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美しき異形達

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第二十六話 姉妹の日々その十一

「黒蘭ちゃんがそう言うのならな」
「有り難う、そう言ってくれるのね」
「まあいざとなればな」
 黒蘭が危うくなれば、とも言う薊だった。
「その時は助太刀するからな」
「その心配はいらないわ」
 黒蘭は薊の今の言葉はいいと返した。
「私が勝つことは決まっているから」
「だからか」
「ええ、助太刀はいらないわ」
 こう言うのだった。
「だから安心してね」
「わかったぜ、じゃあ死ぬなよ」
「勝って、しかも生きるわ」
 ただ勝つだけでなく、というのだ。
「それが私の戦いだから」
「それで、だよな」
「ええ、見ていてね」
 黒蘭は唇と目元だけで笑った、そのうえでの言葉だった。
「私の闘いをね」
「そうさせてもらうな」
「そういうことでね」
 こぷ話してだ、そしてだった。
 黒蘭は怪人に向き直った、そうして彼女にまた言うのだった。
「でははじめましょう」
「私を倒すというのね」
「そうよ、私は嘘は言わないわ」
「自信家ね」
「自信があるから言うのよ」
 落ち着いて返す黒蘭だった。
「自信がないことは最初から言わないわ」
「それはいいことね、大言しないことは」
「大言して出来ない時は恥をかくから」 
 それを避ける為に、というのだ。
「言わないのよ」
「賢いということね」
「そう言うのならそうかもね」
 ここでもやや素っ気ない感じの黒蘭である、表情にもそれが出ている。
「少なくとも私は自信があること以外は言わないわ」
「そして私を倒せると」
「私一人でね」
 言いながらだった、黒蘭はその手に新体操のリボンを出した。それは黒くひらひらと彼女の周りを舞っている。
 そのリボンを右手に持ちだ、こうも言うのだった。
「ではいいわね」
「私は何時でもいいわ」
 これが怪人の返答だった。
「虎は何時でも戦えるから」
「もっと言えば狩れる、ね」
「そうも言うわね」
 笑っている声だった、明らかに。
「どちらにしても同じだけれど」
「そうなのね」
「それでは行くわ」
 こう言ってだ、すぐにだった。
 怪人は身体を屈めて風の様に前に出た、そして。 
 手の爪で黒蘭を引き裂かんとしてきた、だが黒蘭は。
 その一撃を上に跳んでかわした、それから。
 下にいる怪人にリボンを放った、それで絡め取ろうとするが。
 怪人はそのリボンにも爪を立てた、だがだった。 
 リボンは切れない、怪人は己の爪で切れないそれを見て言った。
「普通のリボンならね」
「切られているわね」 
 黒蘭は着地しつつ怪人に返した。
「そういうのね」
「ええ、私の爪に切れないものはないわ」
 その虎の爪に、というのだ。
「それが切れないことは」
「私のリボンは普通ではないわ」
「気を入れているのかしら」
「ええ、そうよ」
 その通りだというのだ。 
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