・・・・・では何が気に入らん」

「ウチのやり方を猿真似してるのが気にくわないのよ。前に犀川でやり合った時は、出陣前だからって炊き出しの量を増やしたりしなかったのに!むかつく!」

と言っている間に、俺らは夕食を手伝った。今回は俺ら黒鮫隊の出番はなさそうだから、とっておきのを作っておいた。だからなのか、炊き出しの煙が多いと美空が言っていたと聞いたが。まあ俺らは兵に少しでも力になるように、食事もバックアップ態勢のままだし。 
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