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魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~

作者:DragonWill
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A's編
  新たな胎動

春の寒さも終わりお迎え、夏に向けて暖かな陽気を迎えていた6月のある日。

誕生日を翌日に控えた少女、八神はやては自宅で留守電に入っていたメッセージを聞いていた。

『新しいメッセージは一件です』

定番のメッセージと電子音が鳴り響き、メッセージが再生される。

『もしもし。海鳴大学病院の石田です。・・・えっと、明日ははやてちゃんのお誕生日よね?明日の検査の後、お食事でもどうかなって思ってお電話しました。明日病院に来る前にでもお返事暮れたらうれしいな。よろしくね』
『メッセージは以上です』

そのメッセージに一人で暮らすはやては嬉しく感じながら寝室に向かった。

翌日の食事を楽しみにしながら本を読んで過ごしていると、気が付けば時計の針は午前0時に差し掛かろうとしていた。

ドクン・・・。

「あ、もう十二時・・・・」

ドクン・・・。

そして、時計の針が0時を示し、はやては9歳の誕生日を迎えたその時・・・。

ドクンッ!!

一際大きな鼓動が鳴り響き、部屋の本棚に飾ってあった本が強い光を放つ。

「へ?なに・・・」

本を縛り付けていた鎖が解き放たれ、ページがめくられていく。

『封印を解除します』

その本から英語とはまた違う、恐らくドイツ語に近い言語で言葉が発せられた。

はやてには英語ならともかくドイツ語の知識など全くない。にも拘らず、その本が何を言っているのか、不思議と手に取るように分かった。

やがて全てのページをめくり終えた本は再び閉じられる。

起動(Anfang)

そして、はやての部屋は光に包まれた。





ジュエルシードをめぐる事件、通称PT事件から半年が過ぎた。

あれからいろいろなことが矢継早に過ぎていった。

事情聴取が終わった後、剛が保護者代わりを務めることとなったフェイトはなのはたちと同じ学校に転入することになり、今も龍一の家に居候中である。

一連の事件のせいで勉強がおろそかになっていたなのはたちや初めて学校に通うフェイトの為に、事件の調査や裁判の準備で忙しいユーノが合間を縫って家庭教師を引き受けると言ったこともあった(報酬は翠屋のシュークリーム)。

・・・・しかし、算数や理科ならともかく、外国どころか異世界人のユーノに英語、国語、社会まで教えられるとは思わなかった。

何でも、ユーノはミッドの大学の様なところを飛び級で卒業しており、すでに博士号まで取得しているそうだ(当然考古学専攻)。

だが・・・『さっき教科書一通り読んで覚えた』なんて言ってやるなよユーノ・・・高町が涙目になってるぞ。

夏休みになると教科書を読んだ際に地球の歴史に興味を持ったユーノの提案で世界中の遺跡に旅行に行ってきた。

元々考古学者であるユーノが小学校の教科書程度で満足する筈もなく、『自分の眼で直接文献を確かめなきゃ気が済まない』と言った学者魂に火が着いてしまったようである。

面白そうなので着いていったら(勿論変身魔法や転移魔法使用)、まさか行く先々で鞭を愛用する考古学者や世界的に有名な三人組の泥棒集団に出くわしてさまざまな陰謀に巻き込まれたのは予想外であったが・・・・。

帰った後もアリサやなのはにどこに行ってたのかさんざん聞かれたし・・・。


まあ、そう言った出来事が過ぎていき、季節は雪の降りそうな冬に移って行った。

「暇だ・・・・・」

現在、龍一は暇を持て余していた。

ユーノとフェイトはプレシアの裁判の証人の為にアースラに行っており、なのはたちは習い事、他の友人もみんな用事があったため、遊ぶ相手が見つからなかったのだ。

しかも、父の剛は本庁で行われている交渉人(ネゴシエーター)の講習会に参加するためにここ数日留守にしているため明日まで帰ってこないためこのまま帰っても一人で留守番である。

余談であるが、交渉人とは人質立てこもりやテロなどの事件が発生した場合、犯人と交渉する人間の事である。アメリカでは強盗事件の無血解決に大きく貢献する重要な部署なのだが、日本ではまだあまり正式に稼働していない部署で近年アメリカの事例を元に設立の動きがあり、剛もその第一期生としての講習会に参加しているのである。

また、このことを知ったクロノは『あれだけの対人戦闘スキルがあるのにもったいない』と言っていたが、まあたいていの人はそう思うだろう。

素直に家に帰る気にもなれず、商店街をぶらぶらしていた時にそれは起こった。

「っ!?結界か!?」

突如、鳴海市に大型結界が展開されるのを感じた龍一。

結界魔法を得意とするだけあって、即座に捕獲型の封鎖結界だと見抜く。

(このタイミング・・・もしかしてヴィータか?)

もうほとんどおぼろげになっている原作知識の中から辛うじて覚えていた出来事から今の状況を推察した。

(高町が危ない!!)

龍一は即座にユーノたちに連絡を取りながら、なのはの元に急いだ。





龍一の予想通り、なのははヴィータの襲撃に会い、応戦していた。

「話を・・・聞いてってば!!」

カノンモードに変形したレイジングハートを構え、襲撃者に対してディバインバスターを放つ。

「くっ!!」

紙一重で躱すヴィータだが、彼女のバリアジャケットの帽子が頭から離れ、なのはの砲撃の光線にさらされてボロボロになっていた。

「こ、の~~~~~~~~~~~~!!グラーフアイゼン!!ロードカートリッジ!!」
『エクスプローション。ラケーテンフーム』

ヴィータの持つ柄の長いハンマー型のアームドデバイス、黒鉄の伯爵(グラーフアイゼン)のハンマーの片側がドリルの、もう片側が三つのジェット推進の形状に切り替わる。

「ラケーテンハンマーーーーーーーーーーーー!!」

ジェット推進で回転しながら突っ込んでくるヴィータ。

飛行魔法で躱すも、追い詰められ攻撃を喰らうなのは。

咄嗟にラウンドシールドを展開するが、勢いのついたヴィータの攻撃にシールドはあっさりと砕かれ、なのははビルに向かって吹き飛ばされた。

「でえぇぇぇぇぇぇやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」

すかさず追撃を放つヴィータ。

『プロテクション』

レイジングハートの自動防御が展開されるも・・・。

「ぶち抜けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
『ヤボール』

ジェットの勢いが増し、デバイスごと防御を砕かれてしまう。

「かはっ!!」

壁に叩き付けられ、ほとんど気力を削られたなのはに血近づいたヴィータはアイゼンを振りかぶった。

(いや。助けて。ユーノくん。フェイトちゃん。みんな)

そして、なのはに凶器が・・・・・。

「っ!?仲間か!?」

振り下ろされることはなかった。

「・・・・友達だ」
「フェイトちゃん!?」

ヴィータのアイゼンをフェイトのバルディッシュで受け止めていた。

「遅くなってごめん。龍一から連絡を受けて最速で来たんだけど・・・」
「ユーノくん・・・」

なのははユーノにお礼を言おうとして言葉に詰まってしまった。

「ユ、ユーノくん?それ、どうしたの?」

ユーノのバリアジャケットが依然と大幅にデザインが変更されているのだ。

以前はスクライア部族の部族紋が入った民族衣装にマントといった出で立ちだったのだが、半ズボンは長ズボンに変更され(誰だ今残念がった奴は!?)、膝下まである長ブーツに、まるで北アフリカ戦線の兵士が着ているような熱帯用オーバーコート(胸の部分に部族紋が描かれている)に規格帽子を被っていた。

「これ?地球の遺跡探検用に目立たないデザインにバリやジャケットを変更したら、アリサがこのデザインにしなさいって」

アリサ提案の軍隊風バリアジャケットであった。

そもそも、以前のユーノの格好は遺跡発掘に関わる人間としては明らかに可笑しく、地球での遺跡発掘活動では非常に目立っていた(今のデザインでも十分に目立つのだが)。

マントはまあ、砂漠地帯には必須かもしれないが、半袖半ズボンは明らかに可笑しい。

森や岩肌が多い遺跡では怪我を防ぐために長袖長ズボンなのが常識で、そんな恰好は怪我を舐めているとしか感じられないのである。

しかし、この格好はスクライアでは普通の格好なのである。

その認識の違いは、バリアジャケット技術にある。

バリアジャケット技術が発達している次元世界では半袖半ズボンで森の中に入っても無傷で生還できるほどの耐久力がある。

そのため、服装に関する認識が甘くなってしまっても仕方がないことであった。

「ふーん。そーなんだ・・・アリサちゃんが・・・(アリサちゃん・・・あとでOHANASHIなの・・・)」
「な、なのは・・・?」
「うん?何でもないよ?」
「う・・・・うん・・・そうだね・・・」

一瞬なのはが黒い笑みを浮かべていた気がしたが、気のせいだと思い込むことにしたユーノであった。





ビルから外に出たヴィータを追ってフェイトも空中に飛び出した。

空中ではフェイトのアークセイバーとヴィータのシュワルベフリーゲンがせめぎ合う。

(ぶっ潰すだけなら簡単なんだけど・・・それじゃあ駄目なんだ!!)

ヴィータの目的はあくまで魔力を奪うことであり、倒すことではない。

(カートリッジは後二つ。やれるか!?)

激しい攻防が繰り広げられ、次第に地力の差かヴィータ有利に状況が傾こうとしていた。

「このままじゃ、フェイトにはキツイかな?なのは、僕も行ってくるね」
「ユーノくん・・・」

そう言うとユーノは防御と回復の効果を持つ複合結界をなのはにかけてフェイトの援護に向かった。

「この~~~~~~~!!っな!?」

一瞬の隙をついて、ユーノがヴィータをバインドで固定する。

「もう終わりだよ」

勝利を確信し、気を緩めてしまうフェイト。

「フェイト!!危ない!!」

しかし、ユーノの忠告に咄嗟に身をひるがえし、第二の襲撃者の刃を躱す。

「シグナム!!」
「どうしたヴィータ?油断でもしたか?」
「うるせーよ!!こっから逆転するところだったんだよ!!」
「それはすまないことをしたな・・・。しかし、あんまり無茶はするな。お前が怪我でもしたら、主が悲しむ」
「分かってるよ!!」
「それから落し物だ」

そう言ってシグナムは先ほどなのはの攻撃で落とした帽子をヴィータにかぶせた。

「ついでに直しておいたぞ」
「・・・・・・ありがと」
「今の状況は実質2対2。一対一なら我らベルカの騎士に・・・」
「負けはねえ!!」

そして、ユーノとフェイトに向かっていくヴィータとシグナム。

シグナムの相手をフェイトが、ヴィータの相手をユーノが受け持つ形となり、第二ラウンドが開始された。


ユーノの相手をしているヴィータだが、内心驚いていた。

(こいつ戦い方が上手い)

ユーノの戦い方は歴戦の戦士であるヴィータをも賞賛させる完成されたものだった。

上空からビルの間に誘導されたヴィータはビルの間を縦横無尽に走る長大なチェーンバインドで空戦の持ち味の大半を殺され、誘導弾も障害物が多くて使えず、必然的に近接戦中心となっていた。

本来近接戦メインになれば遠距離の砲撃中心のミッド式よりも対人戦に特化したベルカ式のヴィータの方が断然有利である。

おまけに、ユーノの様な防御型は圧倒的な突破力で防御ごと粉砕するヴィータの鉄槌と相性最悪なのだが、ユーノは着かず離れずを繰り返して間合いが十分に届く範囲と届かない範囲を行き来し、ヴィータの攻撃を紙一重で躱しながら回避不可能な攻撃は多重多層に展開した障壁で受け止められる。

まさしく相手の持ち味を殺し自分の持ち味を生かす、上手い戦い方であった。

しかし・・・・。

「この~~~!!ちょこまかちょこまかしやがって!!もっと正々堂々と戦え!!」

ユーノのじれったい戦い方に突撃思考の強いヴィータはかなりイライラしていた。

しかし、ヴィータとて馬鹿ではない。

彼女は見た目こそ10歳未満であるが、本来は闇の書の守護騎士プログラムとして古代ベルカの時代から生きてきたのだ。

転生した期間や闇の書の中で休眠していた期間も長いが、活動していた期間は累計で優に100年を超える。

100年分の戦闘経験を元にユーノ狙いはすぐに分かった。

ユーノの勝利条件はヴィータに勝つことではなく、結界内の味方全員を逃がすことである。

故に倒されてはいけずに着かず離れずを繰り返しながら結界の解析と転送準備、おまけになのはの回復作業まで行いながらの戦闘だ。

むしろそれだけの作業をしている相手に闘いに集中しろと言う方が酷であろう。

だが・・・・。

(分かっていてもむかつくんだよ~~~~~~~~!!)

容姿の幼さゆえの精神年齢の設定のせいか生来の気性のせいか、分かっていても『舐められている』と感じてしまヴィータは残ったカートリッジも使用し、ムキになってユーノに突撃する。

「ぶっ潰れろ!!」
「まずっ!!」

ユーノの方もヴィータをやり過ごしているように見えて実は内心冷や汗だらけなのだが、ヴィータの攻撃が苛烈を極め始め、余裕がなくなってきた。

(仕方ない・・・解析は遅くなるけど、少し無茶するしかない)

腹を決めたユーノ。

突撃するヴィータに対し、前に倒れこむようにしてアイゼンを躱した。

「っ!?」

これまで、ユーノの防御の堅さに意識を持っていかれていたヴィータは空振りの感触に一瞬意識の空白が生まれる。

「はっ!!」

その隙にユーノは腰をひねり回し蹴りをヴィータに放つ。

ヴィータも下に意識が向いたとたんに上から襲ってきた蹴撃に咄嗟にアイゼンで防ぐも衝撃は十分には殺せずに吹き飛ばされた。

「っのやろ~~~~!!」

すかさずヴィータは誘導弾を放つも、無理な姿勢から放たれたそれは十分な威力もないがそのまま当たればある程度のダメージがある攻撃だった。

しかし・・・・。

「っな!?」

その攻撃は、突如ユーノから溢れた魔力の本流によって進路を強制的に逸らされた。

「グルルルルルルル・・・・・・・・・・・!!」

帽子が落ちたユーノの顔を見てヴィータは驚愕していた。

顔の半分は人間のものではない体毛に覆われ、頭の上にはフェレットの耳、口には肉食動物特有の牙が生えていたのだ。

「変異型強化魔法!?なんて危険なものを・・・」

ヴィータの言葉は最後まで続くことはなかった。

一瞬で姿を見失うほどの加速をしたユーノはヴィータの懐に飛び込み、蹴りで吹き飛ばされたのだ。

「がっ!!」

しかし、ヴィータもすぐに平静を取り戻し、ビルを蹴ってユーノに向かっていく。

(アイツの負担を考えると長期戦はまずい!!一気に決める!!)

そして、ヴィータは最後のカートリッジをロードし、ユーノに突撃するが・・・・・。

それは叶わなかった。

なぜなら・・・・・。

ユーノが急に伏せた瞬間、ユーノの背後から襲ってきた狙撃に撃ち抜かれたからである。





「はあ、はあ、はあ、はあ・・・・・・・・キッツ!!」

狙撃主である龍一はユーノの地点から約4キロ程離れたビルの屋上にいた。

血壊の反動で髪の毛はほのかに赤くなっており、心臓の鼓動が周囲に鳴り響いている。

実戦では初めての4キロ狙撃。

『壁抜け』で結界内に侵入した龍一は直接向かうよりも狙撃の方が早く戦力的にも有効と考え飛穿・二式で狙撃したのだ。

彼の礼装は魔力を込めれば飛距離が伸び、最大で4キロ狙撃も可能にする代物だが、あくまで4キロ先に届くだけであり、命中させるのは難しい。

そこで彼が使用したのは、転生特典でも父の友人たちから教わった魔法とも違う、今は亡き母の遺した魔法であった。

彼の母は古い占星術師の家系の出身で代々占術を得意としていた。

占術といっても魔法業界で一般的に言われる占術はタロット占いや星占いなどの抽象的なものとはまた別ものである。

その正体は、言ってしまえば五感で感知したことから高度な演算処理を行い、近未来を予測する『シュミレーション魔法』なのだ。

機動隊に所属していた母はその魔法を戦闘向けにアレンジし、一つの魔法を編み出した。

それが弾道予測魔法である。

これは銃口の向きや反動によるブレ、風向き、重力、跳躍による軌道変更などと言った要素を即座に分析し、弾丸の軌道を瞬時に予測する魔法である。

この魔法は狙撃の時に大変重宝される。

龍一の飛穿にはこの魔法の術式が格納されていたのだ。

そして、彼が血壊を使っていたのは五感の精度を極限まで高めるためである。

いくら高度な演算処理ができる魔法でも、そのベースとなる情報は五感で入手したものである。

龍一の五感では4キロ先までは知覚できなかったので血壊で無理やり知覚し、精度を補強したのだ。

しかし、代償も大きい。

体の完成した大人でさえ、使いすぎれば死に至る血壊である。

10歳未満の龍一には例え一瞬の発動でもその負担は半端ではなくしばらくはまともに動けない。

しかし、自分と相手まで4キロも距離があると安心しきっていると・・・・・。

「テアオラアァァァァァァァァ!!」

上空から突然の叫び声が聞こえてきた。

「っ!?」

龍一は咄嗟に飛穿で防御したが甲冑に包まれた拳は木製の礼装を完全に破壊し、龍一を吹き飛ばした。

「ごふっ!!」
「大した狙撃能力だが・・・すまないがここで寝ていて・・むうっ!!」
「あたしの仲間に何してんだ!!」

今度は青い服を来た犬耳の青年、ザフィーラをアルフが吹き飛ばす。

しかし、そのアルフも即座に緑色の魔力糸に拘束された。

「ごめんなさい。すこしの間じっとして」
「助かったシャマル」

シャマルに礼を言うザフィーラ。

「大丈夫か!?龍一!?」
「あと5秒早く来てほしかった・・・」

息も絶え絶えにアルフに応える龍一。

フェイト、ユーノ組から4キロ離れた地点でアルフ、龍一組も実質2対2の対決を開始していた。





「ユーノくん・・・みんな・・・・・」

なのははみんなが戦っているのに自分だけ何もできない状況にもどかしく感じていた。

狙撃も紙一重で致命傷を免れたヴィータやシグナムの剣戟によって徐々に不利な展開になってきた。

「助けなきゃ・・・」
『マスター。スターライトブレーカーを撃ってください』
「レイジングハート!?そんな、無理だよそんな状態じゃ・・・」
『撃てます』
「あんな負担のかかる魔法、レイジングハートが壊れちゃうよ」
『私はあなたを信じています。だから私を信じてください』
「レイジングハート・・・分かった。レイジングハートが私を信じてくれるなら、私も信じるよ」

なのははレイジングハートを構え、ユーノたちに念話で知らせる。

「レイジングハート。カウントを」
『了解です。10』

なのはの前方に魔力の塊が形成される。

『9』
『8』

ヴィータたちが気付き始めるが進路を塞いで阻止するフェイトとユーノ。

『7』
『6』
『5』
『4』
『3,3・・3』

突如カウントが止まるレイジングハート。

「レイジングハート!?大丈夫!?」
『大丈夫です。カウント3』

なのはが気遣うが大丈夫だと断言し、カウントを続行した。

『2』
『1』
『0』

そしてカウントが零になり集束砲が放たれる。

「全身全霊渾身全力の100%――『天撃(スターライトブレイカー)』――まいりますっ」
「「「「「「「「それ違う!!」」」」」」」」

何故か叫ばなければいけない気がしてその場にいた全員がなのはに突っ込んでいた。

それはさて置き、なのはの砲撃は一撃で結界を破壊しつくした。

(ヴィータ引き上げだ)
(何でだよ!?シグナム!?)
(時間をかけすぎた。結界が破壊された以上、これ以上長引けば管理局も動くし主も不審がる)
(ちっ!!分かったよ!!)
(シャマル、ザフィーラもすぐに撤退を)
(分かったわ)
(心得た)

そしてヴォルゲンリッターは去って行った。

この襲撃が海鳴市を巻き込んだ大事件の幕開けだと気付けていたのはほんの少数の人間であった。

 
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