《Sword Art Online》 ¢ 踊る巫女と騒音男 ¢
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One:デスゲーム······じゃない!?
前書き
この作品は基本的に作者視点から話を進めていくと思います。
原作との大きな変更点が作中にありますので、ご了承下さい。
緊張からか緊迫感からか、汗が頬を伝う。ここで死んでしまっても本当に死ぬ訳ではないと分かっていても、汗は止まらない。
《ソードアート・オンライン》。若き天才と謳われる、《茅場晶彦》が造り出したMMORPG。世界で初のフルダイブ技術を登載しており、動きは現実のそれと何ら変わりはない。見た目はキャラメイクのおかげでだいぶ変わるが。それは彼女――ユイナも別ではない。
ユイナは他人からは評価の高い自分の容姿を嫌っていた。ミディアムの薄い茶色の髪。アホではないのだがアホ毛が目立っている。キラキラ光る大きな黒の瞳。それら全て、彼女は見るのもうんざりしていた。1万人に1人の美少女などと言われているが、それ程いい容姿でもない。
前置きはこの辺りにして、そろそろユイナの物語の始まりのページを捲るとしよう。さて、どんな物語を造ってくれるのか、楽しみだ――――
* * * * *
「···やぁっ!」
ユイナは初期装備である、《スモールランス》を青いイノシシ―――フレンジーボアに突き立てる。突進しか脳のないイノシシに攻撃を浴びせるのは容易い事だ。
「グギャアァァ!!」
悲鳴を上げ、爆散するイノシシ。同時にユイナの前には獲得経験値とコル、アイテムが表示される。それ等に目もくれず、再び次の標的を絞る。
「はぁぁっ!!」
飛び上がり、斜め斬りを浴びせる。赤いエフェクトがイノシシの体から漏れる。着地と同時に身体を捻らせ横凪ぎに一撃を叩き込む。そこからバックステップで距離を取り、ソードスキルを立ち上げる。両手槍単発スキル《ファントムスパイク》。青紫色のライトエフェクトを帯びた槍が、一直線にイノシシに向かう。
「ガァァッ!?」
開いた口に槍を突っ込む。抜き去ると同時に、イノシシは爆散した。
「ふぅ······終わったぁ······」
溜め息を吐く。槍を掌で回転させ、背中に吊るした鞘に納める。
――パン、パン、パン――
「···っ!?」
後方に大きく飛ぶ。殺気を感じた訳ではないが、念のため距離を取る必要がある気がした。ユイナの視線の先には、年は同じくらいの少年が立っていた。
「わ、悪い、別に驚かせようって訳じゃなかったんだ」
少年は自身の拍手でユイナを驚かせたのだと自覚し、軽く詫びる。どうやら悪い人物ではないようだ。
「俺は、ユウガ。······えっと、君の名前は?」
「あ······ユイナ、です」
ユウガ。それが少年の名だ。所詮はアバターだろうが、かなりの美男子だ。現実で顔を拝む時が訪れないのだ、別にここではこの顔なんだと認識があればいい。もう一度言うが、所詮はアバターなのだから。
「オーケー、俺の事は呼び捨てで構わないよ、ユイナさん」
「私の事も呼び捨てで良いですよ、ユウガ」
お互い軽く会話を交わし、その後両方の同意で行動をする事になった。因みにちゃっかりフレンド申請を送っている。しかし、この時既に起こっていた異変に、2人はまだ気付いていなかった――――
* * * * *
「ログアウトボタンが······ない······?」
異変に気付いたのは、夕方5時を過ぎたくらいの時だ。ユイナが家の用事を思い出し、一度落ちると申し出て、ウィンドウを開いたまでは良かった。しかし、本来そこに存在する筈のログアウトボタンは、綺麗さっぱり無くなっていた。他のボタンはきっちりあるのだが。
「どうなってるいんでしょう······初日だから、不具合か何かだと思うんですが···」
「だ、だよな···」
そこから暫し無言。2人とも急な事態に焦りを隠せない様子だ。無論、2人に限らず現在ログインしている1万人のプレイヤーもそうだろう。
――リーン······ゴーン······――
「「······っ!?」」
ユイナとユウガ、二人が身構える。突然遠くで鐘が鳴り響いたのだ。次から次へと、いったい何だと言うのだろうか。もうお腹一杯だ。
――――突如として、二人の体が青白い光に包まれ、その場から消失した。
* * * * *
次に見た光景は、浮遊城アインクラッド第1層、《はじまりの街》の光景だった。そこにはユイナやユウガだけでなく、おそらく現在ログインしている全プレイヤーが集められていた。
「おい······上······」
ばっと顔を上げる。そこには《WARING》の文字。おどろきはその後だ。赤いスライム状の物が、文字の間を縫って落下し、空中で形を生成している。それはやがて紅色のローブに姿を変え、両手を掲げる。
「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ······」
そこから先は、よく覚えていないだろう。衝撃が大きすぎて、内容を理解出来ない。ただ、大雑把に言えば、第一に3年の期間でSAOの第100層まで辿り着かなければいけない事。第2に、自発的ログアウト及び現実からの遮断も不可能との事。第3に、ここで死んでも現実で本当に死ぬ訳ではない事。
「では、最後に、諸君のアイテムストレージに私からのプレゼントが用意されている、確認してくれたまえ」
ウィンドウを開き、アイテムストレージをタップする。そこには《手鏡》の文字。各々意味が分からないと言った顔でそれを実体化させ、手に取り眺める。
「うわぁぁぁっ!?」
刹那、再びプレイヤーを青白い光が包む。ユイナ達も光に包まれた。光がおさまると、そこは何か違っていた。
先程までの美男美女のプレイヤー達の影は消え去り、現実そのものの顔になっていた。中年高齢者など、年齢層は様々だ。ユイナは隣にいる筈の男性、ユウガを探す。
「な······俺······!?」
隣には、ユウガ――とおぼしき女性にしか見えないプレイヤーが立っていた。線が細く華奢な体。艶やかな紫の髪に大きな瞳。ユイナはまさかと思い鏡を確認する。
――――間違いない、自分だ。薄い茶色の内側に巻かれたミディアムヘアー。大きく輝いた黒の瞳。自分が嫌ってやまない姿。
「えっと······ユイナか?」
ユウガが声をかける。どうやらユウガもかなり動揺しているようだ。
「あの······ユウガって、女の子だったんですか?」
「違ぇよ男だよ!」
素早くツッコミが入る。なるほど、これが男の娘と言うものかとユイナは思った。しかし、今はそれを気にしている程時間はない。3年。それだけの期間で100層に到達し、そこにいるボスを倒さなければならない。
「ユウガ······行きましょう、私達には悠長に過ごしている時間はなさそうですし······」
「ああ、必ずクリアしてやる、絶対負けねぇぞ茅場ッ!!」
駆け出す。疾風のようなスピードで走る影が2つ。他プレイヤーには目もくれず、一直線に突き進む。決意の炎を瞳にたぎらせ、2人はかける。これはまだ、ユイナの物語の序章に過ぎない――――
後書き
あとの方かなりグダグダになりましたね(笑)感想、誤字脱字、御指摘等お待ちしておりますので宜しくお願いします。
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