東方変形葉
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
幻想変化
東方変形葉55話「狂気覚醒」
前書き
レミリア「危ない運命は・・・見えないわね。裕海がらみになるといつもこうだわ」
フラン「ねえねえお姉様!」
レミリア「あらフラン。何かしら?」
フラン「遊びましょ?」
レミリア「仕方ないわね。気晴らしに付き合ってあげるわ」
フラン「ふふふ、グチャグチャニシテアゲルッ!」
レミリア「・・・フラン?ねえ、フラン?」
フラン「アハハハハハハハハ!」
・・・・・・。
『タコタコォ~』
何あれ。
たこ焼き何人分のタコかな?少なくとも人里の民家の2倍はある。
「あれが、魔界の魔力をどんどん吸い取っている魔物よ」
「なんというか、気味が悪いですね」
あ、そっか。海を知らなきゃタコも知らないか。
・・・そうだ、ちょうどいいな。
「ねえ魔界神さん。ちょっとあれ持ち帰っていいですか?」
「えっ・・・あのナメクジの進化系みたいな魔物を持ちかえってどうするの?」
「当然、焼きます」
夢子と魔界神さんは目を丸くしたが、それを無視して術をかける。
・・・ライオンも獲物を狩るときは全力で。当然手加減はいらないよね☆
霊剣応用「水知らずの炎の槍」
霊剣を応用する超危険なスペカ。一番火力の強いレベルに上げ、思いっきり振りかざし、“分離の変化”で炎の剣から炎の槍が現れる。
槍がタコに刺さる直前で炎の槍を変形させ、網のような形にした。
『タコオォォォオォオォォ』
タコは火だるまとなる。近くにある池に飛び込んで火を消そうと必死だが、水なんかでは消えないあの炎は池を沸騰させるだけだ。
予定通り、タコはゆでダコになってくれた。
「さすがおにいちゃん!」
「はい、下ごしらえ完了っと。あ、調理場借りていいですか?」
「え、ええ。どうぞ?」
調理場はさっきのところにあったのでそこを借りよう。
「・・・あの子、何者ですか?」
「・・・人間、のはずよ。神を宿してるけど」
タコを細かく切って、スキマから取り出したパックに詰め込む。
帰る途中に小麦粉とかソースとか買って行こう。
明日はたこ焼き宴会を開こうかな。
「異変は片付きました!それでは、また異変が起きたら呼んでくださいね。では!」
「う、うん。またね~」
「・・・早いわねー」
魔界神さんと夢子はなにか呆然とした表情で手を振った。
あるいていくのは面倒なので、全速力で飛んで行こう。
「というわけで、飛ばすよ~!」
「きゃっ、ひゃあああああっ!?」
こいしを抱えて、マッハを余裕で超えるような速さで境界の入口へと向かった。
「うう、速すぎるよぉ」
ぼさぼさになったこいしの髪を梳かす。
「さて、明日は楽しくなるなぁ」
「・・・おにーちゃん、もしかして魔界の魔力にあてられた?」
そうかもしれない。もともと紫からは『魔界の魔力は人を狂わすから注意しなさい』って言われていたな。
「まあ、そうだとしても明日には直っているから安心してね」
「にゅ~」
櫛をしまい、頭を撫でるとこいしはぎゅっと抱きついて「じゃ~ね~、楽しかったよ~」と言って去って行った。
「さて、家にもどっ・・・て?」
ふと、ある方角を見る。
黒い煙。火事か!?
空を飛んで見ると、紅魔館から煙が出ていた。ただ、火災とかではなく、建物の一部が壊れているだけだった。
それでも異常だ。侵入者かな?一応見に行ってこよう。
「っ・・・うう・・・」
「アレー?モウオワリナノ?マダアソビタリナイヨ」
・・・フランが、いつもと違う。
どうなっているんだ?
とりあえず、レミリアが危ない!
「アハハハハハハ!モットアソビマショ!」
フランが接近してきた。俺だと気が付いていないのか?まずい!
「『三重結界』!」
バチンッと結界にぶつかる音が聞こえる。フランの行動を制限したのだ。
スキマでレミリアを違うところに移動する。
咲夜は・・・ああ、あんな遠くの壁にもたれかかっている。恐らく気絶しているのだろう。
スキマで紅魔館門前につなげる。
「おい、起きろ。・・・あっ、メイド長~!」
「ふえぇっ!?いえいえいえ起きてますよ起きてますっ!!」
やっぱり寝てたな。
「それよりも、美鈴」
「あれ?裕海さんじゃないですか」
「緊急事態だ」
「わかりました、咲夜さんとお嬢様の手当てが終わり次第、パチュリー様をお呼びします」
首を小さく振って頷くと、美鈴は咲夜とレミリアを抱えて走り出した。
パリーンっ!!
結界がたったの3分で壊された!ちょっと早いかな?
「ウフフ?ワタシトアソビマショ?」
「ああ、遊んでやるさ。気のすむまでな」
フランの能力は確か、あらゆるものを破壊できるんだっけ。
その真意は、弱点をあぶりだしてその部分を集中的に力を加えるというものだ。
生物にも何にでも、必ず“目”と呼ばれるかなり緊張した部分がある。ぴんと張った糸ほど切りやすい。つまりそういうことだ。
俺の能力自体は、弱点など見当たらない。
だが、体は人間だ。部位破壊されてしまえば一発だろう。
“集中と分散の境界変化”をいじる。
そういえば、フランはレミリアによると『吸血鬼としてはあり得ないほどの力を持っているわ。普段はそんな力出せないけど。だけどその力を引き出したときは破壊を司る神にも等しいんじゃないかしら、姉が言うのも情けないけどね』ということらしい。
フランは、はっきり言って天才だ。勘も良い、頭自体は非常に賢明。戦術、戦法、無知であるにも関わらずすべてが自然とうまい具合に流れていく。
おっと、フランが炎の剣を出して襲ってきた。スキマワープでスッと回避する。
「アハハハハッ!オモシロイワネアナタ!」
・・・俺のことを覚えていないようだ。心を読もうとしても、波長が乱れすぎて全く読み取れない。
げっ、炎の剣がでっかくなりやがった。
五行霊剣を使うか?いや、慣れないものをフラン相手に使ってはいけない。
「スペルカード宣言!」
幻想「マクスウェルの悪魔」
マクスウェルの悪魔とは、スコットランドのある物理学者の思想実験ないしその実験で想定される架空の存在である。
まず、空間を二つに分ける。フランと俺別々の空間だ。そして、マクスウェルの悪魔がその空間の仕切り部分に穴をあける。すると、その穴は威力の弱いもの、遅いものは俺のところでとどまり、威力の強いもの、素早いものはフランの方へと流れていく。
つまり、状況の優劣を強制的に変えてしまうのだ。
ちなみに、自分の撃った弾も自分に当たったら被弾する仕組みになっている。仕切りを非常に強い力で壊さない限りこのスペカは終わらない。
「強度の変化っと。これでそうやすやすと破れない・・・えっ?」
「フフフ、カタ~イ。キュトシテ~・・・ドカ~ン!」
・・・なんてこった空間の仕切りを一瞬で破りやがった。あの力強い幽香でも破るのに少しかかるはずなのに。
まずいな、思ったより手ごわい。まさか殺すことは許されないだろうし、だからと言って手加減できるような相手でもない。
変化「フェアリーオブステージ」
弾幕が、妖精が躍るようにして舞う。その弾幕は、一見脆そうに見えるが、実は相殺できないのである。なので、あきらめてその弾幕を避け続けるしかないのだ。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
だが、フランは目にもとまらぬ速さで避けながらこっちへ向かってくる。っ!やばい!
日符「ロイヤルフレア」
強い閃光がフランを襲った。さすがに対応しきれず、フランは体勢を崩した。
「来たわよ、裕海。久しぶりね」
「ああ、パチュリー。久しぶり。こっちで喘息をできる限り抑えるようにしておくから、頑張ってくれるか?」
「だから来たのよ」
そういって微笑みあい、フランの方を同時に向いた。
「幻想のための交響曲~序曲~」
金&水符「マーキュリポイズン」
パチュリーが交差弾を次々と容赦なく撃つ一方で、俺は巨大な弾を5つ作り、俺の周りをぐるぐる回りながらホーミング弾を連射する。
「もっと本気を出しなさい、能力を活かしなさい。あなたの実力はこんなものじゃないでしょ?」
「・・・まだ、制限が効かなくてね」
「それでいいわ。あの子は頑丈だから、ちょっとやそっとじゃ死なないわよ。ちょうどいい機会だしね」
パチュリーは鋭い。まさか弾幕の様子だけで本人の様子がわかってしまうなんて。
「何があっても責任はとれないよ。スペルカード、仕切り直し!」
「幻想のための交響曲~変幻世界~」
四方八方から大きめの弾幕がフランを襲う。実はこのスペカの一波目は、フランのスペカを参考にしている。クランベリートラップだったっけ。
一波目はさっき言ったとおり、二波目は十字型に光線を放ち、三波目は動いたり止まったりを繰り返す不規則弾幕が襲う。
「ううっ・・・おにい・・・ちゃ・・・ハカイシテヤルワ!アハハハハハハ!」
っ!一瞬、フランの意識が正常に戻った。何者かに憑りつかれたわけではないようだ。
ということは、恐らくフランは情緒不安定なのだろうか。今までは安定期で、今は不安定だとしたら?
「フラン、悪いけどそういうことなら全力でいかせてもらうよ。パチュリー、ちょっとじっとしててくれ」
「ええ、いいけど・・・何をするの?」
「吹き飛ばす。毒をね」
「えっ?」
無塵「神力と滅の比例変化~狂気消滅~」
青白い閃光が放たれる。両手を横にのばし、神力の出せるところまで出し尽くした。
「はああああああっ!」
意識が遠のいていく感覚がした。まあ当然かな?これだけ力を使っているんだし。
そして、神力をできる限り出し尽くした直後、俺は崩れ落ちた。
「・・・くっ、んん?」
目が覚めた。紅い天井が目に入り、少しだけ胸が楽になった。
「あっ!おにいちゃ~ん!ふえええぇぇぇぇぇん!」
元に戻ったフランが、思いっきり抱きつき、泣きじゃくっている。
「あら、目が覚めたの」
「・・・パチュリー。っああ!そうだ、レミリアと咲夜は大丈夫なのか?」
「ええ、問題ないですよ。幸い打ち所は何処もよく、少し休めば回復できるでしょう」
美鈴が答えた。
「そっか、よかった。フランも元に戻って、よかった」
「まさか私の境界を破られるとは思ってもいなかったわ」
横にスキマができ、紫が現れた。いつもながら妙な位置から顔を出してくるな、紫は。
「境界?何のことだ?」
「少し前、あのちびっこ悪魔に頼まれたのよ。この子の正気と狂気の境界をいじってはもらえないか、とね。私は狂気の境界を複雑に引くことによって、狂気の定義自体を曖昧にしたのよ。でも、術をかけただけだからかしら、この子にその境界、つまり結界を壊されてしまって、今までたまっていた狂気の反動がこの子の意識を支配したの」
「・・・そうか、なるほどね」
紫が言うには、フランは先天性の軽度精神障害で、情緒不安定らしい。俺が狂気を吹っ飛ばしたことで、その障害は取り除かれたらしい。完全ではないらしいが。
というのも、俺の引き出せる神力ではフランの狂気を完全に取り除くことはできなかったようだ。
「まあ、何はともあれよかった。魔界の異変をちゃっちゃと片づけてきてよかったよ。ああ、明日は魔界の戦利品でパーティを開くつもりだからね!」
「わ~い!おに~ちゃん大好き~!」
・・・あれ?なんかフランがいつも以上に甘えんぼというか。ああ、狂気が取り除かれたからか。
「あら?魔界の異変ってそんな大したことなかったのかしら?」
紫が少女風に訊いてきた。あれ?なんで風って付けたんだっけ?まあいいか。
「ああ、巨大タコが主犯だったから、一瞬でゆでダコにしてやったよ。紫ならタコという生物がなにかわかるよね?」
「おに~ちゃん、たこってなあに?」
・・・まあ、さすがにあっさり終わったから今度魔界の調査をしておこう。
続く
後書き
恐らく読者が不思議に思っていた、「フランの性格に狂気がねェ・・・」という疑問を解決しました!
え?パチュリー必要あったのかって?パチェは裕海にあることを気が付かせる種をまいたのです。
では、次回をお楽しみに~!
ページ上へ戻る