戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百八十三話 和議が終わりその三
「しかし一度会ってみるか」
「お会いされるのですか」
「あの御仁を」
「そうしてですか」
「織田家に入れられますか」
「それは会ってから決める」
その宇喜多と実際にそうしてからだというのだ。
「わしがな」
「今回もですか」
「お会いしてからですか」
「どうするか決める」
「そうされるのですか」
「そうじゃ、どういった者であろうともな」
例えだ、噂では剣呑極まる奸賊であろうともというのだ。
「会ってからどうするか決める」
「左様ですか、では」
「そのうえで」
「そうする、会ってから決める」
はっきりと答えた信長だった、宇喜多についてもそうするというのだ。
そうしてだ、その話をしてだった。
信長はあらためてだ、家臣達に言った。
「姫路にも兵を置いておるが」
「毛利との戦がはじまれば、ですな」
羽柴が信長に応えた。
「それではですな」
「そうじゃ、海で毛利を退け本願寺を降してからな」
そうしてからというのだ。
「そこから山陽を攻める、山陰はじゃ」
「丹波及び丹後からですな」
明智が応えた、その丹波を任されている彼がだ。
「攻めるのですな」
「そうじゃ、出雲を目指すのじゃ」
具体的な国も言う信長だった。
「そして山陽は備中までな」
「攻めまするな」
「そうする」
まさにと言うのだった。
「毛利との戦は一気に進めるぞ」
「そして東国に、ですな」
「引き返すのですな」
「その通りじゃ、その手筈じゃが」
信長は平手を見た、そうして彼に告げた。
「爺、よいな」
「はい、さすれば」
「要所要所に飯を用意しておれ、そしてじゃ」
「そうしてですな」
「道を通って東に向かう」
「整えておいた道を」
「そうじゃ、一気にな」
西から東に向かうというのだ。
「武田、上杉が動き領内に入るまでにな」
「兵を東にもっていきまするな」
「そうする、馬も多く用意しておくのじゃ」
ものを運ぶ為のそれもだ。
「わかっておるな」
「無論」
平手も信長にはっきりとした声で答える。
「さすれば」
「この戦はかつてない戦になる」
はっきりとだ、信長はこのことも言い切った。
「僅かな間に天下を決めることになる」
「織田家がそれとも他の家か」
「どの家が天下を握るのか」
「若しくは再び乱れるかな」
治められる家がなくなりだ、信長はこのことも言ったのである。
「どちらかじゃ」
「どちらにしろ天下が決まる」
「その大勝負ですな」
「それ故に勝つ」
絶対に、というのだ。
ページ上へ戻る